メイドです、仕事辞めたい   作:ブラック企業ナザリック

14 / 28
お気に入り数がいつの間にか5000超えてる……
ありがてぇです…
何か記念とかやるべきか……自分用に書いてたR18ファースちゃんの日常でも公開しようか…


第14話(挿絵あり)

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、幸せだ」

 

 いつもの喫煙所。

 そこには、いつもと()()ファースが居た。

 

「……幸せだ」

 

 もう一度噛み締めるように言う。

 今のファースは、()()()()()()()()()()

 代わりに、黒を基調としたオフショルダーのトップスと、ショートパンツにヒールの付いたサンダルを履いている。

 さらにいつもは下ろしている長い髪の毛も、普段胸元に付けているリボンで1つに纏めていた。

 いわゆる、馬の尻尾――ポニーテールと呼ばれる髪型だ。

 ――そう、つまりカジュアルファッション。

 私服姿のファースがそこに居た。

 

「……あぅ」

 

 ついに表現する言葉を出し尽くしたのか、よく分からない声で己の幸せを表す。

 ファースが何故ここまで幸福感を感じているのか?

 それは簡単だ。

 ――今日は、()()()()()()なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「――アインズ様当番……ですか?」

 

 アルベドがオウムのように返す。

 実際には、アインズ当番と言ったはずだが勝手に様を付けられている。

 しかしそんな些細な事にいちいち気になっていてはキリがない。

 アインズはそのまま続けた。

 

「そうだ、一般メイドに絞った話ではあるが、彼女達の働き方を大きく変える。それに伴った結果――いや、報償か? とにかく、書類を渡すので目を通しておけ」

 

 そう言ってアインズは机の上に用意してあった書類の束を渡した。

 そこには、今後の一般メイド達の働き方の変化。

 チーム分け、アインズ当番による前日の休日や細かい取り決め。

 さらには休日や休憩による仕事のパフォーマンスや成果の向上が予想されるレポート。

 さらには実際のデータなどが記載されている。

 これらは全て、ファースというメイドが用意してくれたものだ。

 

(彼女に頼んで正解だったな……まさかここまでやってくれるとは嬉しい誤算だ)

 

 アインズは先日のファースとの報告会を思い出す。

 彼女はアインズが頼んだ簡単な意識改革だけではなく、何と細かくデータを記録していた。

 さらにはチーム分け、休日制度、それらの反発を抑える役割も担うアインズ当番なる新制度などの提案。

 渡された書類に目を通して、アインズはすぐさま彼女の提案を受け入れる決意をした。

 まさに、アインズが求めていたものがそこに全て書かれていたのだから。

 

(――でもアインズ当番の話をする時だけやけに興奮してたな――もしかしてそれが狙いだったりしたか? まぁ別に良いけど……)

 

 アインズはアインズ当番の案を語るファースの様子を思い出す。

 まるで必死に欲しい玩具を親にプレゼン(強請る)する子どものようだった。

 正直、一日中側にメイドを侍らせるのはアインズとしては遠慮したかった。

 しかし、メイド達に休日を作れるのならば。

 ここまでやってくれたファースの努力を無駄にはしたくないという想いもあり、アインズはその提案を受け入れた。

 

「――成る程、承知致しました」

 

「ん? 何か意見があったりはしないのか?」

 

 書類に目を通し終えたアルベドが、アインズの決定に素直に従った。

 てっきり、メイドに休日も休憩も不要――みたいな事を言い出すかもしれないから、いくつか台詞を用意していたアインズは拍子抜けした。

 

「私から特に言う事は御座いません。無駄を無くして、ナザリックの為になるのであればそれは良い事ですから。それに、このような反論の余地の無い書類(根拠)を見せられては、何も言えないではないですか。ズルい御方――アインズ様」

 

「ぉ、う……」

 

 アルベドの獲物を狙う鋭い眼光がアインズを捉える。

 そこには愛情のような、敬意のようなゴチャゴチャした感情が混じっているが、アインズには背筋をヒヤリとさせるものでしかなかった。

 

「ふふ、それに私が反論出来ないのを知っていて、既にメイド達には命じておられるのでしょう?」

 

「そ、その通りだアルベド。少し意地が悪かったな、許せ」

 

 嘘である。

 本当はアルベドの説得が失敗した場合に備えて、『でももう命令しちゃったから、このまま新制度でやるしかないよね』という切り札を切る為だった。

 

「――ともあれ、お前の言う通り今日からメイド達は新しいシフトで動いている。休日を取らせなくてはならないから、アインズ当番は明日からだがな」

 

「……アインズ様当番――羨ましい」

 

「…………」

 

 アインズはあえてアルベドの呟きを無視した。

 

「アインズ様、私もメイド服を着れば――」

 

「着なくて良い、お前は――ほら、そのままが1番だ」

 

「つまり私の裸が1番!?」

 

「違う落ち着け、頼むから」

 

 何とかアルベドを落ち着かせるアインズ。

 この調子だと、いつか押し倒されそうだ。

 

「――それではアインズ様、第九階層ならびに第十階層の警護にあたっているシモベの管理の変更はどう致しましょう? メイド達の動きに合わせた方がよろしいかと思いますが」

 

「ふむ……? まぁ、そこはお前に任せるとしよう」

 

 何故メイド達のシフトが変わると、警護のシモベも変更するのだろうか?

 いや、今は仕方なくだが、よくよく考えればメイド達だけ休日などが出来るのはおかしい。

 それならば、一緒に変えられるのなら警護担当の者達にも休みがあっても良い筈だ。

 アルベドはきっとそういう事を言いたいのだろう。

 

(これはアルベドにも休息の重要性が伝わったんじゃないか? よしよし、こういう地道な一歩が大切なんだ)

 

 それならばと、アインズは1つアルベドに新しく提案を出す事にした。

 

「アルベドよ、この際だ。お前も――いや、アウラやシャルティアも呼んで、今度遊びにでも行くと良い」

 

 アルベド1人に休めと言っても、効果は薄い。

 なので同じ女性守護者の名前も出したアインズ。

 まだ長期的な休日制度を守護者達に設けるのは難しいが、1日くらいなら何とかなるだろう。

 これを機に、アルベド達も休日の有難さを知ってもらいたいとアインズは考えた。

 

「遊びに……ですか?」

 

「あぁ、何なら申請さえくれれば、ナザリックの外でも構わないぞ? シャルティアの件もあるから、本来は警戒せねばならないが――1日なら私の秘蔵しているマジックアイテムを総動員すれば不安はだいぶ無くせるだろう」

 

「そんな! アインズ様の持ち物を私どものようなものに使うのは――」

 

「勿体無い、などというのは言わないでくれアルベド。お前は勿論、他の守護者達には苦労を掛けさせているからな。そんなお前たちの安寧の為ならば私はどんな事でもしようではないか」

 

「っ……アインズ様!」

 

「お、おいよすのだ。抱きつこうとするな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファースは最近――というより、アインズ様が罰を下さった時から、1日の煙草の本数を記録していた。

 半分以下――それはファースにとってとてつもなく辛いものだった。

 しかし自分から願った罰、アインズ様より戴いたものだ。

 ファースは頑張った。

 それはもう、自然と煙草に伸びる震える手を自室のベッドに縛り付けた事があるくらい。

 とにかく、何とか本数を今までの半数以下にする事に成功していたファース。

 彼女は今日、初めて()()にぶち当たっていた。

 

「……え、え? 嘘だろう?」

 

 ファースは目を擦り、自らの手帳を何度も見る。

 そこには、今日吸った煙草の本数が記録されている。

 しかし何度見直しても、自ら書き記した記録は変わらない。

 

「――あ、あと1()0()()? まだ昼前なのに? あと10本しか今日吸えないのか?」

 

 ファースは信じられないと言わんばかりに、疑問を口にする。

 しかしそれでも事実は変わらない。

 ファースの今日吸える煙草の本数は10本だけ。

 それ以上吸えば、アインズの罰を破った事になってしまう。

 

「――はぅ」

 

 人はどうしようもない状況の時、悲痛な声を溢す。

 ファースは例に漏れず変な声を出した。

 ――原因は分かっている。

 調()()()()()()()()のだ。

 明日、ファースは初めてのアインズ様当番となる。

 つまり今日が初めての休日。

 晴れ晴れした気持ちで今日の朝食を済ませてから、ファースは今の今までずっと喫煙所に篭って煙草を吸っていた。

 幸せを噛み締めていた。

 そう、残りの残量を気にも止めずに……

 

「…………」

 

 残り10本。

 1日の終わりまで後半日以上の時間がある。

 うん、絶対に無理だ。

 下手をしたら昼食後で全て吸い付くすだろう。

 

「……と、とりあえずお昼食べに行くか」

 

 幸いというべきか、ファースのお腹の虫が鳴き始めてきた。

 食事をすれば、煙草のことは多少忘れられる。

 ファースは未来の自分に全てをぶん投げ、ショックのあまりフラつく足取りで食堂へ向かい始めた。

 

 

 

「――あ、ファースさん……? ど、どうかしましたか?」

 

 道中、他の一般メイド達と出会した。

 いつもより気合いが入っているように見えるのは、気のせいではないのだろう。

 ファースがそうであるように、他のメイド達もアインズ様当番を()()()()しているのだから。

 

(休日が導入されるって聞いた時の表情と、その後すぐにアインズ様当番の事を聞いたら皆目の色変えてたもんな……)

 

 ファースは朝礼で、アインズ様当番の事を告知した時の様子を思い出す。

 まさに感情のジェットコースター。

 休日が導入されると知った時の落ち込みから、アインズ様当番を知った時の有頂天への切り替わり。

 見ていて気持ち良いものだった。

 我ながら、良い案を思い付いたものだとファースは自画自賛した。

 念願叶ったりの休日の次の日が、一日中アインズ様の側に居られる?

 まさに最高の展開だ。

 アインズ様当番の日が終わった次の日から、次の休日まで40日あるのは少し残念だが、休日ゼロの環境よりはかなりマシだ。

 それに朝番や夜番のシフトも決まっているし、使用頻度の少ない部屋の清掃も毎日しなくて済む。

 

「あ、あの……?」

 

「――あぁ、悪いな。呆けてた……何かあったか?」

 

「い、いえ、顔色が少し変かなって……」

 

 どうやら気を遣わせてしまったらしい。

 

「……気にしないでくれ。初めての休日で――そう、勝手が分からなくてな」

 

「……そうなのですか?」

 

 ファースは少し危機感を感じる。

 今の言い回しはよくない。

 休日は楽しむものだ。

 このままでは休日が悪いものだと誤解される。

 

「――あれだ、明日が楽しみ過ぎて羽目を外し過ぎた。休日なのに全く休めてないだけだよ」

 

 言っている事変わってない気もするが、今のファースにまともな思考は難しい。

 頭の中の八割が今日の煙草の事を考えてしまっているからだ。

 

「ファースさんが初めてのアインズ様当番なのですよね? 羨ましいです――あ、文句を言っているわけじゃなくてですね!」

 

「大丈夫、分かってるよ――それじゃあ、私は行くよ」

 

 ファースはまだフラつく足取りで食堂へ再び脚を動かした――

 

「…………」

 

 その後ろ姿を心配そうに見つめるメイド達。

 

「――ねぇ、ねぇヤバくない? メイド服着てないファースさん良くない? カッコ良い!」

 

「休日のメイドは分かりやすくする為に、メイド服から着替えなきゃいけないって聞いた時はちょっと嫌だったけど……あれなら全然アリだよね!」

 

「馬鹿ね、あなたが着替えてもファースさんみたくなれるわけないじゃない」

 

「――はぁ、ファースさんの鎖骨……素敵」

 

 ――否、心配とは少し違うものだった。

 

 

 

 

 




言い忘れていたのですが、作者は性癖に正直な助平なので苦手な方が居ましたら申し訳ないです。
……これ第1話で言うべき案件だよね?

追記
本当に有難い事に、またもやイラストをいただきました、私服ファースちゃんです。

【挿絵表示】


うーん、これはけしからんですな……(ガン見
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。