俺の嫁がタイトルだった件 作:被害者はトール
『でも、一つだけ言っておかないといけない事がある。私……いつになるか分からないけど、将来を誓い合った人がいるの』
今までの竜生、負けたことがないと言えばウソになる。
ファフニールさん、ルコアさん、父……そして忌まわしき神々。あの世界で私は上位に位置する存在であったが、そんな私を鼻で笑うような存在はゴロゴロといた。
認めたくはないが、その中には何よりも脆弱な筈の人間だっていた。
だから、この世界で五条悟に出会った時。
一戦交えて、この男が私と同等か、もしかしたら私よりも強いかもしれないと悟っても受けた衝撃は驚くほど少なかった。
こんな平和ボケした世界でも、やはり強者という者はいるんだな……とその強さには敬意すら抱いていたかもしれない。
「お、おおおおお前が小林さんの婚約者!!?」
小林さんの婚約者であると知った時は流石に驚いたが、この強さなら小林さんを……と認める気持ちはまだあった。
「へぇ、小林のメイドをやってるドラゴンか……いるんだ、ドラゴン」
「まだメイドになってから日は浅いですけどね」
「でもさ。こんな"THEドラゴン"みたいな見た目でメイドとか出来んの?ボクとしてはキミが小林の家に入って、家が崩壊していなかった事が不思議でならないんだけど」
「あぁ、それなら……普段はこの姿をとっているので」
私が決定的にこの男を気に入らないと思ったのはこの一言。
「おっぱいデカぁ……揉んでいい?」
どうにかして小林さんを悲しませずにこの男を殺せないか。その時は真剣に頭を働かせた。
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「で、何で着いてきてるの?」
「悪いですか?」
「いや、別に悪くはないけど……なに、ボクに惚れた?ダメだよ~ボクには小林という心に決めた人がいるんだから」
「…………ふぅ。それで?貴方の仕事を見物しに来たはいいですが、こんな何もない場所で何をするんですか?」
「ちぇ、つまんないの」
小林さんと五条悟が夫婦となってから一週間。
当初はサトルが小林さんの家に引っ越すのだと思っていましたが、長期の仕事があるとのことで、暫くはこれまで通り別々に暮らすのだそう。
私としてはこの男と同じ空気を一秒だって吸いたくないため、ホッと胸を撫で下ろす思いであったが、今回はあくまで自分からこの男の仕事について知る為に付いてきた。
「……まぁいいか。先に言っておくけど多分一瞬で終わるから興味があるなら目を離さない事をおすすめするよ」
じゃあ帳を下ろすね。
―闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え―
と簡易的な結界を展開する五条悟。
「人避けの結界ですか……」
こんな森の奥地でわざわざそんな物をする必要はないように思えたが、この男の事だ。カッコつける為にやっているのだろうと……トールは辺りをつける。
実際それは間違っておらず、指摘されていたら普通に赤面していたであろうから五条はある意味助かった。
「所でさ。ドラゴンはこっちの怪談とか詳しかったりする?」
「かいだん……?」
「あぁ、やっぱり知らないか。……しまったなぁ。事前に呪怨とかリングだけでも見せてくればよかった」
「―――ッゥ!おい、何か来るぞ」
呑気な会話の最中、自分やサトルほどではないにしろ、強力な魔力の塊が接近してくるのを感じてトールは警戒の声を上げる。
「いや、今回のことを考えると……そういやアイツってどんな作品が有名だっけ?」
「おい!前を見ろ!お前に一直線に向かってるぞ!」
それは下半身のない、何とも不気味な女であった。
細長い手を動かし、高速で移動してくる……脅威ではないが雑魚でもない。自分でさえ油断していたらそれなりにダメージを通してくるような面倒な相手だ。
だと言うのに、この男はッ!
「もういい!私がやるからお前は退いてろ!」
トールは右手を竜の物にして構える。
こんなやつを庇ってやるのは業腹だが、こんな所で死なれても目覚めが悪い。どうせ死ぬなら小林さんから愛想尽かされてから勝手に死んでろっ――と翼を広げて大きく飛び出す。
そして変化した腕を振りかぶり異形を一閃する。
「……なっ!」
も、異形はすり抜けて五条の元へと走り抜けた。
実体があるように見えたが、あれは魔力を纏って攻撃しなければ通り抜けるタイプであった。トールが不味いと思って方向転換するも、間に合うわけもなく。
「死んでろ」
五条悟は事もなげにそいつを蹴り飛ばし、消滅させてみせた。
「…………ねぇ、今。俺殺されちゃうと思った?実は油断してるふりでした!なんちゃって~!」
あぁもうこいつ、殺していいかな。トールは何度目か分からない殺意を覚えた。
ちなみに今回の敵はテケテケ。