メイドです、仕事辞めたい   作:ブラック企業ナザリック

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アンケートのご協力ありがとうございました。
ぷれぷれファースと誕生秘話が接戦でしたね……


第20話(挿絵あり)

 

 

 

 

 

 

  ナザリック地下大墳墓。

 ヘルヘイムのグレンデラ沼地にあり、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンが未探索ダンジョンとして発見し、そのまま初見クリアしてギルドホームとした場所だ。

 

「――それでは、次の議題は……NPC制作について」

 

 手に入れた拠点を拡張し、第九階層――ロイヤルスイートと呼ばれるエリア。

 ギルドメンバーが集まり、通称ギルド会議を行う場所でもある円卓の間。

 そこにギルド、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーの殆どがログインして集っていた。

 そして今回の司会進行役のペロロンチーノが、次に行う議題のタイトルを読み上げた。

 

「はい、エッチな女の子NPC作ろうぜ」

 

 そしてすぐさま、己の願望を口にした。

 

「おい、司会進行役。お前は必要な事だけ喋れば良い。それ以外一切喋るな」

 

 するとリアルでは彼の姉である、ぶくぶく茶釜が一喝した。

 ペロロンチーノは沈黙した。

 

「……えー、前々から話があったと思うんですけど、そろそろNPCを作り始めてみようという話ですね」

 

 場の空気を戻す為、ギルド長であるモモンガが議題の内容を簡単に説明した。

 

「つまり、記念すべき最初のNPCを誰が、どういう風に作るか――という事です?」

 

 低い声のブルー・プラネットが発言する。

 

「それもあるのですが……えっと、もっと根本的な問題があってですね」

 

 モモンガが困ったような感情アイコンを出す。

 

「その……ブルー・プラネットさん含めて、前の会議の時に居なかった人たちの為にもう一度聞きますね――この中で、NPCを作った経験がある人。挙手をお願いします」

 

 ――モモンガの問いに、挙手をする者は居なかった。

 

「この通り、経験者が居ません……なのでその辺の議論から始めたいと思います」

 

 モモンガの言葉にギルドメンバーは頷く。

 

「攻略サイトとかに詳しく載ってたりは?」

 

「軽く調べたけど、あるにはある――けど信用していいか……」

 

「フレンドに経験者が居るか聞いてみる?」

 

「でも折角なら、手探りでも良いから自分たちでやってみたくないですか?」

 

 様々な意見が出る。

 やがて意見が出し終える頃に、それらを軽くモモンガがまとめて、ペロロンチーノが読み上げていく。

 

「えー……攻略サイトを見るのに賛成な人〜……フレンドに聞く〜……自分たちで頑張る〜――」

 

 出た案の中から、多数決を取る。

 クラン時代から意見が分かれたりしたら大体この方法で決めてきた伝統ある形式だ。

 

「……自分たちで手探りしながら作る――が1番多いという結果になりましたね」

 

 ペロロンチーノが宣言する。

 

「――では、方向性が決まりました。次は……誰がどんなNPCを作るか――」

 

 モモンガが言い終える前に、多くのギルメンが静かに挙手をし始めた。

 その挙手の中には、ペロロンチーノも居た。

 きっと先の願望は捨て切れないのだろう。

 

「――なんですけど……えー、候補者が多いのでくじ引きで決めたいと思います」

 

 ユグドラシルというゲームは未知を楽しむもの。

 初めての経験はやはり良い刺激になるのだろう。

 モモンガは公平なくじ引きをするために、課金ガチャで出た通称『くじ引き君』をアイテムボックスから取り出し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――よく集まってくれた、諸君」

 

 拡張され、ナザリック地下大墳墓となったアインズ・ウール・ゴウンの拠点。

 第九階層のとある通路の端。

 ホワイトブリム、ヘロヘロ、ク・ドゥ・グラースというアバター名の異形種たちが集っていた。

 

「ホワイトさん、何か用ですか?」

 

 ク・ドゥ・グラースが聞く。

 それにはヘロヘロも同意見だった。

 何故呼ばれたのか、皆目見当も付かないからだ。

 

「まぁ、先ずはこれを見て欲しい」

 

 そうしてホワイトブリムがコンソールをいじる。

 するとヘロヘロとク・ドゥ・グラース宛にメールが届いた。

 魔法を使わず、わざわざメールを飛ばしたのは、どうやら言葉よりも同包してある画像データを見て欲しいという事なのだろう。

 

「「こ、これは……!」」

 

 2人の声が重なる。

 

「――知っての通り、この前のくじ引きで俺がNPC第一号を作る事になった。その初期設定案――というより、外装のイメージ図ですな」

 

 ホワイトブリム、ヘロヘロ、ク・ドゥ・グラース。

 この3人には実はある共通点があった。

 それは――

 

「ホワイトさん……あんたまさか」

 

「――()()()()()()()()()()()()()!?」

 

 ――メイドさん大好き。

 

 2人の驚愕の反応に、ホワイトブリムは満足そうに頷く。

 メールに同包されていた画像データには、メイド服や細かい装飾。

 そしてやけに胸部が強調された茶髪の女性のイラストなどが描かれていた。

 ホワイトブリムが絵を得意としている事は知っていたが、改めて彼の画力というものに2人は驚いた。

 

「ほら、お試しという事で特にリソースを使わないレベル1のNPCを作る事になったじゃん? だから、何というか――好きにやっちゃおっかなって」

 

 ホワイトブリムの言葉に、ヘロヘロとク・ドゥ・グラースはグッドサインのアイコンを連打した。

 

「そこでお2人にも是非協力を――」

 

「「やります!!」」

 

「――ぉ、おう。ありがとうございます」

 

 まだ肝心の要件を言う前に同意を得られたホワイトブリムは少したじろいだ。

 

「――じゃあ、必要な素材とかは3人で集めておくとして……外装に関してはクドゥーさんに任せても?」

 

「良いですよー、外装作成は割と得意な方ですし。手元にこんな良い資料もありますし」

 

「ありがとうございます。それでヘロヘロさんは、確かプログラミングが得意でしたよね?」

 

「得意というか……得意にならなきゃいけなかったというか」

 

「……あー、ごめんなさい。失言でした」

 

「あ、いえ、気にしないでください。プログラマーなのは事実なので」

 

 ヘロヘロのブラック伝説はギルドでも有名だった。

 

「えっと……じゃあNPCの行動AIをお願いしようかなって」

 

「……え、NPCにAI組めるんですか?」

 

「調べた感じそうみたい。ソースも信用あるというか、知り合いの居るギルドで実物見てきたし」

 

「なるほど……分かりました。メイドさんらしい行動を組み込め――という事ですね?」

 

「えぇ、3人で素晴らしいメイドさんを作りましょう!」

 

 3人の異形の手が重なった――

 

 

 

「――話は聞かせてもらいましたよ」

 

「「「何やつ!?」」」

 

 3人は叫ぶが、ぶっちゃけノリだ。

 声を聞いた時点で誰だかすぐ分かったからだ。

 

「――私です。タブラ・スマラグディナです」

 

 何処から盗み聞きしていたのか、通路の脇からぬっと名状し難い異形が現れた。

 

「その件……私も一枚噛ませてもらっても?」

 

「え……有難いですけど――」

 

「とりあえず、お2人に見せていた画像私にも頂けませんか?」

 

 ホワイトブリムはタブラ・スマラグディナにもメールを飛ばす。

 

「……なるほど、本当に上手ですね――ちなみに、()()は何処まで出来てます?」

 

 タブラ・スマラグディナの攻め込む様な質問に、ホワイトブリムはやや困惑しながらも、考えていた設定案を彼に明かす。

 ゲーム上設定なんて書き込んでも、自己満足にしかならない。

 しかしその自己満足が良いのだ。

 

「――ふむふむ、素晴らしい。私はメイドにはあまり詳しくないですが、とても良いと感じます……しかし、()()()()()思いませんか?」

 

 そういうと、タブラ・スマラグディナはコンソールをいじる。

 そして何かを打ち込み始める。

 その時間は数分で終わり、やがて3人の下に新しいメールが届いた。

 

「「「……うわっ」」」

 

 そこには、文字数制限ギリギリまで打ち込んだ文字の暴力。

 思わず流し読みしたくなる程だ。

 

「まだ即興の下書きですが……こんな感じでどうでしょう?」

 

「……この『素の性格は男寄り』というのは?」

 

「ギャップ萌えです」

 

「『重度のヘビースモーカー』っていうのは――」

 

「ギャップ萌えです」

 

「『肩凝りによく悩まされている』――」

 

「そんなに大きければ当然では?」

 

 成る程、彼は俗に言う()()()なのだろう。

 ある意味で、ここにいる3人の誰よりも凝り性。

 ――どうやら、頼り甲斐のある仲間を見つけたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まさかリアルだけでなく、ゲームの事情でプログラムを組む事になるなんて」

 

 ユグドラシルにおける、アバター名ヘロヘロ。

 彼はリアル――現実世界の自室にして、ユグドラシルのNPCのプログラムを組んでいた。

 

「でも何故かペースが落ちないから、これなら支障は出ない――」

 

 ふと彼は思った。

 何故仕事のプログラムは気が乗らないのに、ゲームの為のプログラムはこんなにもペースが早いのか。

 考えるまでもない、理由は簡単だ。

 

「――あーあ、()()()()()全く」

 

 仕事も楽しければ、効率が違うのだろうか?

 彼はそんな事を思いつつ、手を動かし続ける。

 

「…………くそっ、仕事なんてやりたくねぇ」

 

 思わず出る本心。

 そして思わず動く彼の指。

 気がつけば、画面のプログラミングに彼はある言葉を打ち込んでいた。

 

『仕事なんてやりたくない!』

 

「――よし、ラストスパートだ」

 

 ――その文字は、プログラムには何の影響も無いメッセージ。

 あっても無くても結果は同じ。

 だからか、それとも無意識故にすぐに忘れたのか。

 彼はその打ち込んだ文字を()()()、そのまま続けた――

 

 

 

 

 

 

 

 ――しばらくして、ナザリック地下大墳墓に初のNPCが誕生した。

 

「――メイドさん?」

 

「メイドだ」

 

「何でメイド?」

 

 お披露目会として、制作に関わったホワイトブリム、ヘロヘロ、ク・ドゥ・グラース――それとタブラ・スマラグディナ。

 見物人として、ちょうどログインしていたギルドメンバーたちが何人か集まっていた。

 

「えー……協力してくれた方も居たので、思ったよりも早く完成しました。ナザリック地下大墳墓――アインズ・ウール・ゴウンの初のNPC……名前は『ファース』にしました」

 

 代表してホワイトブリムが説明する。

 それに合わせて、横にいたヘロヘロがコマンドを実行させると、茶髪のメイドNPC――ファースがお辞儀を披露した。

 見物人たちから、感嘆の声があがる。

 

「ご覧の通り、ヘロヘロさんの協力で様々なコマンドで動かせます」

 

「あと色んな隠しコマンドも仕込んだから、見掛けたら色々と試してみてください」

 

 そうして、暫くの間ファースの前で色んなことを試し始めるギルドメンバーたち。

 1番最初に隠しコマンドの一つを見つけたのはペロロンチーノだったのか、『うぉー! ウィンクしてくれた!』と彼の叫びが聞こえて来る。

 

「――ありがとうございます、皆さん。特にヘロヘロさんは」

 

「いえいえ――まぁ、もし次があれば作業分担した方が良いですね。思ったよりも奥が深くてつい夢中になってしまいました」

 

 普段の待機モーションや、通常ルーティン。

 ランダムで喫煙所に行く、錬金工房でクラフトをする――など、あまりに過多なプログラムをヘロヘロはファースに組み込んだ。

 多分次があれば、もう少し簡略化するだろう。

 もう一度あの量のプログラムを組むのは流石に難しい。

 

「しかし、要領が分かれば後はトントン拍子でしたね」

 

「ですね、これなら注意事項とか共有しておけば誰でも作れそうです」

 

「うーん、それなら自分もメイドさん作ろうかな」

 

 ヘロヘロが思い付いたように呟く。

 

「お、デザイン描き起こしましょうか?」

 

「お願いするかもです――今度は戦えるメイドさんとかどうです?」

 

「良いですね! 他の人たちにも協力してもらって――あーでも、普通のメイドももっと作りたいような……」

 

 悩むホワイトブリムに、タブラ・スマラグディナが肩を叩く。

 

「――両方やっちゃえば問題ないのでは?」

 

 ――こうして、ナザリックには沢山のメイドが誕生する事になる。

 それだけでなく、ホワイトブリムたちが用意したNPC製作マニュアルによって、他のギルドメンバーたちもこぞって各々のNPCを作り始めた。

 中には、ファースの出来の良さに惚れて、ホワイトブリムにデザインの描き起こしを依頼する者も居た。

 

「ロリ……ロリ巨乳――ロリ巨乳吸血鬼……こ、これだ!」

 

「え、男の子NPCにスカート履かせられるのこのゲーム――よし、やるか」

 

「軍服……かっこいいな」

 

 まさに、NPC製作の大ブーム。

 これはギルド、アインズ・ウール・ゴウンの全盛期の出来事の1つでもあった――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――メイドです、仕事辞めたい」

 

 ――こうして、ナザリック地下大墳墓が謎の異世界に転移した日、ギルドメンバーたちの遺産であるNPCたちは己の自我を表に出す事が出来るようになった。

 

「はぁ――どうしてこうもやる気でないかなぁ」

 

 ホワイトブリムたちの最初の遺産でもある、ファース。

 彼女は今日も今日とて喫煙所で煙草を吸う。

 

「――仕事だるい、辞めたい」

 

 ファースは何度も同じ事を呟く。

 口に出す事で、少しでも発散するためだ。

 

「……そういえば、守護者の方たちは吸ったりするのか? いや――」

 

 ――こうして、彼女の物語が始まったのだ。

 

 

 

 

 




至高の御方々の口調とかは作者の想像です。
手元に至高の四十一人の資料が少ないので、あまりにも作者が知らないだけで、明かされている原作の設定からの離反がありましたら、生温かい目で見守ってください何でもしますから。


何と支援絵をまた頂きました。しかも4枚
本当にありがとうございます。バミ嬉しい!

いつもの方からの、ミニスカガーターファースちゃんです。
うーん、これはけしからん……

【挿絵表示】


初めての方からの支援絵です。
可愛いなぁ……特に右下。

【挿絵表示】


こちらも初めての方からです。
中々やさぐれてるファースです。
初期案の超絶オラオラ系ファースにピッタリなイラストなので、思わず懐かしいと思いました。

【挿絵表示】


最後の一枚は、感想の方にあります。
お互いが匿名な為、ここに貼ることが出来ずに申し訳ないです……
全話の19話を開いて、右上のメニュー→感想から飛べば見つけやすいと思いますので、是非ご覧になってください。
デカいです、兎に角デカいです。オヌヌメです。
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