今一度アシュフォード家に栄光を!   作:マルルス

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G-ウィルス

「ヴァルフレア君、少しいいかな?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

狂気と悪意にまみれた観光が終わってやっと帰れると喜んでいたヴァルフレアだがマーレッドの呼び掛けに内心ウンザリしながらも顔には出さず返事をする。

 

「ここではなんだ。外に出ないか」

 

そう言われマーレッドに着いていくヴァルフレア。

 

「アルフレッド、また後でな」

 

兄の言葉にアルフレッドは頷き二人から離れていく。

 

「それでなにか?」

 

部屋から出てヴァルフレアはマーレッドに何の用事なのか聞く。

 

「それを説明するためにまずは私に着いてきてほしい」

 

そう言われマーレッドの後に着いていく。

エレベーターに乗り下へ降りていく。

 

「ヴァルフレア君。今から連れていく場所はこの研究所で最重要秘匿に分類される研究をしているところだ

そして今回、君をアークレイ研究所(ここ)に呼んだ真の目的でもある」

 

その言葉にヴァルフレアはやはり…と確信した。

そもそも今回の研修はBOWの開発に関わる者ならともかく自分のような裏の商品に関わってない者には意味がない内容だからだ。

それなのにマーレッドは自分をこの研究所に招いたのは何らかの目的があったと考えるのが当然だった。

 

「先程のタイラントでは無いようですね」

 

「タイラントも秘密に部類に入ってはいるがもうじき量産体制に入るのでね。いずれ全ての研究所の耳に入るから今回の件を利用して見せることにしたのさ」

 

「ではいったい私に何を見せるのです?」

 

「すぐに分かる」

 

エレベーターが止まり二人は通路に進んでいくと厳重にロックされた扉が待ち受けていた。

 

『名前を言ってください』

 

「マーレッド・ギャンドマン」

 

『暗証番号を言ってください』

 

「M3701G1100」

 

『照合中・・・確認が取れました』

 

ガコンと分厚い扉のロックが外れていく。

 

「では行こうか」

 

マーレッドに言われてヴァルフレアは着いていく。

 

部屋に入ると一人の女性がいた。

 

「お待ちしておりました。マーレッド主任」

 

「出迎えご苦労、アネット

ウィリアムは?」

 

「奥で研究しています

こちらへ」

 

アネットと呼ばれる女性はマーレッドとヴァルフレアを案内する。

 

「紹介しておこう。彼女はアネット。

ウィリアムの妻で彼の助手でもある」

 

「お会いできて光栄です。アシュフォード卿

アネット・バーキンと言います」

 

「初めましてヴァルフレア・アシュフォードです」

 

軽く自己紹介して彼女に着いていく。

奥に進むとこれまた広い部屋があり中に白衣を着用した一人の男性がいた。

 

(あれは…ウィリアム・バーキン?)

 

つい数時間前に紹介されたアンブレラが誇る天才科学者だった。

何か熱心に顕微鏡で覗いて目を離せば手元の資料を見たりパソコンでデータを打ち込んでいた。

どうやらこちらに気付いていないようだ。

 

「我々が来ることは伝えたのかね?」

 

マーレッドは少し不機嫌な声でアネットをジロリと見る。

 

「は…はい。ちゃんと伝えたのですが…。」

 

少し御待ちください

そう言ってアネットは部屋に入っていく。

 

「あの男はとても優秀なのだか研究ばかりに集中して用事を忘れるのが問題でね」

 

「そ…そうですか…。」

 

マーレッドは苛ついてるのが分かる。

恐らくだがバーキン博士は何度もこういうことを繰り返してるのだろう。

アネットがウィリアムに話し掛けると慌てて椅子から立ち上がってこちらを見ている。

 

「申し訳ありません…。どうぞこちらへ…」

 

アネットに言われるままに部屋に入る。

 

「ウィリアム…何度同じ事をやれば気が済むのかね?」

 

「すみません…。Gに集中してしまいまして」

 

「言い訳などはいい。君は研究者だがここの責任者でも有るのだぞ。上に立つ者がそんな事でどうする?」

 

 

マーレッドの言葉に黙り込むバーキン博士。

流石の彼でもマーレッドを怒らせるのは不味いと分かっているようだ。

 

「次こそ気を付けたまえ・・・。私も我慢の限界というのがあるのでな」

 

「はい・・・。申し訳ありません・・・

ところでそこにいる彼は?」

 

話を切り替えようとバーキンはヴァルフレアを見る。

 

「数時間前に会ったと思うが改めて紹介しよう。

彼はヴァルフレア・アシュフォードといってね。見込みあるので彼にも例の・・・Gーウィルスを見せることにした

 

()()()()()()()・・・!?

それにGを見せるとはどう言うことです! アレは極秘機密だ!

主任とはいえそんな勝手は!? 」

 

「安心したまえ。ヴァルフレア君は部外者に言いふらしたりはしない。私が保証しよう」

 

「信用出来ない! この男は()()()()()()()()の人間なのでしょう! Gは私の研究だ! 誰にも渡さないぞ!!」

 

バーキン博士は癇癪を起こしてヴァルフレアを睨み付ける。

その目は憎しみが籠っていた。

 

(博士のこの目・・・。私が知らないところで何かアシュフォード家に確執が有ったのか?)

 

身に覚えがない憎しみをぶつけられたヴァルフレアは戸惑うばかりだ。

何か言葉を出そうと思案していると

 

「いい加減にしろウィリアム。誰に向かって口を聞いてる?」

 

先に言葉を発したのはマーレッドだった。

静かな口調だが怒りを籠っているのはすぐに分かった。

 

「確かにGはお前の研究だがその()()()()()()()()()()()のは誰のおかげだと思っている?

本来ならお前はTーウィルスを始めBOWの開発に専念しなければならない身だぞ」

 

「・・・」

 

「そのお前にGーウィルスという不確かな物に予算を出し専念出来るようにしたのは誰だ。新たにこの研究室を作りお前専用したのも誰だ? 言ってみろ」

 

「貴方です。マーレッド主任」

 

「そう私だ。

なのに貴様は子供の様に癇癪を起こし私が信頼する人間に暴言を吐き挙げ句の果てに感謝すら忘れてる…。

私を見くびっているのか…? どうなんだウィリアム?」

 

殺意すら感じる静かな言葉にバーキンは冷や汗が流れる。

 

「失礼いたしました・・・お許しを・・・」

 

「私ではなくヴァルフレア君にいいたまえ」

 

「大変失礼しました・・・Mr.アシュフォード」

 

「いえ・・・お気になさらずに」

 

ヴァルフレアもマーレッドの怒りに震えてバーキンの謝罪を受けとる。

やはりマーレッドは怒らせてはいけない存在だと感じた。

 

「それでいい。ではヴァルフレア君にGを見せたまえ」

 

「分かりました」

 

バーキンはそう言って部屋の奥に設置してある棚に向かい

暗証番号を入れてロックを外す。

ケースから試験管を一本取り出し此方に持ってくる。

 

「Mr.アシュフォード。これがGだ」

 

「これがGウィルス・・・」

 

机に一本の試験管が置かれて中には紫色の光る液体が入っていた。

 

 

「それでいったいどの様なウィルスなのですか? Tーウィルスと何か違うのですか?」

 

目の前にあるGーウィルスは一体何なのか?

ヴァルフレアは疑問でいっぱいだった。

 

「G-ウィルスはTーウィルスを越える可能性を持ったウィルスだよ」

 

バーキン博士はヴァルフレアにGーウィルスについて説明をする。

 

「Tーウィルスは感染させた生物を大きく変化させるがその変化には限界がある。

たとえば昆虫や爬虫類とかはTーウィルスに感染しても体の巨大化などはするが進化の袋小路なのか・・・それ以降は一切の変化は起きない。これがTーウィルスの限界とでも言える」

 

だが・・・!

一呼吸を入れてバーキン博士は続ける。

 

「Gーウィルスはその進化の袋小路をたやすく突破出来る力がある!

常に進化を続けて限界を越えてくる!

Gは正に無限の可能性を持つ途轍もないポテンシャルを秘めている! アレクシアも悔しがってるだろう!」

 

「アレクシア・・・?」

 

Gの説明に熱が入ったのかバーキンはアレクシアの名前を出した。

ヴァルフレアは何故、今は亡き妹のアレクシアの名が出るのか理解出来なかった。

先程の憎しみの目はもしかして過去にアレクシアと何かあったのだろうか?

 

「そこまでだウィリアム」

 

混乱するヴァルフレアを置いてマーレッドはバーキンにストップを掛けた。

 

「簡単に言えばGーウィルスは終わりなき進化を続ける物だと思えばいいわ」

 

夫のウィリアムに変わって妻のアネットはヴァルフレアに解りやすく説明をする。

 

「なるほど・・・確かにTーウィルスと違って強力なウィルスだと理解できました

しかし・・・いくつかお聞きして宜しいでしょうか?」

 

一旦アレクシアの事は置いといてヴァルフレアはGーウィルスについて気になったことがあった。

 

「何が聞きたいの?」

 

「このようなTーウィルスを越える強力なウィルスを何故バーキン博士だけで研究を? 他の研究員とかと一緒に研究した方がよろしいのでは?」

 

話を聞く限りだとGーウィルスの研究はバーキン博士と助手のアネットを含めても二人で研究をしてるようだ。

流石にこの人数だけでは研究速度が遅いはずだ。

 

「いくつかあるわ。Gは研究はマーレッド主任から聞いてると思うけど極秘の研究だということよ。アンブレラ上層部でこの研究を知っているのは今のところ総帥のスペンサー会長とここにいるマーレッド主任含めた少人数。

何よりGーウィルスはとても扱いが難しくて研究に着手出来る人はウィリアムだけなのよ」

 

アネットの説明である程度は理解出来たヴァルフレアだがまだ気になる部分があった。

 

「差し出がましいようですが何故極秘にするのです?

何か理由があるのですか?」

 

 

何故Gーウィルスの開発をそこまで秘密にしておきたいのか?

いったいどのような理由なのか分からなかった。

 

「それは・・・」

 

「そこは私が説明しよう」

 

言葉に詰まるアネットの変わりにマーレッドが答える。

 

「Gの開発を秘匿する理由はいくつかある

まずスパイの存在だ」

 

「スパイですか?」

 

「ライバル会社から内部情報を奪われる危険性があってね。特に”裏の商品”がライバル会社に渡るのは何としてでも防がないとならない。

事実、ここ最近ライバル社に雇われた産業スパイが活動していた痕跡があってな」

 

「・・・」

 

産業スパイの活動・・・ヴァルフレアは納得する。

自分も会社の極秘情報(BGー001を始めとしたハーブを使った各種治療薬の配合方法)などに関してはプロを雇って強固なセキュリティシステムを作って対策しているからだ。

 

「そしてもうひとつは面倒なもので()()()()()()()()()()()()()の問題だよ」

 

「政治ですか・・・?」

 

「うむ。このBOWの開発に関しては各支部に派閥があってそれぞれ成果を出して出世しようと必死になっている。

最近はヨーロッパ支部が勢いがあってアメリカ支部であるこの研究所を出し抜こうとあの手この手で策謀を張り巡らせてる程だ」

 

「もしかしてBOW開発している各支部は仲が悪いのですか・・・?」

 

「研究者同士ではそうでもないがその支部を担当している幹部連中は特に仲が悪いな。何しろ上に昇るほど椅子の数は限られているからな」

 

組織というものは必ず権力争いがあるがアンブレラも例外ではないようだ。

特にアンブレラの幹部の地位はそこらの企業なんかとは比べ物にならない価値がある。

そうなれば何としてでも出世しようと躍起になるのは当然だと言えるかもしれない。

 

「そして先程話した企業スパイが関わってくるのだよ」

 

「? いや・・・まさか」

 

「気がついたようだな」

 

ヴァルフレアは先程の話である幹部達の椅子取りの話である事が分かってしまった。

 

「アンブレラの幹部がアンブレラ社の研究所にスパイを送り込んでいるという事ですか?」

 

「正解だ」

 

幹部達はライバルを蹴落とすために相手の不祥事を掴んだりもしくは相手の研究成果を横取りするために自身の手駒からスパイを送り込んできてるのだ。

 

「ということはこのアークレイ研究所も・・・?」

 

「断言は出来ないがその可能性はあるな」

 

「だからGの研究は極秘扱いな訳ですか」

 

Gウィルスの力を考えると他の研究所が横どりを考えても可笑しくない。

だから極秘にしているのだろう。

 

「そうだ。ここ最近は本社の幹部達は視察と表して頻繁にこの研究所に訪れようと躍起になっていてな。

今日来ていた他の支部の研究員達は君と君の弟以外は皆、本社の息が掛かった者達だ」

 

「まさか・・・彼らの本当の目的はGウィルスだったと?」

 

「かもしれないな。

全員ではなく中には本当に研修に来てる者もいるだろう」

 

「・・・」

 

アンブレラ社の規模を考えるとそれなりの権力争いがあると思っていたヴァルフレアだったがまさかここまでとは予想していなかった。

 

もしも本社勤務だったら成果を挙げても間違いなく横どりされていただろうしアシュフォード家の再興も儘ならなかっただろう・・・。

そう考えると数年前、本社ではなく南米のヴィレーネに飛ばされたのは自分にとって幸運だったかもしれない。

僻地だからこそ本社の幹部達に邪魔されずに済んだしアシュフォード家の再興も進みそれなりの影響力を持つこと出来た。

 

(あの時は絶望しかなかったが今だとヴィレーネに飛ばされたのは明るい道筋だったかもしれないな・・・)

 

「Mr.アシュフォード。

他に何か聞きたいことは?」

 

バーキン博士の言葉に思考から目が覚めたヴァルフレアはGウィルスの効力に気になった事があった。

 

「Gウィルスは予測不能な進化をもたらすと聞きましたがそれはつまり()()()()()()ということでは?」

 

ヴァルフレアが気になった事はGウィルスの力である無限の進化の事だ。

聞く限りでは常に進化していき強力な力を持つ生物が誕生するというのだがそれはつまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだった。




次回 Gの価値
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