メイドです、仕事辞めたい   作:ブラック企業ナザリック

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出来るだけ時系列に沿って書いていきたいなと……


第8話

 

 

 

 

 

 

「…………ぇ」

 

 最近のナザリックは、変わりつつある。

 今までメイドぐらいしか通り掛からなかった第九階層の通路には、今まで会う事がなかった様々なシモベ達を見かける様になってきた。

 そしてファース自身も、主人であるアインズ様の命を受けて、日々他のメイドの意識改革に励んでいる。

 ――そんなある日、ファースはタイミングを見計らって、いつもの場所(喫煙所)に向かった。

 その道中、ファースは信じられないものを発見した。

 

(――何だ、見慣れない()()が通路で落ち込んでる……)

 

 そう、四つん這いで床とキスをするんじゃないか、そのくらい床にめり込んでいる者が居たのだ。

 格好もどう見てもメイドではないし、普段は別の階層にいるナザリックの存在なのは間違いないだろう。

 

「……あぁぁぁ、どうしてなの――どうしてこんな事に……」

 

 そして何かに怯えたように、呪詛に似た呟きを床に向かって吐き続けている。

 誰がどう見ても、落ち込んでいるんだなと見て取れた。

 

「――あ、あの……」

 

 ファースは少し迷った末に、声を掛ける事にした。

 相手の顔も見えない状況では、どう接して良いのかも分からない。

 先ずは対話を試みる。

 

「――? メイドぉ?」

 

 ファースの声に気が付いたのか、四つん這いの人物は床に向けていた顔をファースの方へ四つん這いのまま向けた。

 ――ファースはその顔を知っていた。

 いや、実際に御拝見したことは無い。

 ()()()()()()()()、という意味でだ。

 

「……そうなの、こんなくそったれなゴミのような守護者を掃除しに来たのね」

 

 そして何故か自虐的な、四つん這いの人物。

 ファースは困惑しつつも、目線を出来るだけ同じに近づける為、その場でしゃがんだ。

 

「――『シャルティア・ブラッドフォールン様』。何があったかは存じませんが、どうかお顔を上げ立ち上がってください。()()()()()の貴女様がその様子では、私達も困ってしまいます」

 

「なぁに、メイドがわたしに意見するのぉ? ……いえ、違うわね。貴女達も至高の御方々に創造されたのだから、同僚みたいなものよね――むしろ、このボロ雑巾の今のわたしの方が……うぅ」

 

 四つん這いの人物――その正体はナザリック地下大墳墓、第一、第二、第三階層の階層守護者の地位を与えられた吸血鬼の少女。

 名をシャルティア・ブラッドフォールン。

 至高の御身である、『ペロロンチーノ様』によって創造されたお方だ。

 そのレベル(強さ)はファースのような一般メイドとは比べ物にならない程の高レベル(100)

 何をどうやっても、絶対にファースが敵うお方ではない。

 ――そんなお方が、涙で顔をくしゃくしゃにしながら、子供のように泣きじゃくっている。

 正直に言って、扱いに困る。

 このまま無視する事もできないし、声を掛けてしまった以上責任がある。

 

「――お力になれるかは分かりませんが……その、お話だけでもお聞きいたしましょうか?」

 

「……言いたくないわ」

 

 そうですか、では私はこれで――

 と言いたくなる気持ちをファースはぐっと抑えた。

 

「それでは、()()()()などはどうでしょう? 『辛い時こそ、前を向いて楽しもう! 具体的にはエロゲとか!』――とペロロンチーノ様も仰っていましたよ」

 

 ファースが、シャルティアの造物主であるペロロンチーノ様の名前を口にすると、シャルティアの真紅の眼が鋭くファースを捉えた。

 至高の御身を話の引き合いに出してしまったようで、少し申し訳ない気持ちになるが、効果は充分なようでシャルティアの瞳にほんのりと力強さが戻った。

 

「それは本当かしら? ペロロンチーノ様が、そのような事を?」

 

「はい、しかとこの耳でお聞きしました」

 

 至高の御身であるペロロンチーノ様は、()()()()()()()()()()()()

 しかしお話好きなのか、よく喫煙所に顔を出しては他の至高の御方々と会話を楽しんでおられた。

 

「――そう、ペロロンチーノ様が……ところで、えろげ……というのは何かしら?」

 

「申し訳ありません、私もそこまでは……ただ、さっきのお言葉の後に『良かったらオススメの貸しますよ!』とも仰られていたので、物品のようなモノだとは思うのですが――」

 

 至高の御方々のお話は、ファースには完全に理解する事が出来ないものが多かった。

 

「……待って、えろげ――確か『ぶくぶく茶釜様』のご職業に関係するものだった筈ね……」

 

 するとシャルティアが思い出したかのように言った。

 それにより、ファースも新たな事を思い出した。

 

「ぶくぶく茶釜様の……? もしかして、()()()()なるものでしょうか?」

 

「あら、貴女も知ってるの?」

 

 シャルティアが同志を見つけたかのような、そんな期待の眼差しでファースを見つめる。

 

「えぇ、詳しくは知らないのですが……」

 

「なら特別にわたしが教えるわ――せいゆうは、声を吹き込むことで魂を与える仕事……つまり生命創造系のご職業の事よ」

 

 シャルティアが自慢気にファースにそう語る。

 ――どうやら、少しだけ元気を取り戻されたようだ。

 

「成る程……つまり()()()なるものは、ぶくぶく茶釜様がご創造され、ペロロンチーノ様がそれを広める事で、周りを楽しませる事ができる物品――いえ、生命ということですね」

 

「それってペット……という事かしら?」

 

 確かに、とファースも納得する。

 周りを楽しませる、つまり癒しを与える生命――それすなわちペット。

 ペットというなら貸し借りもできる。

 ――どうやら、全てが繋がったようだ。

 

「「()()()()()()()!」」

 

 2人の嬉しそうな声が重なる。

 

「――ありがとうございます。長年のつっかえが取れた気がします」

 

「それはわたしの方もよ」

 

 至高の御方々の言葉を理解する――

 それはナザリックに仕える者にとって、これ以上ない喜びでもある。

 こうして誰かと力を――知恵を合わせて、パズルのようにはめ合わせていく快感は何事にも代えられない喜びだ。

 

「貴女、名前は?」

 

 顔に少しだけ笑顔が戻ったシャルティアが立ち上がり、名前を訊ねる。

 

「ファースと申します、シャルティア・ブラッドフォールン様」

 

 ファースも立ち上がり、メイドとして改めて挨拶をした。

 

 

 

 

 




はぇー、エロゲってペットだったんだ……
落ち込んでるシャルティア様は廓言葉あんまり喋らないから楽やな!(怠惰
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