ルナアタックより1ヶ月が経った頃・・・月の落下の軌道線を割り出したNASAの観測結果が不正だとナスターシャは判断した。この事実を公表するために、武力行使することを彼女は決断した。フォルテは彼女の計画に真っ先に賛同し、後にマリア、調、切歌も賛同する。計画を実行するためにも、必要なことがある。それは・・・ドクターウェルを自分たちの味方に引き入れることだ。時はちょうどその時・・・F.I.Sの訓練施設。訓練場はF.I.Sの技術によって風景を本物の街のように映し出している。シンフォギアを身に纏う4人の前に、シュミレーターノイズが出現する。マリアは槍で、フォルテは大剣で、調は放った丸鋸で、切歌は鎌で次々とシュミレーターノイズを殲滅していく。
「・・・マリア。月読と暁には聞こえないように話す。大事なことだ。よく聞いてほしい」
マリアとフォルテが背中を合わせた時、フォルテは戦闘音で調と切歌には聞こえないようにして、マリアに話しかける。
「またあの話?私にフィーネを演じろと」
マリアはシュミレーターノイズから、シュミレーターの人間を守りながら槍を振るってフォルテの話に耳を傾ける。
「僕たちの計画遂行のためには、不本意だが、ドクターウェルの助力が必要不可欠だ。奴を僕たちの元に引き入れるためには、君の身体にフィーネが再誕したこととすることで、僕たちこそが異端技術の先端を所有していると示さねばならない。あの英雄願望のことだ・・・必ず食いつく」
「無理よ!確かに私たちは、レセプターチルドレン!フィーネの魂が宿る器として集められた孤児だけど・・・現実は、魂を受け止められなかったわ!今更そんな!!」
マリアは自らの感情に流され、槍のエネルギー砲を発射させた。だが発射されたエネルギー砲は・・・シュミレーターの人間に直撃してしまった。それによって、シュミレーターは任務失敗と判断し、シュミレーションは終了し、元の訓練施設に戻っていく。
パチパチパチッ
そこへ、ウェルが入室し、彼女たちに向けて拍手する。
「シンフォギアシステム。素晴らしい力だ。そして、適性の薄い君たちに力を授ける僕が改良したLiNKERも。この力を持ってすれば、英雄として世界を・・・くくく・・・」
ウェルは下卑た笑みを浮かべながら切歌と調のシンフォギアを馴れ馴れしく触る。これには切歌と調、マリアも不快感を露にする。
「触るな」
「ひっ・・・!!?」
フォルテはウェルに向けて殺気を放つ。フォルテの殺気を感じたウェルは恐怖のあまり、思わず2人から離れた。フォルテはギアを解除して部屋から出ていった。何はともあれ、マリアたちはこの後ウェルを味方に引き入れることに成功した。
~♪~
そして時は、今に至るというわけだ。休息を終え、マリアはエアキャリアを操縦し、目標地点・・・計画に必要不可欠のフロンティアが封印の地へと向かっている。マリアの脳裏には、ナスターシャに告げられた言葉が振り返る。
(だけど・・・マムはこれ以上フィーネを演じる必要はないと言った・・・。神獣鏡とネフィリムの心臓・・・フロンティア起動の鍵が揃った今・・・どうしてマムはこれ以上、嘘をつく必要はないと言ったのか・・・)
フィーネを演じる必要はない・・・その真意がマリアには理解できなかった。
~♪~
エアキャリアの車両で、買い出しから戻ってきた切歌と調はウェルからメディカルチェックを受けていた。調の番は終わり、今は切歌の番だ。数値の結果は良好・・・戦線に戻れる状態になったことを指す。
「オーバードーズによる不正数値もようやく安定してきましたね」
「よかった・・・これでもう足を引っ張ったりしない」
「・・・・・・」
調はようやく元の状態に戻れて安堵しているが、切歌はどことなく顔色が優れない。
「LiNKERによって装者を生み出すと同時に、装者の管理と維持もあなたの務めです。よろしくお願いしますよ」
「わかってますって。もちろんあなたの身体のこともね」
ナスターシャはウェルに釘を刺したが、彼は不敵な笑みを浮かべてそう返した。そこへフォルテが彼の耳元に近づき、ナスターシャたちには聞こえないように話す。
(自分のことも忘れるな。君は用が済めば終わりだ。生化学者など、後でいくらでも見つけられるからな)
(言われんでもわかってますよ。ただ・・・先にくたばるのはどっちの方ですかねぇ?)
(・・・どういう意味だ?)
(さぁてねぇ?)
意味ありげに話すウェルにフォルテは相変わらずの無表情だが、怪訝に思っている。ウェルははぐらかすように肩をすくめて、フォルテから放れる。そんな中切歌は工場跡地で自分が出したあの障壁のことを思い返していた。
(・・・あれは・・・あたしのしたことデスか・・・?)
切歌は何が何だかわからなかった。どうしてあの障壁を出せたのかも・・・そもそも、あれが一体何なのかも。
(あんなこと・・・どうして・・・。あれは・・・)
考えていると、切歌はある1つの過程が浮かび上がった。あれは・・・フィーネの力なのではと。その考えが浮かび上がると、切歌は目を見開いた。
~♪~
二課の仮設本部の潜水艦のメディカルルーム。そこに翼、日和、クリスが集まり、目を覚ました響の様子を見に来ていた。そして、後からやってきた弦十郎がスキャン画像を使い、響の身体の状況を伝える。スキャン画像に映っているのは、何かの臓器で、至る所に鉱石のようなものが埋め込まれている。これがガングニールの浸食によってできたものだ。
「これは響君の身体のスキャン画像だ。体内にあるガングニールがさらなる浸食と増殖を果たした結果、新たな臓器を形成している。これが響君の爆発力の源であり、命を蝕んでいる原因だ」
見たこともない臓器が響の命を蝕んでいると聞き、クリスは悔しそうな表情をし、日和も悲しそうに顔を俯かせている。重大な事実を伝えられた響は呑気に笑っている。
「あは・・・あははは・・・つまり、胸のガングニールを活性化させる度に融合してしまうから、今後はなるべくギアを纏わないようにしろと・・・あはは・・・」
「いい加減にしろ!!!」
呑気そうに笑っている響に翼は彼女の腕を掴み、怒りの形相を浮かべている。
「なるべくだと?寝言を口にするな!!!!今後一切の戦闘行動を禁止すると言っているのだ!!!東雲も言っていただろう!!!」
「翼さん・・・」
「このままで死ぬんだぞ!!?立花!!!!」
「!!!」
翼の涙を流しながら放たれた言葉に響は目を見開く。
「そんくらいにしときな!このバカだって、わかってやってるんだ!」
クリスがその場をなだめる。翼はただ1人、メディカルルームを出ていく。
「翼さん?どこ行くんですか⁉翼さん!!」
日和も出ていった翼を追いかけ、メディカルルームを後にする。
「医療班だって、無能ではない。目下、了子君が残したデータを基に対策を進めている最中だ」
「師匠・・・」
弦十郎は優しい口調でしゃべり、響の頭に手をぽんとのせる。
「治療法なんてすぐに見つかる。そのほんの僅かな時間、ゆっくりしてもバチなど当たるものか。だから、今は休め」
「・・・わかり・・・ました・・・」
弦十郎が自分を気遣っているのはわかるが、響はどうにも沈んだ表情で、顔を俯かせている。メディカルルームを退室した翼は響を守れなかった悔しさから拳を壁に叩きつけた。
(涙など・・・剣には無用・・・なのに・・・なぜ溢れて止まらぬ・・・?今の私は、仲間を守る剣にあたわずということか・・・!)
「翼さん・・・」
響を守れなかった悔しさは日和も十分に理解しているため、どう声をかけたらいいかわからなかった。そこへ緒川がやってきた。
「翼さん」
「っ!わかっています。今日は取材がいくつか入っていましたね」
翼は自身の涙を拭き、この場から離れようと歩き出す。
「翼さん!」
「1人でもいけます。心配しないでください」
「つ、翼さん・・・」
「・・・すまない。1人にしてくれ」
日和と緒川は寂しげな翼の背中をただ見送ることしかできなかった。
「・・・なんだか翼さん・・・寂しそう・・・。まるで、前の状態に戻ったみたい・・・」
今の翼ならばそうなるのも無理もない気がするが、やはり心配になってくる日和。
「・・・ううん!いつまでもうじうじしてても仕方ない!悲しいのはみんな同じ!私が気張らないと!」
いつまでも後ろめたい気持ちになっても仕方ないと思い、日和はしっかりするという思いで自身の頬を強く叩いた。が、思った以上に強かったために痛がる。
「いったぁ~・・・強くやりすぎた・・・」
「・・・日和さんは強いんですね」
「・・・強くなんかないですよ。全然強くない。ただ、前向いて進んでるだけです」
日和は今も不安な気持ちでいっぱいである。それでも前へ進もうとする日和の前向き思考に緒川は頼もしそうに笑みを浮かべている。
「・・・あの、緒川さん。緒川さんはフォルテさんと同じマネージャーですよね?あの人から何か聞いていませんか?」
「・・・気になるんですね。フォルテさんが」
「あの日から私、ずっと考えてたんです。フォルテさんの言う真なる平和って何だろうって。仮にそのよくわからないものがあったとして、それは・・・フォルテさん自身が望んだものなのかなって・・・。なんか、自分に言い聞かせてるような・・・そんな気がして・・・」
決闘の夜でフォルテが言っていた真なる平和。響のことでずっと後回しにしてきたが、日和はそれが気になって仕方ない。
「すみません・・・よくわかんないことを言ってしまって」
「いえ。ただ・・・すみません。彼女とは仕事で数回話をしただけでそれ以上のことは何も・・・」
緒川はクイーン・オブ・ミュージックでフォルテと初めて出会い、仕事の話はしていたものの、それ以上のことは何も・・・というより、その時はフォルテがまだ武装組織フィーネの一員であったことさえも知らなかったのだ。情報を聞き出すという発想自体なかった。
「そう・・・ですよね・・・。フォルテさんのことがわかれば・・・話し合いに応じてくれるんじゃないかって思ったんですけど・・・なかなかうまくいきませんね」
「なるほど・・・」
日和なりに考えていたようだが、案の定、簡単にはいかず、彼女は苦笑いを浮かべている。日和の気持ちを理解した緒川はその気持ちを汲み取ろうとする。
「わかりました。こちらでも彼女のことについて調べてみます」
「本当ですか⁉ぜひ、お願いします!」
緒川がフォルテについて調べようとしてくれて、日和は彼に感謝して頭を下げて調査の依頼をするのであった。
~♪~
フロンティアが封印されている海洋上。エアキャリアはそこを飛んでいる。
「マリア、お願いします」
マリアはエアキャリアを操作して、シャトルマーカーを射出し、海洋上に展開させた。
「シャトルマーカー、展開を確認」
「ステルスカット、神獣鏡のエネルギーを収束」
エアキャリアはステルス機能を解除し、エネルギーを神獣鏡に収束させる。
長野県水上山より出土した神獣鏡とは鏡の聖遺物。その特性は光を屈折させて周囲の景色に溶け込む鏡面迷彩と古来より伝えられる魔を払う力。今までのエアキャリアの透明化はこの神獣鏡の鏡面迷彩能力によるものである。5年前にフィーネがノイズを放ち、二課の発掘チームを襲わせて、強奪したものが神獣鏡。そして、この時両親についていったツヴァイウィングの片割れである天羽奏はその時に1人だけ生き残った生存者でもあった。
「聖遺物由来のエネルギーを中和する神獣鏡の力を持ってして、フロンティアに施された封印を解除します」
ナスターシャがフロンティアの封印を解除しようと機械を操作していたところに、ウェルが彼女の腕を掴んでストップをかけた。
「フロンティアの封印が解けるということは、その存在を露にするということ。全ての準備を整ってからでも遅くないのでは?」
「心配は無用です」
「やけに慎重だな。何を企んでいる?」
「・・・いえ?何にも?」
ストップをかけたウェルに対し、疑いの目を向けるフォルテ。ウェルはナスターシャの手を放し、肩をすくめて不敵な笑みを浮かべる。
「リムーバーレイ・ディスチャージ」
ナスターシャはスイッチを押し、収束した神獣鏡のエネルギーをシャトルマーカーに向けて放った。シャトルマーカーがエネルギーを反射し、フロンティアが眠る海の底にエネルギーが沈んでいく。
「これで・・・フロンティアに施された封印が解ける・・・解けるぅ~・・・」
ウェルは嬉々とした表情でフロンティアの解除を待ち望んでいる。エネルギーはフロンティアに直撃し、放たれたエネルギーによって、水飛沫をあげた。だが・・・ただそれだけで・・・フロンティアが浮上してくることはなかった。
「・・・解け・・・ない・・・?と・・・と・・・解け・・・ない・・・?」
「・・・やはりな・・・」
フロンティアの封印が解けていないということに、ウェルは動揺しているが、ある程度の予想がついていたフォルテは至って冷静だ。
「出力不足です。いかに神獣鏡の力といえど、機械的に増幅した程度ではフロンティアに施された封印を解くまでには至らないということ」
フロンティアの起動に必要な鍵は揃っているの関わらず、封印が解けないのは出力が足りていない。そのことを知っていたナスターシャにウェルは怒りを露にする。
「あなたは知っていたのか!聖遺物の権威であるあなたが、この地を調査に訪れて何も知らないはずなど考えられない!この実験は、今の我々ではフロンティアの封印解放には程遠いという事実を知らしめるために!違いますか⁉」
「・・・これからの大切な話をしましょう」
フロンティアの封印解除に至らない・・・その事実を突きつけられ、ウェルは歯ぎしりを立てる。そこへフォルテが彼に耳打ちをする。
「・・・運がよかったな」
ひとまずはまだ生かしておいてやるとフォルテは言っている。どこまでも自分を下に見るフォルテによって、ウェルの怒りは爆発寸前まで来ているが、彼は何とか怒りを抑えるのであった。
日和のストレス発散法
いつも元気に立ち振る舞う彼女にだってストレスを溜め込んでしまう時はある。そんな彼女のストレス解消法は歌を歌うこと。しかし、歌を歌う気分でない場合も存在する。そんな時の彼女のストレス発散法は食べること。自身の秘密も相まって、響並みの食欲を持っている彼女は歌を歌わない日はおやつを爆食いし、ストレスをなくしていく。ただ、節度を持たなければ夕食を食べれない、海恋に怒られる、さらには気を付けないと昔の体型に戻ってしまうという大きなリスクもある。特に3つ目の例を日和は気にしており、気を付けて食べるように心がけている。