そして、時は戻って、舞台は再び現代へ・・・場所はリディアン音楽院に変わる。
リディアン音楽院・・・小中高一貫の私立学校でその名の通り、音楽教育を中心にしたカリキュラムを特徴としている文字通りの音楽学校である。東雲日和もこのリディアン音楽院の2年生の生徒でもある。そして、リディアン生であるその日和はというと・・・
「東雲さん!!!」
「へぅ・・・」
リディアンの教師に2年のクラスメイト全員の前で絶賛怒られている。その理由というのが・・・
「い、いやぁー・・・あのですね・・・作詞作曲が思いのほかノリに乗っちゃいまして・・・ついリズムを刻んだと言いますかなんといいますか・・・」
「東雲さん!!!!」
「あぅ・・・」
単純に寝坊して授業に大遅刻したのが原因である。しかも、この寝坊による大遅刻は1回や2回ではない。ほぼしょっちゅうである。
「クスクス・・・」
「本当、ひよりんは懲りないよねー」
「やっぱひよりんはこうでなくちゃ」
2年のクラスメイトたちにとってはこの光景は微笑ましい光景でくすくすと笑っている。
「・・・はぁ・・・」
そんな中で唯一日和をあきれた様子でため息をしているのが、日和と学生寮で一緒に住んでるルームメイトであった。
~♪~
リディアンの授業が終わった瞬間、日和はだらぁ~っと机の上に突っ伏した。
「あ~~・・・つっかれた~・・・」
「まったく・・・いつになったら日和はちゃんと毎日まともに起きられるようになるのかしら・・・」
日和の寝坊に頭を悩ませているのはやっぱり日和のルームメイト。水色の髪を三つ編みポニーテールに結んでおり、茶色の縁のメガネをかけた彼女の名は西園寺海恋。リディアン音楽院の2年生で風紀委員に属している女の子である。性格は風紀委員にふさわしく、絵にかいたような真面目で冗談が何1つ通用しない堅物である。
「もぉ~・・・朝起こしてって毎回言ってるのに~。風紀委員でしょ~?」
「私は毎回起こしてます。でも何をやっても起きないのはあなたの方でしょう?」
「そうだったっけ?」
「そうですよ。まったく・・・おかげで何度遅刻しそうになったか・・・」
日和の毎回の夜更かし、そして毎回繰り返される遅起きを何とか直そうと海恋なりに努力してきたが、どれもこれも空振りで終わってしまっている。もう放っておいた方がいいのではと普通では考えるのだが、風紀委員のプライドとして、海恋は断固としてそれを許容しない。だからこそ頭を悩ませるのだ。
「ライブの時は時間ぴったりなのに・・・はぁ、この先社会に出て早寝早起きできるのか心配になってくるわ・・・」
「私は海恋に毎回起こしてもらうからいいんだよ~♪」
「あなた・・・それでも医者の娘?」
「どうせ私は頭悪いですよ~だ」
他愛のない会話を繰り広げる日和の元にギターを持ったクラスメイトが声をかけてきた。
「ひよりん、この後私たちセッションをするんだけど、ちょっと付き合ってくれない?」
「おー!もちろんやるやる!」
クラスメイトの誘いにノリノリな日和は持ってきたベースを持ちあげる。
「あ、ちょっと日和!明日に出す課題は・・・」
「寮に帰ってからやるー!」
海恋は日和を呼び止めようとしたが、それで止まるはずもなく、日和はクラスメイトと一緒にセッションの会場である音楽教室へと向かっていく。
「はぁ・・・でもよかった。いつも通りの日和に戻って」
明るい日和の姿を見て、海恋は安心したような笑みを浮かべる。
1年前のアビスゲートのライブの日、あの後日和は大変な目に遭った。まず、小豆の家族に娘の死を報告した。それによって小豆の家族全員は日和を目の敵にし、『人殺し』などと罵声を飛ばしたり、ものを投げつけられて、嫌われ者になったりした。それだけじゃない。追い打ちをかけるように日和の母親は蒸発して家を出ていき、父親も心中自殺をし、亡くなってしまい、病院もうまく回らなくなり、数か月で廃業してしまったのだ。こうなってしまったのは1年前の事件だけでなく、2年前の事件にも大きく関係しているのである。
これらのことが積み重なって、日和は心を閉ざし、リディアンの学生寮に引きこもってしまったのだ。リディアンには日和を敵視する者は1人もいなかったのが不幸中の幸いである。それが功を制して、日和は悲しみを抱えつつも、髪を短く切って心機一転して学校に通うようになった。今の元気な日和がいるのは海恋とクラスメイト、先輩たちの根気強い慰めや説得・・・そして、自分のために働いてくれている姉の存在のおかげである。そうでなければ、半年といわず、1年、いやそれ以上に月日が流れ留年・・・下手をすれば退学もありえたのだ。
ちなみに日和には年が離れた姉が存在しており、東雲総合病院がなき今、現在は別の病院で医者をやっている。
「本当に・・・よかった・・・」
日和とは中学2年生からの付き合いなのだが、海恋にとって明るい日和の存在はなくてならないかけがえのない存在となったので、元の日和に戻って、心の奥底から安心している。
~♪~
セッションが終わって学生寮に戻った日和は海恋に言われて明日に出す課題の製作に追われていた。海恋に見張られながらのため、息つく余裕もなく、ようやく終わって肩の力を抜いた。
「はぁ~~・・・やっと終わった~・・・」
課題を終わらせた日和は腕を伸ばし、大の字になって床に倒れこんで床の冷たさを堪能していた。
「はい、お疲れ様。じゃあ、早く歯を磨いて今日は寝ちゃいなさい」
「ええ~~?」
せっかく課題を終わらせたのにもう寝なければいけないことに対し、日和は不満を抱いた。
「え~じゃないわよ。夜更かしするから大遅刻するのよ。また先生に怒られたいの?」
「それ毎回聞いたよ~・・・たまには違う言葉かけてよ~・・・」
「そうしたいなら、早く寝なさいよ」
「は~い・・・」
「本当に・・・あなたの姿を見たら小豆や玲奈さんは何と言うか・・・」
「小豆だって似たようなもんじゃん~・・・」
ぶつぶつ文句を垂れる日和は洗面所に向かってパジャマに着替え始める。その最中に玲奈が残した赤い結晶のネックレスをじっと見つめる。
(あの日、私は小豆と玲奈に助けられた。亡くなった2人のためにも、生きていかなくちゃいけない。そうだよね、小豆、玲奈・・・そう約束したもんね・・・)
小豆と玲奈に生きてほしいという約束・・・日和はその約束を守り続けるために決意表明のように玲奈の形見であるこのネックレスを肌身離さず身に着けるようになったのだ。このネックレスが、自分を守ってくれるお守りのように。そして・・・このネックレスがどういう代物なのかも知らずに。
(・・・あの時、玲奈はノイズと戦ってるように見えた・・・。でも、ノイズに武器は効かなくて・・・触れただけでも炭になっちゃう・・・。やっぱり、玲奈のあの姿は・・・私の幻・・・?)
1年前に見た玲奈のインナースーツのような鎧・・・そして、通常兵器は効かないはずのノイズを倒せた理由・・・疑問に残ることが多すぎて、日和の頭ではそれら全てを解明することができない。結局何も解明できない日和は何とも言い表せないもやもやを抱えたまま、ベッドにもぐりこみ、眠りにつくのであった。
~♪~
翌日のリディアン音楽院の食堂。食堂には持参した弁当を食べる人や、用意された料理をバイキング形式で取って食べる人間がわかれている。ちなみに海恋は前者で、日和は後者に該当する。海恋は日和と一緒にご飯を食べながら、今朝のニュースをスマホで確認している。
「自衛隊、特異災害対策機動部による避難誘導は完了しており、被害は最小限に抑えられた・・・か・・・。場所は・・・」
どうやら海恋が見ているのはノイズ関連の記事のようだ。海恋はノイズ関連の記事は毎回の如く確認しているのだ。自分や日和の命を守るために、ノイズから遠ざけられるように最低限でも情報が欲しいのだ。もう二度と、小豆や玲奈のような犠牲者が出ないように。
「ここからそう離れてないみたいね。なんだかここ最近多くなってきてないかしら?」
ノイズの発生場所を見て、割と近い場所だったために気が遠くなる思いになる海恋。海恋はスマホを閉じ、食事を再開させようとすると、日和の行儀の悪さが目に映る。
「ちょっと・・・食事する時くらい作詞をやめなさいよ」
「ん~~~?なんて~?」
「またイヤホンを着けて・・・」
日和はオムライスを食べながら音楽を聴いて、作詞をしている。両耳にイヤホンまでつけているため海恋の注意は聞こえてこない日和。すると、食堂内が突然ざわつき始めた。
「ね、翼さんよ」
「本物の翼さんだ」
「えっ!!?翼さん!!?」
「わっ、びっくりした」
翼という名が出た途端に日和はイヤホンを外して辺りを見回してみる。すると1つのテーブルの近くに近寄りがたい雰囲気を出しているリディアンの生徒がいた。長い青髪にサイドテールをしているのが特徴的だ。
風鳴翼。それが彼女の名前である。翼は超人気のアーティストユニット、ツヴァイウィングの片割れで、今はソロのトップアーティストとして活躍している。翼の人気はツヴァイウィングを結成から非常に高く、日本中で知らない存在はほとんどいない。その人気っぷりは現にこのリディアンで影すら拝めないほどである。
そんな彼女は今、なぜか茶碗と箸を持って緊張しているリディアンの生徒の前に立っていた。翼は緊張している生徒にジェスチャーするように、自分の口元に指をさした。それは、緊張していた生徒の口元にご飯粒が付いているのを教えていたのだ。それを教えた翼は何事もなかったかのように、その席から離れていった。
「・・・あああぁぁ~・・・」
自分の恥に気が付いたリディアンの生徒は落ち込むがごとく机に突っ伏した。その様子は海恋はバッチリ見ていたのだ。
「・・・あれ、今年の新入生?変な子ね」
1年前までは見ない女子高生のため、海恋はその女の子が今年リディアンの高等部に入った1年生、つまり後輩であると理解した。これを見た海恋はその子をさっそく変な子として見ていた。
「はぁ~~・・・やっぱり翼さんはかっこいいなぁ・・・憧れちゃうなぁ~・・・」
「そうだ・・・ここにも変な子がいたんだった・・・」
翼を一目見て感動している日和はその感動の興奮からか自身を抱きかかえて悶えている。見てわかるように、日和も翼の大ファンである。それもツヴァイウィングの結成当時からである。新曲だけでなく、グッズも買いそろえるあたり、ファンの鑑ともいえる。ちなみに、日和がさっきまで聞いていた音楽は、ツヴァイウィングの曲である。
「はぁ・・・まさか翼さんに一目会えるなんて・・・今日はなんていい日なんだろう・・・」
「あなたがこのリディアンに進学した理由って、翼さんの追っかけのようなもんだしね。いつか翼さんと共演する~なんて言って、ベースを始めちゃう辺り、大したもんだよ」
「いやぁ~、それほどでも~・・・」
「褒めてないから」
実際に日和が音楽を始めたのも翼の影響が非常に大きく、夢に翼と一緒にライブがしたいと大きく出るほどである。まぁ、リディアンに入学したはいいが、翼には今日という日まで一目見ることも叶わなかったのだが。
「なんだか俄然やる気が出てきちゃった!よーし、さっそく詞を完成・・・」
「の、前に食事を終わらせてからにしなさい!行儀が悪いのよ!」
「えーーー!!せ、せめて音楽だけでも・・・」
「ダメ!!」
「わーー!!イヤホン返して~~!!」
日和がさっそく作詞をしようとしたが、食事中だったために海恋が止めた。往生際が悪い日和は音楽だけでもといったが、海恋にイヤホンを取ってまで止められたために仕方なく食事の方に集中するのであった。
~♪~
リディアンの授業が全て終わって放課後、海恋は風紀委員の書類に目を通して、提出するべき書類の作成に集中している。そんな海恋をなぜか焦らすような目で見つめている日和。
「ね~ぇ~・・・その書類、まだ終わらない?」
「そうね・・・まだまだかかりそうだわ」
「あ~~~早くしてよ~~~!」
「なんでそんなに焦らすのよ」
「だって今日なんだよ今日!!翼さんの新曲のCD!!早くしないと売り切れちゃうよ~~!!」
日和は興奮したように翼のチラシを海恋に見せる。日和が焦らしていた理由は翼の新曲が収録されたCDが今日発売されたからである。それには海恋は納得したような顔になる。
「あ~、そういえば今日だったね。翼さんのCD。けど、今時CD?スマホに曲入れた方がよくない?」
「ただのCDじゃないんだよぉ!!私が欲しいのは初回特典版!!普通のCDじゃ充実度が大きく違ってくるんだよ~」
日和が欲しがってるのは普通のCDではなく、初回特典版の方である。先も言ったように、何でも充実度が違うとかで日和は絶対に外せないのである。と、ここで、海恋が口を開く。
「・・・あんた確かそれもうすでに1つ予約してたんじゃなかったっけ?」
「えっと~、使用用と保存用、そして観賞用の3つが欲しいんだ~。だから1つじゃ足りなくて~」
「典型的なオタクじゃない」
オタクといっても過言じゃないほどに翼愛に海恋は若干ながらドン引きする。
「でもなおさら売れ切れてるんじゃない?」
「それは困る!!!」
「だったらCDショップに行ってきたら?私はどのみちこれ終わるの時間かかるし」
「わかった!!じゃあ海恋の分も合わせて4つ!!買ってくるよ!!」
「いや、私は別にCDは・・・」
「うおおおおおおおお!!翼さんの特典CDが私を呼んでるーーー!!!」
「・・・聞いてないし・・・」
CDショップに行ってきていいという許可をもらい、日和は鞄とベースを持って猛ダッシュで教室を出ていった。自分の分は買わなくてもいいと言う前に日和は出て行ってしまったために、海恋はまたも呆れる。だが、それも日和らしいと考え、海恋は微笑ましく笑みを浮かべる。
~♪~
「CD!!特典!!CD!!特典!!」
リディアンの外から出た日和はもう待ちきれないと言わんばかりにCDや特典を繰り返しに唱えながらうきうきした様子でCDショップへと足を運ぶ。
「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・もうすぐ・・・もうすぐCDが私の手に~♪」
走りすぎてさすがに疲れたのか息を整えてからゆっくりと歩いてCDショップに向かっていく。日和がコンビニの道の曲がり角を曲がると、辺りに黒い塵が舞っていた。
ドクンッ・・・
この黒い塵を見た瞬間、日和はトラウマを思い出し、顔を青ざめ、心臓の音が高くなる。日和が恐る恐るコンビニの中を見てみると、中には黒い炭素の塊があちこちに散乱していた。いや、コンビニだけではない。辺りを見てみると、道路にも、倒れた自転車にも、自動車にも、炭素の塊が大量にあった。これを指し示すことはただ1つ・・・
「・・・の・・・ノイズ・・・!!」
そう、この付近に日和のトラウマ、ノイズが現れたのだ。この近くにノイズが現れたと知り、日和は顔が真っ青になり、心臓の音がどんどんと高くなる。
「・・・・・・ひっ!!」
辺りをよく見まわしてみると、ノイズの大群が日和の前に現れた。日和に気づいたノイズは日和を炭素の塊に変えようと、じりじりと近づいてきた。
「や・・・やだ・・・やだああああああああああ!!!!」
ノイズの恐怖から日和は鞄とベースを放り投げて、死にたくない思いで必死にノイズから逃げ出す。当然、ノイズが逃がすはずもなく、ノイズは日和を追いかけ始めた。
(はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!ひ、避難シェルター!!避難シェルターまで行けば助かる!!急いで・・・急いで行かなくちゃ・・・!!)
日和は安全の場所である避難シェルターに行けば安心と考え、避難シェルターへ続く道のりを走っていく。だが避難シェルターの道の先に別のノイズまで現れた。
「ひっ!!ここにもノイズ!!」
日和は別のルートを通ったり、段差を利用したりしてノイズから撒こうと必死だった。だがそれでもノイズは追いかけてくる。
「いやああああ!!助けて・・・」
「嫌だ!!嫌だ!!いや・・・」
「ひぃ・・・死にたくない・・・死にたくない・・・!嫌・・・もう嫌あああああああああ!!!」
途中で逃げられず、ノイズによって炭に変えられていく人たちの最期の声も聞こえてきて、日和の恐怖心はさらに増していく。
(はぁ・・・はぁ・・・避難シェルターが・・・遠ざかっちゃった・・・!)
回り道を繰り返していくうちに、避難シェルターへの道は一気に遠のいた。今から行ってもノイズに出くわすであろう。それならばできることはただ1つ。ノイズが自壊するまで逃げ続けるほかない。
「はぁ・・・はぁ・・・あっ!!」
走り続けてもう限界が近いせいで日和は足をつまずいて転んでしまう。息を整えながら後ろを見てみると、ノイズはしつこく追いかけてきている。うまく撒いた様子は微塵もない。それどころか、他のノイズと合流したことで数が増えている。
(私・・・死んじゃうの・・・?こんなところで・・・)
迫りくるノイズに日和はにじり寄ってきた死の恐怖から涙を流し始める。
『日和・・・私の分まで・・・生きて・・・』
諦めかけた時、小豆の最期の言葉を思い出し、怖いながらも涙を堪え、限界であろう体を動かし、ノイズから逃げていく。
(そうだ・・・死ねない・・・絶対に死ねない・・・!2人に約束・・・したんだ・・・!必ず生き続けるって・・・!その約束を守るために・・・絶対に・・・絶対に・・・)
「死んでたまるかああああああああ!!」
日和はありったけの思いを打ち明けながらノイズから必死に逃げていく。日和は大きな建物についてある梯子を使って上へ、上へと逃げていく。頂上まで登り切ったところで日和は倒れる。
「はぁ・・・はぁ・・・ここまでくれば・・・もう・・・」
さすがに上にまでは登ってこないと考えた日和。だが・・・その考え方は完全なる甘えである。なぜなら・・・
「・・・ウソ・・・」
ノイズはすでに日和のいる建物の頂上まで来ているのだ。ここは頂上・・・戻ろうにも梯子の前にはノイズがいる。この建物の頂上は非常に高い。落ちれば地面に衝突し、即死は免れない。日和に残された選択肢は・・・ノイズによって殺されるか、ここから下まで飛び降りるかの二択しかない。
「あ・・・ああ・・・」
完全に恐怖で縮こまった日和は体を震わせ、頭を抱える。
(怖い・・・怖い・・・怖い・・・!!誰か・・・助けて・・・!!)
恐怖に支配された日和は助けを求めた。しかし、いくら助けが来たところで、この状況ではもう間に合わないだろう。
『日和・・・この先・・・どんな辛いことがあっても・・・苦しい時があっても・・・怒りたい時があっても・・・決して・・・自分を見失っちゃダメ・・・憎しみに囚われてはダメ・・・前を向いて・・・生きなさい・・・』
恐怖で震えていたところに、玲奈との約束を思い出し、なけなしの勇気を振り絞り、立ち上がる。
(・・・死ねない・・・!やっぱり死ねない!約束を守り続けたい!あの時・・・玲奈は間違いなく、ノイズと戦っていた。どうやったかは知らないけど・・・玲奈だって、覚悟を持っていたはずなんだ。だったら・・・私だって・・・最後の瞬間まで諦めない!生きるのを・・・諦めない!!)
日和ではノイズには勝てない。それを理解してか故なのか、日和は勇気を振り絞って走り出し、頂上から飛び降りる。飛び降りた日和は重力に従って、地面に向かって落下していく。このままでは、即死してしまうだろう。
(神様・・・どうか・・・どうか・・・奇跡をお与えください・・・!!)
日和は奇跡が起こることを信じて、神に向かって祈りを捧げた。そして・・・そんな日和の祈りに答えるがごとく、日和の胸の奥から、歌が流れ始める。日和は無意識に、歌を口ずさむ。
clear skies nyoikinkobou tron……
詠唱を唱えた瞬間、日和の首に着けていた玲奈の形見のネックレスが輝き始めた。
「!!?な・・・何・・・?」
突然輝いたネックレスに驚きながらも、日和はネックレスから放つ光に包み込まれ・・・そして・・・
ドオオオオオン!!!
地面に・・・激突した。
~♪~
一方、どこかの施設内・・・この施設の一室にて、何人かの人間が集まり、ノイズの出現場所を割り出そうとしている。そして、この場所にはなぜかトップアーティストである翼の姿もあった。
「反応絞り込めました!!位置特定!!」
「ノイズとは異なる、2つの高出量エネルギーを検知!!」
「波形を照合!急いで!」
ノイズの位置を特定できたが、それとは別の反応が2つ確認され、そちらの反応を照合させる。
「・・・これって・・・アウフヴァッヘン波形!!?」
反応の照合の結果がモニターに表示された。モニターにはこのような文字が刻まれた。
GUNGNIL
「ガングニールだとぉ!!?」
何かの名前を見た司令塔である大漢は驚愕の声を上げる。驚いている間にも、もう1つの反応の解析が完了し、それがモニターに現れた。刻まれた文字にはこう書かれている。これも、何かの名前である。
NYOIKINKOBOU
「なっ・・・如意金箍棒だと!!?」
これを見た大漢はさらに驚愕の声を上げた。そして・・・これを見た翼は衝撃を受け、驚愕に満ちた顔つきになる。
(そんな・・・!だってそれは・・・)
~♪~
場所は戻って、ノイズの発生現場・・・建物から落下して地面に激突した日和は・・・生きていた。まさに奇跡が起こった瞬間であった。ただ・・・いつもの日和と違うところといえば・・・その格好だ。
今の日和の服はリディアンの制服ではなく、猿の尻尾のような機械の白い装飾品、頭には日和のトレードマークであるウサギ耳のような機械の白い装飾品、そして体には白と黒、茶色が配色されたインナースーツの鎧を着込んでいた。
大きな違いはあれど・・・この姿は・・・1年前に亡くなった玲奈が着込んでいたものと酷似していた。
東雲日和
外見:黒髪のショートヘア、頭にウサギリボンのようなカチューシャをしている。
瞳は青色
【挿絵表示】
↑Picrewより『妙子式おんなのこ』
年齢:15歳➡16歳
誕生日:10月27日
シンフォギア:妖棍・如意金箍棒
趣味:セッション
好きなもの:ベッキー(日和の白いベース)
スリーサイズ:B:86、W56、H85
イメージCV:輪廻のラグランジェ:京乃まどか
(その他の作品:マギ:アラジン
変態王子と笑わない猫:小豆梓
クロスアンジュ 天使と竜の輪舞:ロザリー
その他多数)
本作品の主人公。リディアン音楽院の2年生
天真爛漫で猪突猛進、思い立ったら一直線に突き進む元気な女の子。その反面臆病者で怖いものやお化け、グロいものに怖がる一面がある。特にノイズはバンドメンバーが殺されたため、トラウマを抱えている。しかし誰かや友達に危険が迫った時は恐怖を振り絞ってでも立ち向かう勇気がある。
音楽好きになったのは翼の影響が強く、ツヴァイウィングや翼のソロ曲もベースで弾けるほどである。
苗字は東西南北の東、名前は晴天が由来している。
楽曲
『妖棍・如意金箍棒』
失ってしまった最愛の友の約束、その約束を守り続けるために少女の奮闘を体現させた歌。