メイドです、仕事辞めたい   作:ブラック企業ナザリック

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「この小説を投稿し始めたのっていつだっけ?」

「ええと…3年前だね」

「最後に更新したのは?」

「………1年前だね」

「もう一つ質問いいかな……ニーナとアレキサンダー、どこに行った?」

「!?」

「……君のような勘のいいガキは嫌いだよ」


第28話

 

 

 

 

 主人であるアインズはドワーフの国へと赴いた。

 自分が計画していたバハルス帝国の属国化を前倒しで――しかも正味三日というとんでもない早さで――済ませた後に。

 デミウルゴスは己の無力感、そして主人に対する様々な感情が混ざり合った状態でやや興奮気味だった。

 

「――それとデミウルゴス、()()()()伝えておく事があるわ」

 

 目の前の主人の執務机に座るアルベドが言う。

 

「なんでしょうか? わざわざ最後に伝えるという事は……先程の話より()()という事ですか?」

 

「そうとも言えるわ――さっきアインズ様の供回りの話をしたわよね」

 

「えぇ、シャルティアとアウラでしたよね」

 

 コキュートスは湖周りの管理、マーレはエ・ランテル近郊のダンジョン作成、セバスはエ・ランテルに詰めている。

 つまり守護者の殆どが現在各々の役割をこなしている。

 

「実はシャルティアとアウラ以外にも供回りをしている存在がいるのよ」

 

「では勿体ぶらずに教えてください」

 

 アルベドは自分の反応を楽しんでいるようで、笑みを浮かべながらこちらの様子を見ている。

 それが不快というわけではないが、少しだけ引っ掛かるものがあった。

 だからデミウルゴスはその持ち前の頭脳を使うよりも、本人から答えを聞き出す事にした。

 

「シャルティアとアウラ――それとメイドが三人。デクリメント、エトワルに――」

 

 アルベドが供回りの三人のメイドの最後の一人の名前を口にした。

 

「…………それは本当ですか?」

 

「えぇ、本当よ」

 

 自分らしくもなく、思わず聞き返してしまった。

 それだけデミウルゴスにとって信じ難い――というより不可解だったのだ。

 

「なぜこのタイミングで()()を……確認ですがそれはアインズ様が?」

 

「いえ、アウラとシャルティアはご自身で指名されたけど、メイド達はデクリメントからの強い要望だったそうよ――でも、間違いなくアインズ様の誘導があったでしょうね」

 

 つまり全ては計算通り、アインズ様の手のひらで踊らされている。

 デクリメントというメイドを利用して、アインズ様は自然な形で彼女を供回りに……

 ――それは何故か?

 その答えはもう出ている。

 彼女の秘匿性は保たれなくてはならないからだ。

 いたずらに彼女の()()を触れ回るのは愚の骨頂。

 おそらく彼女の正体を知っている者、そして自分たちのように気付いた者はナザリック内でも極少数。

 以前主人であるアインズに彼女について訊ねた時、アインズは()()しなかった。

 それどころか真実に気が付いた自分たちを『よくぞ見抜いた』と言わんばかりの激励の言葉を。

 つまり彼女の正体に気がつく事自体は何も問題は無い。

 ナザリックの偉大な歴史に触れるには、まずその在処を解明する事――それが()()となるのだろう。

しかしそうなると、他の守護者たちに彼女について共有したのは不味かったかもしれない。

 彼等の成長する機会を妨げてしまったようなものだ。

 

「デミウルゴス?」

 

「――いえ、大丈夫ですよ。少し考えていただけです」

 

 やや長考してしまったようだ。

 自分への反省は後の課題として、今は別の事を考えなくてはならない。

 それは先程も口にしたように、何故このタイミングで――という点だ。

 

「ふむ……やはりアインズ様当番も、自然に彼女を連れ出せる為のものだったと考えるべきですね」

 

「えぇそうね、出来るだけ自然に違和感なく――きっとアインズ様は水面下で進められていたのよ」

 

 ……本当に恐ろしく、そして聡明な主人だ。

 目先の計画しか読み取れず、主人の真の狙いを読み取っていた気になっていた自分が恥ずかしい。

 

「行き先はドワーフの国でしたか――つまり今回の件は()()()()()()()()として相応しいとアインズ様はお考えに?」

 

「……正直分からないわ、彼女を連れていったのだからその筈なのだけど――」

 

()()すら分からない……情報が本当に足りませんね」

 

 そもそも主人が何故、何をしにドワーフの国へと赴いたのかも不明だ。

 主人の意図を正しく読み取るのはデミウルゴスですら難しい――いや無理だろう。

 しかしだからといって主人のお気持ちを読むことを諦めるのは論外だ。

 デミウルゴスがアインズに正しく忠義を伝えるにはそれしか――

 

 

 

 

『……いや、私一人で独占すべきものではないな。ナザリック地下大墳墓を――我が友たちアインズ・ウール・ゴウンを飾るためのものかもしれないな』

 

『ただ……そうだな。世界征服なんて面白いかもしれないな』

 

 ――不意にデミウルゴスの脳内に、あの日の想い出が。

 あれはデミウルゴスにとっても特別な日、特別な時間。

 デミウルゴスとアインズ二人だけの世界だった瞬間。

 ……それがきっかけだったのか、デミウルゴスはある考えに辿り着いた。

 

「……どうかしたのかしら?」

 

「――いえ、大丈夫ですとも」

 

 さっきと似た様なやり取りをしてしまう。

 しかしさっきと違うのはアルベドの表情。

 自分の顔を見て少し驚いているような表情だった。

 

「それではこの辺で失礼します、アルベド」

 

 デミウルゴスは唐突に話を終わらせ、早足で主人の部屋を退出した。

 これ以上あそこにいれば、アルベドに勘付かれるから。

 デミウルゴスは自分でも不思議なほど、独占欲に駆られていた。

 それは主人であるアインズの考えを悟ったから。

 それをアルベドに知られたくなかったから。

 

「ふふ、ははは……! 流石はアインズ様! まさか、まさかこれまでが()()に過ぎなかったとは……!」

 

 世界征服。

 それが主人の望みであると信じて疑わなかった。

 だが違った、それは違ったのだ。

 世界征服は単なる()()()()だ。

 主人であるアインズには、まだ明かされていない計画がある。

 

 

 

 

 

 

「さて、ここで一泊だな」

 

 主人であるアインズが言う。

 するとあっという間に、さっきまで何もなかった筈の場所に要塞のような建物が出現した。

 

「さて……本日はここに宿泊する――」

 

 アインズが要塞の中で配下たちに指示を出す。

 アインズの護衛であるアウラとシャルティア、それと今回の案内役であるリザードマンのゼンベルは今後の打ち合わせの為にその場に残る事に。

 そしてそれ以外の者は、部屋で待機するようにとのことだった。

 ――その言葉を聞いたファースは歓喜した。

 要するに()()の時間だと。

 しかし、誠に残念な事にここには仕事で来ている。

 自分たちはアインズ様当番のメイド。

 だからやるべき仕事を放棄して休息を取るのはナザリックのメイド失格。

 ――まぁでも、一服くらいなら……?

 

「――さて、やるべき事は分かってるな? デクリメント、エトワル」

 

「「はい!」」

 

 同僚の2人のメイドに訊ねる。

 その返事からして、やるべき事はわかっている様子だ。

 

「パッとみた感じ上の階は少なくとも3階はある。私は1階、デクリメントは2階、エトワルは3階――もしそれ以上あったらそこも頼む。構造も内装を迅速に把握して、そのあと合流して共有しよう。そのあとデクリメントは引き続きアインズ様当番の役目を」

 

 そう、それはアインズ様が魔法によって創り出したこの立派な要塞の内部を把握すること。

 メイドたるもの、たとえ一時だろうと主人が滞在する場所の事は把握しておかねばならない。

 何故なら、奉仕や清掃はその場所の把握から始まるのだから。

 

(というか何故私はメイド長でもないのに2人に指示を出しているのだろうか…?)

 

 普段は面倒が勝る筈だというのに。

 そんな疑問が頭に浮かぶが、すぐに結論が出た。

 多分、浮かれてるのだろう。

 慣れ親しんだナザリックを出て、至高の御身とその配下の者たちと一緒に未知の場所への探検。

 そして日が暮れ、休息のために同じ場所で夜を過ごす。

 朝日が昇ればまた未知へ向けて歩を進める。

 

(あれ……なんだ、この状況って――)

 

 不意にファースの脳裏に記憶が再生される。

 

『――おう、遠征行ってたんだって?』

 

『おう、たっちさんとかも一緒だったし、何とかなったさ』

 

『いいよなぁ、俺も仕事が休めれば……まだ未到のエリアなんだっけ?』

 

『そうそう、例のギルドが既に先行してるから、別ルートからの開拓だったけど――』

 

 それはかつての喫煙所での、至高の御方々の会話だった。

 

「……あぁ、そっか、これが――」

 

 これが、『冒険』なのだろう。

 至高の御方々が、幾度も口にし、幾度もその内容を耳にした。

 ファースの心中に、何かが灯る。

 それは小さく、炎に焚べる小さな火のようなものだったが、確かに熱を感じた。

 

 

 

 

 




また間隔開けてしまい申し訳ありません……
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