ソモラとの会談及び取引を終えたヴァルフレア。そんな彼は自室に戻り、椅子に座って大きく息を吸っては吐き出すのであった。
「ふぅ…何とかなったな…。これで暫くはヴィレーネ政府はこのビラ島には目を向けないだろう」
ヴァルフレアの取引をしたソモラは一旦、本島に戻り政府にアンブレラ社との取引は継続という事を伝えるとの事だった。
しかし本島に戻るのは危険だとヴァルフレアは引き留めたがソモラは「こちらに関しては心配はいらない」と言われれて仕方なくソモラを見送る事にした。
「ソモラは政府に都合の良い事を伝えると言ったが大丈夫だろうか? 明日には連絡するとは言ったが…」
心配だがソモラの人間性を考えると彼は我々の味方になってくれたのだ。自分の直感を信じて今は連絡を待つことにしよう。腹の探り合いに疲れたヴァルフレアはベッドの横になって就寝するのだった。
次の日。
何時も通りに朝食を終えたヴァルフレアに電話が来た。
「もしもし? ヴァルフレアだ。」
『お早うございますヴァルフレア殿。ソモラです』
「あぁソモラさん。ご無事ですか…!」
『ご心配をおかけしました。
要点だけを伝えます。書記長を始めとした連中には上手くごまかしておきました。
暫くはビラ島は安泰ですがまだ予断は許さないのでご用心してください』
「分かった。貴方はどうするんですか?
確か連中には睨まれてるはずでしょう?」
『今はまだ大丈夫ですが暫くしたら言い掛かりをつけてきて私を亡き者にするでしょう。
とは言え簡単には殺られませんがね。
申し訳ありませんが通話を切ります。また連絡いたします』
ガチャリと電話が切れてヴァルフレアは安緒した。
「良かった…。だけどまだ予断は許さないか…。本島の情報収集は欠かさずにやらないといけないな」
いつの間にか政府軍が上陸してきたなんて御免だ。
リドリオには引き続き本島の情報収集に勤しんでもらおう。
アンブレラ・ビラ島研究所
ゼネルティーモの連絡を受けて研究所に訪れたヴァルフレア。
「おはようございます!閣下。
以前、閣下から渡された例のハーブですが…とんでもない代物だったので連絡させていただきました。」
「あのハーブが?
ふむ、一体どんな代物なのかな?」
「まずグリーンハーブなのですか今まで我が社が開発してきた傷薬など比べ物にならない効能でした。それも単体でです!
単体だけでこの効能なのに、二つ三つと同じグリーンハーブを混ぜ合わせるだけで、更に効能が上がるのです!
これだけで我が社にどれだけの利益を齎すのか想像つきません…! 更に凄いのはレッドハーブを混ぜるだけで、もっと効能が上がります。
解毒作用があるブルーハーブも、自然界の猛毒ですら無害な成分に変えてしまうのですから、科学者としてこのハーブ達のポテンシャルには戦慄するばかりです」
「まさか…そんなに凄いハーブだったというのか…!」
ゼネルティーモから聞かされるハーブの力にヴァルフレアも唖然としてしまう。
正直、ガン治療薬のオマケというか軽い資金稼ぎのつもりだったこのハーブが、まさかのダークホースだったとは…!
ヴァルフレアはこのハーブに強い関心を持った。もしかしたらこのハーブは世界に大きな影響を与えるのではないかと!
「閣下…現在我がチームはガン治療薬に力を注いでいますが……このハーブを研究する為にも、新たなチームを作るための資金と機材を投入をお願いしたいのですが…宜しいでしょうか…?」
ゼネルティーモはハーブが持つポテンシャルに魅了され、ガン治療薬の開発と並行してハーブの研究の行いたいと打診して来たのだった。
「勿論だ! 所長として、君達にこのハーブの研究を許可する!
全力で君達を補佐しよう! 資金も必要な限り用意する」
「あ…有難うございます…!
このゼネルティーモ! 全力を尽くします!」
研究の許可が下りたゼネルティーモは歓喜した。
ヴァルフレアはジーナが持ち込んだこのハーブには無限の可能性が秘められている事に気づき全力で支援する事を約束した。
(もしかしたら…このハーブがアシュフォード家の再興の鍵なのかもしれない
資金に関してはキツイが…ゼネルティーノなら間違いなく実用化に持っていけるだろう。
借金をしてでも彼らの研究を成功させなければならない!)
その後、私邸に戻ったヴァルフレアは資金の調達の為に各地の銀行を奔走した。おかげで借金した額は莫大な物になりそうだったのだが……それでも何とか、資金を作り出す事に成功したのだった。
1988年 8月
その日、秘書のロバートからある報告を受け取った。
「なに…? ジェームス・マーカス博士が亡くなっただと?」
「はい…。博士は実験中、ウィルスの漏洩が起きてしまい博士はそれに感染してしまい治療の努力も空しく…。」
「そうか…。あのマーカス博士が…。」
ジェームス・マーカス博士。彼はアンブレラが誇る天才科学者であり、ヴァルフレアの祖父であるエドワードと同じく、スペンサー会長と共にアンブレラ社の創設に関わっている人物だ。
近年ではスペンサー会長の意向でラクーンシティの幹部養成所の所長を務めアンブレラの人材育成にも大きく貢献している。
マーカス博士はアンブレラ社が重視してるウィルス研究の第一線を率いていたが亡くなってしまったらその研究はどうなるのか…?
「ロバート。マーカス博士の研究はどうなるか聞いてるか?」
「その事なんですが……生前、マーカス博士が教育した
「ウィリアム・バーキンって確か…十六歳でラクーンシティのアークレイ研究所の主任になった少年だったかな? 噂ではアレクシアをライバル視してたとか…
同じくアルバート・ウェスカ―もバーキン少年と同じく主任研究員になった人だな。
その二人がマーカス博士の研究を引き継いだわけか。」
「そう聞いております。
それでマーカス博士の葬儀が行われるますがどうされますか?」
「そうだな…」
マーカス博士とは祖父と同じくアンブレラ社の設立に関わっている人物だがヴァルフレアは博士は会った事がなく話したこともない…。
そもそも住む世界が違い過ぎたのもある。
そんな自分が葬儀に行っても正直、場違いだろう。
(だけどアンブレラ社の幹部だけではなく、アシュフォード家の当主として何もコメントがないのも体裁が悪い…。
ただ、今はヴィレーネの動向が怪しい上に、ガン治療薬やハーブの研究も気になるからあまり
「葬儀に出席したいのは山々だが……今は手が離せない。だから、一先ず弔電を送ろう」
「分かりました」
取り敢えずヴァルフレアは葬儀への出席せず、弔電を送る事にした。
(アレクシアもマーカス博士も、研究中のウィルスの漏洩で亡くなってしまった…。
今更だけど一体アンブレラ社は始祖ウィルスを何の為に研究してるのだろうか?)
祖父であるエドワードと天才科学者の
ヴァルフレアは今まで専門外として、ウィルス研究には関わってこなかった。三人が研究してた始祖ウィルスという研究対象に、少し気になり始めるヴァルフレアなのであった……。
1989年 4月
ヴァルフレア 20歳
ビラ島 アシュフォードの私邸
パァン パァン パァン パァン パァン
私邸の中庭では大勢の人々が集まっていた。そこには豪華な飾りつけで中庭がより華やかに彩られ……祝いのクラッカーが爆ぜては、無数の風船が空へと舞い上がっていた……。
豪華なのは飾り付けだけじゃあない。中央付近に鎮座する大きなテーブルには、これまた贅の限りを尽くしたかのような……豪勢な料理がズラリと並んでいたのだ。肉に野菜、スープにデザート……説明を始めたら一夜を明かしてしまいそうな程の多種多様な料理がそこにはあったのである。
「皆さん! 今日は私の誕生日パーティにお越し頂き、心から感謝致します!
貴方方の協力もあって、私は今日まで頑張って来られました。その感謝として……今日はゆっくりと、此処に並ぶ数々の料理や美酒を楽しんでいって下さい」
マイクを持ちヴァルフレアはそう語って一礼をする。その一礼を合図に、パーティの参加者達は料理と酒を楽しみ始めるのであった……。
「兄さん! 誕生日おめでとう!」
「アルフレッド! よく来てくれたな!
久しぶりだな。学業はどうだ? 問題は無いか?」
「大丈夫だよ兄さん。心配はいらないよ
アシュフォードの男児として一切疎かにしてないからさ」
ヴァルフレアは二年ぶりに弟のアルフレッドの顔を見てほほ笑んだ。
「ハーマン達がしっかりと支えてくれたからね。
それと兄さん! 僕も来年、アンブレラ社の幹部になるんだ!」
「何だって! 良かったじゃないか!
それで何処に配属されるんだ?」
「アハハ…まだそれは決まって無いよ。
でも僕もアンブレラの幹部になるなんて夢に思わなかったよ。大学を卒業したら僕も此処に来て、兄さんの補佐になると決めていたからさ」
「そうか。お前も幹部になるのか。本当に嬉しいよ。
また兄弟揃ってアシュフォード家の再興に向かって頑張ろう」
「勿論! アシュフォード家再興は僕達の使命だからね!」
アルフレッドもアンブレラ社の幹部になる…。ヴァルフレアも彼が必死に努力してきたのは覚えているからこそ、この報告は嬉しかった。
自分はこのビラ島に配属され……一時は途方に暮れたが、今は違う。
「アルフレッド。実は家の再興は近いかもしれないぞ」
「えっ?」
「何も私の誕生日だからこのパーティを開いたわけじゃないさ。
むしろ私の誕生日より
アルフレッドは兄の言葉に意味が分からなかったが……一体何なのだろうか?
「ゼネルティーノ! 此処に来てくれ!」
ヴァルフレアは少し離れた男性を呼び寄せた。
「ヴァルフレア様! お誕生日おめでとうございます!
つまらない物ですがこれをどうぞ!」
「あぁ有難う。
アルフレッド、紹介するよ。
彼はゼネルティーモと言って
「いえいえ! これもヴァルフレア様が我々に援助してくれたお陰です!
初めまして、ビラ島研究所の主任を務めております。ゼネルティーモで御座います」
「こちらこそ初めまして、弟のアルフレッド・アシュフォードです」
二人は握手し互いの自己紹介をした。
「アルフレッド、彼こそがアシュフォード家に栄光の光を差し込んでくれた研究員だ。
彼があの
「貴方があのBG-001を開発した…!」
「先程も言いましたが……全てはヴァルフレア様が我々の研究を認めてくれたお陰です。
ヴァルフレア様が居なければ、我々はこの島で誰にも認められず憂鬱しながら細々やっていたでしょう」
BG-001
昨年の12月にアンブレラ社の新製品として現れた画期的な傷薬だ。
ゼネルティーモがグリーンハーブを始めとした各種ハーブを組み合わせた薬になる。その効果はとても高く、それでいて驚く程に価格が安いのだ。それもただ
ヴァルフレアはBGー001の特許を持っているので、アシュフォード家には莫大な財が雪崩れ込んで来たのだ。
おかげで積もり積もった多額の借金を返しても、アシュフォード家には余裕があった。それが例え、別荘として新たに
「おかげで次の研究の投資が出来るからな。
イチイチ銀行屋共に頭を下げる事が少なくなったから、それが一番嬉しいけどな」
ヴァルフレアはそう言って笑いゼネルティーモも合わせて笑った。
「とは言え、まだまだアシュフォード家を栄光には程遠い…だからこそ次の研究も成功させなければならない」
「それでも兄さん! これはかなりの大戦果だよ! アンブレラ社も兄さんの評価を改めた思うよ!」
「そうだと良いな…これで給料がアップしてくれたら…」
「何を言ってるんだ兄さん?
BG-001であれだけ儲けたのに?」
毎月とんでもない額の金が払われるのに、給料の事を言うヴァルフレアにアルフレッドに呆れてしまう。
「そうは言っても、コレからこの島にBG-001の生産の為に新たに工場を立てないといけないからな……。それに、研究所や訓練基地だとか……そういった施設の増築もしないといけないんだ。
特に研究所はこれからもっと高度な研究をしないといけないから、機材の調達も必要だからね。まだまだ投資もしなければならないから、もっと資金が必要なんだ」
予想を上回る売り上げをしたBG-001。だが、ヴァルフレアはBG-001の開発はあくまで資金調達の為でもあった。
本命は未だ開発中のガン治療薬だ。ゼネルティーモは、BG-001とはまた違うハーブを元にした薬を開発していた以上、まだまだ資金はアシュフォード家が出す必要があった。
「えっ? 工場を立てるとか、施設の増設とか……そういうのは本社がお金を出してくれるじゃないのかい?」
「そうか…お前は知らないんだよな
本社は私とこのビラ島には価値がないと思ってるんだ。
事実、本社から送られる資金なんて微々たるもので、ほとんどは我がアシュフォード家がお金を出してるんだよ」
「何だって!?」
ヴァルフレアから告げられる事実にアルフレッドは驚愕するしかなかった。
「BG-001の開発の資金だって銀行から何とかして工面したからな。
だから本社の連中には当てにしてないんだ」
BG-001のヒットにも関わらず、アンブレラ本社からは何の言葉も貰ってなかったヴァルフレア。そのためか、自分の評価は変わらないと思っている。
「そんな…兄さんが会社に齎した利益は相当なハズなのに…」
「まぁ私は別にもう気にしてはいないけどな…。
何だか湿っぽい雰囲気なったな。アルフレッド、話は終わりだ。
お前もパーティを楽しんでくれ」
「う…うん…」
力無い笑みながらも、話を終わらせたヴァルフレア。そんな兄の心情を汲み取ったのか……アルフレッドはこれ以上何も追求せずに従っては、パーティを楽しむ事にしたのであった……。
PM 22:00
誕生日パーティはその後、何の問題もなく……皆がドンチャン騒ぎをしては賑やかに時が過ぎていった……。そうして気づけば、いつの間にか辺りが暗くなっていて、そこでパーティはお開きとなったのである。
使用人達はパーティー会場の後片付けをしている。
アルフレッドは明日にはヨーロッパに戻り大学での学業に入る。
そしてパーティの主役のヴァルフレアは自室で会談をしてた。
「お誕生日おめでとうございます。パーティーに参加出来なかった事を謝罪いたします」
「気にしてはいないから安心してください」
ヴァルフレアが会談してるのは
「さて今のヴィレーネ政府の様子は?」
「相変わらずです。書記長と幹部達は現実から目を背きたいのか、毎日酒を煽っては意味のない命令を繰り返してます」
「やれやれ… 終わりが近づいてるのに呑気なものだ」
ソモラは今のヴィレーネ政府の現状をヴァルフレアに伝える。
戦況は何とか膠着に持ち込んでるが、人民軍の士気は下がり続けており相変わらず脱走が相次いでいた。そんな中……ファシズム軍こと
他の反乱軍はVUFと比べ、戦力は薄くあまり期待できないそうだ。
「ふぅむ…。
やはり
「私もそう思います。
他の反乱軍は弱小ですので」
「なら早く連中に恩を売った方が良いな…。
彼らと手を組んでヴィレーネを手に入れなければならない」
ヴァルフレアはソモラとの会談で、ビラ島は本島によって危機に晒されており何とかならないかと考えていた。
そこでヴァルフレアは、ヴィレーネを支配する共産党を打倒するように支援。その後、自分達に都合が良い連中にヴィレーネを統治してもらおうと思い付いたのだ。
そうすればビラ島は本島から余計な茶々を入れられずに済み、思うように研究が捗るだろう。
それにソモラによれば……ヴィレーネは石油やコルタン、レアアースといった希少な資源が眠っているとの事。ただし、現政府は技術不足と資金不足が相まっては、全く開発が進んでいないという。
ならばそれを手に入れれば、アシュフォード家に大きな利益を齎してくれるかもしれないのだ。
「ソモラ殿。
VUFと接近したいのだが……何か伝手はあるか?」
「それならば何人か知っておりますので、私が彼らにコンタクトを取ってみましょう。
連中は今自分達を支援してくれる存在を望んでいます。よって、ヴァルフレア閣下が支援すれば彼らは喜んで飛びつくでしょう」
「分かった。出来る限り早く頼む」
「それでは失礼します」
ヴァルフレアの指示を受け取ったソモラは、部屋から出ていく。
一人となったヴァルフレアは部屋の窓から美しい満月を眺める。
(此処に配属されて未来は果てしない暗闇に包まれていた……。だけど、今は晴れて進むべき道が見える…!
上手く行けば、私は国家を手に入れられるかもしれない…。
国家を手中に収めれば、アシュフォード家の栄光は必ず取り戻せる!)
当初は不安しかなかった配属だった。だが今は……ここに配属されたのは、運命と受け取っている。
このビラ島…いや、ヴィレーネはアシュフォード家に栄光を齎せてくれる存在だと感じてる。
家の再興と栄光……その二つの野望を胸に抱き、ヴァルフレアは静かな決意するのだった……!
1989年 6月
ソモラとの会談を終えて2か月後…。
ジリリリリ!!
ヴァルフレアの自室から電話がけたましく鳴り響く。
「もしもし?」
「ヴァルフレア閣下 ソモラです。
VUFとようやく繋がる事が出来ました」
「…! そうか。遂に来たか
彼らとはいつ会える?」
「閣下が望むなら何時でもです」
「それなら来週辺りでセッティングしてくれ。
どこか人目が付かない場所で会おう」
「分かりました。決まり次第、また連絡いたします」
ガチャリ…
電話を置きヴァルフレアは心臓が高鳴っていく。
「いよいよだ…。VUFと友好関係を築いてヴィレーネを手に入れる…!」
この一件でアシュフォード家の未来が変わるのだ。
絶対にしくじる事は許されない…!
来週に向けてヴァルフレアは準備を勤しんで時は流れていった。
一週間後…
現在ヴァルフレアはリドリオを始めとした、十人のUBCS兵と共に大型ヘリに乗って指定された場所へと向かっていった。
「閣下…本当に大丈夫でしょうか?
VUFもそんなに信用が出来る奴らではありません」
「信用が出来なくても私には彼らが必要なんだ。
心配するな。絶対に上手く行く」
心配するリドリオにヴァルフレアは大丈夫だと告げる。
ヴァルフレアも内心、不安が大きかった。だが、目的の為にはある程度のリスクを受け入れなければならないと自身に言い聞かせてもいた。
(ソモラによれば、VUFのリーダーはとても豪胆な人物だと聞いているが…。何とか取引を成功させなければ…)
もしも今日ヴァルフレアの行動がヴィレーネ政府に知られる事になんてなれば……!? 恐らく、奴らは激怒するだろう……ビラ島に軍隊を送り込んでくるのは、明白だし確実だ。
アンブレラ社もそうなれば、何の躊躇もなく自分を切り捨てるだろう。
だからこそ……今回の会談は、絶対に成功させなければならない死活問題でもある。
(やっぱり危ない橋を渡るべきじゃあなかったかもな… 今更言っても手遅れだが…)
内心では、自分の決断は間違っていたのではないかと……不安に押し潰されそうになっていたヴァルフレア。だが、そんな苦しそうな表情を簡単に出す気は毛頭なかった。
「閣下… そろそろ着くようです。
あそこが向こうが指定した会談場所です」
「アレか…」
窓から見えるのは、ヴィレーネ本島から離れた小さな孤島だった。
大きな広場が見える中、VUFの兵士がヘリを誘導している。
「全隊、油断するな。ヴァルフレア閣下の身を必ず守り抜け!」
「「「了解!」」」
ヘリは島の広場に着陸する。先行役のUBCS兵が先陣を切り、周囲の安全を確認する。
「よし。行け!」
残っていた他のUBCS兵もヘリから次々と降りていき、彼らに守らつつもヴァルフレアはヘリを下りていく。
そんな彼がヘリから降りたのを確認したのか……年若い兵士がヴァルフレアの前に立つ。
「お会いできて光栄です。
セニョール・ヴァルフレア。我らの司令官は既に中に居ますのでご案内いたします」
案内役の兵士の着いていき洞窟の中に入っていく。
(随分と入り組んだ洞窟だな… 案内が無ければ迷うぞコレは…)
用心を考えてこの孤島に会談場所にしたのだろうか?
「ここです」
ようやく目的地に着いたようだ。
(この先にVUFのリーダーがいるのか…。
さていよいよだ)
ヴァルフレアは意を決して扉の奥に入っていく。
「よくぞおいで下さったセニョール・ヴァルフレア」
「貴方が…?」
「私がヴィレーネ統一戦線の司令官であるゾラーノ・バルザールだ」
部屋にいた大男はヴァルフレアに自己紹介したのだった。
これこそ後の
ヴィレーネ統一戦線 (Virene unificación frente)
共産党政府に敵対する反政府組織で旧政権の要人や軍人が設立した。
国家社会主義、所謂ファシズムを掲げている。
第一次ヴィレーネ内戦で共産軍に敗北したファシズム政権の総統を始めとした要人達は共産党によって処刑されたが一部の者達はファシズムの信奉者の市民に匿まわれて危機を脱し共産党に復讐を誓いながら身を潜めた。
その後、共産党政府は多くの政策を実行したがどれも大失敗してしまい国民から見放されてしまう。それを見たファシズム派は現政権に不満を持つ国民達を先導して一気に見方に引き込み共産党政府に対し反政府組織として立ち上がった。
ヴィレーネの第二の都市であるバラシティを本拠地として政府軍と優位に戦ってるものの支援が薄いために大きな攻勢に出れずにいる。