「・・・・・・は?」
エドワードからパヴァリア光明結社入りの勧誘された海恋はすぐには理解が追い付けなかった。
「何を・・・言っているの・・・?」
「汝を結社に迎え入れたいと言うておる。汝の能力は実に素晴らしいものじゃ。妾が提示する問題を難なく答え、なおかつ妾を出しぬくような問題を提示できる豊富な知恵。相手の考えを推測、策を立てる洞察力・・・そして、ギリギリと言えど、この妾に勝利をもたらすほどの運。才能の芽とはよく言ったものじゃのぅ」
エドワードの発した単語、才能の芽に海恋は反応した。それは以前キャロルが自分に対して向けられた単語だからだ。
「また才能の芽・・・いったい何なの⁉何の才能なのよ⁉」
「決まっておろう・・・錬金術師としての才能じゃ」
「!!?」
錬金術師としての才能・・・それを自身にあると言われて驚愕している。それもそのはずだ。外部協力者という点を除けば、今の今まで普通の女子高生として過ごしてきたのだ。実感を湧くわけがない。
「汝のことはキャロルが引き起こした・・・魔法少女事変・・・だったかのぅ?一部始終を観測させてもらったが、汝の記憶力には目を見張るものがあった。すぐに顔合わせでもしたかったが、S.O.N.Gにかぎつけられると面倒でのぅ。どうしたものかと悩んだものじゃが、汝はここの現当主の娘らしいではないか。ならば家出した娘を炙り出すなら簡単じゃ。ざっと120通りも思いつくわ」
「じゃあ・・・これは・・・私を誘き寄せるために・・・?」
「その通り。あるべき姿を取り戻すためでもあったがのぅ」
エドワードは着物の袖口より扇子を取り出し、それを振るって開いて口元に当てる。
「なぁに、汝に不自由は強いらせぬ。寝床も、学び舎も、食事も、全てこちらで用意してやろう。体術も後々に身に着けるがよかろう。好きな時に学び、汝の思うように行動するがよい。どうじゃ?不自由を強いられた汝にとって悪い話でもなかろう?」
「お断りよ!!」
エドワードの勧誘に海恋は声を上げて勧誘を振り払う。
「あなたたちのことは知ってる!あなたたちはS.O.N.Gの敵で、いろんなものを利用して、人々を苦しめている!そんな人たちの組織に入るなんて・・・」
「浅はかじゃのう」
海恋の主張にエドワードは薄ら笑いを浮かべてそう一蹴した。そして、さらに言葉を述べる。
「他人の聞いた噂を鵜吞みにし、組織の実態、内情、人間関係・・・様々な要素を払い、何も考えずこれを否定する・・・それは、怠慢というべきではないか?」
「誤魔化さないで!!あなたたちは現に人を・・・」
「確かにのう。じゃが、革命には犠牲はつきもの・・・如何なる時代においてもこれは変わっておらぬ。ならば、犠牲になった命が新世界の礎になれたことは、このうえない光栄だと思わぬか?」
「そんなわけ・・・」
「では、逆に汝に質問しよう」
自身の主張を否定しようとした海恋にエドワードは彼女の言葉を遮って1つの質問をする。
「汝の今の人生は、本当の意味で幸せか?」
「え・・・?」
質問の内容に海恋は唖然とする。エドワードは海恋の背後に回り込み、両肩を掴んで耳元に囁くようにしゃべる。
「例えばじゃ。親に認めてもらえず、ただ操り人形のように人生を弄ばれる。友人が汝の願いとは裏腹に、望まぬ結末へと歩んでいく。それは果たして、汝にとっての幸せと言えるか?納得さえしていれば、友を死地へと送り出すそれは、果たして互いに理解しあえたと言えるか?」
「そ・・・それは・・・」
エドワードの指摘によって海恋が思い浮かべるのは、苦い思いを味わった幼少期の日常。そして、1番大事な親友、日和が傷つき、倒れていく姿だ。
「革命が果たされれば、そんな苦い思いはせずに済むぞ?」
「・・・っ!だ、誰が・・・!」
海恋はエドワードの勧誘を断り続けているものの、意志はだんだんと揺らぎ始めている。エドワードの指摘に、思うところが多々あるがゆえに。
「まぁ、無理強いはせん。返事も急がぬ。決断を急がず、悩み、よく考えてから決めることじゃ。これは他ならぬ、汝自身の人生じゃからのう」
エドワードは海恋の両肩に乗せた手を放す。そして、割れたお面に近づき、錬金術でお面を分解して塵にした。
「撤収を急がせよ。全て元通りにな」
エドワードの指示を受けた錬金術師たちはお辞儀をして、テレポートジェムを割ってどこかへ転移した。
「!待って!本当に買収をなかったことにする気⁉」
「そういう勝負じゃからのう。それに・・・汝という存在が現れた以上、もはや買収に拘る理由もなくなった」
「・・・どういう意味よ?」
「ふふ・・・」
意味深な言葉に海恋は疑問符を浮かべながらエドワードに問いかけるも、当の本人は笑っているだけだ。エドワードが錬金術で出来上がった塵を手元に集めさせる。そして、錬金陣が塵を包み込ませると、最初に被っていた狐のお面に戻る。
「また会いに来るぞ。その時こそ、妾の取り戻したいものを語ってやろう」
エドワードがそう言い放つと、黄金の球体は眩い光を放ち、部屋全体を包み込む。海恋はその光に思わず目を閉じる。光が収まり、目を開けて見ると、エドワードの姿はなくなっていた。代わりに、黄金の球体に閉じ込められていた西園寺家の使用人と両親が気を失った状態で現れた。同時に黄金の球体はなくなっていた。
「父さん!!母さん!!みんな!!」
海恋はすぐに気を失った父親に駆け寄り、容態を確認する。気を失っているだけで、全員無事であることが確認できた海恋は安心してほっと息を吐く。
『汝の今の人生は、本当の意味で幸せか?』
「・・・・・・」
エドワードから放たれた言葉を思い返した海恋は神妙な顔つきになる。まるで全てを見透かされたような・・・そんな気がしてならなかった。海恋は使用人たちが目を覚ます前に執務室から出て、西園寺家の屋敷から離れていった。一旦はどうにかなったが、海恋の頭には、複雑な心境が渦巻いたままであった。
~♪~
場所は変わって松代。日はすっかり傾いて夕方となり、おばあさんを連れて撤退したマリアたちは退避場所である小学校にいる。おばあさんを背負っていたマリアは彼女を下ろす。
「ありがとね」
「いえ・・・」
「お水もらってくるデスよ!」
「待って切ちゃん!私も一緒に!」
切歌は物資を運んでいる自衛隊の元に向かい、調が彼女の後を追う。元気な2人を見ておばあさんは優しい微笑みを見せる。
「ふふ、元気じゃのう」
「ご婦人、お怪我はありませんか?」
「大丈夫じゃよ。むしろあんたらの方が疲れたじゃろうに・・・わしがぐずぐずしていたばっかりに迷惑をかけてしまったねぇ」
「いえ、これもまた任務ですので」
申し訳なさそうにしているおばあさんにフォルテは表情を変えずに淡々とそう返事をした。逆にマリアはおばあさんを危険な目に合わせてしまったことに落ち込みを見せている。
「・・・私たちに守る力があれば、お母さんをこんな目には・・・」
「・・・・・・」
LiNKERさえあればギアを纏って戦うことができる。それがままならないからこそ、マリアは歯がゆさを感じている。それはフォルテも同じことだが、彼女たちを纏めるために、毅然と振る舞い、不安要素である歯がゆさを押し殺している。
「そうじゃ。せっかくだからこのトマト、あんたたちも食べておくれ」
おばあさんは思いついたように背負っていた籠を下ろし、中に入っていたトマトをマリアとフォルテに差し出した。
「では、お言葉に甘えて1つ・・・」
「わ、私、トマトはあんまり・・・」
フォルテはおばあさんのご厚意に甘え、トマトを受け取るが、マリアはトマトが苦手であるがために表情が引きつっている。やんわりと断ろうとするが、おばあさんの優しい笑顔もあって、断り切れないでいた。
「では・・・ちょっとだけいただきます」
マリアはおばあさんからトマトを受け取るも、やはり苦手なものは苦手で、躊躇している。逆にフォルテは遠慮なくトマトに齧り付く。
「!うまい!マリアも食べてみろ!」
余程にトマトがおいしかったのかフォルテは目を見開き、マリアも食べるように勧めてきた。マリアは観念するかのように目を瞑り、トマトを一口齧った。
「!甘い・・・!フルーツみたい!」
「そうだろう?本当にうまい・・・」
トマトが苦手な自分でもおいしく食べられていることにマリアは驚き、フォルテはもう1度トマトを齧り付いてトマトの味を噛みしめる。
「トマトをおいしくするコツは、厳しい環境に置いてあげること。ギリギリまで水を与えずにおくと、自然と甘みを蓄えてくれるもんじゃよ」
「・・・厳しさに、枯れたりしないのですか?」
マリアは齧ったトマトを見つめ、おばあさんにそう質問した。
「むしろ甘やかしすぎるとダメになってしまう。大いなる実りは、厳しさに耐えた先にこそじゃよ」
おばあさんの言葉にフォルテは幼少期に経験したバルベルデやF.I.Sでの厳しい訓練を思い出した。おばあさんの言葉の意味が理解できたフォルテは笑みを浮かべる。
「ええ・・・わかる気がします」
「厳しさに耐えた先にこそ・・・」
逆にマリアは言葉の意味が理解できず、マリアは悩んだ表情を見せている。そんな彼女にフォルテは彼女の頭にそっと手を乗せる。彼女なりに励ましているのだろう。
「トマトも人間も、きっと同じじゃ」
おばあさんは優しい笑顔をマリアに見せてそう言った。
~♪~
仮設本部でバルベルデで手に入れた資料の解析を進めている弦十郎たち。だが進行状況は著しくないのが現状である。
「解析は難航していますね・・・」
「ぬぅ・・・」
解析が進んでいない状況下に弦十郎は苦い表情をしている。そこへ・・・
「司令、鎌倉からの入電です」
鎌倉という単語に弦十郎は目を見開き、すぐに渋い顔つきになる。それもそのはずだ。その鎌倉とは、人より国を思想としている者、風鳴訃堂。その人物の屋敷の地名であり、この場合であると本人であるからだ。
「直接来たか・・・。繋いでくれ」
「はい・・・」
「・・・?」
弦十郎を始めとする訃堂をよく知る者たちは緊張した面持ちでモニターを見つめる。訃堂のことを知らないエルフナインは首を傾げ、疑問符を浮かべている。
「出します」
モニターには風鳴の家紋と人影が映し出された。着物姿で肩幅が広い筋肉質な老人である。この者こそが、この国の組織を裏で牛耳っている者、弦十郎と八紘の父、翼の祖父にあたる人物、風鳴訃堂である。もっとも、血縁的には翼の父親ではあるが。
『無様な。閉鎖区域への侵入を許すばかりか、仕留めそこなうとは』
訃堂の声は厳格で力強いものでこの場にいる者を震え上がらせるには十分なものである。
「いずれこちらの詰めの甘さ、申し開きはできません」
『機関本部の使用は、国連へ貸しを作るための特措だ。だが、その為に国土安全保障の要を危険にさらすなどまかりならん!』
「無論です・・・!」
『これ以上夷狄に八洲を踏み荒らさせるな』
訃堂は言いたいことだけを言って通信を切った。息子である弦十郎はため息をはいた。弦十郎は訃堂が掲げる思想とは全く真逆のために、父親である彼が苦手である。
「ふぅ・・・さすがにお冠だったな・・・」
「それにしても司令。ここ松代まで追って来た敵の狙いは一体・・・?」
「狙いはバルベルデドキュメント。または装者との決着。あるいは・・・」
どちらにしても、情報量が少ないがために、対策を練ることもできない。今できることと言えば、バルベルデドキュメントの解析を急ぐことであった。その裏で、暗躍している者が海恋と接触していることも知らずに。
~♪~
時刻は夜。仮設本部で友里がバルベルデドキュメントの解析の補助を、エルフナインはLiNKERのレシピの解析にあたっている。自分の仕事に奮闘する中、調たちがコーヒーを彼女たちに運んできた。
「友里さん。温かいもの、どうぞ」
「デース」
「温かいものどうも。なんだかいつもとあべこべね」
いつも温かいものは友里が届ける側だったのだが、今回は逆の立場になっているのがおかしくて、つい笑う友里であった。
「あなたにも」
「ありがとうございます」
「今日のは自信作だ。ゆっくり味わってくれ」
エルフナインの元にもコーヒーが届いた。
「調べもの?順調かしら?」
「・・・・・・」
マリアがそう尋ねると、エルフナインはしょんぼりとした顔で俯いた。それが気になったマリアはエルフナインのモニターを覗いてみる。モニターにはかつてF.I.Sに所属していた子供たちの顔写真であった。
「これ・・・もしかして・・・」
「はい・・・少しでもLiNKERの完成が求められている今、必要だと思って・・・」
「私たちの忌まわしい思い出ね・・・。フィーネの器と認定されなかったばかりに、適合係数の上昇実験にあてがわれた孤児たちの記録・・・」
マリアは苦い思いをした忌まわしい思い出を振り返る。マリアはかつて自分も強くならねばとガングニールを纏っていた時があった。しかし、彼女には適合係数が低いため、バックファイアの痛みが襲い掛かり、何度も適合に失敗したことがあった。マリアはその当時の事を思い出す。
『無理よ、マム・・・やっぱり私には・・・セレナみたいにはなれはしない・・・』
『マリア。ここで諦めることは許されません。悪を背負い、悪を貫くと決めたあなたは、苦しくとも、耐えなければならないのです』
あの時、適合がうまくいかず、何度諦めかけたかも数えきれない。そして、それを許さなかったのは、マリアたちの恩人、今は亡きナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤであった。
「マム・・・」
マリアはその当時の苦い思い出を振り返って呟いた。すると・・・
ヴゥー!ヴゥー!
突如としてアルカ・ノイズ出現のアラートが鳴り響いた。友里は一旦解析を止め、アルカ・ノイズの出現場所を割り出す。
「多数のアルカ・ノイズ反応!場所は・・・松代第三小学校付近から風鳴機関本部へ進攻中!」
「トマトおばあちゃんを連れて行った所デス!」
「マリア!フォルテ!」
「ええ!」
「行くぞ!」
「いけません!皆さんにはまだLiNKERがありません!」
4人は自分の成すべきことを果たすために行こうとしたところ、エルフナインが呼び止める。ちょうどそのタイミングで弦十郎が戻ってきた。
「どこへ行く?」
「敵は風鳴たちに任せる!僕たちは民間人の避難誘導を!司令、出撃許可を!」
「わかった。無茶はするなよ」
「了解!」
弦十郎からの出撃許可をもらい、フォルテたちは急ぎ、小学校に向かって走り出した。
~♪~
アルカ・ノイズ出現区域にて、響、日和、翼、クリスの4人がアルカ・ノイズの群れと対峙している。
「これだけの数・・・」
「先に行かせてたまるかよ!」
「猶予はない。刹那に薙ぎ払うぞ!」
「「「了解!!」」」
時間をかけられないと判断し、短期決着のために4人はイグナイトモジュールの使用を決断する。
「イグナイトモジュール!」
「「「「抜剣!!!!」」」」
『『『『ダインスレイフ』』』』
4人がギアコンバーターのスイッチを押し、イグナイトモジュールを起動させる。4人のギアは通常状態から禍々しい漆黒のギアへと変わる。イグナイト纏い、クリスはボウガンで飛行型アルカ・ノイズを撃ち抜き、翼は刀で次々と斬り裂き、日和は棍でまとめて薙ぎ払い、響は格闘技で1体ずつ蹴散らしていく。イグナイトの使用ともなれば、やはりアルカ・ノイズを片付けるスピードは速い。その様子をサンジェルマンたちが施設の屋根の上で見ていた。
「抜剣、待ってました♡」
「さすがイグナイト・・・すごいワケダ」
「確かに。じゃが、わっぱ共は陰と陽の理に気付いておらぬ」
「ええ。だからこそこの手には、赤く輝く勝機がある」
4人の錬金術師はイグナイトに対抗できるアイテムを取り出した。プレラーティは玉部分に宝石が埋め込まれたけん玉を、カリオストロは宝石が装飾された指輪を、エドワードは鞘に宝石がついた刀を、サンジェルマンは受け皿の部分に宝石が装飾された西洋銃を。共通しているのは、ハート型の宝石が埋め込まれていることだ。サンジェルマンが西洋銃の引き金を引くと、鉄劇が弾き、4人の宝石が赤く輝き始める。翼が4人の存在に気付き、姿を捉える。そして、高く跳躍し両手に刀を持ち、刃に炎を纏わせて飛翔する。
【炎鳥極翔斬】
「押してまいるは風鳴る翼!この羽撃きは、何人たりとも止められまい!!」
翼は4人の錬金術師に突撃し、間合いに入ったところで炎が青くなり、それを纏った2つの刀を振り下ろした。だが翼の一撃は、4人を身に纏う赤い結界によって止められてしまう。いや、それだけではない。結界に触れた瞬間に、翼のギアが粒子変換され始めている。
「!!?ギアが・・・ぐあああああああ!!!」
翼が気を取られていた瞬間に相手の力に押し負けてしまい、吹き飛ばされてしまう。
「「翼さん!!」」
さらに翼のギアは漆黒が祓われており、イグナイトから通常の元のギアに戻ってしまっていた。そして、翼は弾き返されただけなのに立ち上がれないほどのダメージを負っていた。3人はサンジェルマンたちに視線を向ける。錬金術師たちは屋根の上で装者たちを見下ろしている。だが、格好は先ほどまでのものとは違う。彼女たちはそれぞれ形状が異なるボディースーツとアーマーを纏っていた。装者たちは似たものを目にしている。それは、キャロルが身に纏っていたダウルダブラのものと同じだ。だからこそ、その身に纏っているものがなんであるかがわかる。
「まさか・・・ファウストローブ!!?」
「よくも先輩を!!!」
クリスは激情に身を任せて小型ミサイルを展開し、錬金術師たちに向けて全弾を発射する。向かってくるミサイルを赤いファウストローブを身に纏ったプレラーティはけん玉を巨大化させ、それを振るって光の糸で繋がれた巨大な弾を放り投げる。巨大な弾は障壁を展開し、ミサイルの爆発を全て防いだ。
「はあ!!」
爆発の煙に乗じて黄色いファウストローブを纏ったカリオストロが飛び出し、クリス目掛けて拳を振るって光線を発射させた。すぐさまクリスはリフレクターを展開して光線を受け止めるが・・・
「このくらい・・・!!?」
「ふふ」
「ぐあああああ!!」
クリスのギアも粒子変換され、漆黒を祓われて元のギアに戻って吹っ飛ばされてしまい、建物と激突した。
「イグ・・・ナイトが・・・」
「クリス!!!」
「クリスちゃん!!!」
「どうした?イグナイトが解かれて驚いておるのか?」
「「!!」」
日和と響がクリスに気を取られている間にも黒いファウストローブを身に纏ったエドワードが背後に立っていた。日和が動こうとするよりも先にエドワードが先に行動した。エドワードは鞘から刀を抜刀し、日和の身体を一閃する。エドワードは赤く輝く刀身を鞘に納める。すると・・・
「うあああああああああ!!!!」
斬り口から赤い光が発し、光に包まれた日和はギアが粒子変換され、漆黒が祓われて元のギアに戻り、倒れてしまう。
「な・・・なんで・・・イグナイトが・・・」
「日和さん!!!」
響の背後にサンジェルマンが立ち、彼女に気付いた響は振り返る。サンジェルマンは西洋銃を響に向け、一発の弾丸を撃ち放った。弾丸は響には当たらず、通り過ぎた。しかし弾は響の背後で止まり、宙を浮いている。響が振り返ると、弾のエネルギーが圧縮し、響を巻き込んで爆発を引き起こした。爆煙が晴れると、響は倒れており、ギアも元の状態に戻っていた。
『なぜ・・・イグナイトが・・・?』
イグナイトが強制的に解除されてしまった事態に本部にいるエルフナインは動揺を隠せないでいた。サンジェルマンは響に近づき、彼女を見下ろす。
「ラピス・フィロソフィカスのファウストローブ。錬金技術の秘奥。賢者の石と、人は言う」
「その錬成には、チフォージュ・シャトーにて解析した世界構造のデータを利用・・・もとい、応用させてもらったワケダ」
ラピス・フィロソフィカス・・・それが、賢者の石と呼ばれる代物で、4人のファウストローブの源となっているハート型の宝石だ。
「やれやれ・・・もう少し楽しませてくれると思ったが・・・何ともくだらぬ幕引きよのう」
予想以上にあっけなく4人のイグナイトが解除されたことにエドワードはつまらなさそうにそう呟いた。
「・・・あなたたちがその力で、誰かを苦しめるというのなら・・・私は・・・」
響は痛みで起き上がることができず、仰向けのままでしゃべる。
「誰かを苦しめる?慮外な。積年の大願は、人類の解放。支配のくびきから解き放つことに他ならない」
「人類の解放・・・?だったら、ちゃんと理由を聞かせてよ・・・。それが誰かのためならば・・・私たち・・・きっと・・・手を取り合える・・・」
「・・・手を取り合う・・・?」
響が倒れてもサンジェルマンと話し合いをしようという姿勢に、エドワードは面白くなってきたと言わんばかりに笑みを浮かべる。
「サンジェルマン。さっさと・・・?」
しびれを切らしたカリオストロが口を開いた時、夜の中に光が発せられたことに気付いた。光が発する方角を見て、カリオストロは驚愕する。
「あの光!!?」
光の発生源を見て、サンジェルマンは顔を強張らせている。光の発生元は小さな極光であり、それを作り上げたスーツを着込んだ男が右掌にそれを乗せて宙を浮いていた。
「統制局長アダム・ヴァイスハウプト!」
そう、この男こそがパヴァリア社の首魁にして、サンジェルマンたちの上司、統制局長アダム・ヴァイスハウプトである。
「何ゆえ局長殿がここにおる?」
「ふっ」
アダムは被っていた帽子を放り投げる。極光の輝きがさらに増し、増大した熱で彼のスーツが焼却し、一糸まとわぬ姿となる。
「何を見せてくれるワケダ!」
「金を錬成するんだ。決まってるだろう?錬金術師だからね、僕たちは!」
アダムが極光を頭上に掲げると、背後に錬金陣が展開され、極光もさらに巨大なものとなる。
~♪~
アダムが作り上げられた極光は仮設本部でも目で確認できるほどに強大だ。仮設本部でエルフナインがこの超常現象の解析にあたる。
「まさか・・・錬金術を用いて常温下での核融合!!?」
錬金術を用いた核融合は前回のキャロルとの戦いでも起きたことはある。ただあれは膨大な思い出を焼却して力に変えてようやく放つことができた悪あがきのようなもの。だがアダムの場合はそれを必要とすることなく容易に創り出し、その威力もキャロルのものと越えるものだ。そんなものが地に放たれれば、辺りが消し飛ぶのは間違いない。
「新たな敵生体に加え、光線地点にて、ミスティルテイン、アガートラーム、シュルシャガナ、そしてイガリマの反応を確認!!」
「フォルテさんたちが!!」
モニターには光線地点に駆けつけたフォルテたちがイグナイトモジュールを起動してアルカ・ノイズを殲滅する姿が映る。
「LiNKERを介さずの運用です!このままでは、負荷に身体が引き裂かれます!」
フォルテたちは気を失った響たちを助けるために彼女たちに駆け寄る。その間にも極光の輝きはさらに増していく。
「膨張し続けるエネルギーの推定破壊力、約10メガトン超!」
「ツングースカ級だとおおおお!!?」
あまりにも膨大な被害予測情報に弦十郎は驚愕の声を上げた。
~♪~
フォルテたちは気を失っている4人を担ぎ、戦線から離脱しようとするも、LiNKERを使わずにギアを纏っているため、バックファイアの痛みが走る。
「3人とも!局長の黄金錬成に巻き込まれる前に!」
「当然じゃ!巻き込まれは御免蒙る!」
サンジェルマンたちはアダムの黄金錬成に巻き込まれないようにテレポートジェムを使って戦線を離脱した。フォルテたちもバックファイアの痛みに耐えながら4人を抱えたまま走る。しかしアダムは極光を地に向けて放ち、着弾した極光は大爆発を引き起こした。大規模な爆発がフォルテたちに迫ろうとしている。
「「例えこの身が・・・砕けてもおおおおお!!!」」
マリアとフォルテが叫んだ時、マリアは白い燐光、フォルテは赤い燐光に包まれる。同時に迫ってきた爆発が収まり、一瞬の輝きを放って、極光は消滅した。
黄金錬成によって地面が抉れ、蒸発してしまった大地をアダムは見下ろし、握っていた右手を開く。アダムの掌にはビー玉のように小さな黄金の玉があった。
「ほう・・・?ははははは!ビタイチか!安いものだなぁ、命の価値は!」
アダムの高笑いが静寂な夜に響くのであった。
フォルテの(自称)特技
マネージャー業務やその他諸々の作業をしていると、深夜なってしまうことが多々ある。少しでも作業を進めたいと考える彼女は自分でコーヒーを入れて飲むことで眠気を吹っ飛ばそうとすることが多い。それらを繰り返していると、昼夜問わずコーヒーを入れるようになり、日を重ねるとインスタントでは物足りなくなり、専用の道具と豆を使ってコーヒーを入れるようになった。それも相まってフォルテはコーヒーを入れることを何よりも得意だと自称するようになった。ちなみにコーヒーの味は可もなく不可もなくといったところだ。