1993年 5月19日 ヴァルフレア 24歳
ラクーンシティのアークレイ研究所からヴィレーネに戻ったヴァルフレアは再び忙しい毎日を送っていた。
「ロバート、今日の予定は?」
「はい。ヴィレーネの初である大学の落成式があります」
「そうか…。
他の予定があるとかでその…キャンセルとかは出来ないか…。毎日激務で少しは休みを取りたいのだが…」
「しかし件の大学はアシュフォードの名前が入っておりますので当主であるヴァルフレア様が欠席されるのは流石に不味いかと…」
「ヴィレネ・アシュフォード大学だったか?
確かにそれは行かなければならないな…」
ふぅっとため息を吐き出してヴァルフレアは使用人が用意したスーツにいそいそと着替える。
今日はヴィレーネ国初の大学であるヴィレネ・アシュフォード大学の落成式がある。
政府が掲げた政策のひとつである国民の教育水準の向上のために各地方に学校を建設し他国から教員を呼ぶなどをした。
ヴィレーネは高等学校まではあるのだが長らく大学が存在しなかった。
そこでヴァルフレアはこの国でアシュフォード家の影響力拡大の一環として大学の建造の為に資金提供を行う事にした。
そうして出来上がったのがヴィレネ・アシュフォード大学なのだ。
「よし。では行くとしよう」
「ヘリの準備は出来ております」
ヘリコプターの乗り込み首都ヴィレネに向かう。
首都ヴィレネ
首都の中心部に建造された大学でヴァルフレアは大勢の記者に囲まれていた。
「アシュフォード卿! ヴィレーネ初である大学の完成に何か一言!」
「この大学の名前にアシュフォードの名が刻まれてる事にとても感動しています。」
「アシュフォード卿!
この大学の建造費の多くを負担したとの事ですがこれは将来、本格的な政界進出の為の布石なのでしょうか?」
「確かに私はゾラーノ総統の要請で内閣の一員になっておりますがあくまでアドバイザーとして居るだけで外国人である私が政界進出は幾らなんでも行き過ぎです。
大学の建造費を負担したのは私自身、このヴィレーネに愛着を持っておりアシュフォード家として出来る事をしたまでです」
次々と投げ掛けられる質問に答えるヴァルフレア。
「アシュフォード卿。質問宜しいでしょうか?」
「何です?」
「ヴィレーネはアンブレラ社の影響が大きすぎて政府ですら逆らえない存在になっているとの事ですがこれについて一言お願いします。」
「はぁ?」
一人の記者の質問に呆気に取られる。
「申し訳ありませんが質問に意図が分かりません。
何が言いたいのでしょうか?」
「アンブレラ社はこの国に途方もない資金提供してる事です。
病院に企業に工場、インフラ整備ですらもアンブレラは資金を提供しています。
世界的な大企業であるアンブレラがヴィレーネにここまでする理由は何なのですか?」
記者の言う通り、
「確かにアンブレラ社はヴィレーネに多額の資金を融資をしていますが、別にやましい事が有るわけではありません。
皆さんが知っての通り、我々アンブレラはヴィレーネの国土の一部であるビラ島を研究の為に租借しております
そしてその見返りとしてアンブレラ社はヴィレーネを支援するという約束です」
ビラ島にある薬草の研究の為に当時ヴィレーネの実権を握っていた共産党政府から租借をした。
しばらくして研究所だけではなく私設部隊であるUSSとUBCSの訓練施設も建てられたが。
そして現政権である
「ではアンブレラ社がヴィレーネに多額の投資もその一環だと?」
「そうです。
ですからアンブレラ社はヴィレーネ政府より上の立場というのは誤解です」
あくまで立場は対等だと答える。
「ではアンブレラ社が政府に
記者は続けて質問する。
「アンブレラ社はヴィレーネ内戦の際に傭兵を雇い政府軍と共に反乱軍に攻撃したと話がありますが?」
「それも違います。
確かにアンブレラ社は
ヴァルフレアはウンザリしながらも顔には出さず答えていく。
「では」
「申し訳ありませんが会見はこれで終わりにさせていただきます。
まだ質問がある方は後日、アポをとって来てください」
記者はまだ質問をしようとしたがヴァルフレアは強引に終わら車に乗り込んだ。
記者達はまだ聞きたいことがあるのか車の窓越しでも何かを喋っている。
これでは出発が出来ないので警備員達が記者達を車から遠ざける。
その隙に車は発進して目的地の空港に向かう。
「ふぅ…有名になるのも考えものだな…」
ネクタイを緩めて一息つくヴァルフレア。
このヴィレーネではアシュフォード家は誰でも知っている存在となった。
当主のヴァルフレアはアンブレラ・ヴィレーネ支部の代表であり現政権の一員でもある。
ヴィレーネ国民はテレビやラジオで彼の存在を知っている。
またアンブレラもヴィレーネに薬の無償提供を行い製薬工場を設立したりして雇用を作っている。
その他にも各地でアシュフォード家の資産を使ってハーブ農園を作りBG-001の材料となるグリーンハーブの収穫をしている。
またそれ以外でも薬の効力を上げるレッドハーブやイエローハーブ、解毒作用があるブルーハーブなども栽培している。
このようにヴァルフレアはヴィレーネで積極的に活動している。
(しかし…政府との癒着か…。
あまり間違っていないのがな…)
先程の記者の質問が頭に残る。
あの記者の言う通り政府とアンブレラは癒着している。
ビラ島の租借の見返りにアンブレラ社、性格にはヴィレーネ支部だが多額の資金と技術を政府に提供しているのだ。
もちろん、ヴァルフレアとしては対等な取引を行っているが第三者からすればアンブレラもといヴァルフレアがヴィレーネを私物にしようと見えるだろう。
(かといってゾラーノ総統との関係を壊したくない…。
いま私が自由にヴィレーネを開発してるのも総統の利益になっている事と彼が私を信用しているからだ)
外国人であるヴァルフレアがヴィレーネで自由に活動出来るのはこの国のトップであるゾラーノが大目にみてくれてるからだ。
そのゾラーノの機嫌を損ねたり信用を失ったりすればこの地で築いてきた全てを失いかねない。
(今後はしばらく記者の会見をしないでおくか。
質問されてものらりくらりと誤魔化そう)
それでも相手がしつこく聞いてきたりすれば政府に頼んで圧力を掛けてもらおう。
それにしても以前ならこんな事はあり得なかった。
この国が平穏になり人々の生活と心に余裕が出来た証拠なのだろう。
そう考えていると…
キキッ!
「ウォ!」
突如の車が急停止してしまいヴァルフレアは前に投げ出されてしまう。
「ど、どうしたんだ!? 」
「も…申し訳ありません…!
急に配管が転がってきまして…」
「配管?」
運転手の言葉にヴァルフレアはフロントガラスの向こうを見るいと大きな配管が左側から右側に向かってゴロゴロと転がっていた。
どうやら工事現場から転がってきているようだ。
「まったく…!
アシュフォード卿、少々お待ちください」
そういって運転手はクラクションを鳴らしスペイン語で作業員に怒鳴っている。恐らくだが早く退かせ!と言っているのだろう。
しかし作業員達は何故かノロノロと動いてる。
その姿にヴァルフレアは妙な胸騒ぎを感じた。
「うん?」
奥にいる作業員が何か筒みたいなものをこちらに向けている事に気付くヴァルフレア。
なんだあれは?と思っていると
ドカーン!!
とんでもない爆音が突如として響きわたる!
「な、なんだ!!まさか…!」
ヴァルフレアはその音に聞き覚えがあった。
確かビラ島のUBCSの基地で聞いた音…そうロケットランチャーの弾頭が爆発した音だ!
もう一度見ると作業員が持ってる筒からは白い煙がモクモクと漂っていた。
それをみたヴァルフレアは確信した。
「逃げろ!! ロケットランチャーだ!!」
喉が張り裂けんばかり叫ぶヴァルフレア。
彼の言葉に運転手は大急ぎでバックするが…
ダダダダ!!
そうはさせんとばかりに作業員達が銃を取り出して車に一斉に銃撃する!
「ヒィィッ!!!」
突然の襲撃に運転手は悲鳴を挙げる。
「落ち着いて!! この車は防弾仕様だ!
あれぐらいなら防げる!」
怯える運転手を落ち着かせようとするヴァルフレア。
この車はアルフレッドが用意した防弾仕様の車で世界各国の政府に採用されておりライフル弾程度なら防ぐ事は出切る。出来るが…。
「早く下がるんだ!
ロケット弾までは防げない!」
銃弾程度なら防ぐことが出来るがロケット弾までは無理だ。
だからこそ急いでここから離れる必要があった。
「(クソ!! そこをどけよ!!!)」
運転手はスペイン語で悪態をつく。
この襲撃でパニックになった市民達のせいで思うように下がれないからだ。
「マズイ! またロケット弾だ!」
再びロケット弾が飛んでくる。
今度は屋台に命中する。
屋台の破片が車の上に落ちてくる音を聞きながらも命拾いしたヴァルフレアだったが恐怖と焦りで思考が回らない。
(何とか外れてくれたが次はこうはいかない!
車を捨てて外に出るか!?
いや、駄目だ! 出たら蜂の巣だ…!
あぁクソ!!どうすればいいんだ!)
絶体絶命の危機。
最早、これまでかと覚悟を決めた時だった。
ダダダダダ!!!
背後から銃声が響く。
囲まれたか!?
そう危惧するヴァルフレア。
「アシュフォード卿!
アレは国防軍です!! 国防軍が来てくれました!!」
しかし運命は彼を見捨てなかった。
通報と銃声、爆発音を聞いた巡回中の国防軍が駆け付けてきたのだ。
「(クソ! 国防軍だ!!
早く逃げろ!)」
多勢に無勢になった襲撃者達は軍の姿を見ると攻撃を辞めて一目散に逃げ出した。
「た、助かったのか…?」
国防軍がきたお陰で命拾いした事に気づいたヴァルフレアは力無くへたりこむ。
(あれ? なんだ…?
急に目の…まえ…が)
突然、視界から光が消えていく事に疑問を持つがそのままプッツリと意識を手放すのだった。