メイドです、仕事辞めたい 作:ブラック企業ナザリック
ちょっと色々とあって、執筆する時間が大幅に減ってしまったので中々更新が難しくなると思います。
そこでなのですが、1話ずつの文字数を減らして、小出しで更新する方針にする事にしました。
ただでさえ短い文字数がさらに短くなり、話数も重なってしまいますがご了承いただけると嬉しいです。
休載っていうのも考えたけど、多分作者の性格的なもう書かなくなる可能性もあるので……ご相談せずに決めてしまい申し訳ないです。
ナザリックの一般メイドは、それぞれナザリックの外――特に人間に対する考えは意外にもバラバラだ。
無関心、極力関わりたくない、嫌悪する、興味本位で関わってみたい――
おそらく、彼女たちの性格などからそういった意見の違いが出るのかもしれない。
そんな中、ファースはというと――
「……やり直し。さっき教えた事忘れたか?」
「ご、ごめんなさい……」
「謝るより返事、何回も言うと気が滅入るぞ。それよりかは元気な返事をしろ。"見返してやるんだ!"っていうくらいの気持ちでな」
「は、はい……!」
――まぁ、正直無関心な方だろう。
しかしツアレニーニャの教育を始めて、ほんの少しだけ関心が湧いてきた。
(わりと厳し目にしてるが……根気はあるみたいだな)
メイドとしての立ち振る舞い、歩き方から掃除の基本まで。
正直に言って、ファースから見ればツアレは百点中、五点も評価する事すら出来ない酷いものだ。
だが、当たり前といえば当たり前。
聞けば別に彼女はメイドとして生まれたわけでもないし、メイドになると決まったのはつい最近。
出来なくて仕方のない事だ。
しかし、ツアレは懸命に付いてくる。
ファースの教えを自分なりに吸収して、それをモノにしようとする姿勢は伝わってきている。
――へぇ、根性あるじゃん。
ファースの人間に対しての印象がほんの少し更新される。
むしろ根性ややる気に関しては、ファースこそ見習うべきでは?
そんな己の内側から責めるような声がするが、ファースは無視した。
「……そのまま続けてろ」
ファースはツアレにそう告げて、ツアレの研修として使っていた至高の御方の予備の部屋から出た。
「――何してる? お前ら」
そして、先程から部屋の外から感じていた気配に向けてそう言い放つ。
――気配の正体は、同僚の一般メイドたちが数人ほどだった。
おそらく、このエリアの掃除グループのメイドたちだ。
彼女たちは、隠れる様に潜みながらファースとツアレの様子を探っていたようだ。
ファースに発見されたメイドたちは、わたわたと慌て出す。
「そ、その……これはですね」
「何だ? 言ってみろ」
おおかたの予想は出来ている。
しかしファースはあえて、彼女たちの言葉を待った。
「――狡いです」
「――そうです、ズルいです」
(……まぁそうなるよな)
他の一般メイドからすれば、ツアレの存在は邪魔者と同義だ。
例えツアレがこの先メイドとして正式に働く事になったとしても、直接的な攻撃などはしないだろうが、無視や仕事を奪うなどの陰湿な行いをする可能性がある。
――その為、セバスはこうして研修中はファースにツアレの面倒を頼んだのだろう。
側にツアレの味方が居れば、その心配はないだろうと。
(私がそうしないって保証もないのに何であんなに信頼されて――あぁ、メイド長からの推薦だったか。全くあの人は……)
早く謹慎から帰ってきて欲しいものだ。
ファースはペストーニャの安否を心配しつつ、意識を現実に戻した。
さて、目の前の同僚たちをどう説得すべきか――
「――私たちも、ファースさんに
「そうです! 不公平です!」
ファースが少し意識を逸らしている間に、どうやらヒートアップしていたようで――
「……ん? ごめんもう一回言ってくれない?」
――何故か、脳が言葉の咀嚼をしきれなかった。
何かこう、自分が予想していた内容と違う言葉が返ってきたような……
「私たちも、ファースさんから仕事教えてもらいたいです!」
「そう! 手取り足取り教えてください!」
「どうせなら、おはようからお休みまで一緒に――」
「それはライン越えよ」
気が付けば白熱した声より、黄色い声の方が多くなってきている。
「…………?」
ファースの思考が止まる。
同僚たちの言葉が理解出来ないのだ。
「……えっと、それは何で?」
「だって狡い――! そこの人間や、あのペンギンには教えるのに、どうして私たちには教えてくれないんですか!?」
「そうだそうだー!」
ファースに見つかった時の慌てぶりは何処に行ったのか、逆に今度はファースに向かって押し寄せてくる同僚たち。
「い、いや……別にお前ら普通に仕事できるじゃん――私が教える意味ある?」
ファースを含める41人のメイドは、当然だがメイドとしての仕事は完璧だ。
既に完成されている。
もちろん日々、向上を目指す意識の高い者もいるがナザリックのメイドとしては皆既に合格点を得ているのだ。
仕事のやり方や細かい動きなどは、性格や個性が出て全く同じという訳ではないが、
皆、百点中百点を貰える仕事振りな筈。
だから、ファースが他のメイドに自分の仕事のやり方などを教えたとしても、多少の違いは出るかもしれないが、気にする程のことではない筈だ。
「そういう事じゃなくてぇ!」
「ファースさんって本当に意地悪ですよね!」
「でもそれが良いんだよね?」
「うん、濡れる」
ファースの頭は既に疑問と混乱でいっぱいだった。
とにかく、この騒動をどうにかせねばならない。
「…………じゃあ、今度、教えよか?」
ファースが壊れた機械のように、単語で話すと同僚たちはパァーっと表情を明るくさせる。
「ゆびきりしてください!」
かつて、至高の御方々も約束事の時は、『ゆびきり』という儀式を行なっていた。
それに倣って、メイドたちの間でも約束事の時はこの儀式が当たり前になっていた。
そしてこの後ファースは十回くらい、ゆびきりの儀式をした。
「…………」
何だか頭痛がし始めたファースは、嬉しそうにその場を立ち去る同僚たちを見送りながら眉間を押さえた。