戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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決戦間近

リディアンの生徒会室。そこから海恋と響と未来が出てくる。どうやらまた響がやらかし、海恋からの何度目かの注意を受けているようだ。

 

「少しずつでもいいから、気を付けるように」

 

「はい・・・すみません・・・」

 

「すみません、いつも響が・・・」

 

きっちりと風紀委員の仕事をこなしている海恋に頭を下げて謝罪する響と未来。すると、遠くでリディアンの校歌が聞こえてくる。

 

「~♪」

 

響はそれに感化され、鼻歌で校歌はを歌い始める。

 

「何?合唱部に触発されちゃった?」

 

「ん~、リディアンの校歌を聞いてると、まったりするっていうか・・・すごく落ち着くっていうか・・・みんながいるところって思うと安心する!自分の場所って気がするんだ」

 

響の言葉を聞いて、海恋は微笑む。

 

「立花さんも、もう立派なリディアンの生徒ね」

 

「まぁ、と言いましても、入学して、まだ二か月ちょっとなんですけどね~」

 

「でも、いろいろあった二か月だよ」

 

「うん。そうだね」

 

「ふふ、私にとっては、あれから1年か・・・」

 

3人は感慨深い気持ちで学校の広場を眺める。

 

「・・・あれ?そういえば海恋さん、日和さんは?」

 

「あの子なら今日は休み。迎えに行きたい人がいるとかどうとかでね。だから今回は特別に許可したわ。・・・私も待ってるから」

 

海恋は2人に今日は日和は休みであることを伝える。日和の言う迎えに行きたい人というのはもちろん・・・彼女だ。

 

~♪~

 

どこかに存在するフィーネの屋敷。直観的にここに戻らなければいけないと感じたクリスは戻ってきたが・・・屋敷の中は目を疑うような光景が広がっていた。

 

「何が・・・どうなってやがんだ・・・?」

 

その光景とは、米国の特殊部隊が辺りに倒れて、一面が血で染まっている惨劇の光景だった。出血量から、特殊部隊員たちは全員死んでいることがわかる。当然、この光景を目の当たりにしたクリスは状況が理解できないでいる。

 

「クリス・・・」

 

すると、後ろから声が聞こえてきて、クリスは振り返る。そこにいたのは、日和と、弦十郎が率いる黒服たちであった。目の前の惨劇に日和は吐き気を催すが、何とか堪える。

 

「ち、違う!!あたしじゃない!!やったのは・・・」

 

黒服たちは動き出したが、クリスに拳銃を向けることはない。黒服たちはこの屋敷の調査を行っている。

 

「誰もお前さんがやったとは思っちゃいないさ。全ては、"君や俺たちのそばにいた、彼女"の仕業だ」

 

弦十郎は信頼を置ける部下と共に極秘で調査していた。そして、クリスを裏で操り、この事態を招いた黒幕の正体を掴んだのだ。

 

「クリス!」

 

日和はクリスに近づき、彼女を安心させるようにその手を握る。

 

「よかったぁ・・・やっぱり1人でいるクリスが心配だったから・・・」

 

「お、お前・・・」

 

「すみませんししょー・・・無理言ってついてきちゃって・・・」

 

「君に彼女を託した以上、何も知らないのはフェアじゃないからな。気にするな。それより日和君、大丈夫か?」

 

「は、はい。何とか・・・」

 

日和は弦十郎に無理を言ってここまで連れてきてもらったようだ。それよりも弦十郎はこの惨劇を目の当たりにした日和の心配をする。

 

「風鳴指令!」

 

すると後ろにいた黒服が特殊部隊員に何かの紙が貼ってあったのに気が付く。紙には赤い文字でこう書かれていた。

 

I LOVE YOU SAYONARA

 

黒服はその紙をはがした。すると・・・

 

ドカアアアアアアアアン!!!!!

 

部屋が突如として爆発し、部屋が崩落する。どうやらこの爆発はあの紙が引き金になったようだ。爆発が収まり、煙が晴れると、そこには弦十郎が左腕で日和とクリスを抱いて守り、片手で大きな瓦礫を受け止めていた。黒服の人間は、軽い怪我を負ったが、全員無事であった。

 

「・・・どうなってんだよこいつは・・・?」

 

「衝撃は発勁で掻き消した」

 

「すごい・・・さすがししょー・・・」

 

あの爆発の衝撃を発勁でかき消す弦十郎のすごさに日和は感心する。だがクリスはすぐに弦十郎の腕を振り払い、警戒を露にする。

 

「そうじゃねぇよ!!なんでギアを纏えない奴があたしを守ってんだよ!!」

 

弦十郎は日和を離れさせて、瓦礫をその辺におろしてクリスの問いに答える。

 

「俺が君を守るのは、ギアのあるなしじゃなくて、お前よか少しばかり、大人だからだ」

 

「大人?」

 

この世で最も嫌いな大人という言葉にクリスは嫌悪を表し、口を開く。

 

「あたしは大人が嫌いだ!!死んだパパもママも大嫌いだ!!とんだ夢想家で臆病者!!あたしはあいつらとは違う!!戦地で難民救済?歌で世界を救う?いい大人が夢見てんじゃねえよ!!!」

 

「大人が夢を・・・ねぇ・・・」

 

「それは違うよクリス。だって・・・」

 

「黙れ!!!」

 

日和はクリスに声をかけようとしたが、クリスがそれを拒絶する。

 

「本当に戦争をなくしたいのなら、戦う意思とお前みたいな力を持つ奴らを片っ端からぶっ潰せばいい!!それが1番合理的で現実的だ!!!」

 

「・・・そいつがお前の流儀か。なら聞くが、お前はそのやり方で、戦いをなくせたのか?」

 

「・・・っ!それは・・・」

 

弦十郎に痛いところを突かれて、クリスは何も言えなくなる。

 

「クリス・・・クリスだってもう気づいてるんだよね?そんなやり方じゃ、戦いをなくせないって。それじゃあ、あの人の言ったとおりだって」

 

「くっ・・・!」

 

クリスも薄々は気づいている・・・いや、もうとっくに気づいてると言った方がいいだろう。自分のやってきたことの結果、関係ない人間を巻き込んでしまったのだから。

 

「・・・いい大人は夢を見ない、と言ったな。そうじゃない。大人だからこそ夢を見るんだ。大人になったら背も伸びるし、力も強くなる。財布の中の小遣いだって、ちっとは増える。子供の頃は、ただ見るだけだった夢を、大人になったら叶えるチャンスも大きくなる。夢を見る意味が大きくなる。お前の親は、ただ夢を見に戦場に行ったのか?違うな。歌で世界を平和にするって叶える為、自ら望んで地獄に踏み込んだんじゃないのか?」

 

「なんで・・・そんなこと・・・」

 

「お前に見せたかったんだろう。夢はかなえられるという、揺るがない現実をな」

 

弦十郎の言葉にクリスははっと息をのむ。

 

「お前は嫌いと吐き捨てたが・・・お前の両親は、きっとお前のことを大切に思っていたんだろうな」

 

弦十郎の言葉を聞いて、クリスは涙を潤ませる。そんな彼女に日和は近づく。

 

「クリス・・・もういい。もう・・・1人で抱え込まなくたっていいんだよ。誰かに相談できないなら、せめて私に相談して。それができないなら、一緒に悩んであげる。その悩みが何だかわからないけど・・・私は、クリスと一緒に、気持ちを分かち合いたいよ。だって・・・私たち、友達だから」

 

「友・・・達・・・」

 

日和はクリスと握手を交わそうと手を差し伸べる。クリスはその手を握ってよいか戸惑うが、日和がその手を握った。握手を交わしたクリスは感じ取った優しさと暖かに、涙を流す。それを見て日和もにっこりと微笑む。

 

「・・・いい友に巡り合えたな・・・」

 

その光景を見て弦十郎は微笑ましく笑みを浮かべる。これが、日和とクリスにとって、固い絆になると信じて。

 

~♪~

 

屋敷の調査が終わり、弦十郎たちは撤収の準備に取り掛かる。日和は弦十郎の車に乗ろうとすると、クリスに視線を向ける。

 

「・・・やっぱり、あたしは・・・」

 

「一緒には来られないか?」

 

弦十郎たちの気持ちは十分に理解できたが受けた傷が傷ゆえに、どうしてもすぐには信用できないクリス。

 

「・・・クリス。私、いつまでも待ってるから」

 

日和はクリスに微笑んでそう口にして車の座席に乗り込む。

 

「お前はお前が思っている程、1人ぼっちじゃない。お前が1人道を往くとしても、その道は遠からず、俺達と交わる」

 

「今まで戦ってきた者同士が一緒になれるというのか?世慣れた大人が、そんなきれいごとを言えるのかよ」

 

「ほんと、ひねてんなぁ、お前。ほれ」

 

クリスのひねくれ具合に弦十郎は笑いながら彼女に通信機を渡す。

 

「通信機?」

 

「それがあると便利だよ~。限度額内なら公共交通機関が使えるし、自動販売機でお買い物ができるよ。私も何度もお世話になってますよ~」

 

「日和君、そろそろ戻るぞ」

 

「あ、はい!」

 

日和がクリスと話していると、、車のエンジンが鳴る。するとクリスは弦十郎にあることを教える。

 

「カ・ディンギル!」

 

「ん?」

 

「カ・・・え?何?」

 

「フィーネが言ってたんだ。カ・ディンギルって。それが何なのかわからないけど・・・そいつはもう完成してるみたいなことを・・・」

 

「カ・ディンギル・・・」

 

クリスから得た情報に弦十郎は険しい顔つきになる。

 

「ししょー・・・本当にあの人が・・・?今でも信じられません・・・」

 

日和は弦十郎から黒幕の正体を聞かされていたが、今でも信じられず、顔を俯かせる。信じられない気持ちは弦十郎も同じなので、何も言えない。

 

「・・・後手に回るのはしまいだ。こちらから打って出てやる!」

 

弦十郎たちは黒服たちと共にフィーネの屋敷から去っていった。残ったクリスは受け取った通信機を見つめ、握りしめる。

 

~♪~

 

二課の本部に戻った弦十郎と日和は指令室で響と翼に通信を入れる。モニターには響と翼の顔が映し出される。

 

『はい、翼です』

 

『響です』

 

「収穫はあった。了子君は・・・」

 

「まだ出勤していません。朝から連絡不通でして・・・」

 

「・・・そうか・・・」

 

弦十郎は友里に了子の出勤について尋ねるが、当の了子はまだ来ていない様子だ。

 

『了子さんならきっと大丈夫です!何があったって、私や日和さんを守ってくれた時みたいにドカーンとやってくれます!』

 

楽観的な響の言葉に翼が口を挟む。

 

『いや、戦闘訓練をろくに受講していない櫻井女史にそのようなことは・・・』

 

『んえ?師匠とか了子さんって人間離れした特技とか持ってるんじゃないんですか・・・』

 

「でも、私も見ましたよ。なんか・・・こう・・・エネルギーバリアー!的なもので、ノイズから守ってくれて・・・」

 

日和はデュランダル移送作戦の際に見たことを翼に話す。同時に考える。もし弦十郎の言うことが正しいのであれば、いろいろと辻褄があうと。それでも日和は、どうしても信じられないでいる。すると、音声通信で了子からの通信が入った。

 

『やーっと繋がったぁ!ごめんね、寝坊しちゃったんだけど・・・通信機の状態がよくなくって・・・』

 

了子の言葉に弦十郎の目は鋭くなる。

 

「無事か、了子君。そっちに問題は?」

 

『寝坊してごみを出せなかったけど・・・何かあったの?』

 

『よかったぁ・・・』

 

了子の無事が確認できて、響は安堵の声を上げる。

 

「ならばいい。それより、聞きたいことがある」

 

『せっかちね。何かしら~?』

 

「カ・ディンギル・・・この言葉の意味するものは?」

 

弦十郎の質問に了子が答える。

 

『カ・ディンギルとは、古代シュメールの言葉で高みの存在。転じて天を仰ぐほどの塔を意味しているわね』

 

「何者かがそんな塔を建造していたとして、なぜ俺たちは見過ごしてきたのだ?」

 

『確かに・・・そう言われちゃうと・・・』

 

「そうですね・・・塔なんて、めちゃくちゃわかりやすい建物のはずなのに・・・」

 

塔と呼ばれるからには建造物であるのは間違いないが、なぜ塔ほどわかりやすい建物を二課の目をかいくぐれてきたのか、謎に思う響と日和。

 

「だが、ようやくつかんだ敵のしっぽ。このまま情報を集めれば勝利も同然。相手のすきに、こちらの全力を叩き込むんだ。最終決戦、仕掛けるからには仕損じるな」

 

「了解」

 

「『了解です!』」

 

通信会議が終了し、響と翼の通信が切れる。

 

『ちょっと野暮用を済ませてから、私も急いでそっちに向かうわ』

 

了子との音声通信が切れる。通信が終わった瞬間、二課のオペレーターたちはすぐにカ・ディンギルについての情報をかき集める。

 

「カ・ディンギル・・・秘密の塔・・・う~ん・・・出てくるのはゲームとかの攻略サイトばっかりだぁ・・・」

 

日和も日和なりにスマホで情報を集めようとしているが、やはり一般の情報ではそれらしいものは出てこなかった。

 

「些末なことでも構わん!カ・ディンギルについての情報をかき集めろ!!」

 

ヴゥー!ヴゥー!

 

二課が情報を集めていると、突然の警報が鳴り響いた。

 

「どうした⁉」

 

「飛行タイプの超大型ノイズが一度に3体・・・いえ!さらにもう1体出現!!」

 

「合計で4体・・・すぐに出撃します!!」

 

街に飛行型の大型ノイズの出現の報告を聞き、日和は指令室を出て出撃する。

 

~♪~

 

外にいる装者2人にも飛行型の大型ノイズの出現が伝わった。今響は飛行型ノイズの詳細を聞いている。

 

「今は人を襲うというよりも、ただ移動していると。・・・はい・・・はい!」

 

「・・・行くのね」

 

「響・・・」

 

詳細を聞いている響に未来は心配そうな顔をしている。

 

「平気!私と日和さん、翼さんで何とかするから!だから未来と海恋さんは学校に戻って!」

 

「リディアンに?」

 

「いざとなったら地下のシェルターを解放してこの辺の人たちを避難させないといけない。未来と海恋さんにそれを手伝ってもらいたいんだ」

 

「わかった。でも、日和もそうだけど、無理は禁物よ」

 

「はい!」

 

「う、うん・・・わかった・・・」

 

いざの時のための避難誘導の役目を頼む響に海恋は了承しする。未来も首を縦に頷くが、とても不安そうだ。

 

「・・・私、先にリディアンに行ってるわよ」

 

未来と積もる話もあるため、海恋はすぐに移動を始める。

 

「・・・ごめん、未来を巻き込んじゃって・・・」

 

「ううん、巻き込まれただなんて思ってないよ。私がリディアンに戻るのは、例え響がどんなに遠くに行ったとしても、ちゃんと戻ってこられるように、響の居場所、帰る場所を守ってあげることでもあるんだから」

 

「私の・・・帰る場所・・・」

 

「そう。だから行って。私も響みたいに大切なものを守れるくらいに、強くなるから」

 

にっこりと微笑む未来に響は彼女の手を握る。

 

「小日向未来は私にとっての陽だまりなの!未来のそばが1番あったかところで、私が帰ってくるところ。これまでもそうだし、これからもそう!だから私は絶対に帰ってくる!」

 

「響・・・」

 

「流れ星見る約束、まだだしね!」

 

「うん」

 

響の未来はお互いに笑いあう。

 

「じゃあ、行ってくるよ!」

 

響は任務のために現場へと走っていく。未来はそんな響の背中を見て、妙な胸騒ぎを覚える。まるで、何か嫌な予感を感じたかのように。




ひよりん

日和のニックネーム。主に日和のクラスメイト達がそう呼んでいる。幼稚園で同じクラスになった園児から呼ばれたことがきっかけ。日和はこれを気に入り、仲良くなった相手にそう呼んでほしいとクラスの自己紹介の際に明言している。

タイガー勾玉

日和と海恋が読んでいる漫画。主に買って読むのが日和で、勧められて仕方なく読んでるのが海恋。7つ集めると願いを叶える虎が現れる勾玉を巡って戦いが繰り広げられるバトル漫画。日和はこの漫画の主人公が特に好きで、小学校の頃よく主人公のモノマネをやっていた。今は恥ずかしくてやらなくなってしまったが・・・果たして再びモノマネをする機会は来るのだろうか・・・。
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