今一度アシュフォード家に栄光を!   作:マルルス

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突如、ゲリラ達の襲撃を受けたヴァルフレア。
危機一髪だったものの何とか生き延びたが…。


危機を乗り越えて

 

首都ヴィレネ、○○病院

 

「それで…アシュフォード卿は大丈夫なのだな?」

 

「はい。しばらくすれば目を覚ますでしょう」

 

「そうか…感謝します院長殿

それと総統閣下のご命令でしばらくの間、この病院に兵士達を駐在しますので職員の方々への説明をお願いします」

 

「総統閣下のご命令なら仕方がありませんな…。職員に関してはお任せください」

 

病院の廊下で軍服を着た男性と白衣を着た初老の男性は部屋に眠る人物を見ながら会話している。

 

あの後、ヴァルフレアは襲撃が終わった事に緊張が解けたせいか車の中で気を失ってしまったのだ。

最初に気づいたのは運転手だった。彼はピクリと動かないヴァルフレアを見てパニックになり車から降りて近くにいた国防軍の兵士達の駆け寄り叫んだ。

 

─アシュフォード卿が倒れた!! 早く病院を!医者を呼んでくれ!!

 

運転手の言葉に兵士達は驚愕した。

アシュフォード卿はこのヴィレーネ国の総統であるゾラーノが懇意にしているだけではなく外国人でありながら政権の一員である。

そのアシュフォード卿が倒れたのだ。指揮官は直ぐに衛生兵を呼び出しヴァルフレアの容態を診てもらい大急ぎで首都の病院に運び込まれた。

そして診察の結果、極度の緊張が解けて神経に異常をきたしてしまい気を失ってしまったのだと判明した

その事に運転手と部隊の指揮官はホッと胸を撫で下ろしたがゲリラ達が病院に襲撃を掛けてくる可能性があったので病院は国防軍が犬一匹も通さんばかりの警備体制を作り上げてヴァルフレアを守った。

 

それから数時間後

 

「う…うん…ここ…は?」

 

「アシュフォード卿!

すぐに先生を呼んで参ります!」

 

そういって看護婦の一人は医師を呼ぶ為に部屋の外に出ていく。

 

「あぁ…ここは何処です?」

 

「はい、ここは○○病院です。

アシュフォード卿が倒れてしまったので当病院に運びこまれました」

幸い怪我はありませんでしたが念の為に治療を処置しております」

 

「そうだ…思い出したぞ…」

 

看護婦の説明にヴァルフレアは徐々に記憶が甦っていく。

あの時、絶体絶命のところに国防軍が駆け付けてくれて襲撃者を撃退したのを覚えている。

助かったと安堵した時に突然目の前が暗くなりそのあとの事は覚えていない。

 

(あの時に気絶したわけか…やれやれ、情けない事だ)

 

恥ずかしいところ見せてしまった事にヴァルフレアは己の不甲斐なさに恥ずかしくなった。

 

その後。部屋に入ってきた医師からしばらくの間、養生するように言われた。

確かにここ最近、ヴァルフレアはアンブレラ・ヴィレーネ支社の代表としての仕事だけではなく政府の仕事もあって満足に休みも無かった。

騒ぎを聞いた使用人やアルフレッド、ゾラーノ総統を初めとした周囲の人々の勧めもあってヴァルフレアはしばらくの間、療養することにしたのだった。

 

 

それから1ヶ月。

趣味になった釣りをやったり支社の代表としての仕事を必要最低限をやりながら充実した日々を送っていた。

 

今日、ヴァルフレアはビラ研究所に訪れた。

以前から研究されてるガン治療薬がどこまで進んでいるのか確認の為だ。

ヴァルフレアはこの研究は人類の未来に繋がると確信しており多額の投資をしている。この研究が成功すればアシュフォード家は大きな影響力を手にする事が出来るだろう。

 

しかし…

 

「申し訳ありません…閣下。

研究は進めているのですがまだ実用段階には入っておられません。」

 

「そうか…。」

 

研究所の主任にして所長であるゼネルティーモは申し訳なさそう表情でヴァルフレアに告げる。

ガン治療薬の開発を始めてから数年は経過しているがまだまだ時間がかかりそうだった。

 

「しかし、BG-001の発展型であるTYPE2や更に改良されたTYPE3などは遠くないうちに完成する見込みです

それとグリーンハーブを始めとしたレッドハーブやブルーハーブを組み合わせた新薬の開発が進んでおります」

 

ガン治療薬の開発は著しくないがその代わりグリーンハーブを始めとした各種ハーブを使った研究は問題なく進んでいるとの事だった。

 

(新しい商品が出来るのは良いことだ。

ガン治療薬に関しては長い目で見ることにしよう。ゼネルティーモを始めとしたスタッフは皆、優秀だから必ず完成してくれるはずだ)

 

目玉であるガン治療薬の報告に内心落胆した

ヴァルフレアだったがハーブを使った治療薬が続々と出てくるなら大丈夫だと言い聞かせた。

 

「それにしても、ずいぶんとスタッフの数が増えたな」

 

研究室を眺めてると見慣れないスタッフや研究員が大勢居ることに気づく。

初めてこの研究所に訪れた時は施設の大きさに対してゼネルティーモを含めて20数人そこらだったがざっと見る限り50~60人は居るのだ。

 

「ああ、BG-001がヒットして以来、少しづつですがこのビラ研究所に移動したいという者達が集まりまして今では118人まで増えました。それに伴って研究所も改築しました」

 

ゼネルティーモによると各国のアンブレラ社から集まってきたそうだ。驚くことに裏の製品であるB.O.Wの開発部から転属してきた者が数名ほどいるとの事だった。

 

「なんだって…! あそこは極秘部門だぞ…。

よく転属が許されたな」

 

「私も驚きましたが守秘義務を守るという事で許されたようです。

恐らくですが…彼らは私と同じで向こうでは使い物にならなかったので追い出す形で転属を許したのでしょう」

 

B.O.W開発はその研究内容からマトモな神経では勤まらない部署でそれこそバーキン博士のような天才だが論理感がブッ飛んでる人間、所謂マッドサイエンティストが集まる場所だ。

彼らはその部署から逃げるように此処に来たのだろう。

 

ヴァルフレアとしてはB.O.W開発には否定的な考えでこのビラ研究所には其処にいた人間はあまり受け入れたくないのが本音だ。

しかし、非人道的なあの場所で耐えられない良心があるからこそこの研究所に来たのなら無下にしたくない。

 

「まぁ…ここで人々の為の新薬を作ってくれるなら何も言わない。彼らはここで思う存分のその知識を発揮してもらおう」

 

「ありがとうございます閣下。

そう言ってくださるなら彼らも救われるでしょう」

 

(それに我がアシュフォード家の利益にもなるからな。

彼らは罪滅ぼしの為により良い薬を開発してくれるだろう)

 

ヴァルフレアは心の中でそう呟く。

 

「とはいえ、各国から集まった研究員はそう多くはないです。

このビラ研究所で最も多いのは地元民やヴィレーネ本島からきた者達です」

 

確かによく見ると白人はそう多くはなく浅黒い肌のヴィレーネ人(所謂、インディアン系)が割合を占めている。

 

「特にビラ島出身の、地元民の方々は薬草の知識が我々より優れていましてBG-001の改良はその発展型の研究が上手く進んでいるのも彼らの知識の賜物なのです」

 

このヴィレーネは何世紀、数千年に渡る薬草の知識が現代でも伝わってる。

この国の住む人々は怪我や病気になったら薬草を練ってそれを服用して治したりしているのだ

特に使われているのはこの国の固有種であるトカの葉と呼ばれる薬草だ。

 

トカの葉は頭痛や眠気を失くす効果があり労働者はトカの葉の口一杯に含んで作業したりする。

またトカの葉を煮込んで作るトカ茶という飲み物があり人々は朝の一杯として必ず飲むそうだ。

煮込むとトカの葉は甘い成分が出るので腹痛や風邪になったらスープにして飲んだりする。子供にも人気だそうだ

 

そういった事もあってこのヴィレーネに生まれ育ったなら子供でも薬草を練るのだ。

 

「つまりこの国に伝わる薬草のノウハウが生かされたわけか」

 

「そのとおりです。彼らの知識に最新の科学を組み合わせたのが今の研究なのです。

それで最近では私やスタッフは地元の方々と交流しておりましてそこに住むトカ農家の方々とその知識を教えて貰ったりしてます」

 

「地元民と交流か…。」

 

ゼネルティーモの言葉にヴァルフレアは考える。

 

(そういえばこのビラ島の地元民との交流なんて全然してなかったな…)

 

このヴィレーネに赴任してかれこれ6年経つがビラ島の島民などまったくと言って良い程、関わりがなかった。

何しろ当時は今ほどの余裕なんて一切無く崖っぷちと言って良いほどだった。

そこに内戦やらヴィレーネの政治入りなどがあってこのビラ島には私邸と研究所やUBCSの基地ぐらいしか回っていない。

 

(6年も経つのに地元の人達と関わってないのは流石におかしいな…。

ちょうど今は時間も出来ているし私も交流をしてみるか)

 

ヴァルフレアはこれを機にビラ島の島民と交流を始める事を決めた。

アンブレラ・ヴィレーネは地域密着型の方針に決めているので彼らにアンブレラ社の恩恵に受けるべきだと考えた。地元民と仲良くなれば薬草のノウハウをもっと手に入れる事が出来てアシュフォード家の利益にも繋がるはずだ。

 

「ゼネルティーモ。君が交流してる村は今度いつ行くんだ?」

 

「はい。明後日には懇意している農村に出掛けますが?」

 

「その村に私も着いてきても良いだろうか?

6年も経って今更かもしれないがこのビラ島の管理者として彼らとの交流を深めたい」

 

「それは良いことです閣下。

ではすぐにそのように段取りをしておきます」

 

 

ゼネルティーモは喜んでその提案を受け入れてくれた。

それを聞いたヴァルフレアは安心してビラ研究所を後にしたのだった。




研究員の日記

1/6

今日も俺の案は却下された…。主任からは「君の考えはとうの昔に行われているのだよ。もっと考えて実験案を出したまえ」とか嫌味たらしく言われた。
既に動物を使った実験は行き詰まっていた…。どうすればいいんだ…。
今日も人間を使った実験が行われている。
他の連中は動物を使った実験に見切りをつけて人間の対象にした実験を考案している。
ただ一人、俺だけは人間を使った実験に手を出していない…。
俺も人間を使った研究に考案すべきだろう。
だけどどうしてもそれが出来ない…。

2/6
この研究所はどいつもこいつも頭のネジが跳んだ奴ばかりだ。
その中でヤバイのがヴィンセント・コールドマンという奴でコイツは頭が相当キレるがネジも数十本ぐらい抜けてる奴だ。
今日も人間を対象に麻酔をかけずに生きたまま頭を切開してなにやらビンに積めてやがった…!
それだけじゃない。実験体の叫び声にイカれた同僚ですら何人も吐き出していたのにアイツは眉一つも動かしてなかったんだ!完全にイカれてやがる…

3/6
✕月□日
とうとうこの時が来てしまった…。
今日、上司から開発したB.O.Wの世話をするように命令された。
本来なら研究者がやる仕事ではなくそこらの使い走りにやらせる仕事だ。そんな仕事を俺にやらせるという事はつまり、お前には期待してないという意味だ…。


4/6

クソッタレ!!もうウンザリだ!!
毎日毎日、化け物共の餌やりばかりだ!!
奴らの唸り声でロクに眠れない…!!

5/6

もう限界だ…。今週中に異動願いを出そう…
多分、何も言われないだろう…。
俺を引き留める価値なんてないだろうしな…。


6/6
□月△○日
案の定、俺の異動届けはすんなり受理された。
上司から「君はヴィレーネのビラ研究所に配属される」
それを聞いて当然だなと思った。
理由としてはあそこは僻地で左遷される場所とか言われてるからだ。何年か前にBG-001という薬を作ったそうだがアンブレラ社もあそこには大した予算を渡してないって話だ。
それにしても南米か…。まぁこんな地下で過ごすよりずっと良い。さっさと荷造りするか。
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