戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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運命の巡り合わせ

クリスの過去を聞いた日和は重い足取りで学生寮の自分の部屋に戻っていく。ここに来て何回目かのため息をこぼす日和。

 

(まさかクリスにそんな過去はあったなんて・・・)

 

日和が思い出すのは、クリスが放った言葉だ。

 

『わかりあえるものかよ人間が!そんな風にできているものか!』

 

(・・・そりゃそう言うよね・・・)

 

知らなかったとはいえ、日和はクリスにわかった風に言った自分の言葉に少し後悔する日和。

 

「・・・なんか、いろいろ難しいなぁ・・・」

 

気が重くなってくる日和だが、本当に気が重くなるのはここからだ。日和は海恋が待つ自分の部屋にたどり着く。

 

「・・・か、海恋・・・ただいま・・・」

 

「・・・・・・」

 

日和は弱々しく海恋に挨拶をするが、海恋は何の反応もなく、ただ勉強に集中してた。返事を返さない海恋に日和は内心びくびくと怯えている。

 

「・・・あ、あのね、海恋・・・」

 

「日和」

 

「は、はい!!」

 

海恋に呼ばれた日和はビクッとして思わず返事をする。

 

「話がある。そこに座って」

 

「う、うん・・・」

 

いつもと雰囲気が違う海恋に指示されて、日和は座り込んで海恋に対面する。

 

「・・・大体の事情は黒服の人たちから聞いたわ。あなた、1か月間悩んでた時期あったでしょ。それが昼間の事だったのね」

 

「う・・・黙ってたことは・・・」

 

「私は別に隠し事してたことに怒ってるわけじゃない。隠し事なんて誰にだってあるもの」

 

二課の黒服の話を聞いて怒っている様子の海恋だが、何も隠し事に対して怒っているわけではないようだ。

 

「じゃあなんで私が怒ってるのかわかる?」

 

「えっと・・・」

 

「それはね・・・あなたが命に関わる危険なことに首を突っ込もうとしていることよ!!」

 

下手をすれば命を落とすような任務・・・それを日和が自分の意思でやろうとしていることで怒りを示しているようだ。

 

「この際ハッキリ言うわ。日和・・・今すぐあの人たちと縁を切って!」

 

二課との縁を切れ・・・それを意味するところは二課には二度と関わるなと言っているのだ。それをわかってる日和は戸惑う。

 

「え・・・?なんで・・・?だって、私の思うままにって・・・」

 

「確かに私はあなたの思うがままにやりなさいと言ったわ。でも命が関わるのなら別問題!あなた、小豆と玲奈さんの死を目の前で見たでしょ⁉それを忘れたっていうの⁉」

 

「・・・忘れるわけないよ・・・あの日のことを・・・忘れられるわけないじゃん・・・!」

 

「だったら二度とあの人たちと関わらないで!あなたのやってることは2人の約束を破る行為そのものだわ!!」

 

約束を何より大事にしたい日和は海恋の言葉に怒りを覚え、反論する。

 

「・・・っ!なんでそんなこと海恋に言われないといけないの!!?海恋はあの現場を見たことない癖に!!」

 

「亡くなってることには変わらないじゃない!!戦場に出れば、あなたも同じ目にあうかもしれないのよ!!?」

 

「それは海恋だって同じでしょ!!街にノイズが頻繁に出るんだから!!」

 

「それでも1番危険なのはあなたの方よ!!」

 

日和と海恋がお互いに意見を譲る気がないために大喧嘩が始まってしまう。

 

「とにかく私は大反対!!絶対に縁を切ってもらいますからね!」

 

「・・・どうしてわかってくれないの・・・!私は・・・海恋を守りたくてやってるのに・・・!」

 

「そんなことしても私は喜ばない!私のためにって思うなら・・・」

 

バァン!!

 

「・・・もういい!!!海恋のバカ!!!!」

 

「日和!!待ちなさい!!」

 

日和は怒りで机を叩き、ベースと鞄を持って部屋から出ていった。海恋は呼び止めるも、日和は聞く耳を持たなかった。これが、日和と海恋が仲違いした瞬間であった。

 

~♪~

 

寮から出ていった日和は海恋のことを考えながら夜の街を歩いている。

 

(・・・私はただ・・・ノイズから海恋たちを守りたいだけなのに・・・どうしてわかってくれないんだろう・・・)

 

どんなに怖くても、海恋たちを守るためにやってることが海恋に反対されて、どうしたらいいのかわからないでいる。

 

「はぁ・・・公園に行こ・・・」

 

悩んでる時こそベースを弾こう・・・そう考えた日和は公園に向かった。数分が経ち、公園にたどり着いた日和は顔を俯かせたまま公園に入ろうとする。

 

ドンッ!

 

「きゃっ!」

 

「うわっ!」

 

すると日和は目の前の誰かとぶつかり、誰かと共に尻もちをつく。

 

「いってぇ・・・どこ見て歩いてやがる・・・!」

 

「ご、ごめんなさい!怪我は・・・」

 

日和はぶつかった誰かに謝ろうとした時、公園の街灯に照らされたその顔を見て驚く。

 

「えっ!!?クリスちゃん!!?」

 

「お、お前・・・!!」

 

何とぶつかった相手は昼間に戦いを繰り広げたクリスであった。クリスも会うとは思わなかった相手を見て驚く。

 

「どうしてクリスちゃんがここに・・・?」

 

「それはこっちのセリフだ!!なんでお前がここにいやがる!!」

 

「わ、私はただベースを弾きに来ただけで・・・」

 

日和に対して警戒を露にするクリスに日和は警戒を解こうと自分のベースを取り出そうとする。

 

「うえぇぇん!」

 

「泣くなよ!泣いたってどうしようもないんだぞ!」

 

「だって、だってぇ・・・」

 

すると公園のベンチで泣いている女の子とその女の子に声をかけている男の子がいた。

 

「おいこら!弱い者をいじめるな!」

 

その2人の様子を男の子が女の子をいじめてると解釈したクリスが男の子に注意しようとした。

 

「いじめてなんかいないよ。妹が・・・」

 

「うわあぁぁん!」

 

「いじめるなって言ってん・・・」

 

「待って待ってクリスちゃん!それはダメだよ!」

 

「ああ?」

 

泣き続ける女の子を見てクリスは男の子にげんこつしようとするが、日和がそれを止める。日和はしゃがみこんで2人にやさしく声をかける。

 

「どうしたの2人とも?どうしてその子は泣いてるの?」

 

「父ちゃんを探してたんだ。一緒に探してたんだけど・・・妹がもう歩けないって言ったから・・・それで・・・」

 

「そうなんだ・・・」

 

どうやらこの2人は迷子になっていたようで、女の子がもう歩けないと駄々をこねたのだという。それを理解した日和は微笑み、ベースケースからベースを取り出す。

 

「クリスちゃん、これ持ってて」

 

「はぁ?」

 

日和はクリスにベースケースを預け、ベースをかけて2人の前に立つ。

 

「2人とも、よく聞いててね」

 

「「?」」

 

「1、2・・・1、2、3」

 

日和は自分の声とベースを軽く叩く音を合図にして、演奏を始める。

 

「~~♪」

 

「「わぁ・・・」」

 

「・・・!」

 

日和のきれいな歌声に2人は感動で頬を赤く染めている。クリスも、日和のきれいな歌声に魅了されている。

 

(こんなきれいな歌があるのか・・・。・・・それに比べて、あたしの歌は・・・)

 

クリスが考えている間にも演奏は終わり、2人は日和に拍手を送っていた。

 

「お姉ちゃん!歌声すっごくきれい!」

 

「ありがと♪それで、どうかな?もう歩けそうかな?」

 

「うん!」

 

「そっか。じゃあ、一緒にお父さんを探そうか」

 

「い、いいの?」

 

「もちろん♪歩けなくなったらいつでも言ってね。お姉ちゃんがまた歌ってあげるから」

 

「うん!」

 

日和は2人の手を握って、一緒に父親を探すことに決めた。日和はクリスに視線を向ける。

 

「ねぇ、クリスちゃんも手伝って!」

 

「はぁ!!?なんであたしが・・・」

 

「ここまで来たら乗りかかった船だよ。ほら早く早く早く!」

 

「だー!!めんどくせぇ!わかったよ!!」

 

日和の急かす声に鬱陶しくなったクリスは仕方なく2人の父親を捜すことを協力する。なんだかんだ言いつつも面倒見がいいクリスだった。

 

~♪~

 

日和とクリスは2人の子供と手を繋ぎながら2人の父親を捜しに街を歩いていた。

 

「・・・お前、ガキをあやすのうまいんだな」

 

「どうかな?私はただ、歌でしか解決法を知らないから・・・」

 

「歌、ねぇ・・・」

 

歌でしか解決法を知らない日和に対し、クリスは何とも言えないような顔になる。

 

「・・・ねぇ、私の歌、どうだったかな?」

 

「言ったろ。あたしは歌が大嫌いだ。特に、壊すことしかできないあたしの歌はな・・・」

 

「でも、私の歌、最後まで聞いてたよね?それって、歌が好きだっていう証明になると思うけど・・・」

 

「はぁ!!?ん、んなわけねぇだろ!お前がケースを渡すから・・・」

 

歌が大嫌いと言うクリスに日和はそう反論すると、彼女は頬を赤くしてそれを否定する。

 

「!父ちゃん!」

 

交番を通ろうとした時、2人は自分たちの父親を見つけた。2人は父親の元に駆け寄る。

 

「お前たち!どこに行ってたんだ!」

 

「お姉ちゃんたちが一緒に迷子になってくれた!」

 

「違うだろ。一緒に父ちゃんを捜してくれたんだ」

 

事情を聞いた父親は日和とクリスに頭を下げる。

 

「すみません、ご迷惑をおかけしました」

 

「いえいえ、全然気にしてませんよ」

 

「まぁ・・・ただの成り行きだから・・・その・・・」

 

「ほら、お姉ちゃんたちにお礼言ったのか?」

 

「「ありがとう!」」

 

兄妹の中の良さに微笑む日和とクリス。

 

「仲がいいんだね。そうだ、どうすればそんな風に仲良くできるのか、教えてくれるかな?」

 

日和の問いかけに兄妹は答える。

 

「そんなのわからないよ。いつも喧嘩しちゃうし」

 

「喧嘩しちゃうけど、仲直りするから仲良しー!」

 

「そっか。ありがとね」

 

兄妹の答えに日和はにっこりと笑い、2人の頭を優しくなでる。日和とクリスにお礼を言った家族は自分たちの家に帰っていった。

 

「・・・お前、誰かと喧嘩したのか?」

 

「え?どうしてそう思うの?」

 

「別なんだっていいだろ」

 

クリスの問いかけに日和は少し表情を曇らせる。

 

「・・・うん。だから公園でベースをって思ったんだけど・・・」

 

「だからか・・・」

 

日和が誰かと喧嘩したから家を出たと考えていたクリスは今日日和たちを襲った際に巻き込まれた未来と海恋を思い出す。その原因を作ったのは自分であると、内心申し訳ない気持ちになる。

 

「・・・悪かった」

 

「え?」

 

「言いたいのはそれだけだ!じゃあな!」

 

言いたいことを言ったクリスはどこかへ去ろうとする。すると日和がそれを止める。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「なんだよ!」

 

「クリスちゃん、どこに行くの?」

 

普通ならフィーネの屋敷に戻ってるところだが、フィーネに見放されたクリスは今、屋敷に戻るのをためらっているところだ。

 

「別にどこだっていいいだろ」

 

「行く当てがないなら一緒に来ない?」

 

「はあ!!?」

 

ちょっと前まで敵だった日和からの誘いに戸惑いを隠せないクリス。

 

「大丈夫!泊まる当てはあるから!」

 

「そんなこと聞いてねぇよ!なんで敵のお前が・・・」

 

「そんなの言いっこなし!ほらほら行こ行こ!」

 

「ちょ・・・お前・・・人の話聞けよ!!」

 

日和はクリスの手を繋いで今日泊まる予定の場所に走っていく。勢いに流されるがままのクリスは混乱しっぱなしである。

 

~♪~

 

場所は変わって咲が住んでるマンション。仕事を終えた咲はテレビを見ながら煎餅をかじっている。自分の時間を過ごしていると・・・

 

ピンポーン

 

「ん?新聞配達の人かしら?」

 

インターホンが鳴り、咲は立ち上がり、玄関に移動してドアを開ける。

 

「あのー、うちは新聞はお断り・・・って、日和?」

 

「お姉ちゃん、お仕事お疲れさまー」

 

ドアの前にいたのは日和と成り行きで連れてこられたクリスであった。

 

「どうしたの急に?それにその子は?」

 

「あ、あたしはこいつに無理やり・・・」

 

「・・・と、とにかくあがってちょうだい」

 

「ほらクリスちゃん!」

 

「ちょ・・・引っ張んな!」

 

咲の許可を得て日和はクリスを連れて咲の部屋に入っていく・・・が、咲の部屋を見て日和とクリスは口をあんぐりさせる。

 

「ちょ・・・」

 

「な・・・なんだこりゃあ!!??」

 

なぜなら咲の部屋は・・・辺り一面に脱ぎっぱなしの服や乱雑に置いてある雑誌、そして放置したゴミでいっぱいで部屋中が汚かったからだ。

 

「・・・お姉ちゃん!またこんなに部屋を散らかして!!」

 

「う・・・しょうがないじゃない、忙しかったんだもの」

 

「掃除する時間くらい作ってよね!」

 

「はい・・・すみません・・・」

 

妹の日和に怒られてしょんぼりする姉の咲。

 

「もう・・・とりあえず片付けよう。クリスちゃんも手伝って」

 

「なんであたしが・・・」

 

「こんな部屋でお泊りなんかしたくないでしょ?」

 

「泊まるなんて一言も言ってねぇよ!」

 

「お願い!これもお姉ちゃんのためだと思って!」

 

「・・・あー!めんどくせぇなぁ、もう!!」

 

日和の勢いに断り切れず、仕方なくクリスは咲の部屋の掃除を手伝うことにした。

 

~♪~

 

日和とクリスが分断して掃除したため、時間はそれほどかからず、あっという間に咲の部屋はきれいになった。

 

「たく・・・なんであたしがこんなことを・・・」

 

なんだかんだ掃除してしまったことにクリスは愚痴る。咲は日和と対面し、日和と海恋が喧嘩したことを知った。

 

「そう・・・海恋ちゃんと喧嘩したのね」

 

「うん・・・だから、今海恋と会いたくなくて・・・それで・・・」

 

「はぁ・・・仕方ないわね・・・」

 

咲はしょうがないと言わんばかりに手を頭にのせる。

 

「いいわ。気が済むまでまでうちにいなさい。でも学校の方はどうするの?」

 

「・・・行きたくない・・・」

 

「・・・わかった。明日くらいは連絡を入れてあげる。その代わり、明後日は学校行きなさいよ?」

 

「うん・・・」

 

学校の休みは1日だけとはいえ、咲なりの気遣いに日和は彼女に心から感謝している。咲は視線をクリスに変える。

 

「クリスちゃんも、好きなだけうちにいていいからね」

 

「・・・なんであたしを泊めてくれるんだ・・・?」

 

クリスの問いかけに咲は微笑んだ。何か事情があるのは気づいているが、咲はあえてそれを聞かなかった。

 

「そんなことどうだっていいじゃない。私はただ単に、お節介を焼いてるだけ。ただそれだけだから」

 

泊まる予定がなかったクリスは咲の微笑みに何と言っていいかわからない。

 

「さて、と。あなたたちご飯はもう食べた?まだなら先にお風呂入っちゃいなさい。用意しておくから」

 

「はーい。じゃあ、クリスちゃん、お風呂に行こっか」

 

「はあ!!?ちょ・・・おい!!」

 

咲に言われて日和はクリスを連れて浴場へと足を運んでいく。戸惑いっぱなしのクリスは今回日和に振り回されっぱなしである。

 

~♪~

 

浴場で入浴することになった日和とクリスは湯船に浸かっている。日和は気持ちよさそうにしているが、クリスは考え事をしてる。

 

「ふぅ~・・・気持ちいい~・・・」

 

(・・・何やってんだあたしは・・・こいつは敵なんだぞ・・・?それなのに・・・)

 

どうしてこうなったのかわからないでいるクリスの髪を日和は触る。

 

「髪傷んじゃってるなぁ。ダメだよ~、胸が大きくても、髪が痛んでちゃ、女の子失格だよ?」

 

「おい、何触って・・・てかどこ見てんだよてめぇ!!」

 

「まぁまぁ気にしない気にしない。私に任せてよ」

 

さりげなくクリスの大きな胸を見ながらも彼女の髪をケアする日和。・・・クリスの背中に複数の痣があった日和は何も聞かない。

 

「・・・何も聞かないのか?」

 

クリスは日和にそう尋ねてきた。

 

「聞くって何を?私はただクリスちゃんの髪はきれいになるなーって思ってるだけだよ」

 

「・・・そうかよ」

 

なぜ痣があるのか聞かない日和にクリスは素っ気なく返した。そんな日和を見て思うのは彼女の言葉だ。

 

『私・・・あなたとお友達になりたいな』

 

「・・・なぁ、どこまで本気なんだ?」

 

「え?何が?」

 

「お前言ってたろ。そ、その・・・友達って・・・」

 

照れながら言い放つクリスの言葉に日和はきょとんとする。

 

「・・・私、もう友達のつもりだけど・・・」

 

「はあ?」

 

予想してなかった言葉にクリスは驚く。

 

「だってそうでしょ?一緒に掃除したり、お風呂入ったり、これからご飯を食べたりなんてこと・・・。これだけ時間を一緒にしたらもう他人とは呼べないよ。だから友達、でしょ?」

 

何の恥ずかしげもなく言ってのけた日和にクリスは頬を赤くさせる。

 

「ば、バカ!!飛躍しすぎだろ!!」

 

「クリスちゃん?私、変な子と言ったかな?」

 

「・・・クリスでいい」

 

「え?」

 

「呼び捨てでいいって言ってんだ!むず痒いんだよ!」

 

そっぽを向くクリスの言葉に日和はぱぁっと笑顔になる。

 

「クリスー!ありがとー!」

 

「おま・・・くっつくな!!」

 

クリスは日和に振りまわれつつも、湯船に浸かって疲れを癒すのであった。

 

~♪~

 

入浴の後は咲が作ってくれた晩御飯を一緒に食べる日和とクリスなのだが・・・

 

「・・・ねぇちょっとー、汚いよー」

 

「いいんだよ、食えりゃなんでも」

 

クリスの食器周りが汚く、口元も非常に汚れている。その様子には日和はドン引きする。

 

「あーあーあー・・・せっかくきれいにしたのに・・・」

 

「日和、行儀の悪さはあんたも人のこと言えないでしょ。作詞しながら食事なんて・・・」

 

「それはお姉ちゃんもじゃん!仕事しながらご飯なんて!」

 

「手軽に食べれるものならいいの!」

 

「ずるーい!!」

 

仲睦まじい姉妹の微笑ましい小さな言い争い。その様子を見てクリスは考える。

 

(・・・あったけぇな。・・・こういう飯、久しぶりに食べたかもしれねぇ・・・。・・・もし、パパやママが生きてたら・・・あるいは、兄妹とかいたら・・・もっと違った結果になってたのかもな・・・。・・・けど、フィーネは痛みでしか人を繋げないって・・・。でも・・・この光景は・・・。・・・結局・・・何が正しいんだ・・・?)

 

日和と咲の仲のいい姉妹関係を見てクリスは少しばかり羨ましく思った。それと同時に、フィーネに教えられたことに疑念を抱き、何が正しいのか考えるようになった。

 

~♪~

 

時間が経ち就寝時間・・・日和と咲は寝室で布団をかぶって眠っている。その中で布団から起き上がったクリスは2人を起こさないように寝室から出ようとする。

 

「・・・う~ん・・・大・・・丈夫・・・」

 

「!」

 

「話・・・合えば・・・・きっと・・・仲直り・・・」

 

日和の寝言を聞いたクリスは呆れつつも笑みを浮かべる。

 

「本当・・・お前はお人好しのバカだよ」

 

クリスはそれだけを言い残して咲のマンションから出ていく、ある場所へと向かっていく。その場所とは・・・フィーネの屋敷だ。真実を・・・確かめるために。

 

~♪~

 

翌日の昼間近頃・・・日和は未だに咲のマンションで眠っている。

 

「ん・・・んん・・・あれ・・・お姉ちゃん?クリス?」

 

ようやく目が覚めた日和は寝ぼけながら寝室を見回す。寝室にはすでに咲とクリスの姿はなかった。もしやリビングかと思ってそちらへ行っても誰もいなかった。テーブルにはお金と咲からの手紙が置いてあった。日和はそれを読んでみる。

 

『クリスちゃんはもう帰ったかもしれないわ。私は夜まで仕事だからお昼は外で食べるか買って食べてちょうだい。

 

追伸

 

人に頼らず、自分で起きられるようになりなさいよ』

 

「・・・お姉ちゃん・・・手紙で小言言わないでよ・・・」

 

手紙で小言を言われ、がっくりとする日和。そして、1人になってるとわかった途端、咲とクリスと一緒にいることで抑えられてた不安が込み上げてきた。

 

~♪~

 

学校を休む連絡を咲がしたために、何もやることがない日和は街の外を歩いていた。そもそも日和がなぜ学校を休みたいと思ったのかは、まずは海恋に会いたくないことが1つ、もう1つは海恋と仲直りするにはどうすればいいのかというのを、じっくり考えたいからである。ただ・・・仲直りできるのかどうかという不安で、幸先が怪しいところだが。

 

「・・・どうしたら、海恋にわかってもらえるのかなぁ・・・」

 

日和は頭を回転させて仲直りの算段を立てようとするが、考えた案は仲直りするには程遠いものばかりである。

 

「ダメだぁ・・・まったくいい案が浮かばない・・・」

 

いい案が浮かばずに顔を項垂れていると、日和のお腹の音が鳴りだす。

 

「お腹すいたなぁ・・・出された朝食だけじゃ足りないよぉ・・・」

 

一旦考えるのをやめて、今日のお昼は何にしようかと悩む日和。頭をひねっているとふとふらわーのお好み焼きが思い浮かび、日和は駅前にあるふらわーまで足を運ぶ。数分が経ち、日和はふらわーの店の前までたどり着き、さっそく中に入る。

 

「いらっしゃい。おや、初めて見る顔だねぇ」

 

「こんにちは」

 

「・・・あ、わかった。あなたが日和ちゃんだね?海恋ちゃんの言ってた特徴と合ってたからすぐにわかったよ」

 

「ははは・・・」

 

出迎えられたおばちゃんの発言に日和は少しばかり苦笑いをする。

 

「こんな時間にどうしたんだい?今日は学校のはずだろ?」

 

「まぁ・・・あの・・・いろいろわけがありまして・・・」

 

「・・・そうかい」

 

複雑な心境を抱いている日和におばちゃんは察し、深くは聞くことはなかった。

 

「まぁ、ゆっくりしておいき。人生いろいろあるさね」

 

「あ、ありがとうございます。あ、お好み焼き1枚お願いします」

 

「はいよ」

 

日和の注文を受けて、おばちゃんはお好み焼きを焼き始める。おばちゃんがお好み焼きを焼いている間もじっくり考え事をするが、いい案が浮かばなかった。

 

「・・・あの、おばちゃん、聞いていいですか?」

 

「なんだい?」

 

「・・・友達と喧嘩して・・・仲直りするには、どうすればいいと思いますか?」

 

自分の頭ではなかなか思いつかなかったために、参考にと思い、おばちゃんに尋ねる日和。

 

「そうだねぇ・・・おばちゃんだったらまずは、お腹を満たすことから始めるかねぇ」

 

「お腹を?」

 

「日和ちゃん、知ってるかい?お腹すいたまま考え込むとね、嫌な答えばかり出てくるもんだよ」

 

「あ・・・」

 

おばちゃんの答え、そして名言を聞いてハッとする日和。

 

(そうだよね・・・こんな暗い気持ちじゃ・・・後ろ向きな答えしかでないよね。まずは何事も前向きに行かなくちゃ・・・。後悔するのは・・・その後でもいい)

 

正直悩みを解決したわけではないが、日和は自分の気持ちに何とか整理が追い付いてきた。もしかしたら失敗するかもしれない。それでも、必ず仲直りするという前向きな気持ちを持って、海恋ときちんと話し合いたい。日和はそう思うようになった。

 

「はいよ、おまちどおさま」

 

日和がそう決心したと同時に、お好み焼きが焼けて、日和の前にそれが出される。

 

「・・・おばちゃん!お好み焼き、もう1、2枚お願いできる?」

 

「おやおや追加かい?食べきれるかい?」

 

「えへへ、思ってたよりお腹すいてたみたい!」

 

「はいよ、ちょっと待っててね」

 

日和の追加の注文を受けておばちゃんはもう1、2枚のお好み焼きを焼き始め、日和は念願かなってのふらわーのお好み焼きを食べ始めるのであった。

 

~♪~

 

追加分のお好み焼きをぺろりと平らげ、気分満足な日和はおばちゃんに頭を下げてお礼を言う。

 

「おばちゃん、今日はありがとう!」

 

「お代はサービスだよ。何かあったら、いつでもおばちゃんのところにおいで」

 

「うん!」

 

日和はおばちゃんに挨拶をして、ふらわーを後にする。街中を歩く日和はスマホを取り出して海恋の電話番号を探す。

 

(私・・・海恋と仲直りがしたい・・・海恋ともう1度話がしたい。海恋・・・)

 

海恋の電話番号を見つけた日和はすぐに海恋に電話をかける。電話コールが何度か鳴り響く。しかし・・・

 

プルルル、プルルルル・・・ブツッ!

 

通話を拒否するかのように着信を切られてしまう。

 

「・・・着信を・・・拒否された・・・?」

 

今まで通話拒否をしてこなかった海恋らしからぬ事態に、日和は少なからずショックを受けるのだった。




東雲咲

外見:長い黒髪を後ろに結んでいる
   瞳は青色

年齢:26歳

誕生日:9月9日

趣味:料理研究

好きなもの:使い慣れた料理道具

イメージCV:原神:久岐忍
(その他の作品:バカとテストと召喚獣:島田美波
        魔法少女まどか☆マギカ:巴マミ
        テイルズオブレジェンディア:ノーマ・ビアッティ
        その他多数)

二課の医療施設に所属している診察医。日和の実の姉。東雲総合病院が健在時は医者見習いとして働いていた。外科医であった父を尊敬していた。
命というものを真剣に考え、どうすれば助けられるのかと、人の命にたいして誠実で思慮深い性格。世間体でも優しく、大人っぽい性格をしているが、自分の私生活には無頓着で部屋も汚部屋にしてしまうほど片付けが苦手。
診察の道を選んだのは人の命を確実に助けるには、まず病気の原因を探るのが大切。外科医たちに後を繋げるためにも必要なことであるからである。
東雲病院が廃業になった後は、父の無念を晴らすため、東雲総合病院を再建させる夢を持っており、今日も診察で人の命を救っていく。
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