朝日が沈みゆき、夕日がボロボロになった街を明るく照らす。避難シェルターにいた人々も次々と街に戻ってくる。そんな中、咲は日和に近づく。
「あ、あのね・・・お姉ちゃん・・・その・・・黙ってたことは・・・」
今まで咲に隠し事をしていたことに対し、日和が咲に謝ろうとした時、咲は日和の頭を優しくなでる。
「・・・よく頑張りました。花丸をあげるわ」
「お姉ちゃん・・・ごめん・・・。そして、ありがとう・・・応援してくれて・・・」
咲に優しく頭をなでられて、日和は笑みを浮かべて、謝罪と感謝を咲に送る。
「日和ーーー!!」
「うわっ!!?」
そしてその後、海恋は涙を流して日和に抱き着いてきた。それによってバランスを崩れて転んでしまう。
「日和の・・・バカ!!本当に死んじゃったと思ったじゃないの!!心配ばっかかけて!!」
「うん・・・ごめんね、海恋。でも、私は死なないから。約束は絶対に守るから。だから大丈夫」
日和は泣きじゃくる海恋をなだめながら、2人で一緒に起き上がる。それと同時に、響がボロボロの状態になっているフィーネを担いでみんなの元までやってきた。
「お前・・・何をバカなことを・・・」
「このスクリューボールが・・・」
「でも、それが響ちゃんらしいよね」
敵であるフィーネを助ける響にクリスは笑みを浮かべながら呆れ、日和は響らしいと笑っている。
「みんなに言われます。親友からも変わった子だーって」
響は瓦礫にフィーネを座らせて、話し合おうとする。
「もう終わりにしましょう、了子さん」
「私はフィーネだ・・・」
「でも、了子さんは了子さんですから」
誰に何と言われても、響にとっては、フィーネは共に二課で一緒に過ごしてきた仲間、櫻井了子のままなのである。
「きっと私たち、分かり合えます」
「・・・ノイズを作り出したのは、先史文明期の人間。統一言語を失った我々は手を繋ぐことよりも相手を殺すことを求めた。そんな人間がわかりあえるものか・・・」
「人間がノイズを・・・」
「私は、この道しか選べなかったのだ!」
「おい!」
「クリス」
フィーネは立ち上がり、響の想いを否定した。クリスはそれに反応するが、日和に止められる。
「・・・人が言葉よりも強く繋がれること、わからない私たちじゃありません」
響がそう言葉を紡ぎ、フィーネは目を閉じ・・・そして・・・
「はあああああああ!!!」
目を見開いた瞬間、フィーネは握りしめた鞭を放った。響はそれを躱し、拳を放ったが、目前で止まる。ただこの鞭の狙いは響ではない。
「私の勝ちだあ!!!」
放たれた鞭は空高く昇っていき、宇宙まで到達していく。そして・・・カ・ディンギルによって破壊された月の欠片に直撃する。ネフシュタンの鎧の最後の力を振り絞ってフィーネは月の欠片を地球に引き寄せた。月の欠片は重力に従い、地球へと落下していく。
「月の欠片を落とす!!!」
フィーネの言葉を聞き、日和、翼、クリスは月に視線を向ける。
「私の悲願を邪魔する禍根はここでまとめて叩いて砕く!!この身はここで果てようと、魂までは絶えやしないのだからなぁ!!聖遺物の発するアウフヴァッヘン波形がある限り、私は世界に何度だって蘇る!!どこかの場所、いつかの時代!今度こそ世界を束ねるために!!あはははは!私は永遠の刹那に存在し続ける巫女、フィーネなのだぁ!!!」
勝ちを確信しているフィーネに響は拳を軽く突きつけた。
「うん・・・そうですよね・・・。どこかの場所・・・いつかの時代・・・蘇るたびに何度でも、私の代わりに、みんなに伝えてください。世界を1つにするのに、力は必要ないってこと・・・言葉を越えて、私たちは1つなれるってこと・・・私たちは、未来にきっと手を繋げられること!私には伝えられないから・・・了子さんにしかできないから!」
「お前・・・まさか・・・」
フィーネはこれから響が何をやろうとしているのかを悟った。そして響はフィーネに向けて笑みを浮かべて言った。
「了子さんに未来を託すためにも、私が今を・・・守ってみせますね!」
「・・・・・・ホントにもう・・・放っておけない子なんだから・・・」
響の言葉にフィーネ・・・いや、了子はやれやれと呆れつつも優しい笑みを浮かべる。そして了子は日和に視線を向ける。
「日和ちゃん。玲奈ちゃんやお友達のこと、許してくれとは言わないわ。あなたは玲奈ちゃんとお友達の想いを胸に、これからも・・・生き続けなさい。私を驚かせるくらいに」
「・・・了子・・・さん・・・」
日和は了子の優しい言葉を聞いて、涙を流す。
胸の歌を、信じなさい・・・
了子はネフシュタンの鎧と共に崩壊し、亡骸を残さず消滅していった。消滅していった了子に二課のメンバーたちは彼女をフィーネとしてではなく、ただ1人の人間として弔った。特にクリスは、利用されていたとしても、それでも様々なことを教えてくれたのだ。彼女との思い入れが深い。ゆえにクリスは、涙を流して了子を弔う。
「・・・私にとっては、あの人が仇なのは変わらない。でも・・・やっぱり私は・・・あの人を、憎むことなんてできないよ・・・」
「日和・・・」
「・・・また・・・破れない約束ができちゃったな・・・」
日和は涙を拭き、了子が亡くなった場所に視線を向け・・・
「・・・了子さん・・・ありがとうございました!!!」
了子に感謝を送り、深く一礼して、彼女を弔った。だが・・・事態はまだ、終わりではない。
「軌道計算、出ました。直撃は避けられません・・・」
「あんなものがここに落ちたら・・・」
「私たち、もう・・・」
落ちてくる月の欠片でどの程度の被害が出るかわからないが・・・少なくとも、ここにいる全員が死に絶えることは避けられないだろう。響は落ちてくる月を見て、前に進む。
「響・・・」
「・・・何とかする。ちょっと行ってくるから、生きるのを諦めないで」
響は未来にそう伝え、月の欠片に向かって走り出し、そして飛び立つ。
Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el baral zizzl……
Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl……
月の欠片を止めるには、ギアが限定解除された状態で絶唱を放つしかないと考え、響は絶唱を歌った。
『そんなにヒーローになりたいのか?』
すると、クリスの声が聞こえてきた。響が後ろを振り返ると、日和、翼、クリスの3人が飛んでやってきた。
『こんな大舞台で挽歌を歌う事になるとはな。立花には驚かされっぱなしだ』
『もしかしたら私たち、とんでもない子を後輩に持っちゃったかもですね』
『ま、一生分の歌を歌うにゃ、ちょうどいいんじゃねぇのか?』
3人は響と並び立ち、並行して共に飛ぶ。
『それでも私は、立花や東雲、雪音ともっと歌いたかった』
『何言ってるんですか。これからですよ。私たちは』
『ああ・・・そうだな。まだまだこれからだな』
3人を巻き込ませてしまったと思い、響は3人に謝る。
『・・・ごめんなさい』
『バーカ、こういう時、そうじゃねぇだろ』
『ありがとう・・・3人とも!』
4人は互いに手を繋ぎあい、腰部のブースターを一斉に解除する。
『開放全開!行っちゃえ!ハートの全部で!!』
『みんなが夢をかなえられないのは分かっている。だけど、夢を叶えるための未来は、みんなに等しくなきゃいけないんだ!』
『命は尽きて終わりじゃない。尽きた命が残したものを受け止める、次代に残していくことこそが人の営み。だからこそ、剣が守る意味がある!』
『約束は人を縛るだけのものじゃない。明日という、晴天の未来に繋げて行けるものでもある。きっと・・・明るい世界につなげられると信じて!』
『たとえ声が枯れたって、子の胸の歌だけは絶やさない!夜明けを告げる鐘の音奏で、鳴り響き渡れ!!』
4人はそれぞれに込められた思いを胸に秘め、散開して月の欠片と対峙する。
これが私たちの、絶唱だああああああああああああああ!!!!!!
翼は星の一部を破壊できるほどの巨大な大剣を手に構え、クリスは数えきれないほどの大型ミサイルを展開させ、日和は棍をやり投げのように構え、星を壊すほどにまでに巨大化させ、棍を伸ばしていき、響は両手足のバンカーを今までの限界を軽く超えるほどにまで伸ばす。4人の全力を月の欠片にぶつけ、破壊させることに成功させる。
「・・・流れ星・・・」
粉々になった月の欠片は流れ星のように落ちていき、燃え尽きる。その光景を目の当たりにした海恋は涙を流して呆然とし、未来は地面に両手を着けて涙を流した。
~♪~
月の欠片が落ちてきた事件を、世間でルナアタック事変と呼ばれるようになった。そのルナアタック事変から3週間の時が流れた。大雨が降り続ける中、未来は大雨に打たれ、バス停でバスが来るのを待った。そこにリディアンの制服を着た海恋と葬儀服を着た咲がやってきて、海恋が未来に傘をさしてあげた。
「小日向さん・・・風邪ひくわよ」
ルナアタック事変から3週間、行方不明になった響たちの捜索が打ち切られた。弦十郎が言うには、作戦行動中の行方不明から死亡扱いになったらしい。郊外には響や日和の墓が建てられたらしいが、そこには何もない。外国政府からの追及をかわすため、機密の関係上、名前も彫られていない。3人が向かっているのは、その墓である。2人の墓には響の写真と日和の写真が飾ってあった。
「・・・会いたいよ・・・もう会えないなんて・・・私は嫌だよ・・・響ぃ・・・私が見たかったのは、響と一緒に見る流れ星なんだよ・・・?」
響たちの墓の前で、未来は地面に膝を着け、泣き崩れる。海恋も、もう日和と会うこともできないことに対し、大量の涙を流す。咲もまた、大切な妹を失い、静かに涙を流す。すると・・・
「いやああああ!!!助けてぇ!!!!」
この郊外の近くで女性が助けを求める声が聞こえてきた。未来と海恋がそこへ向かうと、女性が今、ノイズに襲われようとしていた。ルナアタックが終えても、未だにノイズは消えることはなく、度々現れては人間を襲う。
「こっちへ!」
「咲さん!急いで!」
それを見た未来は女性の手を取り、ノイズから逃げ出す。海恋も咲の手を取り、未来と共にノイズから逃げる。ノイズは4人を追いかけていく。未来と海恋は決して諦めていない。
(諦めない!絶対に!)
未来の頭に思い浮かべるのは、親友の響の姿だった。海恋も、日和の姿を思い浮かべる。今の日和の目は、日和と同じ、生きる執着心の目だ。
(私は絶対に諦めない!!生きるのを諦めない!!日和は、最後の瞬間まで、生きるのを諦めなかった!!私だって・・・私だってそうよ!!この場の全員の命を、諦めさせてたまるものですか!!!)
体力の限界が来たのか、女性は転んでしまい、今にも諦めそうな気持ちだった。
「大丈夫ですか⁉」
「私・・・もう・・・」
「「お願い、諦めないで!!」」
そうは言うものの、4人はノイズに囲まれてしまう。女性はあまりの恐怖で気を失ってしまい、咲は女性を支えながらも、平静を装うが、震えが止まらない。2人はノイズと戦う力は持っていない。人の身がノイズに触れることは死を意味する。それでも・・・それでもなおは2人は諦めない。この絶対的窮地でも。ノイズが海恋たちに襲い掛かろうとした時・・・
ドオオオオン!!
凄まじい衝撃と共に、棍が伸びてきて、海恋を襲うノイズを全て殲滅させた。あまりの出来事にもそうだが・・・伸びてきたその棍には見覚えがあるため、3人は驚愕した顔になる。
「え・・・?」
「・・・もしかして・・・」
3人が伸びた棍の方向を見てみると、そこには、ギアを解除して、いつもの制服姿の日和、響、翼、そして私服のクリスがそこにいた。
「ごめん、いろいろ機密を守らなきゃいけなくて・・・。未来にはまた、本当のことが言えなかったんだ」
4人が・・・響と日和が生きていたことに未来と海恋、咲は嬉しさのあまり、涙を流す。未来は喜びのあまり、響に抱き着いた。日和は海恋に近づき、にっと笑う。
「ね?言ったでしょ?私は絶対に死なないって。玲奈と小豆、了子さん・・・海恋との約束だもんね!」
「・・・っ!バカ・・・!」
日和の笑いを見た海恋は涙を流して喜び、日和に抱き着いた。咲も日和に近づき、彼女のその頭を撫で、喜びを分かち合った。
ノイズの脅威は尽きることなく、人の闘争は未だ尽きることなく続いている。未だ危機は満ち溢れ、悲しみの連鎖は留まることを知らない。しかし、人々は諦めないことを知っている。なぜなら、この世界には歌があるのだから。
日和の秘密
今でこそ普通の体型を維持しているが、実は日和は小学校の頃はぽっちゃり体型で太っていた。ゆえにその事実は中学校からの付き合いである海恋も知らず、今となっては咲くらいしかその事実を知らない。
今の体型になったきっかけは彼氏と別れた傷を癒えてもずっと家で寝転んでお菓子ばかりつまんでいた姿を当時大学生だった咲がいい加減煩わしくなってこの一言。
「いい加減食うのをやめろ豚野郎!!」
その後咲の運動部の友達に頼んで日和を強制的にダイエットさせていた。目まぐるしい思いをしてようやく痩せて今の体型になったというわけだ。