最強竜人少女が仕掛けられた罠と策略を暴力でぶち破っていくだけの話 作:こんぺいとー
にこやかな笑みの浮かぶ会談であった。
豪奢な長机に座るのは、たった二人。王冠を被った威厳ある風貌の初老の人間と、その真っ正面に立つのは変哲もない一人の少女。
いや、変哲もないは語弊があろう。なにせ、彼女の側頭部には薄い青色の角が生えていたからだ。
長い長い蒼い髪に、緋色の瞳。それを一際映えさせるように、その一対の角は悠々と存在していた。
そう。これは『人』と、人に『亜人』と呼ばれる者達の和睦の場である。周りにずらりと交互に並ぶのは、それぞれが人と亜人の精鋭達。
常ならば、顔を合わせれば殺し殺されの彼ら彼女らは、欠片も狼狽えることなく精悍な顔立ちで目の前の歴史的出来事を捉えていた。
方は人界屈指の大国、レゾレルド王国を治める《凡王》ギーリ王。方は『亜人連合』──人族はそう呼ぶ──の統括者、《竜姫》メルラテール。
両者は互いに柔やかに微笑み合うと、真ん中に置かれた書類にまずギーリ王が手を付ける。
サラサラと流れるようにサインがされ、そしてそれはメルラテールの手元に渡った。
そして、メルラテールが一拍置いて、躊躇う事なくそれに筆を走らせる。
それで終わるはずであった。人界で列強に数えられる大国と、面積にして世界の7割を席巻する亜人連合が手を組めば、これまで戦線を保っていた《帝国》や《教国》も折れるしかなくなる。
そして、長きに渡る人と亜人の戦争はこの場を持って実質的に終結し、これからは平穏な日々が待っている──。
しかし、名を書き終わった瞬間、ドクン、と鼓動が高鳴ると共に、メルラテールは違和感に囚われた。
なにかがおかしい。重い。体が、意思が。まるで、自身のそれがそうではないような──
サクリ、と。
「──はて」
メルラテールの大して厚くはない胸から、蒼い刃が生えていた。勿論、と言うか流石に。
そんなものが突然生えるほど《竜人》は奇特な生態ではない。いや、変異種はいるから一概にはそうと言い切れないが、少なくともメルラテールはそんなびっくり竜人ではない。
故に、メルラテールは一瞬、呆然としたように目をパチパチと瞬くと、小首を傾げ後ろへ目を向けた。
「……はて、何故でしょうか、伯父上?」
ニコニコと笑むギーリ王。欠片も動揺しない壁際の兵達。
なんとなしに状況を理解出来るそれを傍目に、メルラテールは真後ろへ立つ壮年の外見をした伯父──ガスドへと問いかける。
それに、赤い髪と、それとまったく同じ色を滲ませた瞳を滾らせる竜人は淡々と、ただ事実を述べるかのように答えた。
「決まっておろう。貴様を殺す為だ。忌々しき最強の《龍人》──メルラテールよ」
戦闘シーンは3話からの予定です。