俺の嫁がタイトルだった件 作:被害者はトール
「あぁぁ…………頭が割れそう」
「うぅぅ……まさか、この私が人間ごときに不覚を取るとは……」
え?それからどうなったかって?
それは勿論ボクの圧勝……て言いたい所だけど、決着つかずの引き分けって所かな。
ドラゴンなんて規格外の存在とまともにやりやったら周囲にどれぐらいの被害が広がるのか見当もつかないし、開始早々、領域展開したボクの脳ミソが焼き切れるのが先か、あっちが根を上げるのが先か、みたいな耐久戦が始まって、結局このドラゴンが襲おうとしていた男二人組がボクの嫁の家に空き巣に入ろうとしていた泥棒さんで、彼女はただ追い払おうとしていただけだと判明したので両者共に剣を納めたって感じ。
「あー、ドラゴン。取り敢えずボクと嫁ちゃんの愛の巣を守ってくれてありがとうな」
「誰が貴様のような野蛮な人間の為に頑張るものですか!」
取り敢えず今は小林の家で向かい合ってお互いの立場をはっきりさせるべく真剣?なお話し中だ。
「何だよ、悪かったってさっき謝っただろ。第一嫁ちゃんの家からいきなりドラゴンが出てきて、冷静でいろって言うのが無茶な話だし」
「さっきから小林さんを"嫁ちゃん"って言うのは止めろ!
……忌々しいことに貴様が小林さんの
どうやらこのドラゴンにはかなり嫌われてしまったらしい。
ムキーと牙を剥き出しにして怒りを露にしている。と言ってもさっきのドラゴン状態なら兎も角、今の姿はどっからどう見ても可愛らしい女の子なので迫力には欠けた。
「それよりもさ。お前って嫁ちゃ……小林が雇ったメイドなんだろ?」
「えぇ、まぁ……」
「茶」
「は?」
「だからほら、茶。ハイハイ!なるべく急いで丁寧に注いでこようね!」
「八つ裂きにしてやろうか貴様!!!」
煽り立てると、面白いぐらい簡単に乗ってきた。
今までドラゴンは思慮深いイメージだったけど、意外と沸点は低いのかもしれない。
「まぁ……それは冗談として」
「冗談って……」
「お前、いつまでここに居る訳?」
「っ…………」
彼女の話からして彼女がここに居座ることになったのは小林が原因だそうだから一方的に出ていけなんて言うつもりはない。が、聞くに彼女は神様と敵対してーとか、終焉帝の娘ー、などなど色々と厄介な爆弾をお抱えらしい。
ボクみたいな最強なら兎も角、そういった輩が一般人である小林に手を出さないという保証はなく、例えボクとこのドラゴン二人で小林を全力で守ったとしても完璧にそれらから守り切れる確証は出来ない。
「異世界の住人に手出しは出来ないなんて言っても、実際の効力なんてたかが知れてるんだろ?小林は優しいからさ、あえて聞かなかったのかもしれないけど、お前が小林の側にいる限り、小林に命の危険があるなら俺は、例えあの子に本気で嫌われることになってもお前を追い出すよ」
ウソ。さっきも言ったが一方的に出ていけなんて言うつもりはない。
かもしれないなんてタラレバは言い出したらキリがないし、それを言うなら呪いとか幽霊を相手にしているボクの立場がない。
でもこれから長い付き合いになるかもしれない相手だし、適当な言葉で流されても欲しくないから敢えて強い言葉を使った。
「……私は、小林さんの事を本気で愛しています。だからあの方の命が尽きるまで一生側に居させて貰いたいと思っています。それを傲慢だとか迷惑だとか、貴方からすればその感情は妥当だと思いますし、私自身、終焉帝の娘の側にいると言うことがどれだけ危険なことか知っていながら小林さんの優しさに甘えてしまっている自覚があります」
だから一度は退こうとした。
だけど彼女ー小林さんは私の手を取ってくれた。
ここに居たいと思った理由なんて、それだけだ。自分に資格がないのは分かっているが、この想いにウソはつけないと、若干涙を滲ませながら彼女は言う。
「…………アイツ、マジで生まれる性別間違えてんだよな」
「は?」
「いや、こっちの話。……えっと、うん。正直そこまで激重だとは思ってなかったけどお父さん、君の本気の思いはちゃんと理解出来たし、いいんじゃないかと思うよ」
「そう、ですか。……お父さん?」
自他共に認める顔面イケメンのボクだが、内面のイケメン度で言えば小林のあれはハーレム主人公になれる度量を持っている。
それを数年振りに体感したせいか、何か急に力が抜けた。
「何か随分話し込んじゃったね。ジュース飲む?」
「いえ、これでもメイドですから。私が注いできましょうか?」
「あら、もしかしてさっきの根に持ってる?ドラゴンってのはちっちゃい事に一々反応する種族なわけ?」
「どうしましょう…………この人間と生活することになれば、ふとした瞬間に殺してしまうかもしれません。今からでもファフニールさんに破談の呪いでもお願いしてみましょうか?」
あとからボクと彼女の仲を見て小林から言われたんだけど、まさに水と油って感じらしい。
あと小林から改めて彼女の説明を受ける中で当然ボクの力についても言及はあったが、現代を生きる最強陰陽師なんだと言ったら素直に納得してくれた。
ほんと、ボクの嫁って漫画の主人公みたいに器がでかい。