戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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3つの戦いの開幕

フロンティアの封印が解け、浮上した光景は世界中のテレビで中継されている。フロンティアの上空を飛んでいたテレビ局のヘリがフロンティアを撮影していたが、そのヘリも米国の艦隊と同じように押しつぶされて爆発を起こした。そんな状況下、二課の潜水艦はフロンティアが浮上したことにより、打ち上げられている。

 

「下からいいものをもらったみたいだ!」

 

海恋を含めたオペレーターたちは揺れの計測を確認している。

 

「計測結果出ました!」

 

「直下からの近く上昇は、奴らが月にアンカーを打ち込むことで・・・」

 

「フロンティアを引き上げた!!?」

 

揺れの原因がフロンティアが引き上げられた結果によるものだと判明する。

 

「それだけじゃありません!事態は思ってた以上に最悪な状況です!」

 

海恋はフロンティアが浮上したことにより、新たな問題が発生したことを告げる。その問題とは、以前にも話していた月の落下のことだ。

 

~♪~

 

月の落下を阻止することこそが、マリアたちの目的だ。しかし今は・・・その目的とは大きくかけ離れてしまった。

 

「行き掛けの駄賃に月を引き寄せちゃいましたよ」

 

そう、発生した問題というのは、ウェルが月を引き寄せ、月の落下が速まってしまったのだ。当のウェルは悪びれた様子は一切ない。

 

「月を・・・⁉落下を速めたのか⁉救済の準備は何もできていない!!このままでは本当に、人類は絶滅してしまう!!」

 

マリアはウェルをどけさせてフロンティアを操作する球体に触れてコントロールしようとする。だが球体は光を失い、マリアの操作を一切受け付けない。

 

「どうして⁉どうして私の操作は受け付けないの!!?」

 

「いひひひ・・・LiNKERが作用している限り、制御権は僕にあるのです」

 

つまり、現在でフロンティアを思うがままに操ることができるのは、ネフィリムの腕を手に入れたウェル以外にいないということだ。

 

「人類は絶滅なんてしませんよ。僕が生きている限りはね。これが僕の提唱する、1番確実な人類の救済方法です」

 

「そんなことのために、私は悪を背負ってきたわけではない!!」

 

もはや横暴といえるウェルの救済にマリアは異を唱えてウェルに詰め寄ろうとした。しかしウェルはネフィリムの腕でマリアを払いのけた。

 

「ここで僕を手をかけても、地球の余命が後僅かなのは変わらない事実だろう?お前はフォルテがいないとダメな女だなぁ!フィーネを気取ってた頃でも思い出してぇ、そこで恥ずかしさで悶えてな」

 

「セレナ・・・セレナ・・・私・・・!」

 

マリアは己の無力さを嘆き、すすり泣いている。

 

「気が済むまで泣いてなさい。帰ったらぁ、わずかに残った地球人類をどう増やしていくか。一緒に考えましょう」

 

ウェルはマリアを見下してそう言い放ち、ブリッジを後にした。

 

~♪~

 

二課の潜水艦にて、翼と日和は戦闘の準備を行っている。現状で戦える装者はこの2人だけだから。翼はライダースーツを着込んでおり、日和は頬を強めに叩いて気合を入れている。

 

「翼、日和君、行けるか?」

 

「無論です」

 

「バッチコイです!」

 

「翼さん、日和さん・・・」

 

これから戦地へと赴く翼と日和に響は呼び止める。その表情もどこか不安そうだ。

 

「案ずるな、立花」

 

「全部終わらせてくるからさ・・・心配しないでね」

 

翼と日和は響を安心させるようにそう言って、ブリッジから出ていった。だが響は今も不安そうにしている。自分もガングニールを纏うことができたらと、そう考えてしまう。

 

~♪~

 

潜水艦のハッチが開き、翼はバイクに乗り、そこに日和を後ろに乗せて出撃経路を走り、フロンティアの大地に向かって飛び立つ。

 

Imyuteus amenohabakiri tron……

 

clear skies nyoikinkobou tron……

 

バイクに乗る翼と日和はシンフォギアを身に纏い、向かってくるノイズの群れに突進する。翼は両足のブレードを車体前方に展開させ、バイクを走らせながらノイズを切り刻んでいく。

 

【騎刃ノ一閃】

 

バイクに乗りつつノイズを蹴散らす翼に掴まりながら日和は右手首のユニットから棍を取り出し、ヌンチャクに形を変えてノイズに振るって次々と蹴散らしていく。

 

「・・・!!翼さん!!飛んでください!!」

 

何かの音を聞いた日和は翼にそう言ってバイクから飛び降りる。日和の指示を聞いた翼もバイクを放棄して飛び降りる。その瞬間、赤黒い斬撃波が飛んできて、バイクを真っ二つに切り裂いた。切り裂かれたことにより、バイクは爆発する。

 

「真なる平和の道が・・・崩れ始めている・・・。なんとしてでも軌道修正しなければいけない」

 

翼と日和は声のした方角に視線を向ける。赤黒い斬撃波を放った人物など、自分たちが知る中ではたった1人しかいない。

 

「だがそれは・・・君たちを排除した後でも遅くはない」

 

そう、この斬撃波を放ったのはフォルテだ。フォルテはノイズを蹴散らしながら翼と日和に近づき、そして大剣を構える。

 

「ドクターにも、君たちにも・・・誰にも真なる平和の実現の邪魔はさせない」

 

フォルテは明確な殺気を翼と日和に向ける。殺気に当てられた翼と日和は冷や汗をかく。

 

「くっ・・・!奴め・・・私たちを始末しにかかってきたか!」

 

翼はフォルテを迎え撃とうと刀を構える。すると日和がそんな翼を棍で止めた。その様子にフォルテは疑問符を浮かべる。

 

「翼さん。ここは私にやらせてください」

 

なんと日和はたった1人でフォルテと戦おうという意志を示した。

 

「何を言っている⁉奴は4人がかりでやっと互角となる相手だぞ⁉」

 

「それでもです!!!」

 

翼は1人で戦うことを拒んだが、日和の決意は揺るがなかった。翼はそんな日和の決断に驚きを隠せなかった。

 

「この人は・・・私がやらないといけないんです!!調ちゃんとも・・・約束しましたから!!」

 

日和がそこまで言い放つには、何かわけがあるのだと悟った。

 

「勝算はあるのか?」

 

「思い付きを数字で語れるものかよ!!」

 

使いどころを間違ってる気がするが、日和もかつて弦十郎が言い放った言葉を使った。その言葉に、日和も弦十郎の弟子だなとつくづく思う。

 

「・・・ならば、この場をお前に任せる。だが、決して無理はするな。危険だと感じたらすぐに撤退するんだ」

 

「翼さん・・・ありがとうございます!」

 

翼はこの場を日和に任せ、先へ進もうと移動を開始する。

 

「行かせるものか」

 

話を聞いていたフォルテはそうはさせまいと翼の行く手を阻もうとする。日和は棍を構えて、腰部のブースターを起動させ、弾丸のようなスピードでフォルテに突進する。

 

【電光石火】

 

「ぐっ・・・!」

 

日和の素早さに対応が遅れたフォルテは棍の打撃を受けて吹っ飛ぶ。フォルテは大剣を双剣にし、地面に片方の剣を刺して勢いをとどめる。日和は追撃として棍をフォルテに振るうが、フォルテはもう片方の剣で凌ぐ。翼が先に行ってしまったのを見たフォルテは日和に視線を戻し、払いのける。日和を払いのけたフォルテは双剣を大剣に戻し、構える。

 

「・・・どうやらよほど先に死にたいらしいな」

 

「・・・フォルテさん。あなたは暴走する響ちゃんを助けてくれました。何とか穏便に済ませることはできないのですか?」

 

ガングニールによって暴走する響を共に止めたことを覚えている日和は何とか話し合いを設けようと試みる。だがフォルテはそれに応じる気はない。

 

「あれはこちらの落ち度があっただけだ。だが今は、君たちを見逃す理由がない」

 

「月が落ちてくるんですよ!!?今はそんなことを言ってる場合じゃないですよ!!」

 

「くどい。僕は言ったはずだ・・・次に会う時は君たちを殺す時だと」

 

意見を曲げようとしないフォルテに、戦いはどうしても避けられないと悟った日和は棍を構える。

 

「なら私はどんなことをしてもあなたを止めてみせます。調ちゃんにそう約束しましたから!」

 

「僕は誓った。真なる平和を実現させると。邪魔をする者は全員排除する!」

 

日和はフォルテを止めるために、フォルテは真なる平和を実現させるために。互いに譲れない想いを胸に、日和とフォルテの戦いは始まった。

 

~♪~

 

翼がフロンティアの先へと進んでいき、日和とフォルテが戦い始めたところを二課のモニターで捉えていた。

 

「日和がフォルテさんと交戦を開始しました!」

 

「フォルテさんはとてつもなく強い・・・さらに先へ進んでいるのは翼さん1人だけ・・・この先、どう立ち回れば・・・」

 

強敵のフォルテによる足止め、さらに動ける装者は翼だけ。立ち回りが困難な状況をどう対処すればいいか、緒川は考える。そんな中で響は弦十郎たちに進言する。

 

「シンフォギア装者はまだいます」

 

「ギアのない響君を戦わせるつもりはないからな」

 

「いえ。戦うのは、私じゃありません」

 

「響・・・」

 

この状況下で戦うことができるシンフォギア装者・・・それは、たった1人しかいない。

 

~♪~

 

独房にいた調は緒川に連れられてブリッジにやってきた。その理由は、調に出撃を要請するためだ。そう、響の言う戦えるシンフォギア装者とは、調のことだ。緒川は調にかけてあった電子式の手錠を外す。

 

「捕虜に出撃要請って・・・どこまで本気なの?」

 

「もちろん全部!」

 

さも当然のように言う響の答えに調は訝し気な表情をしている。

 

「あなたのそういうところ、好きじゃない。正しさを振りかざす、偽善者のあなたが」

 

調の発言に響は困ったような表情を浮かべながら話す。

 

「私、自分のやってることが正しいだなんて、思ってないよ・・・。以前、大きな怪我をした時、家族が喜んでくれると思ってリハビリを頑張ったんだけどね。私が家に帰ってから、お母さんもおばあちゃんもずっと暗い顔ばかりしてた・・・。それでも私は、自分の気持ちだけは偽りたくない。偽ってしまったら、誰とも手を繋げなくなる」

 

響は自分の気持ちを信じてもらおうと、調に自身の過去を話した。響の過去を知って調は少し揺らいだが、それでも信じ切れていない。

 

「手を繋ぐ・・・そんなこと本気で・・・」

 

調が言葉を紡ごうとした時、響が調の手を握ってきた。

 

「だから調ちゃんにも、やりたい事をやり遂げとほしい。もし私たちと同じ目的なら、力を貸してほしいんだ」

 

「私の・・・やりたいこと・・・」

 

響の言葉を聞いて、調は日和と戦っているフォルテを見つめる。調のやりたいことは、仲間たちを止めること・・・仲間たちと共に、笑って過ごしたいことだ。

 

「やりたいことは、暴走する仲間を止めること・・・でしたよね」

 

緒川にそれを言われ、調は響の手を振りほどき、そっぽを向けて言う。

 

「・・・みんなを助けるためなら・・・手伝ってもいい・・・」

 

調が協力してくれるようになって、響と未来は笑みを浮かべる。海恋も作業をしつつ、笑みを浮かべている。

 

「だけど信じるの?敵だったのよ?」

 

「敵とか味方とかいう前に、子供のやりたいことをさせてやれない大人なんて、カッコ悪くてかなわないんだよ」

 

「師匠~!」

 

弦十郎は預かっていた調のシンフォギアのネックレスを彼女に返却する。

 

「こいつは、可能性だ」

 

ネックレスを受け取った調は流れかけた涙を拭う。

 

「相変わらずなのね・・・」

 

「甘いのはわかってる、性分だ。・・・うん?」

 

調の言葉に弦十郎は違和感を覚える。調と弦十郎は初対面なのだ。相変わらずなんて言葉など出てくるはずがないのだ。

 

「ハッチまで案内してあげる!急ごう!」

 

響が調をハッチまで案内しに行ったことにより、違和感はうやむやになってしまう。弦十郎は気を取り直してモニターでの翼の様子、日和の戦いの様子を見守る。別のモニターではちょうど調がシンフォギアを身に纏い、出撃した様子が映し出される。だがそれを見て、弦十郎は驚愕する。なぜなら・・・鋸を車輪のように展開して移動する調に掴まる形で響も乗っていたからだ。

 

「響⁉」

 

「何をやっている!!?響君を戦わせるつもりはないと言ったはずだ!!」

 

『戦いじゃありません!人助けです!』

 

弦十郎の問いかけに響は通信越しで当然のように言ってのけた。

 

「減らず口の上手い映画など、見せた覚えはないぞ!!」

 

「行かせてあげてください!」

 

そこに未来が響の背中を押すように、割って入ってきた。

 

「人助けは、1番響らしい事ですから!」

 

未来の言葉に弦十郎は呆れたように頭をかく。

 

「弦十郎さん、子供のやりたいことをさせてやれない大人なんて、カッコ悪いんじゃなかったんでしたっけ?」

 

「・・・こういう無理無茶無謀は、本来俺の役目だったはずなんだがな・・・」

 

笑みを浮かべながら放つ海恋の言葉に弦十郎は1本取られたかのように笑ってそう言った。

 

「弦十郎さんも?」

 

「帰ったらお灸ですか?」

 

「特大のをくれてやる!だから俺たちは・・・」

 

「バックアップは任せてください!」

 

「私達のやれる事でサポートします!」

 

藤尭も友里もやる気を見せ、響をバックアップする。

 

「子供ばかりに、いい格好させてたまるか!」

 

弦十郎は腕を組んでそう宣言した。

 

~♪~

 

フォルテの相手を日和に任せ、ノイズを殲滅しながら進む翼の元に弦十郎からの通信が入る。内容はやはり、響が調と共に戦場に突入したことだ。

 

「立花があの装者と一緒にですか?」

 

響が調と共に出撃したことを知り、多少は驚いている翼。

 

(想像の斜め上すぎる・・・)

 

だがそれも響らしいと思い、翼は笑みを浮かべている。

 

「了解です。直ちに合流します」

 

翼はそう言って気持ちを切り替えて、通信を切る。

 

「・・・ノイズを深追いしすぎたか・・・」

 

翼が行動に移そうとしたその瞬間、上空より大量の矢が降り注いだ。寸前でそれを感じ取った翼はとっさに矢を躱した。

 

「どうやら誘い出されたようだな」

 

矢の遠距離攻撃を行える人物など、たった1人しかいない。

 

「そろそろだと思っていたぞ、雪音」

 

矢を放ったクリスはボウガンを腕の装甲に変形させ、翼を崖上から見下ろしていた。

 

~♪~

 

一方の調と響はフロンティアの中枢区に向かって移動している。

 

「あそこにみんなが?」

 

「わからない・・・だけど・・・そんな気がする・・・」

 

「気がするって・・・」

 

中枢に向かっていた調は急に車輪として展開していた鋸をしまい、立ち止まる。

 

「どうしたの⁉」

 

響がフロンティアの建造物を見上げる。その建造物の上で、切歌が待ち構えていた。

 

「切歌ちゃん⁉」

 

Zeios Igalima Raizen Tron……

 

切歌は詠唱を唄ってシンフォギアを身に纏い、鎌の柄を回転させて刃を展開させて構える。

 

「切ちゃん!!」

 

「調!どうしてもデスか⁉」

 

「ドクターのやり方では、何も残らない!」

 

「ドクターのやり方でないと何も残せないデス!間に合わないデス!!」

 

切歌の言葉にはどこか焦りのようなものが感じられる。今や本来の目的とはかけ離れているのは切歌もわかっているはずだ。だがそれでももう後には引けない・・・必ず成さねばならない・・・自分が自分でいられるうちに。フィーネに塗りつぶされる前に。切歌にはその思いでいっぱいになっている。

 

「2人とも!!落ち着いて話し合おうよ!!」

 

「「戦場で何をバカなことを!!」」

 

響は話し合うように2人に訴えたが、いつぞやに翼とクリスに言われたことを今度は2人に返された。

 

「あなたは先に行って。あなたならきっと、マリアを止められる。手をつないでくれる」

 

「調ちゃん・・・」

 

「私とギアを繋ぐLiNKERだって、限りがある。だから行って!」

 

調は響に顔を向ける。この時の調の瞳は、フィーネと同じ金色になっていた。

 

「胸の歌を、信じなさい・・・」

 

調の言葉を聞いて、自分たちに向けてその言葉を放ったフィーネの姿が思い浮かぶ。どうして今になって思い出したかわからないが、響は調の言葉に頷き、先へと進んでいく。

 

「させるもんかデス!!」

 

切歌が響を止めようとするが、その前に調が複数の丸鋸を切歌に放って止める。切歌は鎌を回転させて丸鋸を破壊する。

 

「調!!なんであいつを!!?あいつは調が嫌った、偽善者じゃないデスか!!?」

 

「でもあいつは、自分を偽って動いてるんじゃない。動きたいときに動くあいつが、眩しくて羨ましくて、少しだけ信じてみたい・・・」

 

「さいデスか・・・。でも、あたしだって引き下がれないんデス!あたしがあたしでいられるうちに、何かを形で残したいんデス!」

 

「切ちゃんでいられるうちに・・・?」

 

切歌の言っている意味が理解できず、調は疑問符を浮かべている。

 

「調やマリア、フォルテにマムが暮らす世界に、あたしがここにいたっていう証を残したいんデス!!」

 

「それが理由?」

 

「これが理由デス・・・!」

 

調はツインテールの部位より、巨大な丸鋸を展開し、脚部の小型鋸を展開させる。切歌も鎌を構え、刃を3つに展開させた。互いに対峙しあい、先に動いたのは切歌だ。切歌は鎌を振るって、3つの刃を調に向けて放った。

 

【切・呪りeッTぉ】

 

迫りくる3つの刃に調は展開した巨大丸鋸を刃に向けて放った。

 

【γ式・卍火車】

 

2つの丸鋸と3つの鎌の刃は衝突し、相殺する。切歌は鎌を構えてブースターを使い、調に接近する。それに対抗するために調は展開したアームをさらに展開し、4本となったアームに4つの丸鋸を展開させる。

 

【裏γ式・滅多卍切】

 

切歌の鎌の一撃を調は巨大丸鋸で防ぐ。地に着地した切歌に追撃として調は丸鋸のアームを伸ばして追撃していく。繰り出される連撃に切歌はバク転で回避する。

 

「この胸に!」

 

「ぶつかる理由が!」

 

「「あるのならーーー!!」」

 

切歌は鎌をもう1本取り出し、調の4つのアームに対抗する。2人の戦況は均衡している。

 

~♪~

 

一方の翼はクリスと対峙し、戦いを繰り広げている。翼が振るう刀をクリスは拳銃で受け止め、もう片方の拳銃で翼に連射する。

 

「はっ!」

 

連射する弾を翼は刀で弾き、追撃する。クリスは刀の斬撃をバク宙で回避し、二丁拳銃を撃ち放つ。翼は弾を弾きながら躱し、刀を振るう。クリスは躱しながら拳銃を連射していき、最後の一撃は二丁拳銃で防御する。クリスは翼と距離を取りつつ、弾のリロードを行う。

 

「はあああっ!」

 

翼は脚部のブースターを利用しながらクリスの弾丸を躱しつつクリスとの距離を詰め、斬撃を放つ。斬撃を躱しながら拳銃を連射する。着地する瞬間を狙って翼は刀を振るったが、それも回避される。クリスは銃撃で反撃し、翼は弾丸を躱す。水辺に着地する翼は刀を構え、クリスは銃を翼に向ける。激戦はこちらも続いている。

 

~♪~

 

さらに別の場所で繰り広げられてる日和とフォルテの戦い。日和は棍を振るってフォルテに連撃を放つ。フォルテはその連撃を見切って全て躱していく。一旦距離を取ったフォルテは大剣を構え、日和に近づいて大剣を振るった。日和は棍で防御するも、一撃が重く、吹っ飛ばされる。

 

「ぐっ・・・!」

 

さらにフォルテは大剣を銃のように変形させ、エネルギーを溜め込み、日和に向けてエネルギー弾を放った。

 

【Mammon Of Greed】

 

ドカアアアン!!

 

「ああああ!!」

 

エネルギー弾は日和に直撃するタイミングで爆発した。爆発でさらに吹っ飛ばされる日和は地に倒れる。

 

「以前より力が増したようだが、未だ未熟。その程度では僕には勝てない」

 

「・・・フォルテさん。あなたがそうまでして真なる平和を願うのは・・・セレナちゃんのためですか?」

 

日和がセレナの名を口にした時、フォルテは驚いたように目を見開かせる。

 

「何故君がセレナの名を知っている?月読から聞いたのか?」

 

「・・・やっぱりそうなんですね・・・」

 

フォルテの反応を見て、日和はフォルテの考えが完全に理解できた。日和がセレナを知っているのは、当然調から聞いたからである。

 

「誰かのために願いを実現させるのは立派だと思います。でもそれは・・・人を・・・自分も殺してまで成さなきゃいけないことなんですか!!?」

 

日和の問いかけにフォルテは驚きつつも、さも当然のように真なる平和について語る。

 

「・・・真なる平和とは、世界のあるべき秩序だ。誰も争わない、誰も憎しみ合わない・・・穏やかで、平穏なる世界だ。そこに血に染まった連中など、僕を含め不要だ。争いの種を全て排除したその時こそ、セレナが願った世界が誕生する。僕は、その時にまで生かされているにすぎない」

 

つまり真なる平和とは、この世に存在する戦争や犯罪・・・その全てが除去され、正しい心を持った人間たちだけで構成された、実にシンプルな内容だ。フォルテはフロンティアこそそれを成すことが可能と本気で信じており、それが達成されれば・・・自分の命をも絶つつもりなのだ。

 

「・・・フォルテさん。ハッキリ言います。そんなことしたって、セレナちゃんは喜ばない!!!」

 

日和は大声を出してフォルテの考えを否定する。日和の言葉にフォルテはセレナの思いを侮辱したと捉え、眉をひそめる。

 

「・・・では、君はそう言い切れるほどに、セレナの何を知っているのだ?」

 

「何も知りません!!確かに私はセレナちゃんのことは何も知らない!!だけど、フォルテさんを守りたいって思う気持ちだけはわかる!!それを・・・フォルテさんに気づいてもらいます!!」

 

「・・・戯言を。セレナを侮辱したその罪、万死に値する」

 

日和はセレナの本当の気持ちを知ってもらうために、棍を構え直して態勢を立て直す。フォルテは日和を完全に敵視し、日和だけは必ず殺すという気持ちで大剣を構える。そんな2人の様子をウェルは遠くで望遠鏡で眺め、ソロモンの杖を持って下卑た笑い声をあげている。

 

~♪~

 

フロンティアのブリッジでマリアは繰り広げられている戦いをモニターで確認していた。その中で、調と切歌が戦っているという事実を信じられずにいる。

 

「どうして・・・仲の良かった調と切歌までが・・・!私の選択は・・・こんなものを見たいがためではなかったのに・・・!!」

 

自分の下した選択が間違ってしまったばかりに・・・そう思い後悔と己の無力さに涙を流すマリア。そこに、ナスターシャの通信が入る。

 

『マリア』

 

「!マム⁉」

 

『今、あなた1人ですね?フロンティアの情報を解析して、月の落下を止められるかもしれない手立てを見つけました』

 

「え・・・?」

 

『最後に残された希望・・・それには、あなたの歌が必要です』

 

「私の・・・歌・・・」

 

月を止められる手段がマリアの歌にある。それを聞いてマリアは目を見開かせて驚愕する。

 

~♪~

 

切歌の相手を調に任せた響は急ぎ、フロンティアの中枢へと向かっている。己の胸の歌を信じて。

 

「胸の歌が・・・ある限りぃいいいい!!」

 

この戦いを終わらせるための戦いは、既に幕を開けているのだ。




東雲日和の楽曲

生きる道しるべ

ノイズの恐怖を克服し、これまでの戦いや経験を振り返り、自分の思いを込めた聞いた人に勇気を与える歌。自分の価値観を押し付けるのではなく、生きるという当たり前のことがどう幸せに繋がるのかを、自分で考えさせ、幸せになってもらいたいという願いも込められている。
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