戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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初めましての方は初めまして。そうでない方はこんにちは。

性懲りもなくまたも新作を書いちゃいました。他の作品もまだ完結してないのに・・・でも書きたかったんだもん。悔いはありません。

今回の作品はずーっとどうしようかと悩んでいたシンフォギアです。前々からシナリオを考えてはいたんですけど・・・今日思い切って投稿してみることにしてみました。残酷の描写ってありますが・・・正直、他の方の作品と比べると、全然負け劣ってしまうかもしれません。

とりあえず、何話かは溜め込んでいるので、最初の2話を投稿し、残りは翌日に1話ずつ投稿しようと思います。今作品はAパートBパート分に分かれているので、私の作品にしては文章は短いです。

後、私の作品を知っている方に1つ注意点。この作品・・・人が死にます。そして1話からいきなりオリキャラが死にます。ご了承ください。


無印編-ルナアタック事変-
惨劇から始まる物語


八千八声

 

啼いて血を吐く

 

ホトトギス

 

その小さな鳥は血を吐きながら、歌を歌い続ける鳥。

 

少女たちもまた、歌を歌い続けた。血を流しながら、歌い続けた。少女たちは・・・戦場で血を吐きながら、歌い続けた・・・。

 

 

 

戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌

 

 

 

現実から1年前・・・歌声がよく響きそうな街の大広間。そこに3人の女子高生が集まっており、そのうちの1人の女子高生はスマホを操作して、動画撮影の準備をしている。

 

「ふぅ・・・ねぇ2人ともー、カメラの位置はこれでいいかなぁ?」

 

彼女の名は東雲日和。私立リディアン音楽院に通う高校1年生で、高校生バンド、アビスゲートのベース&ボーカルを担当でリーダーを務めている。黒髪のストレートロングで妙にぴょこぴょこさせたうさ耳のようなカチューシャが特徴的な天真爛漫で猪突猛進な女の子である。

 

「んー・・・まぁ、いいんじゃない?ここからの位置なら、バッチリ移りそう」

 

日和が設置したスマホ位置にOKを出したのは、リディアンの制服とは違う制服を着込んだ金髪のショートヘアの女子高生であった。彼女の名は北御門玲奈。普通科の進学校に通っている高校2年生でアビスゲートのギター&ボーカル担当。いい意味でも悪い意味でも思っていることははっきりと表に出すこと裏表がない性格をしている。

 

「しっかし、あなたが急に野外ライブをするって言い出すなんて思わなかったわ。それも唐突に。おかげで、今回のライブに相当準備がかかったわ」

 

「はは、やっぱりびっくりしたよね。突然ごめんね、急にこんなこと言いだしちゃって」

 

「別にいいわよ。あんたの猪突猛進っぷりは今に始まったことでもないし」

 

「もう、またそんなことを言う・・・」

 

どうやら今回のライブは日和が突然開催したいと言い出したことによって始まったことらしい。今回のことに玲奈はもう慣れたと言わんばかりに笑みを浮かべている。

 

「わかってるって。1年前のライブがきっかけでしょ?相変わらず、あんたはお人好しというかなんというか・・・」

 

「はは・・・悲しそうな顔をしてる人を見ると、なんだか放っておけなくて・・・」

 

もちろん日和が今回の野外ライブを開こうとしている理由はある。事の始まりは1年前のライブ会場で起こった惨劇から始まる。その日は日和はベース教室でベースを習っていたのでその日のライブに来れなかったが、一般人から見れば幸いともいえるかもしれない。だが問題はそこではなく、そのライブに参加していて、生き残った観客の方だ。

 

1年前のライブでの死者、行方不明者の総数は万は越えるほど。その中の半数、いやそれ以上の人間が人の手によって亡くなってしまったのだ。そして生き残った人間には国からの補償金をもらっている。それによって、惨劇を生き残った人間は『人殺し』など『税金泥棒』などと言われのないバッシングを受けることとなってしまったのだ。日和の中学校時代の友達もその中の1人である。久しぶりに会った際にその話を聞いて、いてもたってもいられなくなった日和はそのバッシングを何とかしようとした。だが、言ったところでバッシングはやめることはなかったどころか、自分さえもされかけたことがある。

 

だからこそ考えた。言葉でダメなら、歌で伝えようと。歌には、人の心を惹きつける力がある。思いを込めて歌えば、きっとわかってくれると。それが日和が今回ライブを開こうとした理由である。

 

「青臭いね。それでどうにかなるならとっくの昔にバッシングなんてなくなってるっての」

 

「やっぱりそう思う?でも・・・やらないよりはましかと思って・・・」

 

「はぁ・・・そんなあんただからこそ、私は救われたんだけどね」

 

「え?」

 

「何でもない。ライブ、成功させようって言っただけ」

 

「玲奈・・・」

 

玲奈の呟きは聞き取れなかったが、にっと笑ってくれる玲奈を見て、日和も笑顔になった。

 

「ちょっとお2人さん!!?話し込んでないでこっち手伝ってよー!」

 

2人で話していると、栗毛のサイドテールでリディアンの制服を着込んだ女子高生がドラムセットを持ちながら声をかけてきた。彼女の名は伊南小豆。リディアンに通う高校1年生で、アビスゲートのドラム担当。マイペースながらも自身のやるべきこと、成すべきことをきっちりとこなす意外にしっかり者の性格。

 

「わっ!ごめん!すぐ手伝うよ!」

 

「やれやれ・・・」

 

日和と玲奈は1人でドラムセットを設置する小豆を手伝いに向かっていくのだった。ただ玲奈はただ1人、今回何もなければいいなとも少し不安な心情を抱いてはいた。

 

~♪~

 

全ての準備を整え、いつでもライブできるような環境になった。今回は広告なしで動画配信ライブのため、広間にはまだ観客がいなかった。アビスゲートの3人は裏側でTシャツに着替えて準備を整えている。

 

「ん~~・・・緊張するねぇ~・・・。私たちの歌が、動画になるのか~。有名人になっちゃうね~」

 

「バカなこと言わないで。それより、準備はできたの?」

 

「もっちのろん!」

 

「ならいいけど。日和はどう?」

 

小豆はマイペースに手首を伸ばしてリラックスしている。玲奈は日和にも確認を取っているが、返事は帰ってこなかった。

 

「日和?」

 

「・・・・・・」

 

日和はこれからステージに出ることに少し緊張してしまっている。果たして、自分の歌はみんなに届くのか。思いは伝わるのか。明るい性格だが、臆病者でもある日和はそんなことばかり考えている。それを察した小豆は日和の頬をそっと触る。

 

「!小豆・・・」

 

「ネガティブに考えすぎ。いらないことは考えず、今はパーっと楽しもうよ。私たちが楽しまなかったら、観客だって楽しめないでしょ?」

 

「小豆・・・うん。そうだよね。私たちがライブを楽しまないとだよね」

 

「そう!ライブを楽しんでこそ私たち、アビスゲートでしょ?」

 

小豆なりの励ましに日和はライブにおいて1番大切なことを思い出し、笑顔になっていく。すっかり元気を取り戻した日和は深呼吸で息を整え、気合を入れるために頬を叩く。

 

「行こう!玲奈!小豆!」

 

「ええ!」

 

「うん!」

 

アビスゲートの3人は意気揚々と今回のライブステージへと入場していく。観客は未だにいないため拍手はない。それでもかまわず、3人はそれぞれのパートの楽器を持つ。

 

「すぅー・・・皆さん、こんにちは!私たち、アビスゲートです!」

 

日和はスマホのカメラに向かって、動画を見ている人たちに向かって挨拶をする。

 

「今日は突然のライブ配信でごめんなさい!しかし、どうしても私たちの思いを、皆さんに聞いてほしくて・・・今日というライブを私がご用意させていただきました!まずは1曲・・・どうか・・・聞いてください」

 

日和のマイクスピーチを区切り、小豆のドラムスティックの合図で演奏を始め、日和と玲奈は歌い始める。日和が最も憧れるアーティスト、ツヴァイウィングの曲、逆光のフリューゲルのカバーを日和と玲奈は演奏し、歌う。

 

「「~~♪~~~♪」」

 

「お、なんだなんだ?」

 

「ツヴァイウィングの・・・」

 

「わぁ・・・きれいな歌・・・」

 

「あの子たち・・・かわいい・・・」

 

楽しそうにライブをしているライブにたまたま広間を散歩をしていた人たちが聞き、その楽しそうに歌う姿勢に人々は惹かれていった。やがて会場は小規模ながらも、人が集まってきた。それを見た日和と玲奈は嬉しくなって張り切って演奏のキレを増していく。

 

(やっぱり・・・誰かに歌を聞いてもらえるのは・・・気持ちいい・・・これが・・・ライブなんだ・・・)

 

1曲目の演奏が終わり、集まった観客はアビスゲートに向かって、小規模ながらも、多大な拍手を送った。お互いに汗をかいたアビスゲートの3人は互いに顔を合わせ、共に笑いあった。日和は視線をスマホのカメラに向ける。

 

「ありがとうございました!今回のライブは・・・」

 

日和がマイクスピーチを行おうとした時だった・・・この会場の辺りに、黒い塵のようなものが舞っていた。この塵は炭の欠片である。この塵を見た途端、玲奈は顔を強張った。

 

「・・・ノイズ!!」

 

会場の遠くを見てみると、そこには、液晶ディスプレイのようなものが付いた多種多様な生命体がこちらに近づいてきているではないか。空にも似たような生物が飛び回っている。

 

「ノイズだああああああああ!!!」

 

ノイズと呼ばれる生命体を見た観客は顔色を恐怖に変えて、ノイズから逃げていった。ノイズは人間を見つけるや否や、観客を追いかけていった。観客の1人の中に1人、つまずいて転んでしまった。その転んだ人間にカエルのようなノイズがのしかかった。そして、その瞬間・・・

 

「た、助けてくれえええええぇぇ・・・」

 

なんとノイズは、のしかかった人間を黒い炭に変えて、自分事その人間を崩していった。それすなわち・・・人の死を意味する。しかもそのノイズは・・・カエル型だけではない。

 

「死にたくない!!死にたくない!!いやあああぁぁ・・・」

 

「うわああああぁぁ・・・」

 

人型のノイズも、空を飛んでいるノイズも、人と接した瞬間に、自分事人間を炭に変えていき、惨殺の限りを尽くしている。

 

ノイズ・・・それは国連総会にて認定された突如として現れた特異災害。このノイズの特性は、人間を見つけるや否や襲い掛かり、触れた人間を炭素転換して自分事その命を奪いとる。通常兵器ではノイズを倒すどころか傷も与えられない。ゆえにノイズと遭遇した場合、一般人はノイズが自壊するまで逃げなくてはならない。それ以外に、生き残る方法はない。1年前のライブの惨劇・・・その惨劇を作り上げた原因が、このノイズなのだ。

 

「あ・・・ああ・・・」

 

「な、なんで・・・なんでノイズが・・・」

 

ノイズを見て恐怖している小豆と日和は顔をひどく青ざめ、立ち尽くしている。

 

「小豆!日和!こっちに!」

 

そんな中でも1番冷静な玲奈は小豆と日和の手を持って、ノイズから逃げていく。それを見たノイズは3人を追いかけていく。玲奈は段差を利用しながら小豆と日和を連れてノイズから遠ざけていく。草むらまで逃げた玲奈はここで小豆と日和の手を放す。

 

「2人とも、いい?このままノイズから逃げるのよ!絶対に振り返っちゃダメ!」

 

「で、でも・・・玲奈は?」

 

「私が囮になる。あんたたちはその間に逃げて」

 

玲奈を置いて自分たちだけ逃げる行動に対し、日和は賛成しなかった。

 

「だ、ダメだよそんなの!玲奈も一緒に逃げよう!」

 

「心配しないで。私は逃げ足が速いから、絶対に逃げ切れるわ」

 

「で、でも・・・」

 

「小豆・・・」

 

玲奈は小豆に向かって笑みを浮かべる。

 

「日和を頼むわね」

 

「・・・信じてもいいのよね?玲奈の無事を」

 

「もちろんよ」

 

玲奈の顔には何とかなるという確信があった。その確信を信じることにした小豆は日和を連れてこの場から離れる。

 

「行こう、日和!」

 

「嫌だ!玲奈!玲奈あああああああ!!」

 

嫌がる日和を連れていく小豆を見送った後、玲奈はノイズから逃げることはせず・・・それどころか立ち向かおうとしている。

 

「・・・巻き込ませるわけにはいかない。あの2人だけは、何としてでも守る。私には、その力がある」

 

玲奈は首にかけてある赤い結晶のネックレスに手をかけて、口ずさむ。

 

violent nyoikinkobou Zizzl……

 

何かの詠唱を唱えた瞬間、玲奈のネックレスは光輝き、玲奈を包み込んだ。光は玲奈の着ていた服を分解し、白と黒、茶色が配色されたインナースーツの鎧へと変化していった。謎の鎧を身にまとった玲奈は右腕のユニットから小さな赤い棒を取り出した。そして、赤い棒は槍のように長い棍へと変化していく。棍を持った玲奈はその棍を回した後に構えて、戦闘態勢に入る。

 

「来い、ノイズ共。私が相手だ」

 

そう口にした瞬間、玲奈は急に歌を歌い始めた。ノイズは歌を歌う玲奈へと襲い掛かっていき、玲奈は迫るノイズを躱していく。そして、ノイズに近づき、玲奈は棍をノイズに振り下ろした。すると・・・

 

グシャッ!!

 

なんと、通常兵器では効かないはずのノイズが炭の塊となって崩れたではないか。玲奈自身は炭になった様子はない。それどころか玲奈は棍を振り回して、次々とノイズをなぎ倒していった。さらに玲奈は左腕のユニットを展開し、もう1本の赤い棒を取り出し、棍と連結させ、連結棍に変化させていく。そして玲奈は連節棍を振り回し、横一閃でノイズを薙ぎ払う。

 

【夜露死苦】

 

連節棍に直撃したノイズは次々と炭の塊となり、崩れていく。玲奈は連節棍の棍を2つ外し、二刀流になる。

 

(ここから本部まで距離がある・・・それでも・・・あの子が来るまでは・・・私1人で何とか持ちこたえてみせる!)

 

誰かを待っている様子の玲奈は2つの棍を器用に操り、歌いながらノイズと戦い続けるのだった。

 

~♪~

 

一方その頃、あの場を玲奈に任せて小豆は今も嫌がっている日和を連れてノイズから逃げていく。

 

「小豆!離して!このままじゃ玲奈が・・・玲奈が・・・!」

 

「ダメだよ日和!今戻ったらみんなノイズに殺されちゃう!」

 

今にも引き返そうとする日和を小豆は必死の思いでそれを止める。小豆だって本当は玲奈を置いていくのは納得していなかった。だが、玲奈には絶対に生き残れるという確信があった。それが何かはわからないが、小豆はその可能性を賭けてみることにしたのだ。玲奈を信じているから。だがそれでも納得していないのが日和なのだ。

 

「じゃあ小豆は玲奈がどうなってもいいっていうの!!?小豆はそんな薄情者だったの!!?」

 

「どうだっていいわけないでしょ!!私だって玲奈のことは・・・」

 

「だったら玲奈を助けようよ!!3人で一緒に逃げるの!!」

 

「だから今はダメなんだって!!」

 

お互いに意見のすれ違いによって、小豆と日和は言い争いになってしまう。こうしている間にも玲奈に危険が迫ってると考える日和は小豆の手を振り払う。

 

「もういい!!1人で逃げたいなら勝手に逃げて!!私は玲奈を助けるから!!」

 

「ちょ・・・待ってよ日和!日和!!」

 

日和は小豆の静止の声を振り切って、玲奈の元へと引き返していった。

 

「ああ、もう!!臆病なのに相変わらずこういう時に限って頑固なんだから!!待ってってば!!」

 

小豆は日和の暴走を止めようとして、彼女もまた玲奈の元へと引き返していくのだった。

 

~♪~

 

場所は戻って戦場、玲奈が次々とノイズを蹴散らしていくが、倒しても倒しても次々とノイズが沸き上がってきている。数多くのノイズをさばいてきたせいか、玲奈の顔色には疲れが見え始めている。

 

「はぁ・・・はぁ・・・さすがに・・・キッツ・・・時限式(・・・)も・・・これが限界か・・・」

 

そんな玲奈にノイズたちはお構いなしにどんどんと突進してきた。突っ込んできたノイズに玲奈は棍を素早く回してその突進を防いでいく。

 

(けど・・・もう少し・・・もう少し持ちこたえてみせる・・・!あの子が・・・駆けつけに来るまでは・・・!)

 

自分1人では全滅させるのは難しいことは玲奈にはわかっている。だからこそ、この状況をどうにかできる専門家をずっと待っているのだ。

 

「玲奈ぁ!!」

 

「!!?」

 

この戦場で日和の声が聞こえてきて、玲奈は耳を疑った。ノイズとは反対方向を見てみると、そこには自分が逃がしたはずの日和が駆け寄ってきた。当然、玲奈の待ち人とは、日和ではない。この場に日和が戻ってきて驚いている玲奈だが、日和もまた、玲奈の着込んでいる鎧を見て、驚いた顔になっている。

 

「日和⁉なんで戻ってきたの!!?」

 

「玲奈・・・なんなの・・・その恰好・・・?」

 

「バカ!!早く逃げなさい!!」

 

玲奈が日和に早く逃げるように声を荒げるが、ノイズが日和の存在に気づいた。ノイズは標的を日和に変えて、こちらに迫ってきた。

 

「ひっ!!の、ノイズ!!」

 

「させるかぁ!!」

 

玲奈は日和を守るために迫ってきた棍で薙ぎ払った。玲奈の攻撃でノイズが炭になって崩れた姿を見て日和は自分の目を疑った。通常兵器では効かないはずのノイズが目の前で倒されたのだから無理もない。

 

「ノイズを・・・倒してる・・・?玲奈が・・・倒したの・・・?」

 

日和が驚いている間にも、ノイズは日和に向かって突進する。玲奈は日和を守るために棍を回して突撃したノイズをさばいていく。しかし、空を飛ぶノイズもまた日和に向かって突進してきた。それを見た玲奈はもう1つの棍を回してそれを凌ぐ。

 

「くっ・・・ぐうぅ・・・!」

 

「玲奈・・・」

 

日和を守りながらノイズを倒すのは玲奈の力量では持ちこたえるよりも難しい。その証拠に玲奈の顔は若干苦しげであり、鎧のユニットもノイズの攻撃によって崩れ始めている。玲奈の苦しそうにしている姿に日和は心配そうにする。

 

「日和!!玲奈!!」

 

するとそこに日和を連れ戻しに来た小豆がここに戻ってきた。小豆も玲奈の姿を見て、驚いた顔になる。

 

「れ、玲奈・・・何その姿・・・?コスプレ?」

 

「私のことはいいから早く日和を!!」

 

「う、うん、任せ・・・はっ!!」

 

気になるところはあれど、早く日和を連れ戻そうと動く小豆は気づいた。別方向から別のノイズの群れがこちらに迫ってきたのを。そして、そのノイズの1体が日和に向かって突進してきたことを。

 

「日和!!危ない!!!」

 

小豆はすぐに動いて日和をノイズのいない方へ突き飛ばした。突き飛ばされた日和は小豆に顔を向ける。

 

「日和・・・私の分まで・・・生きて・・・」

 

グサッ!!

 

日和を突き飛ばした小豆は日和に生きるように言い放った瞬間、ノイズは小豆の身体を貫いた。

 

「あ・・・ずき・・・?」

 

ノイズに貫かれた小豆は炭素転換して、体が黒くなっていき・・・そして・・・粉々になって砕け散った。最愛のバンドメンバーが炭へと変わり果て、日和と玲奈は目を見開いた。

 

小豆いいいいいいいいいいいい!!!!!!

 

大好きだったバンドメンバーであり、友達でもあった小豆の死に、日和は涙を流しながら悲痛な叫びをあげた。そして、玲奈はノイズに対し、激しい憎悪を向ける。

 

「よくも・・・よくも小豆を・・・

 

・・・ノイズぅ!!!!

 

玲奈は棍を力いっぱい握りしめ、それを地面に突き刺した。そして、数秒もたたないうちに地面から突き刺した棍が数えきれないほどに現れ、ノイズを殲滅させていく。

 

【仏恥義理】

 

これによって多くのノイズの数を減らすことはできたが、それでもノイズは多くいる。玲奈が戦っている後ろで日和は小豆であった炭を涙を流しながら見ている。

 

「ねぇ・・・嘘だよね・・・こんなの嘘だよ・・・小豆・・・小豆ぃ・・・」

 

「日和!!気をしっかり持ちなさい!!」

 

悲しみに暮れる日和に玲奈は叱咤する。その間にもノイズの大群は液体のようになり、他のノイズたちとくっつきあい、混じりあっていく。そして、その形は1つとなり、さっきまでとは異なる巨大な個体となった。

 

「ちっ・・・ここでデカブツ・・・」

 

巨大なノイズはその巨大な腕を玲奈に向けて振り下ろした。玲奈は日和を抱え、巨大ノイズの攻撃を躱す。

 

(デカブツだけじゃない・・・他のノイズもいる・・・。日和を守りながらじゃとても切り抜けない・・・ここまでなの・・・?)

 

日和を守った状態では本来の力を出し切れない玲奈は苦い表情をし、半分諦めかけた。

 

「・・・私のせいだ・・・」

 

「日和?」

 

「私がライブを開こうなんて言い出さなかったら・・・私が玲奈を連れ戻そうとしなければ・・・小豆は・・・小豆は・・・」

 

「日和・・・」

 

小豆の死を自分のせいだと思い込み、自責の念に囚われてる日和に玲奈は彼女の頭をポンと乗せ、頭をなでる。

 

「例えそうであったとしても・・・私たちは日和の提案を、断らなかったよ。それに・・・小豆は日和のことが大好きだったんだ。あの子のことだから・・・小豆は日和を守れて、誇らしく思ってるはずだよ。もちろん私も、日和のことが、大好きよ」

 

「でも・・・でもぉ・・・」

 

「大丈夫・・・すぐに終わらせるから」

 

玲奈は視線をノイズへと戻し、ノイズの元へと近づいていく。

 

(そうだ・・・この子は・・・この子だけは・・・絶対に守り通してみせる・・・。たとえ・・・この命に代えようとも!!)

 

玲奈はノイズと日和の中間に立ち、持っていた棍を地面に突き刺す。

 

(今日は特大な観客が来てるんだ・・・そんなに歌が聞きたいなら、聞かせてやるよ・・・とっておきの曲・・・絶唱を)

 

玲奈は息を吸って、自分の心を落ち着かせる。

 

(・・・さようなら・・・日和・・・)

 

玲奈は心の中で日和と別れを告げ、静かに涙を流す。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

Emustolronzen fine el baral zizzl……

 

(歌・・・?玲奈の・・・歌・・・なの・・・?)

 

(そうさ・・・これが・・・命を燃やす禁断の歌・・・絶唱)

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

Emustolronzen fine el zizzl……

 

玲奈はにっと口元に笑みを浮かべる。・・・口から血を流しながら。そして、次の瞬間・・・玲奈の身体から凄まじい威力の衝撃波が放たれた。その衝撃波はノイズだけを消滅させた。衝撃波が晴れると、ノイズは全て全滅していた。

 

「の・・・ノイズが・・・消えた・・・」

 

何もかもが信じられない光景を目の当たりし、日和は呆然とする。すると・・・立ち尽くしていた玲奈はゆっくりと・・・静かに倒れていき、持っていた棍は粉々に砕け散った。

 

「!!玲奈ぁ!!」

 

倒れていく玲奈を見て日和は慌てて玲奈に駆け寄って、玲奈を支える。玲奈の口にはおびただしい血が溢れ、瞳は光を失い、虚ろっている。

 

「玲奈!しっかりして!玲奈ぁ!!」

 

「・・・・・・あぁ・・・日和ぃ・・・無事だった・・・よかった・・・。でも・・・もう・・・あなたの姿が・・・見えないよ・・・」

 

玲奈の声質は弱々しくなってきており、今にも消えそうになってしまっている。

 

「玲奈!!待ってて・・・今・・・今救急車を呼ぶから・・・」

 

「日和・・・私の・・・人生は・・・狂いっぱなしだった・・・。自分が・・・自分を・・・制御できないように・・・」

 

「もういい・・・もう喋らないで!!きっと・・・まだ間に合うから!!」

 

「でも・・・日和・・・あなたに出会って・・・私は・・・幸せだった・・・。たった1年の付き合いでしかないけれど・・・あなたのおかげで・・・復讐ばかりに・・・囚われていた・・・私の心を・・・溶かしてくれた・・・。私は・・・あなたが大好きよ・・・。あなたは・・・私にとって・・・太陽のような存在・・・」

 

命の灯が失おうとしている玲奈はそっと・・・今にも泣きそうな日和の頬を触れる・・・

 

「日和・・・この先・・・どんな辛いことがあっても・・・苦しい時があっても・・・怒りたい時があっても・・・決して・・・自分を見失っちゃダメ・・・憎しみに囚われてはダメ・・・前を向いて・・・生きなさい・・・私や、小豆の分まで・・・いい?」

 

「うん・・・うん・・・約束する・・・絶対に・・・自分を見失わないから・・・だから・・・」

 

日和の言葉を聞いた玲奈は安心した笑みを浮かべる。

 

「私の・・・短い人生は・・・幸せだった・・・」

 

玲奈が日和の頬から手を放した瞬間、玲奈の身体はだんだんと・・・塵と化していっている。

 

「!!!玲奈!!!ダメェ!!!」

 

日和は塵となっていく玲奈を止めようと思い切って抱きしめようとしたが、それで止まるはずもなく玲奈は塵となって消え、塵は風に乗って舞っていく。この場に残ったのは、玲奈がいつも肌身離さず着けていた赤い結晶のネックレスだけだった。

 

「玲奈・・・あ・・・ああ・・・あああああ・・・」

 

小豆の死だけでなく、玲奈の死まで目の当たりにした日和は悲しみに明け暮れ、涙を大量に流す。

 

うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!

 

日和は泣いた。声を出して泣いた。最愛の友の死の悲しみによって、大声で泣いた。この日、日和が属する高校生バンド、アビスゲートは突然のノイズの襲撃によって、事実上の解散となってしまった。これが・・・日和が経験した、悲しい1年前の、出来事であった。




アビスゲート

東雲日和が作り上げたバンドグループ。歌のジャンルは問わず、日和が作り上げた歌詞を元にし、それに合わせた曲を演奏する。カバー曲も演奏するが、たいていがツヴァイウィングの歌である。

メンバーはリーダーの東雲日和、ベース&ボーカル担当。北御門玲奈、ギター&ボーカル担当。伊南小豆、ドラム担当。この3人である。

活動から1年経ったが、ノイズの襲撃によって事実上解散となってしまった。
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