メイドです、仕事辞めたい   作:ブラック企業ナザリック

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電子書籍勢なので、最新刊やっと読めました。
叔父さんキャラはいいぞ


第18話

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり食事が問題か。後はドレスアップに1人はキツい。となるとドレスアップ要員のグループも作るべきだな」

 

 第九階層の通路。

 壁に寄りかかっているファースが自らの手帳に書き込んでいく。

 内容は、アインズ様当番の改善点だ。

 立案者なのだから、フィードバックも大事だという事で、実に面倒ではあるがファースは律儀に記録していく。

 

「――本当に、本当に嫌だけど、アインズ様当番中は睡眠と食事が不要になる状態にしないとダメか……あぁ、アインズ様とアルベド様の前で腹の虫鳴らした時は本当に恥ずかしかった……」

 

 ファースは思い出して、羞恥故に顔をほんのり赤くする。

 主人の前でぐぅぐぅとお腹を鳴らすよりは、精神的負担が多い道を選ぶ。

 それにファース以外のメイド達はきっと喜ぶ。

 食事に関してはちょっと予想できないが、きっと疲労が無ければいくらでもアインズ様のお世話ができると、飛び付いてくるだろう。

 ファース的には睡眠と食事が不要=働き続けるという図式が浮かぶ為少しイヤだが、こればかりは仕方がない。

 

「――ファースさん!」

 

 ファースが思考に耽っていると、赤髪の同僚がパタパタと駆け寄ってきた。

 

「――『オペランド』。走ると危ないぞ、それに埃が舞う」

 

「あ、ごめんなさい……」

 

 叱られたと思ったのか、シュンとした様子を見せる赤髪のメイド――オペランド。

 

「……それで、何か用か?」

 

「は、はい! そろそろ()()なので、呼びに来ました!」

 

 時間。

 その単語で、ファースは彼女が何の用なのかすぐに察した。

 

「――もうそんな時間か」

 

 思っていたよりも、手帳に書き込むのに夢中になっていたようだ。

 

「……あー、折角だから一緒に行くか?」

 

「はい!」

 

 オペランドがキラキラした目でファースの言葉を待っていた。

 もしかしてと思い、ファースがそう提案すると彼女は元気よく返事をした。

 どうやら正解だったようだ。

 目指すは第十階層だ。

 

「ドキドキしますね」

 

「何で?」

 

「だって、()()()()()()()なんですよね?」

 

「あー……まぁそうなるのかな。一応『やまいこ様』の妹君を招待した事はあるらしいけど」

 

「そうなのですか!?」

 

 他愛のない雑談をしながら、ファースとオペランドは通路を進む。

 ――そう、今日はナザリック地下大墳墓に、()()が招かれる。

 それも、ナザリックの外で暮らす()()()()()だとか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 アインズは自覚する程上機嫌だった。

 精神が抑制されるこの身体になってから、初めて実感する程なのではないだろうか。

 

「……『ネム』。どうだね? 私の、いや、私たちの作った家を一緒に見て回らないかね?」

 

「うん! 見たいです! ゴウン様とお仲間の方々の作った凄いお屋敷を見せてください!」

 

 目の前の幼子――『ネム・エモット』が笑顔で即答する。

 その答えに、ますますアインズの機嫌は良くなる。

 

「ははは。そうか、そうか! ならば色々と見せてあげよう」

 

 元々は、ついでだった。

『ンフィーレア・バレアレ』に頼んでいたポーションの制作が軌道に乗ったお祝いに。

 ンフィーレアを招くからには、その彼女『エンリ・エモット』、そしてその妹を連れて来るくらい構わないと。

 ――呼んで正解だった、正解だったとも。

 ならば、応えねば、知ってもらわねば。

 ()()()()()()が造ったこのナザリックの素晴らしさを。

 

「――ふむ、()()()()よ」

 

 アインズが玉座の間に立ち並ぶメイドたちから、1人の名前を呼ぶ。

 ちなみに何故彼女たちが此処にいるのか。

 それは客人を迎えるとなった時、何となく出迎えがあった方がそれっぽいかなと、メイドたちを集合させていたという理由からだった。

 

「はい、アインズ様」

 

 ――アインズの呼び掛けに、茶髪のメイド、ファースが名乗り出るように返事をしながらお辞儀をした。

 

「客人を案内する、供回りをせよ」

 

「かしこまりました」

 

 別にアインズ1人でも、ナザリックの案内は出来るだろう。

 しかし、ぶっちゃけ勢いでナザリックを案内――しかも相手は子ども――するとなると、些か不安もあった。

 アインズに子守りの経験はない。

 こういう時教師だった、やまいこというギルドメンバーが居ればと願うが、無いものねだりだ。

 アインズが口に出した以上、アインズが責任を持つべきだ――

 だが、まぁ、手助け要員というか、道連れは欲しい。

 それにこういう時、サラリと部下に『ついて来い』と言えた方が支配者っぽいだろう。

 その為、アインズはパッと目に付いたというか、記憶に新しいファースの名前を呼んだ。

 今日のアインズ当番のメイドには悪いが、一時的にファースと交代してもらうとして――

 

「――では、行こうか」

 

 ――こうして、ナザリック地下大墳墓(危険と時間を省く為に第九階層限定)の観光ツアーが始まった。

 

 

 

 

 

「――見てくださいゴウン様!」

 

「ん? ……あー」

 

 ――モゾモゾと、自らのロングスカートの中で蠢めく者がいる。

 それを見て、何だか気まずそうにする主人の姿。

 メイドという物珍しい存在がいる為か、子どもらしくファースのスカートの中に潜み始めたネムの姿にどうしたものかといった感じだ。

 

「――隠れんぼは程々にするのだぞ、ネム。ファースが困ってしまうからな」

 

「はーい! ……この紐は何かな?」

 

「それは多分ガーターベルトです、ネム様――引っ張らないようにお願いします」

 

「こっちのもっと細い紐は?」

 

「下着を結ぶ為の紐なので、絶対に引っ張らないようにお願いします」

 

 メイドのスカートの中を探検するネムに、ファースは決して表情を曇らせずに淡々と、冷静さを保つ彼女の姿にアインズは思わず「プロだ……」と心で呟く。

 

「……すまんな」

 

 居た堪れなくなったのか、アインズがファースに向けて言う。

 

「いえ、気にしておりませんので――それに、子どもはこれくらい活発な方が良いと思われます」

 

「そ、そういうものなのか?」

 

「はい、それに()()にもなるので」

 

 何の練習?

 アインズは怖くてそれ以上聞けなかった。

 そして、探検を終えたのかネムがメイド服のスカートの中から出てきた。

 そして、ファースを数秒間凝視して――

 

「――メイドさんはどうしてそんなにお胸が大きいの?」

 

「生まれ付きです」

 

「わたしも大きくなるかな?」

 

「分かりかねますが、可能性はあるかと」

 

 子どもながら実に純粋だ。

 さっきの行動と同じ質問をもしアインズがしたら、ギルド裁判待ったなしだろう。

 

「――さて、名残惜しいがそろそろ戻ろうか」

 

 アインズが言う。

 元々予定にない観光ツアーの為、エンリとンフィーレアをこれ以上待たせるのも悪いだろう。

 なに、また機会があれば今度はじっくりと観光ツアーをさせれば良い。

 何ならネムを泊まりがけで、細心の注意と準備をして地表から第十階層まで案内するのもアリだ。

 

(そうなると、ナザリックを無傷で踏破した記念すべき1人目になるな)

 

 アインズは冗談めいた笑いをこぼす。

 

「……もう終わりなのですか?」

 

「そんな顔をするな、ネム。また今度続きをしよう。次はもっと凄い場所を案内すると約束もする」

 

「――分かりました、ゴウン様!」

 

 名残惜しそうにするネムを説得するアインズ。

 そんな2人のやり取りを見て、微笑ましそうにするファースが口を開いた。

 

「それでは、このまま居住エリアを進みましょう。バレアレ様、エモット様がお待ちになられている応接室へは近道になりますので」

 

 流石はメイドだ。

 ぶっちゃけ、アインズよりも第九階層については詳しいのかもしれない。

 別に迷路になっているわけではないが、第九階層はギルドメンバーたちも強く力を入れて改装していたエリアな為とても広い。

 ゲーム時代も今も、転移を多用していたアインズには考え付かない最短ルートだ。

 

「……居住エリア、か。それはお前たちの部屋があるということか?」

 

 ファースが示した通路の先には、アインズや他のギルドメンバーの部屋がある通路ではなかった。

 だというのに、居住エリアと言うからにはきっと――

 

「はい、私たちメイドや使用人関係の者たちに与えて頂いた部屋があります」

 

 ――細かい。

 NPC1人1人に部屋を用意するとは、流石アインズ・ウール・ゴウンのメンバーたちだ。

 いや、もしかしたら相部屋という可能性もあるが。

 

「メイドさんのお部屋があるの? ……見てみたい!」

 

 すると好奇心を抑えれなかったネムが叫ぶ。

 しかしハッとした表情を見せ、すぐに俯いてしまった。

 おそらく、観光ツアーは終わりというアインズの言葉を思い出したのだろう。

 

「……ファース?」

 

 アインズがファースに視線を向ける。

 ファースはすぐにその意図を読み取れた。

 

「私は構いませんが……ネム様が喜ぶような面白いものは何も無いかと――あいえ、至高の御方が与えてくださったお部屋に不満があるわけではなくて――」

 

「分かっている、子どもが楽しめるようなものは無いという意味なのだろう? ――せっかく通り道にあるのだ、見てみたいという要望に応えるだけで充分だろう」

 

「――かしこまりました。それでは僭越ながらご案内させて頂きます」

 

 ――ネムの表情が、パーっと明るくなる。

 

 

 

 

 

 




ファースちゃんって、絶対に自分の足元というか爪先見えないよね(性癖
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