プラモが光った。女の子になった。   作:ベースマテリアル

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【要 九門】のネタ帳 1ページ目

――〇月§日

 

 紅君が師匠の所にやってきた。

 聞くと昨晩、完現術を発現させて虚を2体も討伐したらしい。初戦で2体も撃破なんて大戦果じゃないですか紅君!初めて僕に虚のことだったり完現術(あの時は仮定だったけど)のことを相談してから大した日にちが経ってないっていうのに、やっぱり僕達完現術者は虚とは避けられない定めみたいですね…

 

 それはそうと、僕が師匠の所に、そして僕も完現術者だったことに紅君はかなり驚いていたようで、僕を見た途端「お前っ!?てことは全部知ってたなっ!」なんてありきたりな台詞まで言ってくれました。今思い返せばそれに「じゃんじゃじゃ~ん!今明かされる(ry」て返せばよかったかなぁ~…

 

 で、態々師匠が僕を呼ぶ。それも虚と戦った後ということは間違いなく僕の完現術【ターゲット・イン・サイト】を使った紅君の完現術の状態と、今の彼の霊的状態の調査だろうということで早速僕愛用の虫眼鏡である完現術の媒体を取り出して完現術を発動。そしたら中々に興味深いことを僕の完現術は解析してくれた。

 

 

 

 ・身体能力はそこそこ(中の上レベル)で、もうちょっと鍛える必要あり

 ・霊力は発現済み。霊圧はまだ低いが、今後次第で向上可能

 ・完現術は覚醒済み。しかし不十分な覚醒で、完全な制御と覚醒には至っていない

 ・完現術の負荷により身体及び魂魄に負荷が掛かっている状態にある

 ・【纏衣(クラッド)】タイプ(現時点(・・・))の完現術、詳細特性は不明

 ・発動条件及び媒体は【フレームアームズ・ガール】と呼称されるプラモデルキット

 

 

 

 師匠から聞いてはいたがこれは中々…と紅君の前で意味深そうにに頷いてしまった。

 

 まず身体能力と霊圧。これは伸びしろがあるというだけで十分、というかまず普通の人間は霊圧というか霊力を鍛えられない。生身の身体だからというのが最大の原因であり、僕達完現術者のような霊的な能力を持つ者達でもそう簡単に霊圧をあげるなんてことは出来ないのが一般的だ。現に僕も霊圧はほぼ打ち止め状態で、師匠に至っては年老いて徐々に下がっていく霊圧を日々の鍛錬で維持しているのが恐ろしいくらいには霊圧の向上というのは難しいのだ。

 

 次に本題の紅君の完現術。僕もフレームアームズ・ガールというかプラモデル全般は門外漢なので詳しくないが、紅君が完現術を発動して唐突にメカメカした女の子になったときは驚きよりも先に吹き出してしまうかとところだった。紅君にまさかの女装趣味!しかもメカフェチ!クラスの皆が知ったらバカ受け間違いなしですよ!

 閑話休題、そんな紅君の完現術の状態は上記の通り。発動こそ出来ているものの、完現術本体が未成熟な覚醒状態、その所為で身体や魂魄への負担が激しく、実際今日は僅か1、2秒で完現術が解け、その場にへたり込んでしまった。まあ、ただでさえ負荷が高いとされる纏衣と思われる(・・・・・・・)完現術ならそうなるよね。

 

 

 

 

 

 …そう、【纏衣と思われる(・・・・・・・)完現術】だ。

 

 僕の完現術の【ターゲット・イン・サイト】は構えたサイトかスコープの中に捉えた対象の情報、状況、状態といった、ありとあらゆる事柄を僕に教えてくれる。但し条件として、僕の能力よりも格上だった場合は制約が掛かり、得られる情報が限られる若しくは推測のものとなる。

 そして、紅君の解析結果には【思われる】という単語、即ち早速制約が発生しているということになる。つまりこの時点で紅君は能力的に僕を上回っており、不完全な完現術でありながら僕より格上という存在ということになる。

 

 僕自身、そういったことに拘りというかプライドはあまり無い。こうして完現術者になったのも僕が完現術覚醒初期に師匠に偶然出会ったのが切っ掛け。この町の虚討伐を率先して行っているのは遠巻きな自衛目的のため。力そのものへの誇りや他人との強弱はあまり気にしていない。(実際今も師匠には敵わないし)

 

 けど、不完全状態で僕より格上というのは別の意味で厄介極まりないとは感じた。師匠も言っていたが【完現術の暴走】がもし仮に起きた場合、僕では紅君を【殺す】ことが難しいということになる。聞けばSF作品も真っ青な規格外の武器をその身に実体化させてぶっ放したとのこと。もしこれが力のままに暴走なんてすれば僕では太刀打ちも出来ないだろう。そういう意味では、困ったなぁ…と感じてしまった。

 

 ともあれ、これらも全て仮定の話。これから紅君は僕と師匠の管轄の下、完現術者として訓練に励んでもらう。力を扱える人材は貴重だし、ここ最近の虚の出没頻度を見るにこっちも嫌な予感を感じているから、一刻でも早く完現術者になってもらわなければ。

 

 

 

 

 

◎追記

 

 この日の僕の態度が悪かったのか翌日の数学の小テストの必勝メモは没収された…おのれ紅!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――〇月Ξ日

 

 紅君の訓練は順調だ。総見の爺さんが考案し、僕が今現在の紅君に合わせてレベルを調節した訓練メニューを彼に渡した。

 最初こそ「いきなり要求レベルが高過ぎるわっ!」と喚いていたが、そこは有無を言わさずにやってもらう。実際僕の時も有無言わせてもらえなかったし、何なら仕置きと称して物理で殴りかかってこない分師匠より大分温情だと思う。

 

 そんなこんなでかれこれ1週間、前述したように紅君の訓練は順調。完現術は相変わらず不完全状態だけど、ある程度の制御は可能になったようで最大で2分くらいなら発動可能、戦闘だと1分弱くらいまで持続時間が伸びた。そして、完現術非発動状態での完現術――つまりは周囲の物体を使用した完現術者の戦闘術の習得状況も悪くない。先日は初めて道場の木目板を使用した高速移動に加え、僅かながら空中歩行までやって見せた。

 

結果が出るまでがかなり早い。僕よりもずっと完現術者の才能は高いのはこの1週間でほぼ確定した。とすれば一体何が原因で完現術が不完全状態なのか、その問題が最大のネックだ。

 今も原因の解明に努めてはいるがこれといった成果は無し。もう少し気長に進めていくほかにないみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――◇月α日

 

 月が変わってからどうにも虚の出現数が多くなっている。どれも小さな個体ではあったが今日だけで3体、しかも夕頃というまだ人気が多い時間帯での出没…嫌な予感がする。ここ暫くは虚の動きにも注意しておいた方が良いのかもしれない。

 

 それはそうと、今日の紅君との訓練で漸く彼の完現術が未だに不完全な状態なのかピン!と閃いた。今まで感じていた違和感、完現術者としては覚醒しているが完現術が不完全なその理由…

 

 

 

【本来の媒体を使用せずに固有の完現術を発動している】

 

 

 

 僕の完現術である【ターゲット・イン・サイト】でも今尚詳細は解析できないので推測になるが、恐らくはこれで間違いないだろう。

 紅君の完現術はフレームアームズ・ガールというプラモデルキットを媒体に、自身の姿をそのキットの姿へと変貌させる。その際、キット付属の装備は自身の霊圧が保てる範囲であれば何度でも生成することが出来るが、逆にキット付属以外の装備は生成することが出来ないという制約が存在する。僕の【虫眼鏡】や師匠の【竹刀】ような、唯一の存在で完現術を発動するのに対し、紅君は【フレームアームズ・ガールというジャンルのキット】であればどの媒体(・・・・)でも完現術を発動することが出来る稀有な例だ。そして恐らくはそこに鍵があると僕は考えた。

 

 完現術は本来、愛着のある物やこだわりのある物を媒体に完現術を発動する。けど紅君の場合は能力の発動条件から逆算する形でフレームアームズ・ガールを媒体に完現術を発動している…つまり、完現術の発動自体は紅君が意識的に引き出す形で出来ているが、肝心の媒体が完現術を発動する程の固有の魂を有していない状態だと考えられる。

 

 ともすればやることは1つ、【完現術を発動する前提の媒体を作り出す】のが手っ取り早い。完現術の発動と制御はここ2週間と少しである程度形にはなった。ならば後は完現術を完全なものとすれば、紅君は完現術者として完成するだろう。

 そういう訳でその旨を紅君に伝えた。何かショックだったのか手にしていたキットを落としていたが、多分だけどこの読みは当たっていると思う。例の虚の動きの前に、紅君の完現術が完成すれば良いのだけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――◇月γ日

 

 不味い、非常にマズい

 虚同士の共食い(・・・・・・・)を目撃してしまった。

 しかも目撃した時点で互いに巨大虚クラス、共食いの最中に虚空の中へと両者共に姿を消してしまったがこれは非常に不味い事態だ。

 

 虚の共食い現象。それは虚の成長を意味し、より強大で凶暴な虚――【大虚(メノスグランテ)】へと変貌する合図にも等しい。

 そしてそれが観測出来たということは、遠くない未来にその大虚がこの町に来るかもしれないということだ。

 

 紅君との訓練もあるが、暫くは虚の討伐に注力した方が良いかもしれない。少しでもヤツが喰らう虚の数を少なくしておいて損は無い筈だ。

 無論師匠にも話は通す。これは厄介なことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――◇月Δ日

 

 紅君の様子が可笑しい。

 

 ここ暫くは虚討伐に注力していた所為で彼との模擬戦は久しぶりだったのだが、明らかに紅君の戦闘スタイル…というか、文字通り様子そのものが変わっていた状態であった。

 

 まずは完現術者としての戦闘術。周囲の物体を使用しての高速移動や身体能力の補助といった完現術者としての基礎戦闘技術がいつの間にか上達、というか完全に習得する一歩手前まで到達していた。

 信じられない成長速度だ。師匠曰く時折夜に虚との実践訓練も交えているとはいえ、訓練を始めてから一月と少しでこれは明らかに成長速度が早過ぎる。以前紅君のことは完現術者としては僕よりも高ポテンシャルを秘めているとは言ったが、ここまでとは想定外だった。それでも完全習得に至っていないのは、やはり彼固有の完現術が依然として不完全状態だからだろう。

 

 そしてその固有の完現術を用いた戦闘。これも目を見張るというか、又しても信じられないレベルで急速に腕を上げていた。結果だけで言えば今日の訓練は全て引き分け、それも紅君の完現術の持続可能時間が切れてしまったことが原因――つまり、戦い自体は終始彼に押され続けていた。

 

 完現術は全力戦闘で1分。これは変わっていないが体力と霊力が向上したのか、強制解除後の疲労も以前よりずっと少なく、【ターゲット・イン・サイト】で視た限りだと最大で3回までなら間を置かずに連続展開、つまり最大3分間は連続戦闘が可能になったということだ。

 

 そしてここからが一番の問題というが疑問点――紅君の人格が【完現術を発動するプラモデルキットごとに変貌している】兆候が見受けられた。というより解析の結果間違いないと判明した。

 真面目で誠実な表情のキットであれば、性格や仕草もそんな感じへと変わり、そして戦闘スタイルも変化していた。今日だと一番差が大きかったのは【アーキテクト】と【バーゼラルド】という2体のフレームアームズ・ガールを使用した時が一番差が激しかった。

 

 前者【アーキテクト】の場合、時間制限があるにも関わらず無言でじっと僕を観察するように様子見。僕が僅かでも動いたかと思えばその動きの先を行くように高速移動で回り込み、一瞬だけ巨大な腕型の武装を展開して殴りかかるといった、終始寡黙で冷静沈着な戦闘スタイルで僕の動きを封じ込んだ。

 後者【バーゼラルド】の場合、始まったと思えば一気にその身に搭載した武装を全て展開。サブアームに懸架されている【スラストアーマー】という自立型兵装2基とそこに装着された【セグメントライフル】が2丁ずつの計4門、更に両手に同じライフルの2門に加えてサブアーム1基ずつの内蔵火器、全て合わせると計8門の火器を満面の笑顔で「フルバーストッ!」と叫びながら即ぶっ放すというトンデモをやってきた。なお、それで霊圧が尽きたのか紅君はぐるぐる目になってその場に倒れこんだ。

 

 

 

 あまりに違いが過ぎる。戦闘スタイルどころかこれはもう人格そのもの、所謂別人格へと変化しているといって差し支えないほどの変貌さだ。けれども【ターゲット・イン・サイト】では解析を試みようにも情報が引き出せず、何とか手に入れたのは【紅君は完現術の本来の使い方に気づき始めている】という情報…本来の使い方(・・・・・・)?【本来の媒体】ではなく【本来の使い方(・・・・・・)】とは、一体どういうことなのだろうか?

 師匠とも相談したが、結局分からずじまい。先日、紅君が現在制作しているという【完現術前提のフレームアームズ・ガール】の制作光景を僕の完現術で視た際も碌に情報が得られなかったので、これはいよいよもって紅君の完現術が可笑しくなっている可能性が高い。

 

 【完現術の暴走】……考えたくはないが、自我は保っているとはいえあれだけ精神状態がコロコロと毎回変化するのは霊的にも危険だ。何せ下手をすれば完現術を使う度に紅君自身の魂魄に何らかの影響、最悪は浸食が起きている可能性だってある。それがこんな短期間で進行しているともあれば、いつ暴走が起きても不思議ではない。

 

 ここまでやっておいてあれだが、此処が分水嶺なのかもしれない。紅君の完現術の訓練を止めるか、それともこのまま進めて完成させるか。もし仮に、彼の完現術の完成事態が完現術の暴走の引き金となる場合、これが最も最悪なパターンで、師匠と僕で紅君を殺さなければならない。かといって今さら訓練を止めたからといって、既に魂魄が汚染されているとした場合、その浸食が徐々に進んでいく可能性だってある。そうなれば結局は……

 

 件の大虚のこともあるのにここに来て紅君の完現術に警戒しなければならないなんて、やっぱり完現術者という存在は色々な意味で忌み嫌われる存在なのかなぁと改めて感じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――◇月θ日

 

 大虚、【最下級大虚(ギリアン)】の出現を今しがた確認した。

 至急師匠へ連絡。紅君にも伝え、可能な限り発動可能なキットを持ってくるように伝えた。確か以前から進めていた【完現術前提のガール】も完成間近のようで、申し訳ないがそっちも持ってくるよう連絡を飛ばした。

 遠距離ではあるが完現術での解析の結果、恐らくは今日の夜に本格的に出現。場所はあろうことか僕達が住む住宅地のど真ん中。最悪も最悪だ。

 今日の夜は今まで生きてきた中で最も悪い1日になりそうだ。

 




(かなめ) 九門(くもん)

 某所の某高校に通う高校1年生。紅とは入学式の日にいかにもありがちなオカルト話題を振ったことが切っ掛けで友人となった。同学年の中では「オカルトマニアといえば要」というくらいに地味ながら有名人。趣味は情報収集で、噂話や諜報活動に事欠かない性格。
 小学生高学年時、【あること】が切っ掛けで完現術と誠彦と出会い、以後彼の指導の下で完現術者としての腕を磨き、今はこの町に時折出没する虚討伐の役目を担っている。
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