響がS2CAを発動させたことによって、街の上空には虹色の竜巻が天高く発生していたが、すぐにそれは消え去った。その光景はエアキャリアにいる3人もモニターで観測できている。
「吹き荒れる破壊のエネルギーをその身に無理やり抱え込んで・・・⁉」
「繋ぎ、繋がることで絶唱をコントロールできる奴にとってこの程度造作もないということか・・・末恐ろしい奴だ・・・」
クイーン・オブ・ミュージックで見せたものと同じ光景を見て、マリアとフォルテは驚いていた。
「うっ・・・!ゴホッ!ゴホッ!」
するとナスターシャが再び発作を引き起こし、咳き込んで血反吐を吐いた。
「「!マム!!」」
「心配いりません・・・ゴホッ・・・」
マリアとフォルテが容体を心配する。ナスターシャはモニターを確認して、二課の装者の位置を確認する。場所は響と日和にもう間近まで近づいてきている。
「この反応は・・・」
「追いつかれたようですね・・・」
ナスターシャはすぐに通信機を使い、2人に通信を送った。
~♪~
S2CAを放った響の周りにはクレーターが出来上がっており、辺りにも微量の炎が灯っている。この状況下の中で調と切歌の通信機から通信が届く。
『聞こえて?ドクターを連れて、急いで帰投しなさい』
「・・・だけど・・・」
今なら響だけでも倒せると調は考えているが、響の前に日和が立ちふさがり、彼女を守ろうと棍を構えている。
『如意金箍棒の装者は健在・・・さらにそちらに向かう反応が2つ。おそらくは、天羽々斬とイチイバル』
『君たちもLiNKERの過剰投与で負荷を抱えている。あまりにも分が悪い。指示に従ってくれ』
「・・・わかったデス・・・」
フォルテは戦いに関する知識は誰よりも詳しい。そのフォルテが分が悪いというのだから間違いはないのだろう。ゆえに切歌は渋々ながらウェルを抱えて、調と共に姿を現したエアキャリアから出たロープに掴まり、この場を離脱する。エアキャリアが姿を再び消して離脱したのを見計らい、日和はすぐに響に視線を向ける。
「響ちゃん!!だいじょ・・・!!?」
日和は響を見て、驚愕で目を見開かせる。なぜなら響の胸の傷跡から鉱石ようなキラキラした物体が現れているからだ。日和はこれがガングニールの欠片だというのがすぐにわかった。このままでは響は、ガングニールの浸食によって・・・やがて・・・
「響ちゃん!!!待ってて、すぐに・・・」
じゅううう・・・!!
「熱っ!!?な、なんて熱気なの・・・」
日和はすぐに響に近づこうとするも、彼女の周りに漂う熱気が炎のようにすさまじく、下手に近づけば自分が焼かれてしまう。
「響ぃーー!!!」
「!!未来ちゃん!!海恋!!」
そこへ響を追いかけてきた未来と海恋がやってきて、響の異常を目のあたりにする。
「何よ・・・この熱気・・・立花さんから・・・?」
「いやぁ!!響ぃ!!!」
海恋が驚いている間にも未来は響の異常に取り乱し、彼女に駆けつけようとする。そこにようやく駆けつけたクリスが未来を止める。海恋は何が何だかわからないが、ひとまずクリスと共に未来を止める。
「よせ!!火傷じゃ済まないぞ!!」
「でも!!響が!!」
「小日向さん!!落ち着いて!!」
「こういう時どうすれば・・・!そ、そうだ!水!!で、でも・・・この場に水なんて・・・」
日和はどうにかして響の周りの熱気を止めようと必死に考えて水が必要と判断するが、それらしいものがないか辺りを見回す。するとそこへ、翼が乗るバイクの音が近づいてきた。
Imyuteus amenohabakiri tron……
翼はバイクに乗りながらシンフォギアを身に纏い、両足のブレードを車体前方に展開させた。バイクはスピードを保ったまま、貯水タンクに向かって飛び、前方のブレードで貯水タンクを切り裂いた。
【騎刃ノ一閃】
斬れ目が付いた貯水タンクから水が流れ出し、下にいる響にかかる。これによって熱気が蒸発し、高温が消え去った。響はギアが解除され、気を失って倒れた。未来はすぐに響に駆けつける。
「日和・・・あんた・・・」
「・・・だから・・・あれほどダメだって言ったのに・・・」
「・・・私は・・・立花を守れなかったのか・・・!」
日和と翼の悔しさが込められた言葉を聞いたクリスは2人に詰め寄ってきた。
「だからダメ?私は守れなかった?なんだよそれ!!?お前ら、あのバカがこうなると知ってたのか!!?おい!!」
「「・・・・・・」」
クリスの問い詰めに日和と翼は何も答えようとしない。
「響!!響ぃ!!」
未来は気を失っている響に呼び掛けるが、何の反応もない。その後響は、二課の仮設本部に搬送され、適切な治療を受けることになるのであった。
~♪~
戦線を離脱したエアキャリアが止めた場所は自然豊かな場所だ。この場所でならば、ナスターシャにとっていいリラックスにはなるだろう。ウェルの適切な治療のおかげで、ナスターシャの容体は安定している。しばらくは持つであろう。
「それでは、本題に入りましょう」
ナスターシャの容体が安定したところで、ウェルは今後の計画の会議を取り仕切る。そのために必要なネフィリムの心臓をモニターでマリアたちに見せる。
「これは・・・ネフィリムの・・・」
「苦労して持ち帰った覚醒心臓です。必要量の聖遺物を餌と与えることでようやく本来の出力を発揮できるようになりました。この心臓とあなたが5年前に入手した・・・」
5年前に入手したものにたいして、マリアは反応する。
「お忘れなのですか?フィーネであるあなたが、水上山から発掘チームより強奪した神獣鏡のことですよ」
「・・・え、えぇ・・・そうだったわね・・・」
「・・・・・・」
ウェルの言葉にマリアは言葉を詰まりながらそう言った。あまり覚えていない様子のようだが、フォルテとナスターシャは知っている。本当の真実を。ウェルに悟られないように、ナスターシャが補足を入れる。
「マリアはまだ記憶の再生が完了していないのです。いずれにせよ聖遺物の扱いは当面私の担当。話はこちらにお願いします」
「これは失礼」
ウェルはナスターシャに一礼し、話を戻す。
「話を戻すと、フロンティアの封印を解く神獣鏡と起動させるためにネフィリムの心臓がようやくここに揃ったわけです」
「そしてフロンティアが封印されたポイントも先だって確認済み」
「そうです!すでにでたらめなパーティの開催準備は整っているのですよぉ!!後は僕たちの奏でる狂想曲にて、全人類が踊り狂うだけえぇ!!」
フロンティアなるものの起動を想像し、ウェルは狂気じみた笑い声をあげる。
「近く計画を最終段階に進めましょう。ですが今は少し休ませていただきますよ」
会議が終わり、ナスターシャは車椅子を操作して車両から出る。少ししてマリアたちも車両から出ていく。この場に残っているのはフォルテとウェルだけだ。
「・・・ドクター。君に問おう。仮に英雄になれたとして、その先に何を見る?」
「・・・逆に、あなたはその先に何を見るのですか?」
フォルテの質問にウェルは質問で返した。フォルテは表情を変えず、当然のように答えた。
「何もない」
「あぁん?」
「僕は真なる平和さえ訪れればそれでいい。それ以上のことは何も求めない」
「・・・夢がない、つまらない人だぁ」
ウェルはフォルテの出した答えにけたけたと笑いながらそう言った。
「英雄などとくだらない肩書を持つよりは、よっぽどいい」
しかし、フォルテが英雄を軽視する発言に、ウェルは眉を歪ませる。
「英雄によって争いは確かに収束されたが、戦が終わればその存在は不要となる。かの英雄ジークフリートもそうであった。結局は皆そうなのだ。栄光と栄誉などとくだらないものに疎み・・・そしてそれに目がくらみ、最後には殺されゆく。人間とは欲望でできている。君のようにな」
「じれったいですねぇ。何が言いたいのです?」
バァン!
「ひっ!!?」
ウェルがイラつかせながら続きを促すと、フォルテは懐から拳銃を取り出し、彼の頬をかするように弾丸を撃ち放った。銃を撃ったフォルテはすぐに拳銃を下ろす。
「・・・そんなに英雄になりたいならば、僕が君を英雄にしてやろうと言っている。・・・君の望む結果になるかは、保証しかねるが」
「ま、まさかお前・・・フロンティア起動後に僕を・・・!」
「命令無視、一般人の殺害、命を軽んじる行為、そして今回の2人のLiNKERの過剰投与・・・マムを救ったことは感謝するが、君の度重なる問題行動は目に余る。ゆえに、君は真なる平和には不必要だ。執行猶予があるだけありがたいと思え」
わざと外したとはいえ、容赦なく拳銃を撃ったフォルテにウェルは腰を抜かしている。
「安心しろ。墓標くらいは立ててやる。・・・人類史上最低最悪自称英雄の独裁者としてな」
フォルテは拳銃をしまい、ウェルを残して外に出ようとする。
「・・・本当、好き勝手言ってくれますねぇ・・・。あなたのそういう英雄を軽んじる態度、僕は大嫌いですよぉ・・・!」
「奇遇だな。僕も、英雄を目指す君が嫌いだ」
お互いに悪態をついた後、フォルテは車両から出ていく。残ったウェルが考えることは・・・執行猶予までにどうやってフォルテを殺せるかの作戦だ。
~♪~
二課の仮設本部である潜水艦のメディカルルームで響は治療を受けている。あの戦場にいた未来と海恋は椅子に座って響が回復するのを待っていた。しばらく待っていると、治療の結果を知らせるために緒川がやってきた。
「当座の応急処置は無事に終わりました」
「無事・・・?響は無事なんですよね・・・?」
「・・・はい」
「・・・教えてください。立花さんの身体は・・・いったいどうなってしまったんですか?」
響の身体の状況を知りたい未来と海恋に緒川は少し顔を俯かせている。状況を説明するために、緒川は潜水艦の司令室へと移動した。たどり着いた司令室では弦十郎が待っていた。クリスもたった今、弦十郎から真実を知らされていた。日和は悲しそうな顔で腕を掴んで顔を俯かせている。
「・・・未来君には、知ってもらいたいことがある」
モニターより、メディカルルームで撮った響のレントゲン写真が映し出された。響のガングニールの浸食は進んでおり、身体に纏わりついているように見える。これを見た未来と海恋は目を見開き、驚愕する。
「・・・最初から教えてあげればよかった・・・。そうすれば・・・何とかできたかもしれなかった・・・。響ちゃんも・・・力を使わなかったかもしれない・・・。それなのに・・・」
「・・・クソッタレが!!!!」
事実を隠したままにしたことを後悔して日和は悲しそうに目を閉じ、クリスも机を蹴り上げ、やり場のない怒りをぶつけた。その間にも弦十郎は未来と海恋に響の現状を伝える。
「胸に埋まった聖遺物の欠片が響君の身体を蝕んでいる。これ以上の進行は、彼女を彼女でなくしてしまうだろう・・・」
「・・・聖遺物を使うことで浸食が進んでいった・・・そうか・・・それで日和はあの時、立花さんを殴って気絶させたのね・・・力を使わせないために・・・」
「うん・・・」
響を気絶させた理由に合点がいった海恋は顎に手を添えて考える。
「立花さんの聖遺物の浸食を食い止めるには、力を使わせないのは必須条件・・・。それには、立花さんを今後これ以上戦わせないこと。それができる人物がいるとしたら・・・」
海恋と弦十郎は視線を未来に向けた。未来には、その意図がすぐに理解できた。
「・・・私・・・なんですね・・・」
「響君にとって、親友の君こそが、最も大切な日常・・・君のそばで穏やかに時間を過ごすことだけが、ガングニールの浸食を抑制できると考えている」
「私が・・・響を・・・」
「・・・響君を・・・守ってほしい」
弦十郎は真剣な眼差しで未来にそう頼んだ。真実を告げられ、未来にはもう答えが出ていた。自分が・・・響を守るんだと。
~♪~
先日に降っていた雨が止み、本日は晴天・・・エアキャリアを止めている大自然はより美しく、湖も輝いてみえる。そんな中でマリアはナスターシャの車椅子を押して、フォルテと共に散歩をしている。散歩の最中、マリアは自身の胸の内をフォルテとナスターシャに明かす。
「・・・これまでのことで、よくわかった・・・私の覚悟の甘さ・・・決意の軽さを・・・」
「「・・・・・・」」
「その結末がもたらすものが何なのかも・・・。そのせいで、フォルテには多くの負担をかけさせてしまった・・・」
マリアは押していた車椅子から手を放し、ナスターシャとフォルテと対面する。
「だからね、マム・・・私は・・・」
「その必要はありません」
「え・・・?」
マリアの決意を話す前にナスターシャが目を閉じて口を開いた。
「・・・それがあなたの答えなのだな・・・」
真実を全て知っているフォルテは目を閉じ、深々とナスターシャの意思を汲み取る。
~♪~
一方その頃、調と切歌はスーパーに行って買い出しに出かけていた。本日の買い出しを終え、2人は食材が入った袋を両手に持って隠れ場所に戻ろうとする。
「楽しい楽しい買い出しだって、こうも荷物が多いと面倒くさい労働デスよ!」
「仕方ないよ。過剰投与したLiNKERの副作用を抜ききるまでは、おさんどん担当だもの」
切歌は調の様子が若干おかしいことに気づき、彼女の前に立つ。
「持ってあげるデス!調ってば、なんだか調子が悪そうデスし・・・」
「ありがとう。でも平気だから」
切歌は調を気遣って袋を持つと提案したが、調は大丈夫と言い張る。
「・・・じゃあ!少し休憩していくデス!」
意外と強情な部分がある調に切歌はそれでも彼女を楽にしてあげようとそう提案した。調はせっかくの好意ということで断らず、その提案に乗った。2人が休憩の場に選んだのは、工事中止となった工事現場であった。2人はそこの廃材に座り、スーパーで買ってきた菓子パンを取り出す。
「嫌なこともたくさんあるけど、こんなに自由があるなんて、施設にいたころは、想像もつかなかったデスよ。任務とはいえ、フォルテもこういう空気を味わってたんデスなぁ・・・」
「うん・・・そだね・・・・あの時は・・・フォルテが羨ましいって、思ったっけ・・・」
切歌は菓子パンをおいしそうに食べているが、調は本当に体調が悪いのか、菓子パンの袋さえも開けていない。すると切歌は沈んだ表情で語りだす。
「・・・フィーネの魂が宿る器として、施設に閉じ込められていたあたし達。あたし達の代わりに、フィーネの魂を背負うことになったマリア・・・。自分が自分でなくなるなんて怖いことを、結果的にマリア1人に押し付けてしまったあたし達。大切な友達をなくして、どんどん怖くなっていくフォルテ・・・。そんなフォルテを、止めることができないあたし達・・・」
様々なことを思い浮かべた切歌だが、気持ちを切り替えてご機嫌に振る舞い、最後の一口を彼女は頬張る。すると切歌は調の体調が悪化していることに気づいた。調は大量の汗をかいており、息遣いも荒い。重度の風邪のような症状に陥っている。
「調⁉ずっとそんな調子だったデスか⁉」
「大丈夫・・・ここで休んだからもう・・・」
大丈夫と言い張るが、調は足元がおぼつかず、ふらついている。
「調!!」
切歌は調を支えようとした時・・・
ガシャンッ!!ガラガラガラガラ!!!!
調は近くにあった廃材に倒れ掛かる。それによって不安定だった骨組みが崩壊し、数多くの鉄パイプが落下してきて、彼女たちを押しつぶさんとしている。
~♪~
ナスターシャはマリアに向けて、衝撃的な言葉を口にする。
「あなたにこれ以上、新生フィーネを演じてもらう必要はありません」
新生フィーネを演じる・・・それが行きつく答えとは、マリアはフィーネに覚醒したわけでなく、ただフィーネとして演技していただけということだ。これは、組織の根幹に関わる、重大なことだ。
「マム⁉何を言うの!!?」
「あなたは、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。フィーネの魂など宿していない。ただの優しいマリアなのですから・・・」
「大したことではないさ。フィーネの魂はどの器にも宿らなかった・・・ただそれだけの事だからね」
驚くマリアにナスターシャは優しい表情で、フォルテはいつも通りの無表情でそう口を開いた。ただ・・・その会話を木陰に隠れて聞いていた者がいた。英雄志願者である、ウェルであった。重大な事実に、ウェルは怪しく、静かにほくそ笑んでいる。
~♪~
ズシャーン!!!
鉄パイプが大量に落ちてきたことによって、工事跡地では凄まじい音が鳴り響き、辺りも土煙が立ち込める。
「・・・・・・あれ・・・?」
直撃コースにいたはずの切歌と調は死んではいない。痛みもないどころか、当たった気配もない。恐る恐る切歌は目を開け、防衛本能から突き出した手を見て、驚愕する。なぜなら・・・彼女の手からバリアのような障壁が展開されていたからだ。
「何が・・・どうなってるデスか・・・?」
何が起きたのかわからず・・・そもそも、自分が何をしたのかもわかっていない切歌は困惑するばかりであった。
響の誕生日
未来「響、誕生日おめでとう」
海恋「立花さん、おめでとう」
日和「響ちゃんおめでとーう!今日は響ちゃんのためにベッキーと一緒に張り切って歌っちゃうよー!」
響「わー、ありがとうございます!すごくうれしいです!」
未来「今日は響のために3人でお好み焼きのケーキを作ったの」
海恋「と言っても、お好み焼きをただ重ねただけなのだけどね」
日和「さあ響ちゃん!ご賞味あれ!」
響「うわー!おいしそう!いっただき・・・」
お好み焼きケーキを見て日和は物欲しそうによだれを垂らしながら見つめている。
海恋「こら!日和!これは立花さんのものよ!」
日和「わかってる・・・けど・・・おいしそう・・・」
未来「もう・・・味見したじゃないですか・・・」
響「・・・こんなにいっぱいあるんですから、頑張った日和さんたちもどうぞ!」
日和「えっ!!?いいの!!?じゃあ遠慮なく!!」
未来「すごい・・・もう食いついてる・・・」
海恋「はあ・・・ごめんなさいね、立花さん、日和が勝手に・・・」
響「いえいえ。みんなとこうして一緒に食事するだけでも、素敵なプレゼントですから!」
未来「響ったら・・・」
海恋「そういうことにしておきましょうか」
響「未来、日和さん、海恋さん、本当にありがとう!!」
響は日和たちと一緒に食事を楽しみ、その後に日和の演奏と歌を聞いて、充実した誕生日になったとさ。