二課の本部の電波が届く一室で・・・クリスが落ちていく姿はここにいる全員が目撃していた。
「嘘でしょ・・・?クリス・・・友達になりたい・・・その返事も・・・まだもらってもいないのに・・・!バカ・・・!あんた・・・日和と同じくらいバカよ・・・!!」
「さよならも言わず・・・それっきりだったのに・・・なのにどうして・・・?」
クリスが落ちていく姿に、海恋と未来は悲しみを露にする。弦十郎は目の前の光景に目を見開いている。
(お前の夢・・・そこにあったのか・・・!そうまでして、まだ夢の途中というなら・・・俺たちはどこまで無力なんだ・・・!)
クリスを守ることができず、弦十郎は己の不甲斐なさ、己の無力さに打ちひしがれ、悔しさで目を閉じた。
~♪~
クリスが身を挺してカ・ディンギルの砲撃に立ち向かい、そして散っていった。その光景を目の当たりにし、3人は目を見開いている。
「雪音・・・」
「そんな・・・せっかく友達になれたのに・・・。これじゃあ・・・あの時と何も変わらない・・・!!」
「う・・・うぅ・・・こんなの・・・嫌だよ・・・嘘だよ・・・」
ドクンッ・・・ドクンッ・・・
3人が悲しみに打ちひしがれている時、響の心臓の音が、高くなった。
「もっと話したかった・・・!話さないと、喧嘩することも・・・今よりもっと仲良くなることもできないんだよ・・・!」
「クリス・・・私はまだ・・・あなたの夢を・・・聞くこともできてないんだよ・・・それなのに・・・死んだなんて・・・私は絶対に認めない・・・!!」
そんな悲しみを嘲笑うのは・・・フィーネだ。
「自分を殺して月への直撃を阻止したか・・・。はっ・・・無駄なことを・・・見た夢も叶えられないとは・・・とんだグズだな・・・」
フィーネの嘲笑に翼と日和は怒りの表情を浮かべる。
「・・・笑ったか・・・。命を燃やして、大切なものを守り抜くことを・・・お前は無駄と、せせら笑ったか!!!」
「ふざけるな・・・ふざけるなぁ!!!!玲奈だけじゃない!!!クリスの夢を・・・グズって・・・バカにして・・・嘲笑って!!!」
「・・・それガ・・・」
怒りを露にする翼と日和だったが、そこで響に変化が訪れた。
「ユメゴトイノチヲ!!!ニギリツブシタヤツノイウコトカアアアアアアアアアア!!!!!」
響の身体が真っ黒に染め上げ、怒りの咆哮を上げた。その姿はまさに・・・暴走する獣!
「ヴヴゥゥゥゥゥ!!!」
「立花⁉おい、立花!!」
「響ちゃん!!?どうしたの!!?」
突然変わり果てた響の姿に翼も日和も困惑するばかりである。
「融合したガングニールの欠片が暴走しているのだ。制御できない力に、やがて意識が塗り固められていく」
「そんな・・・」
フィーネの説明に、日和は驚愕する。聖遺物との融合とは、それすなわち人体に影響を及ぼす。何もないわけがなかったのだ。
『響ちゃんの心臓にあるガングニールの破片が前より対組織と融合してるみたいなの。驚異的なエネルギーと回復力はその所為かもね』
了子としてのフィーネの言葉を思い出し、翼はあることに気づいた。
「!まさかお前・・・立花を使って、実験を・・・?」
「実験を行っていたのは立花だけではない。見てみたいとは思わんか?ガングニールに翻弄されて、人としての機能を損なわれていく様を。北御門玲奈に関しても同様だ」
「お前はそのつもりで立花を!!奏を!!」
「しかも玲奈まで・・・!どこまで人の命をバカにすれば気が済むの!!!」
人の命でガングニールの力・・・いや、聖遺物の実験を行っていたフィーネの非人道的な思考に翼と日和は怒りを燃やす。それと同時に暴走した響が動き出し、フィーネに襲い掛かった。フィーネが響の攻撃を鞭で凌ぐと、辺りの瓦礫は衝撃で打ちあがった。そしてフィーネは響を鞭で薙ぎ払う。
「立花!」
「響ちゃん!」
「もはや人にあらず。今や人の形をした破壊衝動」
弾かれた響は四つん這いになり、再びフィーネに襲い掛かった。フィーネは鞭で陣を張り、障壁のバリアを作り上げた。
【ASGARD】
響の拳は障壁で防がれるが、暴走している響は力づくで破壊し、フィーネに殴りかかった。衝撃によって爆発が引きおこす。煙が晴れると、フィーネは頭から腹部までが真っ二つになっていた。だがしかし、フィーネはぎょろりと日和と翼に視線を合わせ、口元に笑みを浮かべている。
「・・・っ!ばけ・・・物・・・!」
引き裂かれてもなお生きているフィーネに日和は固唾をのんで、率直にそう言ってのけた。それと同時に、響がフィーネの近くに着地する。
「もうよせ立花!!それ以上は、聖遺物との融合を促進させるだけだ!!!」
「響ちゃん!!お願い!!正気に戻って!!」
翼と日和の言葉に響は反応し、今度は翼に襲い掛かってきた。翼は肘打ちで何とか攻撃を凌ぐ。
「響ちゃん!!」
弾き返された響は四つん這いになって着地し、必死に呼びかける日和に響は接近し、殴りかかった。対処が遅れた日和は殴られ、吹っ飛ばされる。
「あああ!!」
「東雲!!もう止まれ立花!!」
2人の必死の呼び声は響には届かない。その姿は・・・蹂躙する獣同然である。
~♪~
響が暴走し、日和と翼に襲い掛かる光景は戦いを見守るメンバーにも見えていた。
「日和!!翼さん!!」
「どうしちゃったの響!!?正気に戻って!!」
聞こえない中でも未来は響に必死に呼び掛ける。だが当然ながら届かない。
「・・・もう終わりだよ・・・私たち・・・」
「え・・・?」
すると、恐怖で震えている弓美が口を開いた。
「学院がめちゃめちゃになって・・・響もおかしくなって・・・」
「終わりじゃない!響だって、私たちを守るために・・・」
「あれが私たちを守る姿なの!!?」
未来が弓美を慰めようとするが、モニターには黒く染まった響が映り込んでおり、逆効果ともいえる。響の姿に創世、詩織も畏怖する。
バチンッ!!!
弱音を吐いている弓美に海恋は怒った顔で平手打ちをする。
「いつまでも弱音を吐くんじゃないわよ!!!怖いのはあなただけじゃないのよ!!!みんな同じよ!!!でもそれ以上に怖い思いをしてるのは、戦ってるみんなの方よ!!!それでも・・・それでもね!!!あれを見なさいよ!!!」
海恋がモニターの方に指をさす。そこに映ってるのは響に必死に呼びかける日和と翼だ。その中でも日和の目は、まだ諦めていない。
「あの子は、怖い思いをしてでも、まだ全然諦めてない!!それだけでも、信じる価値はあるわよ!!それを簡単に諦めないでちょうだい!!!」
「・・・私だって響を信じたいよ・・・この状況を何とかなるって信じたい・・・でも・・・でも・・・!」
恐怖で涙を流す弓美は膝を地につける。
「もう嫌だよ!!誰かなんとかしてよ!!怖いよ・・・死にたくないよぉ!!助けてよ響!!」
弓美は泣いて助けを懇願する。そんな中でも海恋は諦めずに、目の前の戦いを見守る。
~♪~
響の暴走は未だに続く。日和も翼ももうほとんどギアもボロボロの状態だ。2人は息を整える。
「ははは・・・どうだ?立花響と刃を交える感想は?お前の望みであったなぁ?」
フィーネは2人を嘲笑いながら、ネフシュタンの鎧の力で再生する。脅威の再生能力によって、フィーネの傷は完全に回復した。
「人のあり方さえ捨て去ったか・・・!」
「私と1つとなったネフシュタンの再生能力だ。おもしろかろう?」
言葉を交わす間にも、カ・ディンギルは再び起動し、エネルギーを充電している。
「カ・ディンギルが!!なんで!!?」
「まさか・・・!」
「そう驚くな。カ・ディンギルがいかに最強最大の平気だとしても、ただの一撃で終わってしまうのであれば兵器としては欠陥品。必要である限り何発でも撃ち放てる。そのために、エネルギー炉心には不滅の刃デュランダルが取り付けてある。それは尽きることのない無限の心臓なのだ」
「だからお前は・・・デュランダルを欲しがったのか!!」
カ・ディンギルの弾を何発でも撃てるようにするために完全聖遺物であるデュランダルを欲しがっていたのだと日和は気づく。
「だが、お前を倒せば、カ・ディンギルを動かす者はいなくなる!」
翼は刀をフィーネに突きつける。だが、翼の前に響が立ちふさがる。日和は翼を守ろうと前に出ようと動く。
「東雲、手を出すな」
「翼さん・・・」
「この先は、一切の手出しは無用だ」
だがそれを翼が止める。翼は響に視線を向け、響に語り掛ける。
「立花・・・私はカ・ディンギルを止める。だから・・・」
響は無慈悲にも翼に襲い掛かってくる。そんな中翼は・・・刀を地面に突き刺し、自らの身体でそれを受け止める。
ザシュッ!!
「翼さん!!!」
響の拳は翼の身体を突き刺し、ギアも一部粉砕し、血が流れる。響の攻撃を受け止めた翼は彼女を抱き寄せて、血が付いた響の掴んで優しく語る。
「これは、束ねてつなげる力のはずだろ?」
翼は小刀を取り出し、響の影に向けて投擲した。
【影縫い】
これによって動けなくなる響。翼は地面に突き刺した刀を抜く。
「立花・・・奏から受け継いだ力を、そんな風に使わないでくれ」
翼の言葉が効いたのか、響は涙を流す。そして、翼は日和に視線を向ける。
「東雲・・・立花を頼む・・・」
「翼さん・・・」
翼は響を日和に託し、フィーネのところまで向かっていく。翼の言葉を聞き、日和は翼に声をかける。
「翼さん!!絶対に・・・絶対に死なないでください!!ちゃんと生きてください!!」
「ああ・・・無論だ」
翼は日和に視線を向けて微笑む。そして、真剣な眼差しとなり、フィーネと対峙する。
「待たせたな」
「どこまでも剣ということか・・・」
「今日に折れて死んでも、明日に人として歌うために・・・風鳴翼が歌うのは、戦場ばかりでないと知れ!!」
「人の世界が剣を受け入れることなどありはしない!!!」
フィーネの2本の鞭が翼を襲う。翼はそれを飛んで躱し、追撃する鞭を両足のブレードで弾く。さらに翼は刀を大剣に変形させ、青の斬撃をフィーネに放つ。
【蒼ノ一閃】
フィーネは青の斬撃を真正面から鞭で相殺させる。翼が着地したと同時にフィーネは2つの鞭を放った。翼はこれをしゃがんで躱し、フィーネに接近して大剣を振るった。フィーネは大剣の斬撃に吹き飛ばされ、カ・ディンギルに激突する。
「翼さん・・・」
日和は響に近づいて抱きしめながら、翼の勇姿を見守る。翼は大剣を刀に戻し、高く飛んでフィーネに刀を投擲する。刀は先ほどの大剣より巨大になり、翼はスラスターで加速し、大剣に蹴りを入れ、フィーネ目掛けて降下する。
【天ノ逆鱗】
「ちぃ・・・!」
フィーネは鞭で3重もの障壁を張り、大剣を防いだ。だが翼の狙いは初めからフィーネではない。翼は大剣を足場にして高く飛び、両手に備えた剣が炎を纏い、カ・ディンギルに向かって昇っていく。
【炎鳥極翔斬】
「初めから狙いはカ・ディンギルか!!!」
翼の狙いに気づいたフィーネはそうはさせまいと翼に向けて鞭を放った。翼は何とか振り切ろうとするが、追いつかれてしまい、鞭の直撃を喰らってしまう。
(やはり・・・私では・・・)
翼が心の中で弱音を吐いた時だった・・・
『何弱気なこと言ってんだ』
『!奏・・・』
翼の心の中で、彼女は奏と再会する。
『翼・・・あたしと翼、両翼揃ったツヴァイウィングなら、どこまでも飛んでいける』
奏は翼に手を伸ばし、翼はそんな彼女の手を取る。
「翼さん!!!!飛んでください!!!翼さんなら・・・どこまでも高く、飛んでいけます!!!私が憧れた両翼・・・ツヴァイウィングみたいに!!!」
そして現実でも、日和の大きな声援を受けて、翼は何とか態勢を整える。
(そうだ・・・両翼揃ったツヴァイウィングなら・・・!)
翼は両剣に再び炎を灯し、カ・ディンギルの頂上へと昇っていく。
(どんなものでも、越えてみせる!!)
フィーネの鞭は翼を振り落とそうとするが、不死鳥が如く燃え盛る炎の前に、鞭は弾かれていく。
「翼さん!!!!」
「東雲ぇ!!!立花あああああああ!!!!」
炎を纏った翼はカ・ディンギルの頂上に昇り、突貫する。翼の思いが届き、カ・ディンギルは貫かれ、火花が散って・・・そして、カ・ディンギルは爆発し、破壊される。
「あああああああああああ!!!」
「翼さああああああああん!!!!」
カ・ディンギルが破壊され、悲願を潰されたフィーネは声をあげて嘆いた。日和は涙を流す響を抱きしめながら、自分も涙を流して翼に向けて声を上げた。
~♪~
カ・ディンギルが破壊した光景はこちらでも確認できた。それと同時に・・・天羽々斬の反応が亡くなったことも確認された。
「天羽々斬・・・反応、途絶・・・」
「身命を賭して、カ・ディンギルを破壊したか、翼・・・。お前の歌・・・世界に届いたぞ・・・世界を守り切ったぞ・・・!!」
弦十郎は拳を握りしめ、そう呟いた。
~♪~
カ・ディンギルが破壊されたのを見て、フィーネは目を見開いている。
「私の想いは・・・またも・・・!」
「翼さん・・・」
翼が放った小刀は消滅し、それと同時に響の暴走は収まったが、戦う意味を失い、響は膝を地につける。日和はそんな響を支える。その時、鞭を叩きつける音が聞こえ、日和はフィーネを睨みつける。
「ええい!!どこまでも忌々しい!!月の破壊はバラルの呪詛を解くと同時に、重力崩壊を引き起こす!!惑星規模の天変地異は恐怖し、うろたえ、そして聖遺物の力を私の元に帰順するはずであった!!痛みだけが、人の心を繋ぐ絆!!たった1つの真実なのに!!それをお前を・・・お前たちは!!!」
バキンッ!!!
「ぐっ!!?」
怒りに染まるフィーネに日和は拳を振るって殴りつけた。殴られたフィーネは日和にきっと睨みつける。
「そんなもので繋ぐ絆なんか・・・お断りだ!!!」
日和は右手首のユニットから再び棍を取り出し、うまく回転させて、それを構える。
「そろそろ決着をつけようよ・・・フィーネ。私とあなたの間に生まれた、この因縁を、終わりにする!!!」
日和はフィーネとの因縁を決着をつける気持ちが固まった。仇だからではない。痛みが人を繋ぐものではないと、手と手が繋がりあえる・・・その信念を貫くために。
海恋の秘密
基本は生真面目で融通があまり効かない海恋。そんな厳しくも世話好きではある彼女は実は赤ん坊には極端に弱く、そして甘い。頼んでもいないのに世話を焼こうとしたり、喋り口調も赤ちゃん言葉になってしまうことがあるとか。ただそれを日和にバレてしまったら終わりだと思っているようで、日和の前で、赤ん坊が現れた時、自分の気持ちを制御できるかどうか心配している。