これはまだ奏と玲奈が生きていた頃の記憶。その日は翼がバイクの免許を手に入れ、どこかに遠出しようと思っており、先にバイクの免許を手に入れていた玲奈にバイクのメンテナンスをしてもらっていたところだ。
「~♪」
玲奈が翼のバイクのメンテナンスをしていると、翼が鼻歌を歌ってるのに気づいた。玲奈はその鼻歌をずっと聞いていたいと思いながら作業を進める。そこへ、奏の鼻歌も聞こえてきた。
「!か、奏!」
奏の鼻歌に気づいた翼は驚く。
「ご機嫌ですなぁ」
「今日は非番だから、少し遠出に」
「ははぁ、それで玲奈に」
「ま、気持ちはわかるよ。特別に免許をもらったばかりなんだ、試したくなるのが人間ってもんだ」
玲奈は初めてバイクの免許を取り、初めてバイクに乗った時のことを感慨深く感じる。
「よし、メンテ終わり。いつでも出れるよ」
「ありがとう、玲奈」
「いいって。それにしても、任務以外で翼が鼻歌を歌ってるとこなんて初めてだ」
「ああ、あたしも初めてだ」
「か、奏!玲奈!」
「そういうの、なんかいいよな」
鼻歌を聞かれて恥ずかしそうにしてる翼に奏は翼に軽くデコピンをする。
「また鼻歌聞かせてくれよなー。行こうぜ、玲奈」
「ああ。今日はぜってぇーに負けねぇ」
「はは、いいねぇ!」
「か、奏!鼻歌は、誰かに聞かせるものじゃないから!!」
「わかってるって。じゃ、行ってきな」
奏はそう言って、翼に手を振り、玲奈と共に手を振って格納庫を去っていった。
~♪~
日和と海恋、響と未来が仲直りした数日後、二課の外部協力者として登録してもらった海恋と未来は日和と響に二課の内部を案内してもらっている。
「うわぁ・・・学校の真下にこんなシェルターや地下基地が・・・」
「ね、すごいよね。私も最初見た時は驚いたよ」
「そんな場所に歩けるってことが未だに信じられないんだけど・・・」
まさか学校の地下に二課の本部があるなどと想像もつかなかった未来と海恋は当然ながら驚きながら二課の廊下を見回す。
「あ!翼さーん!!」
「あ、待って響ちゃん!」
すると響は翼を発見し、駆け寄る。3人も翼の元へと駆け寄る。そばには緒川と藤尭もいる。
「立花と東雲か。そちらは・・・確か・・・協力者の・・・」
「こんにちは。小日向未来です」
「西園寺海恋です。日和がお世話になったようで・・・ありがとうございます」
未来と海恋は翼と初対面し、礼儀正しくお辞儀をして自己紹介する。
「えっへん!私の親友です!」
「むっ・・・私と海恋だって負けてないくらいの親友なんだから!」
「なんであんたが張り合ってるのよ。後立花さんも自慢するところじゃないわよ」
響はなぜか胸を張って未来と親友だと自慢をし、日和はなぜか意地を張って対抗の意思を示している。そんな2人に海恋は呆れて頭を抱える。
「立花と東雲はこういう性格ゆえ、面倒をかけるとは思うが、支えてやってほしい」
「いえ、響は残念な子なのですので、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
「日和もああ見えて臆病でアホな子なので、いい印象を持ちませんが、とてもいい子なので、よろしくお願いいたします」
「ちょっと海恋!!?私がアホの子ってどういうこと!!?」
「えぇ?何?どういうこと?」
残念な子である響は3人の会話内容をまったくついていけてない様子で、日和はアホな子認定されていた海恋に対し、遺憾の意を示している。
「響さんと日和さんを介して、3人が意気投合しているということですよ」
「はぐらかされた気がする・・・」
「なんか全然納得いかない~・・・」
「ほら、そういうところよ」
「「ふふふ」」
緒川にはぐらかされて、納得していない様子の響と日和に海恋が指摘する。その様子に未来と翼は笑いあう。
(変わったのか・・・それとも変えられたのか・・・)
楽しく笑う翼に対し、緒川は考察する。どちらにせよ、翼が笑っているのは、緒川にとっても、喜ばしいことなので、笑みを浮かべている。
「でも未来と一緒にここにいるのは、なんかこそばゆいですよ」
「私もです。海恋がここにいるなんて、誰が想像できたか・・・」
「小日向と西園寺が外部協力者として、二課に移植登録させたのは、指令が手を回してくれた結果だ。それでも、不都合を強いるかもしれないが・・・」
現状を説明し、申し訳なさそうにしている翼だが、未来と海恋はまったく気にしていない様子だ。
「説明は聞きました。自分でも理解してるつもりです。不都合だなんて、そんな・・・」
「ええ。むしろ、とても嬉しいんです。私たちにも、役に立てることがあるんだって・・・」
「海恋・・・」
「あなたたちとは違うけど・・・これでも、立派な戦い・・・でしょ?」
「・・・うん!一緒に頑張ろう!」
二課の協力者として、日和たちに協力できることが嬉しく思う海恋は笑みを浮かべて日和に顔を向ける。日和は嬉しそうにそう答える。
「・・・あ、そういえば師匠は・・・?」
そこで響は弦十郎がいないことに気づき、翼に尋ねる。
「ああ、私たちも探しているのだが・・・」
「ええ?いないんですか・・・?」
どうやら翼たちも探しているようだが、どうやらいないようでどこに行ったかもわからないようだ。
「あーら、いいわね、ガールズトーク♪」
そこへ了子がやってきて、会話に混ざってきた。
「どこからツッコめばいいのか迷いますが・・・とりあえず僕を無視しないでください・・・」
さりげなく存在を無視された緒川は困った顔をしてそう発言するも、了子はお構いなしである。しかも日和、響、未来は了子の方に興味を持ち、海恋と翼は緒川に同情する。
「了子さんもそういうの、興味あるんですか?」
「モチのロン!私の恋バナ百物語聞いたら、夜眠れなくなるわよ~」
「まるで怪談みたいですね・・・」
了子の言葉に未来は少し苦笑を浮かべているが、響と日和は興奮気味である。
「了子さんの恋バナ!!?きっとうっとりメロメロおしゃれで大人な銀座の恋の物語ぃ~!!」
「きっとロマンチックなんだろうなぁ~。そういうの憧れちゃうよ~」
「あんた小学校の時男子と付き合ったことあったって言ってなかったっけ?」
「一週間で別れを言うような男子は王子様じゃない!!!」
「王子様って・・・」
日和は小学校の頃、男子と付き合っていた頃があったそうだが、たった1週間で別れてしまい、日和はそれっきりいい彼氏を見つけていない。大袈裟に言う日和に海恋は呆れる。
「そうねぇ・・・遠い昔の話になるわね・・・こう見えて呆れちゃうくらい一途なんだから・・・」
「「「おおおおおお!!」」」
了子の意外すぎる一面を聞いて、日和、響、未来は了子の話の続きが気になって仕方ない様子である。海恋と翼は本当に意外そうな顔をしている。
「正直、意外すぎます。なんていうか、誰よりも乙女をしてるって感じで・・・」
「私もだ。てっきり櫻井女史は恋と言うより、研究一筋であると・・・」
「『命短し恋せよ乙女』と言うじゃない?それに女の子の恋するパワーってすごいんだから!」
「女の子ですか・・・」
バキンッ!!
「ぐあ!!?」
了子の話を聞いて微妙な反応をする緒川の呟きが聞こえたのか了子は彼に裏拳を叩き込んで彼を黙らせる。
「私が聖遺物の研究を始めたのもそもそも・・・」
「「「うんうん!!それでそれで!!?」」」
日和、響、未来は興奮気味で了子の話の続きを待っている。
「・・・ま、まぁ!私も忙しいから、ここで油を売ってられないわ」
「自分から割り込んできたくせに・・・」
ゲシィッ!!
「ぐわあ!!!」
「緒川さん!!?」
ほんの少し了子は照れた様子で話を中断させる。そして余計なことを言い放った緒川は了子から蹴りを入れられて倒れる。
「とにもかくにも!できる女の条件は、どれだけいい恋をしてるかにつきるものなのよ!ガールズたちも、いつかどこかでいい恋しなさいね?んじゃ、ばっははーい♪」
了子は女子たちにそれだけを言って手を振り、その場を後にしたのであった。
「・・・聞きそびれちゃったね・・・」
「んー、ガードは固いかぁ・・・。でもいつか、了子さんのロマンスを聞き出してみせる!」
「了子さんの話には、男子を魅了できるものがあるはず!絶対に聞き出すよ!!」
「何言ってんのよ。一応は女子高よ?外に出ないと男子なんて出会えないわよ」
了子の話を聞けなかった未来は少し残念そうにしており、響と日和はいつか了子の恋バナを聞こうと決意しており、海恋はそんな2人に何度目かの呆れを見せる。
~♪~
本日は大雨で街は土砂降りだ。そんな街のどこかに存在しているもうボロボロになっているマンション。逃亡生活を送ってきているクリスはこのマンションで身を潜めていた。あれからどれだけ時間が経ったのかわからないクリス。毛布で暖をとるが、毛布が薄いせいで全然暖まることができない。
ぐうぅぅ~・・・
そのうえ、逃亡生活を強いられているため、まともな食事もとれておらず、クリスは腹を空かせており、お腹が鳴っている。
ガチャ・・・
「!!」
そこで、戸が開く音が聞こえてきた。誰かが入ってきたのだ。クリスは毛布を放り出して部屋の壁に張り付いて、気配を殺す。クリスは恐る恐る誰が入って来たのかを確認する。
「ほらよ。応援は連れてきていない。俺だけだ」
部屋に入ってきたは、あんパンと牛乳が入ったコンビニ袋を持った弦十郎だった。
「君の保護を命じられたのは、もう俺1人になってしまったからな」
「・・・どうしてここが・・・」
弦十郎に対し、警戒を解かないクリス。クリスに危害を加えるつもりがない弦十郎は胡坐をかいて畳に座り込む。
「元公安の御用牙でね。慣れた仕事さ。差し入れだ」
弦十郎はクリスに差し入れを渡すが、クリスは受け取ろうとしない。弦十郎たちは敵と認識しているために、受け取れないのだろうが・・・
ぐうぅぅ~・・・
クリスのお腹は正直に鳴る。弦十郎はクリスにパンを受け取ってもらうためにあんパンをかじって毒味したことを証明させる。
「何も盛っちゃいないさ」
毒味を確認したクリスは渡されたパンを強引に受け取り、食べ始める。
「・・・食後に、これを飲んでおけ」
そう言って弦十郎はクリスに差し入れ以外のものを取り出す。取り出されたものはクリスには見覚えがあった。
「それは・・・あの人の薬・・・」
それは、クリスが看病の際に、咲から受け取った疲労回復の処方箋だ。これを飲んだおかげでクリスは元気になったし、その時のこともはっきりと覚えている。クリスは処方箋を受け取り、中を確認する。薬はクリスが飲んだ分しか減っておらず、あれから手を着けられてないことがわかる。
「海恋君が君にだそうだ。倒れていたんだってな。心配していたぞ」
「あいつ・・・余計なことを!」
海恋の心配する気持ちにクリスは毒づく。
「・・・バイオリン奏者、雪音雅律とその妻、声楽家のソネット・M・ユキネが難民救済のNPO活動中に戦火に巻き込まれて死亡したのは8年前・・・残った1人娘も行方不明となった。その後、国連軍のバルベルデ介入によって事態は急転する。現地に囚われてた娘は、発見され保護・・・日本に移送されることになった」
弦十郎は牛乳も毒味し、それをクリスに渡す。クリスは牛乳を受け取り、話された過去の内容の正確さに不快感を表している。
「ふん、よく調べてんじゃねぇか。そういう詮索、反吐が出る」
「当時俺たちは適合者を探すために、音楽界のサラブレッドたちに目をつけていてね。天涯孤独となった少女の身元引受先として、手を挙げたのさ」
「ふん、こっちでも前衛かよ」
「ところが、少女は帰国直後に消息不明。俺たちも慌てたよ。二課からの相当数の捜索員が駆り出されたが、この件に関わった者の多くは死亡、あるいは、行方不明という最悪の結末で幕を引くこととなった」
「何がしたい、おっさん!!」
クリスの問いに弦十郎は答える。
「俺がやりたいのは・・・君を救い出すことだ」
「!!」
弦十郎の言葉にクリスの気持ちは揺れ動いた。そして脳裏に浮かび上がるのは、咲の優しい人情だった。
「引き受けた仕事をやり遂げるのは、大人の務めだからな」
だが弦十郎の言葉で、それも消えた。咲の場合だと、何も言わずに自分を家に止めてくれたし、仕事があったにも関わらず面倒を見てくれた。もし弦十郎のこの一言がなければ、状況は違ったのだろうが、彼はクリスが嫌う大人の務めと言った。それによって弦十郎に嫌悪感を露にするクリス。
「ふん!大人の務めと来たか!余計なこと以外は、いつも何もしてくれない大人が偉そうに!!!」
クリスは律義に咲の処方箋を一膳を口に入れ、牛乳で流し込んだ後、空になった牛乳パックを放り投げ、窓ガラスを破ってベランダから飛び出す。
Killter Ichaival Tron……
クリスはシンフォギアを身に纏って逃亡した。弦十郎はそんな彼女の背中を見ていることしかできず、悔しさをにじませた。
~♪~
一方その頃、日和たちは二課の本部で弦十郎の帰りを待っている様子であったが、当人は未だに帰ってくる気配がない。
「司令、まだ戻ってきませんね・・・」
「ええ。メディカルチェックの結果を報告しなきゃならないのに・・・」
「次のスケジュールが迫ってきましたね」
「えぇ!!?翼さん、もうお仕事入れてるんですか!!?」
メディカルチェックでもう完全に回復した翼がもうアーティストの仕事を入れてることに驚く日和。
「少しずつよ。今はまだ、慣らし運転のつもり」
「じゃあ、過密スケジュールじゃないんですよね?」
「え、ええ」
「だったら翼さん!デートしましょう!!」
「デート?」
「えええ!!?」
響の確認の質問の後の突然のデートの誘いに驚く翼。まさかそう来るとは思わなかった日和は非常に驚き、未来は何となく想像してたようで、やっぱりと言う顔をしていた。
「大袈裟ね・・・ただのお出かけっていえばいいのに・・・」
大袈裟に言い放つ響の発言に海恋はちょっとあきれた様子だ。とはいえ、断る理由もないため、ここにいる全員はもちろんのこと、翼も響の誘いに了承し、休みの日にお出かけすることに決まったのだった。
パーカー愛好家日和
日和は私服にパーカーをよく着込む・・・というより、私服全部がパーカーで多種多様のパーカーを休みの日に着るらしい。夏であろうと冬であろうと、専用のパーカーを愛着することから海恋に「まるで愛好家だ」と言われたそうな。ちなみに、着込むパーカーは日によって違うため、ファッションの組み合わせも似合う組み合わせがあれば、ダサい組み合わせがある。ダサい組み合わせをするたびに海恋が毎回似合う組み合わせに変えようと奮闘することが多々ある。