プラモが光った。女の子になった。 作:ベースマテリアル
※BLEACHアニメ開始は2004年、つまりは18年前―――なん…だと…
――〇月△日 天気晴(夜)
プラモを触っていたら突然光った。
いきなりのことだったので慌てて手を放してしまった。
落とした轟雷は無事だった。アルティメットニッパーは刃が欠けた。
あまりに突然の事だったので冷静になる為にこうして日記を付ける。
こうして日記帳を開くなんて何年ぶりになるだろう?小学生の頃以来か?
落ち着いて、状況と自身の心の整理をするように綴ることにする。
事の顛末は確かこんな感じだった。
いつものようにコトブキヤのM.S.G(モデリングサポートグッズ)の組んでいた時だった。今回はいつも通っている中古のプラモデルショップで見かけた【MW-07 ダブル・サブマシンガン】が完成し、折角だからFA(フレームアームズ)ではなくFA:G(フレームアームズ・ガール)に持たせようと棚を眺めていた。
パッと目についたのはFA:Gの【轟雷】。記念すべきFA:G第1作のプラモデルにして、俺自身も初めて作ったFA:G、いつもは付属のフリースタイル・バズーカを携えたこの子に、作ったばかりのサブマシンガンを持たせようと轟雷を手に取ろうとした瞬間だった。
ボワッ!
バチッ!
みたいな擬音が付きそうな薄緑の光が、轟雷を手にした俺の手の周辺にいきなり現れた。
驚きのあまり思わず身体が大きくよろけ、力が抜けた手から轟雷が宙に舞った。
俺は机に後頭部をぶつけ、その痛みで頭を抱えた。直後に2つの何かが落ちる音が聞こえた。
1つは轟雷が俺の部屋のフローリングに落ちる音。目視できる場所に落ちてくれたお陰ですぐに状態を確認できた。バズーカを保持していた手首、それと右肩のキャノンの頭のヘッドギアがポロリしていたが、特に損傷はなく、ホッとした。
もう1つは俺が頭をぶつけた机の近く、というか直下。轟雷から振り返って見てみるとそこには慣れ親しんだ青い握り手の1本のニッパー。しかも今回に限って保護カバーから外れていたそれ。
ええ、盛大に欠けてました、愛用のアルティメットニッパー君。
正直謎の発光現象よりもこっちのがショックなので今日はもう寝ることにする。
かなり丁寧に手入れをして使い続けていただけに本当にショックだった。
◎追記
元を辿ればこれが始まりだったのに碌な事書いてないな俺。
――〇月□日 天気曇(夕)
よく分からないけどよく分からなかった(小並感)
冗談は兎も角、昨日の今日で何かがおかしくなったように感じた。
今日の朝、登校の道のりが妙に騒がしいというか、何かに見られている、何かが周囲をうろついているかのような気がしてならなかった。
気味が悪い1日だった。普段なら今日も友達と一緒に遊んでから帰るつもりだったが、俺の周囲に蔓延るかのような悪寒に耐えず、今日は逃げるようにして帰った。
部屋に戻り、鞄を置き、ベッドに身を放り投げて深呼吸する。それでやっと落ち着いた。
ふと、昨日の夜の事を思い出す。轟雷を手にした瞬間に生じた謎の薄緑の光。きっと何かの見間違いか何かだったのだろうと考えていたそれがどうしても脳裏から離れず、気づけば俺は再び棚の前に立っていた。
俺が今まで作ってきたプラモデルの数々。ふと、FAの方の【三二式一型 轟雷】を手に取った。
何も無い。ちょっとポージングを変えたり、覗き込んだりもしたが特に反応無し。
続いては【SX-25 カトラス】。ショートライフルとダガーが気に入っているこの機体も手に取ってみたが同じく反応無し。そのまま続けてFAのプラモデルを次々と手に取り、色々と弄ったり動かしたりしたが、何にも無かった。
その結果を受けて、額に冷や汗が浮かぶのを感じながら俺はFAからFA:Gへ手の先を変えた。
まずは昨晩と同じく轟雷を手に取る。手にした瞬間は特に無し、やっぱり昨日は何かの見間違いか気が動転していたかと思った時だった。
ボゥ…
みたいな感じの薄緑の光の玉らしき物体が、轟雷を手にした俺の手の周囲に浮かんだ。
今度は一瞬じゃなく、多分1~2秒くらい?の時間、ハッキリと目に見えて確認できた。
覚悟していたか、それとも心のどこかでそんな気はしていたのか、今日は轟雷を落とすことはなく、光の玉が出ている間は轟雷を持ち続け、消えてから元に戻した。
ここで一度深呼吸した。落ち着こう、冷静に、これは夢でも幻でもないと平静を整えながら。
次に手にしたのは【バーゼラルド】。金髪で快活な表情がチャームポイントなキット。それを手に取ると再び轟雷と同じように光の玉が生じた。落ち着いた筈だったのだが、この時点で俺の心臓はバクバクでいっぱいいっぱいだった。
その後の結果も轟雷と同じくほんの数秒で光は消えた。バーゼラルドは元に戻し、今度は【スティレット】、結果は前者の2作と同様、続いて【アーキテクト】、こちらも同様、続いて【迅雷(黒)】、これも同じ、続いて……
結果、飾っていたFA:G全てで謎の光の玉が生じる現象が発生した。
正直言ってこうして今日記を綴っているのも辛いくらいには動揺している。
一体何がどうなっているんだ。
今日はもう休む。幸い明日は休み、もう少し調べてみる。
――〇月▽日 天気『記入無』
一体何がどうなっているんだ。
――〇月◇日 天気雨
昨日は取り乱した。というか日記どころの話ではなかった。
結論から書く。いや書きたくない、けど書かないといけないから書く。
俺、一瞬だけスティレットになりました(CV:綾瀬 有)
順を追って書く。
昨日は一昨日と同じく色々なFAGを手にして謎の発光現象の発生条件、原理、構造を理解しようとひたすらFAGを手にし続けた。切っ掛けだった轟雷は勿論、轟雷改やコトブキヤショップ限定バージョンの成形色違いのキットだったり、バーゼラルドも各種バージョン違い、装備違い等など、兎に角手にしては光の玉が出るのを確認して、消えてはまた別のキットを手にしてを繰り返していた。
そしてそれは正に唐突だった。
手にしていたのはアニメ【フレームアームズ・ガール】の2巻に付属していたキット【アニメ版スティレット・素体(非装甲状態)】を手に取った瞬間だった。
普通ならほんの数秒。キットを手にしている周囲にしか発生しない薄緑の光の玉が何故か3秒、4秒、5秒と残り続け、10秒を超えても消えないどころか寧ろ煌めきが徐々に強くなりながら俺の手、正確には手にしていたスティレットに収束していき、キット全体を覆ったかと思った瞬間、スティレットから光の奔流?が凄まじい勢いで溢れ出し、突然のことに俺は思わず防衛本能で目を固く閉じ、歯を食いしばった。
目を開けると、広がっていたのは俺の部屋。光の奔流が生じる前と何も変わっていなかった。
そしてすぐに違和感に気が付いた。手にしていた筈のスティレットの感覚が無く、手の中が虚空になっている。そしてそれを確認するために目にした俺の手が【俺の手よりも遥かに小さく、女性というより少女のような幼い感じの黒い手】になっていることが目に入った。
「は…はぁ!?」
声を上げると【俺本来の声色よりも遥かに高く女性…というか少女的な声色】になっており、ますます俺は混乱した。そんな状態で視線を下げればどうなるか、書き綴っている今はマシだが、昨日はマジで酷かった。
首元、胸上、肩に柔らかそうな肌色が露出。胸…胸部?に青色のチェストプレート?のような装甲、灰色の腹部周りに黒のスカート、ハイソックスのように腿の中間まで黒くなった両足、両腕は肘から先が黒となっており、視線にチラチラと鬱陶しく映り込んでくる薄水色の髪の毛、それがロングツインテールで頭部後方で纏められているのであろう感覚が否が応でも伝わってくる感触。
部屋に据え付けていた姿見を見る。
ペタリと、お手本のような女の子座りになっている【スティレット(アニメ版・非武装)】
困惑している俺と同じく困惑した表情を浮かべている彼女が鏡に映っていた。
取り合えず俺は鏡に向かって手を振る。鏡に映るスティレットも手を振った。
首を動かす。スティレットも首を動かした。口を開ける。スティレットも口を開けた。
「俺?」と発せばCV:綾瀬 有の声でその言葉が発せられた。ツンデレボイス良いよね…良い。
俺、ツインテール(スティレット)になります?というかなった?
そう思ったかと思えば、俺の身体から一瞬だけ眩い薄緑の光が生じ、気が付いたら元に戻っていた。姿恰好は元通り、手には消えていたスティレットのキットが握られていた。
思い出しながら書いたから疲れた。
要は何か色々とやってたらスティレットになった、以上!
……もう嫌だ。一体何がどうなっているんだよ。
・
某所の某学校に通う高校1年生。この年齢でコトブキヤのプラモデルをこよなく愛し、キット化されたFA、FA:Gは全て網羅しているキチ〇イ青年。そんな資金は一体どこから出ているんだ?
FAで1番好きな機体は【SX-25 カトラス】、FA:Gは【フレームアームズ・ガール 轟雷改 Ver.2】という王道なのかニッチなのか不明な奴。