戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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前回同様に、今回も3作品の投稿を行いました。そして今回の投稿で今年のシンフォギアの投稿は最後となります。

来年もシンフォギア、投稿を再開した2作品も頑張って達筆していこうと思います。

それではよいお年を!


見えてきた光明、揺れ動く感情

サンジェルマンたちの目的・・・神の力を持って月の遺跡を掌握し、バラルの呪詛を解放するという壮大な目的に装者と海恋は衝撃が走り、驚愕する。

 

「月にある・・・遺跡を・・・?」

 

「人が人を蹂躙する不完全な世界秩序は、魂に刻まれたバラルの呪詛に起因する不和がもたらす結果だ」

 

「不完全を改め、完全と正すことこそ、サンジェルマンの理想であり、パヴァリア光明結社の掲げる思想なのよ」

 

「月遺跡の管理権限を上書いて人の手で制御するには、神と呼ばれた旧支配者に並ぶ力が必要なワケダ」

 

「じゃが神の力は非常識・・・ちっぽけな人間では到底その頂に辿り着けぬ。ならばどうする?知れたこと。命の灯をかき集めればよい。よく言うじゃろう?賊と言えど数を揃えれば侮れんとな」

 

「そのためにも、バルベルデを始め各地で儀式を行ってきたワケダ」

 

パヴァリア光明結社がこれまでに陰で行ってきた数々の事件は全てその目的のために命を集めていたのだ。以前に豪華客船でエドワードが持っていた光の球体は、彼女に殺された人間の命のエネルギーだったのだ。

 

「だとしても!誰かを犠牲にしていい理由にはならない!」

 

「犠牲ではない!流れた血も失われた命も、革命の礎だ!」

 

「そんなくだらぬことのためにバルベルデを・・・我が故郷を!!」

 

「くだらぬ?くだらぬだと?」

 

革命のためにバルベルデを巻き込んだことに怒りを覚えるフォルテのくだらないという発言に、サンジェルマンもまた怒りを浮かべる。そんなサンジェルマンをエドワードが片手で制す。

 

「よせサンジェルマン。許しを請う気など初めからないわ。革命は命を散らしてこそ価値がある・・・小さなことにいちいち拘ってなどおれぬ」

 

「だったら何で海恋を連れ去ったんだ!!言ってることが矛盾してるじゃないか!!」

 

革命のために命を散らすのが前提ならば海恋を連れてきたことはおかしいと日和は主張する。

 

「そこはエドに聞いてくれる?その子に関してはあーしらまったく関係ないし」

 

日和の主張、そして装者たちの姿勢を見て、エドワードは肩をすくめて、心底呆れながら札を取り出す。札は黒い火薬と鉄に変わり、構築錬成することで火縄銃へと練成される。

 

「ふぅ・・・やれやれ・・・汝らは最初から質問ばかりでまとも考えようともせん。そんなに気になるならば・・・無理やり吐かせてみよ!」

 

ドォン!!

 

エドワードは火縄銃を装者に向けて、弾を発砲した。装者たちは散開して弾を避け、日和は海恋をお姫様抱っこをして彼女を戦域へと離脱させる。

 

「海恋はここで待ってて!すぐに終わらせるから!」

 

「日和・・・」

 

海恋の避難を終えた日和はすぐに戦線に戻り、戦闘を開始する。最初に攻撃を仕掛けるのは翼だ。翼は刀を大剣に変形させて、錬金術師たちに向けて放った。

 

【天ノ逆鱗】

 

下降してくる大剣にサンジェルマン、カリオストロ、プレラーティは散開する。エドワードは臆することなく火縄銃を再構築錬成し、薙刀へと形を変える。そして、薙刀の切っ先に風の錬金術の力を蓄え、大剣に向けて斬撃を放つ。風の斬撃によって大剣は軌道が変化し、直撃が逸れてしまう。好機を逃がすことなくサンジェルマンは着地した瞬間に翼に弾丸を3発撃ち放つ。翼は攻撃を喰らうまいと大剣を盾のように利用する。だが弾丸は錬金術によって形を変え、大剣を難なく貫く。

 

「がっ・・・!」

 

弾丸が貫いてきたことによって翼に弾が掠ってしまう。

 

「はああああ!!」

 

響がサンジェルマンに向かって行こうとした時、サンジェルマンは狙いを響に変え、彼女の足元に弾丸を撃ち放つ。地に着弾した弾は錬金術によって岩石の塊に変化し、響を襲う。響は咄嗟に横っ飛びで回避するが、サンジェルマンは同じ弾を撃ち放って追撃する。響は回避し続けるが、うまく近づくことができない。

 

エドワードは懐から札を何枚も取り出し、それをマリアに目掛けて放つ向かってくる札は込められた力を解放し、雷へと変わる。向かってくる雷をマリアは躱していき、短剣を抜刀する。

 

「はああああああ!!」

 

マリアは短剣を蛇腹剣に変形し、伸ばした刃でエドワードに攻撃する。エドワードは薙刀を振るって風の錬金術を放ち、蛇腹剣を弾いた。

 

「やああああああ!!」

 

その隙を狙うように日和がエドワードに接近し、棍を振り下ろそうとする。しかしエドワードはそれを予測していたかのように薙刀を再構築錬成し、両手槌に形を変えてそれを振るって棍を受け止め、そのままマリアの元まで押し返す。

 

「未熟じゃのう。ラピスを纏うまでもないわ」

 

エドワードは両手槌に炎の錬金術の力を纏わせ、地面に向けて槌を叩きつける。そして、その瞬間に日和とマリアの足元がぐらつき、一気に炎が噴き上がり、彼女たちを吹っ飛ばす。

 

「「あああああああ!!」」

 

もろに炎の攻撃を喰らった日和とマリアは吹っ飛ばされる。

 

カリオストロはフォルテに向かって光の光弾を複数放った。フォルテは向かってきて光弾を両剣を回転させ、その全てを弾いた。

 

「ふん!」

 

フォルテは両剣をチェーンソーに変え、回転する刃による斬撃波を放つ。だがカリオストロは光の光線を自身に纏わせることによって、斬撃波を凌いだ。

 

「これならどうだぁ!!」

 

クリスがフォルテの前に立ち、カリオストロにボウガンを撃ち放つ。フォルテもクリスを援護するように大剣を銃に変形させ、エネルギー弾を連射する。だがボウガンの矢とエネルギー弾はカリオストロを纏う光線によって全て弾かれてしまう。

 

「いつぞやのお返しなんだからぁ!」

 

攻撃を全て弾いたカリオストロは光線を凝縮させた光弾をクリスとフォルテに放つ。

 

「「うああああああ!!」」

 

対応が遅れてしまったクリスとフォルテは光弾に直撃し、吹き飛ばされる。

 

調と切歌の相手をするプレラーティは巨大なけん玉を振るい、巨大な玉を2人に放つ。迫ってきた玉を調と切歌は跳躍して避ける。しかしプレラーティは上空に避けた調に狙いを定め、返ってきた玉を使を使ってハンマーの要領で打ち返した。空中では避けることができないため、調は向かってきた玉に叩き込まれる。

 

「ああ!!」

 

「調!」

 

プレラーティは今度は切歌を狙い、また返ってくる玉を打ち返した。地面を抉りながら向かってくる玉を切歌は跳躍して避けた。だが着地地点を誤り、崩れやすい斜面に着地したために切歌はバランスを崩し、滑り落ちた。

 

「このままでは・・・!」

 

「だったらやるデスよ、調!」

 

このままでは勝ち目がないと判断した切歌と調はイグナイトを使用しようと、ギアコンバーターに触れる。しかし、それはイグナイトを無効化するラピスの前では悪手中の悪手だ。

 

『いけません!!ダインスレイフの力は、賢者の石によって・・・!』

 

「「イグナイトモジュール(デース)!!!」」

 

通信越しでエルフナインが止めに入るものの、もう遅い。調と切歌はギアコンバーターのスイッチを押し、イグナイトを起動させた。調と切歌のギアは漆黒の闇を纏い、禍々しい漆黒のギアへと変わった。イグナイトを起動させた2人にプレラーティは嘲笑うかのように不敵な笑みを浮かべる。

 

「先走るワケダ」

 

「当たりさえしなければ!!」

 

攻撃が当たればイグナイトは解除される。それは調と切歌も重々承知だ。ゆえに当たらないように遠距離で攻撃する。調は展開したアームより複数の丸鋸を複数放ち、切歌は鎌の刃を3つ展開し、それをブーメランのように放った。向かってくる数多の刃にプレラーティはけん玉の玉を放つ。玉はエネルギーフィールドを展開させ、向かってくる刃を消滅させる。同時に、エネルギーフィールドを広範囲に広げ、調と切歌にぶつけさせる。

 

「ノリの軽さは浅はかさなワケダ!!」

 

「「あああああああああ!!」」

 

エネルギーフィールドに押し返された調と切歌は吹っ飛ばされ、斜面に叩きつけれて滑り落ちる。当然、ギアもイグナイトが強制解除され、元に戻っている。

 

「月読!暁!」

 

それを見た翼は倒れている2人の元へ駆けつける。

 

一方日和とマリアはお互いにうまく連携しあってエドワードに攻撃を続ける。エドワードは余裕な笑みを浮かべ、2人の連携を難なく躱し続けている。そして、日和が一撃を加えようと棍を振り下ろそうとした時、エドワードは事前に槌を再構築錬成させた矛を振るって棍を弾き飛ばした。

 

「くっ・・・!」

 

「遅いのう」

 

日和は右手首のユニットから棍を取り出そうとするも、その隙をつくようにエドワードは矛の長柄で日和に打撃を叩き込んだ。

 

「あああ!!」

 

「はあ!!」

 

打撃を叩き込まれて倒れる日和に代わり、マリアが短剣で連撃を放つもエドワードは躱し、最後の一撃を放とうとするマリアの腹部に蹴りを入れ込んだ。

 

「ぐあ・・・!」

 

「無理をするでない。疲れておろう?」

 

腹部に蹴りを入れられ、うずくまるマリアに対し、エドワードは疲れている様子は一切見られず、汗も1つもかいていない。まさに圧倒的だ。しかも、ファウストローブを纏わずにだ。

 

(くっ・・・!ファウストローブを使わないでこの強さ・・・!このエドワードとかいう錬金術師・・・まるで格が違う!)

 

いくらイグナイトを纏ってない状態と言えど、通常でこれほどの力の差を見せつけられたことで、エドワードが3人とはレベルが違う錬金術師であると思い知らされるマリア。さらに恐ろしいのが、これで手加減しているということだ。

 

各所で激戦を繰り広げている中、サンジェルマンは銃に新たなる弾丸を装填させる。

 

未来(あした)のために、私の銃弾は躊躇わないわ」

 

「なぜ⁉どうして⁉」

 

「わかるまい・・・だがそれこそがバラルの呪詛!人を支配する軛!」

 

銃口を響に向けるサンジェルマンの脳裏には、力を持てなかったが故に息絶えた母の姿が浮かび上がる。

 

「だとしても、人の手は誰かを傷つけるためではなく、取り合うために・・・」

 

「取り合うだと・・・⁉いわれなき理由に、踏みにじられた事のない者が言うことだ!」

 

響の訴えに逆鱗に触れたサンジェルマンは錬金術のエネルギーが込められた銃弾を撃ち放った。弾丸に込められたエネルギーは形を変え、まるで狼のように響に襲い掛かる。向かってくる弾に響は避けることはせず、バンカーユニットを最大展開させて、真正面から迎え撃つ。

 

「言ってること・・・全然わかりません!!」

 

バンカーユニットを展開して繰り出した響の拳は、狼の弾丸と激突。これによって弾丸のエネルギーは響の力に負け、サンジェルマンの元に跳ね返される。

 

「何っ⁉うぁっ!!」

 

反射して起こったエネルギーの奔流により、サンジェルマンは後退する。そして、閃光の土煙が晴れると、サンジェルマンの目の前には響の拳が止まっていた。

 

「だとしても・・・あなたの想い・・・私にもきっと理解できる・・・」

 

響の脳裏に浮かび上がるのは、ツヴァイウィングでの事件で生き残ったが故にバッシングを受けてきた辛い過去だ。

 

「今日の誰かを踏みにじるやり方では・・・明日の誰も踏みにじらない世界なんて作れません!!」

 

「お前・・・」

 

響がサンジェルマンと話し合いを試みようとしている一方、カリオストロの相手をしているクリスはボウガンをガトリング砲に変形し、銃弾を連射する。向かってくる無数の弾丸をカリオストロは水の障壁を張り、全弾を全て防いだ。

 

「むず痒いのよ!」

 

お返しと言わんばかりにカリオストロは両拳を振るい、数多の光線をクリスに放つ。向かってくる光線をフォルテがクリスを守るように前に出て、両剣を回転させて弾く。だが弾いた光線は響とサンジェルマンに襲い掛かろうとしている。

 

「!しまった!」

 

「あらやだ!」

 

「こっち!」

 

響はサンジェルマンの手を取り、彼女と共に段差からダイブして光線を回避する。光線が地を抉ることで土煙が発せられる。立ち込める土煙の中で、サンジェルマンは起き上がろうとする。

 

「・・・私たちは・・・共に天を頂けないはず・・・」

 

「だとしても・・・です・・・」

 

響は起き上がり、サンジェルマンに手を差し伸べようと手を伸ばそうとする。

 

「思いあがるな!」

 

だがサンジェルマンは差し伸べられた響の手を彼女を拒絶するかのように振り払った。

 

未来(あした)を開く手は!いつだって怒りに握った拳だけだ!」

 

起き上がったサンジェルマンは響を見下ろし、そう言い放って彼女から距離を取る。

 

「これ以上は無用な問答・・・!預けるぞ、シンフォギア!」

 

サンジェルマンは足元にテレポートジェムを投げ捨てて、転移していった。

 

「ここぞで任務放棄って・・・どういうワケダ、サンジェルマン」

 

「あーしのせい⁉だったらメンゴ!鬼メンゴ!」

 

プレラーティはサンジェルマンの任務放棄に疑問符を浮かべながら、カリオストロは謝る動作をした後にサンジェルマンを追いかける形で同じくテレポートジェムで転移した。

 

「ははは・・・サンジェルマンも、まだまだ青いのう」

 

エドワードは愉快そうに笑い、装者たちに視線を向ける。

 

「大人になれ、青二才のわっぱ共」

 

エドワードはそれだけを言い残してテレポートジェムで転移した。戦闘は終了したが、この場には何とも言えない空気が流れるのであった。

 

~♪~

 

S.O.N.G本部のブリッジに集まる大人たちは今回の戦闘で得た情報の整理をしている。勝利を収めることは叶わなかったものの、敵の目的を知ることができた。今はこれだけでも十分な収穫だ。

 

「パヴァリア光明結社の目的は、月遺跡の掌握・・・」

 

「そのために必要とされる、通称神の力を、生命エネルギーにより練成しようとしていると・・・」

 

モニターにはバルベルデでサンジェルマンたちが使役していたヨナルデパズトーリが映し出されている。あの時は響と日和の一撃を打ち込むことによって無敵性能を破壊することができたが、また同じ手が通用するかどうかはわからない。何せなぜ無敵性能を突破することができたのか、解明できていないのだから。

 

「仮にそうだとしても、響君と日和君の一撃で分解するようではいくまい。おそらくは・・・もっと巨大で強大な・・・」

 

「その規模の生命エネルギー・・・いったいどこからどうやって・・・」

 

緒川の疑問は最もだ。いくら人間の生命エネルギーを束ねようとも、月遺跡の掌握するためにはどうしたって人間の生命エネルギーだけでは足りない。

 

「まさかレイラインでは⁉」

 

「何っ⁉」

 

レイライン・・・それは明治政府帝都構想で霊的防衛を支えていた龍脈・・・言い方を変えれば世界中に張り巡らしている地球の血脈のようなもので、星の生命エネルギーと言っても過言ではない。以前キャロルが世界分解のために利用したのもレイライン・・・パヴァリア光明結社はそのレイラインを使い、星の命のエネルギーを取り出すのではと友里は推察する。

 

「キャロルが世界の分解・解析に利用しようとしたレイライン。巡る地脈から、星の命をエネルギーとして取り出すことができれば・・・!」

 

「パヴァリア光明結社は、チフォージュ・シャトーの建造にかかわっていた・・・。関連性は大いにありそうですよ」

 

「取り急ぎ、神社本庁を通じて各地のレイライン観測所を仰ぎます」

 

緒川は弦十郎が指示を出すことなく、素早く行動に出た。

 

「うむ。後は、装者たちと海恋君の問題だな。LiNKERは問題なく作用したらしいが・・・」

 

錬金術師たちは強大ではあるが、それ以上に厄介なのがラピス・フィロソフィカスだ。あれがある以上、装者たちのイグナイトは封じられたも同然だ。それだけではない。エドワードの実力は3人の力を遥かに上回っていた。ラピスを使用せずに装者たちを苦しめたのが何よりの証拠だ。そしてその背後には統制局長であるアダムもいる。彼の力はもう言わずもがな、エドワードをも超える力を持っているのは明らかだ。

 

「賢者の石による抜剣封殺・・・その対策を、急いで講じなければ・・・」

 

「エルフナイン君は?」

 

「無理は禁物と言っているのですが・・・ラボにこもりっきりで・・・」

 

賢者の石対策から何から何まで・・・考えなければいけないことは山積みだ。

 

「・・・しかし、パヴァリア光明結社はなぜ海恋君を・・・?彼女はどこにでもいる、普通の女の子だというのに・・・」

 

錬金術師たち・・・主にエドワードがなぜ海恋を戦場に連れてきたのか・・・その真意とは何か・・・その一点においても、大人たちは頭を悩ませるばかりだ。

 

~♪~

 

メディカルルームにはイグナイトの強制解除によってダメージを負った調と切歌がベッドの上で座り込んで落ち込みを見せていた。2人に付き添っているマリアとフォルテは自分のギアをじっと見つめていた。

 

「ごめんなさいデス・・・」

 

「え?」

 

突然の切歌の謝罪にマリアとフォルテは2人に顔を向ける。

 

「マリアとエルフナインが、命がけでLiNKERを作ってくれたのに・・・」

 

LiNKERを完成できたことはいい。問題はイグナイトを無効化されることをわかっていたのに使用し、イグナイト強制解除によってダメージを負い、何もできなかった。2人はそれが悔しかったのだ。

 

「それは私たちも同じ。戦うことさえできればどうにかなると思っていた。けど・・・甘かったわ」

 

「ああ・・・。奴らは・・・特にあのエドワードという錬金術師・・・想像以上に強かった・・・」

 

実際に打ち合ったからこそ実感した。今の自分たちでは・・・錬金術師たちに勝つことはまだできないと。

 

「くそ!!なんなんだよ・・・!!」

 

メディカルルームの外にいたクリスは悔しさから八つ当たりするように自販機に拳を叩きつけた。近くのソファで響は顔を俯かせており、翼はただ窓に映る海中をただ眺めるだけであった。

 

~♪~

 

海恋の護衛のため、先に寮に戻っていた日和は何の面白みのないニュースをただただぼんやりと見つめている。そんな時、海恋がどこかへ出ようとしていることに気付いた。

 

「・・・海恋?どこに行くの?」

 

「・・・ちょっと外の空気を吸いに」

 

「気分転換?私も行くよ」

 

海恋が心配な日和は彼女についていこうとするが、それを拒む海恋。

 

「いい。すぐに帰るし」

 

「で、でも・・・今日みたいなことがあったら・・・」

 

「いいって言ってるでしょ!!」

 

「・・・っ!」ビクッ!

 

ついていこうとする日和に海恋は大声を上げた。日和はその声にビクついた。

 

「・・・今は1人になりたいの。放っておいて」

 

海恋はそう言って部屋から退室する。

 

「海恋・・・」

 

日和には今海恋が何を考えているのかわからない。ただ1つだけ言えるとすれば・・・2人の間に、少しずつ、すれ違いが起こっているということだ。

 

~♪~

 

外を出た海恋は特に何かをするというわけでもなく、ただ夜の街を歩いているだけだ。海恋の脳裏に浮かび上がるのは、今日の戦いの出来事・・・サンジェルマンの言葉だ。

 

未来(あした)のために、私の銃弾は躊躇わないわ』

 

『取り合うだと・・・⁉いわれなき理由に、踏みにじられた事のない者が言うことだ!』

 

未来(あした)を開く手は!いつだって怒りに握った拳だけだ!』

 

(・・・似てる・・・あのサンジェルマンって人・・・。昔の私に・・・)

 

日和に出会う前、海恋は不自由な生活を送ってきた。ただ特別だという理由だけで、必要ない勉強をやらされたこと。進路を死ぬまで決められること。何もかも、自分の意思でやりたいこともやらせてもらえない不自由な生活。まるで奴隷にされてるような気分だった。昔のサンジェルマンと自分との身分はだいぶ違うが・・・不自由という点において、確かに似ているのだ。海恋はサンジェルマンの過去を知らない。だが彼女に言い分に、考えさせられるものがあった。ゆえに頭を悩ませている。

 

「・・・そろそろ来ると思ってたわ」

 

いつの間にか海恋の背後にはエドワードが立っていた。

 

「ふむ・・・これでも気配を消した方なのじゃがのう・・・やはり汝は錬金術師の素質があるわい」

 

「あなた1人?ずいぶん暇なのね」

 

「いやなに、局長殿の小言は面倒なのでな。1人一抜けさせてもらったわ」

 

海恋の皮肉な言葉にエドワードはただくすくすと笑っているだけだ。

 

「・・・で、どうじゃ?妾の言っていること、少しは理解できたか?」

 

「まったくわからないわよ」

 

「ふむぅ・・・そうか。戦いを見れば少しは見方を変えてくれると思ったのじゃがのう」

 

エドワードは残念そうな表情をしているが、彼女は知っている。海恋の中に渦巻き始めた感情が。

 

「・・・革命・・・」

 

「ん?」

 

「前に革命は犠牲がつきものって、言ったわよね?」

 

「ああ、言うたの」

 

「あの人がどういう気持ちで革命に臨んでいるかわからない。けど・・・あの人の言ってることは何も間違ってない・・・。それは歴史が物語っている。だけど・・・立花さんの言っていることも、間違ってない・・・」

 

「・・・ほう?」

 

サンジェルマンの言い分と響の言い分、そのどちらをも肯定している海恋にエドワードは興味深そうな顔になる。

 

「いったい何が正しいの?あなたはいったい何を伝えようとしているの?私にいったい何を求めてるの?もういろんな感情がぐるぐるしてて・・・頭がおかしくなりそうよ・・・」

 

海恋自身、今回ことも含め、エドワードのスカウトされた時からいろいろ考えてきた。だがいくら考えても具体的な答えが見出せない。何が正しくて何が間違っているのか・・・それを踏まえて自分は何がしたいのか・・・サンジェルマンが、本当は悪い人間じゃないのか・・・考えれば考えるほど、わけがわからなくなり、海恋は混乱しているのだ。

 

「・・・正直汝にはすまぬと思っておる。しかし考えることを放棄してはならぬ。考えを放棄することは、ある意味では廃人と同然じゃ。悩み、苦しみ、思考を張り巡らせ、辿り着いた答えこそ、真に価値あるものと言える。考える力こそが、この世で最も輝ける、至高の宝石なのじゃ」

 

人間は考える力があってこそ・・・それこそがエドワードが考える人間の価値観であり、自身の掲げるモットーである。ゆえにエドワードはあらゆる質問に対し、すぐに答えを出さずに相手に考えることを促させようとする。時には実力行使することも辞さない。

 

「・・・・・・」

 

海恋はただ黙るのみ。エドワードの考え方には、海恋自身も考えさせられるものもある。だがそれを素直に肯定したくない自分もいるのだ。その様子を見たエドワードはくすりと笑う。

 

「汝にいいものをくれてやろう」

 

エドワードは着物の袖からあるものを取り出した。それは何の装飾もない黄色い腕輪であった。

 

「腕輪?」

 

一見ただの腕輪のように見えるが、なんとなく感じる。腕輪から漂う、神々しい何かが。

 

「西園寺海恋。この先、汝が何をしようが、妾は咎めたりはせぬ。それが自身で考えた結果ならばな。汝自身、何がしたいのか、何を守りたいのか・・・真剣に悩むことじゃ」

 

「・・・・・・」

 

エドワードは海恋に有無を言わさず、腕輪を渡した。海恋は受け取った腕輪をじっと見つめる。

 

「さて・・・そろそろ戻らねばサンジェルマンがうるさい。ここでお暇するとしようかのう。では西園寺海恋・・・汝の考えが改まったら・・・またお会いしよう」

 

エドワードは足元にテレポートジェムを放り投げ、光明結社の拠点へと戻っていく。1人残された海恋は、ただただ、腕輪を見つめ、自身の考えを纏めるのであった。

 

~♪~

 

S.O.N.G本部。弦十郎は異端技術に関する資料をかき集め、それらを荷台に山のように積み、エルフナインのラボに届けていた。

 

「異端技術の資料らしい資料はかき集めてきたつもりだ。必要なものがあったら、何でも言ってほしい」

 

「はい、ありがとう・・・うわっ!」

 

根を詰めすぎて疲労がたまっているせいかエルフナインは倒れ、膝をつく。そのせいで資料の一部が崩れ落ちる。

 

「大丈夫か⁉根を詰めすぎちゃいないか?」

 

「ごめんなさい・・・でも・・・キャロルからもらった身体です。2人で1人・・・だから2人分頑張らないと・・・」

 

エルフナインが起き上がろうとした時、崩れた資料のページに目が留まった。何かを感じたエルフナインはその資料を手に取り、そのページをまじまじと見つめる。

 

「どうした?」

 

「これは・・・」

 

資料には響の顔写真と、かつて響の体内に食い込んでいたガングニールの破片である鉱石が埋め込まれた瘡蓋であった。この鉱石こそが、賢者の石に対抗するカギとなる。




??????

形状:黄色い腕輪

使用者:?????

製作者:エドワード

エドワードが作り上げた装飾品が何もない黄色い腕輪。どこからどう見ても普通の腕輪にしか見えないが、神々しい力を常に纏わせてる。このことからエドワードが作った黄色い腕輪は何かしらの聖遺物であるということがわかる。3人の錬金術師から見ても、腕輪は強力な力が秘められたものであると見抜いている。
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