戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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絶刀と魔弓、鏖鋸と獄鎌、妖棍と怨樹

翼とクリスの戦いは激しさを増している。クリスは翼に向けて銃弾を放つ。翼は刀を大剣にし、弾丸を弾き、間髪入れずに蒼ノ一閃をクリスに放つ。クリスは蒼ノ一閃の一撃を飛んで躱し、さらに銃弾を叩き込む。翼は冷静に大剣を盾として使い、弾丸を防ぐ。

 

「何故弓を引く!雪音!!」

 

翼は大剣を刀に戻して、クリスに問いかけるが、彼女は何も答えない。

 

「その沈黙を、私は答えと受け取らねばならないのか!」

 

クリスは目を見開き、翼に接近する。翼は近づいてきたクリスに刀を振るい、斬撃を放つが、クリスは直前で飛んで回避し、弾丸を撃ち放つ。地に着地し、さらに弾丸を撃つ。翼は弾丸を全て躱し、クリスに刀を振り下ろす。クリスはその一撃を拳銃で受け止める。

 

「何を求めて手を伸ばしている!」

 

鍔迫り合いが崩れ、クリスはもう1つの拳銃で銃弾を撃ち放ち、翼はこれを回避する。さらに翼は身体を回転させ、再び刀を振り下ろす。クリスはその一撃を二丁拳銃で防ぎ、弾き返して拳銃を向ける。

 

「あたしの十字架を!他の誰かに負わすわけにはいかねえだろ!!」

 

「何・・・?・・・!!?」

 

翼はクリスの首に何やらチョーカーが着けられているのに気が付いた。チカチカと不穏気に点滅しているということは爆弾なのだろう。翼がそれに気を取られた瞬間にクリスは発砲する。翼は刀で防ぐが、力が込められておらず、後方に吹き飛ばされてしまった。

 

~♪~

 

一方の日和とフォルテの戦いは経験の差が大きく出ている。フォルテは大剣を分離し、双剣として扱い、日和に連撃を繰り出していく。日和は連撃を棍で何とか凌いでいくが、全てを防ぎきることはできず、至る所に傷ができる。日和は負けじと棍を振るって応戦するが、フォルテは飛んで躱し、逆に日和の棍の上に乗り、剣を振るおうとする。日和はフォルテを振り払おうと棍を振るう。フォルテはそれを想定に入れ、これも飛んで躱し、そして日和の顔に蹴りを入れて吹き飛ばす。吹き飛ばされた日和は一回転して地に着地する。

 

「フォルテさん!あなたは間違ってます!!」

 

「正しいか否かの問題ではない。重要なのは真なる平和を実現できるかどうかだ。セレナが望むは平和・・・争いのない世界だ!そのための手段など、選んでなどいられないのだ!」

 

フォルテは大剣を銃に変形させ、日和に向かってMammon Of Greedをマシンガンのように放つ。放たれたエネルギー弾を日和は走って避けつつ、棍をフォルテに向けて投擲する。棍は爆発したが、フォルテは爆発する前に即座に回転して躱していて無傷だ。

 

「手段の話じゃないんです!!本当にこんなことを、セレナちゃんが頼んだんですか!!?」

 

「!!」

 

「そうじゃないでしょ!!平和は人によって感じ方が違う!!その真なる平和はフォルテさんの平和であって、セレナちゃんの望む平和じゃない!!」

 

日和は右手首のユニットを回転して、新たな棍を取り出し、フォルテの頭目掛けて振るった。フォルテは双剣でその棍の一撃を受け止める。

 

「あるいはそうかもしれない。しかし平和は保証される。戦の種をなくすことでな。ならば僕はセレナのため、この命を捧げ、平和を確定のものとする!それこそが、僕に与えられた彼女への唯一の贖罪だ!」

 

フォルテは双剣で棍を払いのけ、日和に向けて右手の剣を振るう。襲い来る剣を日和は左手首のユニットより棍を一部射出し、それで剣を防ぐ。

 

「だからそうじゃないって言ってるでしょ!!フォルテさんのわからずや!!」

 

日和は左手を振るって剣を押しのける。そして射出した棍をユニットに引っ込めさせ、持っていた棍で横一閃に払う。フォルテは左手の剣で棍を防ぎきる。

 

~♪~

 

一方で調と切歌の戦いは均衡しあっている。お互いの戦い方をお互いが1番理解しているがために、どう攻撃してくるかもわかっているのだ。互角に戦えている理由がそれだ。

 

「切ちゃんが切ちゃんのままでいられるうちにって、どういうこと?」

 

ここで調が切歌の言葉の意味を問いかける。

 

「あたしの中に・・・フィーネの魂が覚醒しそうなんデス」

 

切歌の言葉に調は驚愕している。切歌は今も鮮明に覚えている。工事跡地で大量の鉄パイプが落ちてきて、謎の障壁で防いだ時のことを。

 

「施設に集められたレセプターチルドレンだもの・・・こうなる可能性はあったデス!」

 

「だとしたら、私はなおのこと切ちゃんを止めてみせる」

 

「⁉」

 

「これ以上塗り潰されないように、大好きな切ちゃんを守る為に!」

 

調は切歌を止める思いをより強くし、アームの丸鋸の回転をさらに速くさせる。切歌も鎌の先端を調に突きつける。

 

「大好きとか言うな!!あたしの方がずっと、調が大好きデス!!だから、大好きな人達がいる世界を守るんデス!!」

 

「切ちゃん・・・!」

 

2つのアームの丸鋸がプロペラに変形し、調の頭上と足元に移動することで、彼女の体を宙に浮かせた。

 

【緊急φ式・双月カルマ】

 

「調・・・!」

 

切歌も肩の左右のアームが変形し、左右に2つ、合計4つのアームに刃を展開させる。

 

【封伐・PィNo奇ぉ】

 

「「大好きだってぇ・・・言ってるでしょおおおおおお!!!」」

 

鋸と鎌の壮絶な火花の散らし合いが繰り広げられている。

 

~♪~

 

二課の潜水艦のハッチ、弦十郎と緒川は敵対する装者は3人の装者に任せ、自分たちはウェルを捕獲するために行動を開始し、ジープに乗り込む。

 

「世話のかかる弟子のおかげでこれだ」

 

「きっかけを作ってくれたと、素直に喜ぶべきでは?」

 

ハンドルを握る緒川の言葉に腕を組む弦十郎はふっと笑みを浮かべる。すると、指令室より通信が届いた。

 

『指令!』

 

「なんだ!」

 

『出撃の前に、これをご覧ください!』

 

取り出した二課のタブレットに、フロンティアのブリッジにいるマリアの映像が映しだされた。

 

『私は、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。月の落下がもたらす災厄を最小限に抑えるため、フィーネの名を語った者だ』

 

マリアはこの映像を世界に中継し、真実を語っていく。

 

『フロンティアから発信されている映像情報です。世界各地に中継されています』

 

『こんな時にF.I.Sは何を狙っているのでしょうか・・・?』

 

「・・・・・・」

 

通信越しで海恋の疑問の声が聞こえてきた。弦十郎は静かに映像を見つめ、悩むように眉をひそめた。

 

~♪~

 

時は、ナスターシャが通信越しでマリアに月の落下を阻止する情報を伝えるところまで遡る。マリアは自分の歌が月を止められる鍵だということに驚く。

 

「月を・・・私の歌で・・・?」

 

『月は、地球人類より相互理解をはく奪するため、カストディアンが設置した監視装置・・・。ルナアタックで一部不全となった月機能を再起動できれば、公転軌道上に修正可能です。・・・うっ!ごほぉっ!!」

 

ナスターシャは発作によって大量の血を吐きだした。それは音声のみでもわかるもので、もはや猶予がないのは明らかだ。

 

「マムっ⁉マム!!」

 

『・・・あなたの歌で、世界を救いなさい・・・!』

 

ナスターシャはかすれた声を出して、人類の未来を託した。

 

~♪~

 

そして現在に至る。マリアは中継を使って全世界の人間に自分の思いを伝える。

 

「全てを偽ってきた私の言葉が、どれほど届くか自信はない。だが、歌が力になるという真実だけは、信じてほしい!」

 

マリアは目を閉じて、詠唱を唄う。

 

Granzizel Bilfen Gungnir Zizzl……

 

漆黒のガングニールを身に纏い、マリアは全人類に告げる。

 

「私1人の力では、落下する月を受け止めきれない・・・だから貸してほしい!皆の歌を、届けてほしい!!」

 

この星の人類を救いたい・・・その強い思いを込め、マリアは歌う。

 

(セレナが助けてくれた私の命で、誰かの命を救って見せる。それだけが、セレナの死に報いられる!!)

 

マリアの歌に共鳴するように、ガングニールが赤く輝き始めた。

 

~♪~

 

世界を救おうとするマリアの歌が始まった時、二課の潜水艦のハッチが開く。

 

「緒川!」

 

「わかっています!この映像の発信源を辿ります!」

 

緒川はアクセルを強く踏み、ジープを発車して映像の発信源へと、向かっていく。

 

~♪~

 

響はマリアのいるブリッジに向かうため、フロンティアの中枢へと汗水たらして走っている。

 

(誰かが頑張っている・・・!私も負けられない・・・!)

 

すぐ近くで爆発が起きたが、響は目を向けず、ただただ前へと進む。

 

(進むこと以外、答えなんてあるわけがない!!)

 

マリアたちを助けるためにも、響は止まらず、前だけを見て突き進んでいく。

 

~♪~

 

一方、翼とクリスの戦いは未だなお続いている。クリスは翼に銃弾を撃ち続け、翼は全ての弾丸を刀で弾く。そこにクリスのヘッドギアからウェルの通信が聞こえる。

 

『こっちは面白いことになってますよ。わかってると思いますが、ちゃんと仕留めないと約束のおもちゃはお預けですよ』

 

ウェルのいう約束のおもちゃとは、ソロモンの杖のことである。どうやらクリスは二課の装者を仕留めることを条件にソロモンの杖を渡してもらうように取引したようだ。

 

(ソロモンの杖・・・!人だけを殺す力なんて、人が持ってちゃいけないんだ!)

 

ウェルの通信にクリスは焦りを生じさせる。そんな中でクリスのチョーカーがチカチカと点滅する。

 

(あれが雪音を従わせているのか!)

 

翼がそのチョーカーが危険なものであると勘づき、それがクリスを従わせていると理解した。

 

「犬の首輪をはめられてまで、何をなそうとしているのか⁉」

 

「汚れ仕事は、居場所のない奴がこなすってのが相場だ。違うか?」

 

クリスの言葉に、翼は小さく笑う。

 

「首根っこ引きずってでも連れ帰ってやる。お前の居場所、帰る場所に。東雲も西園寺も、お前を信じて待っている」

 

「・・・っ!」

 

翼の言葉にクリスは目を見開き、思わず顔をそむけた。

 

「お前がどんなに拒絶しようと、私はお前がやりたいことに手を貸してやる。それが、片翼では飛べぬことを知る私の・・・先輩と風を吹かせるものの果たすべき使命だ!」

 

翼は堂々とクリスと向き合い、そう宣言した。

 

(そうだったよね・・・奏・・・玲奈・・・)

 

(そうさ!だから翼のやりたいことは、あたしが、周りのみんなが助けてやる!)

 

(だから翼・・・あんたは堂々と胸を張っていいんだ!)

 

翼の心の中に、自分と共に戦い、道しるべとなってくれた奏と玲奈が映る。

 

「その仕上がりで偉そうなことを!!」

 

クリスは目に涙を溜め込み、叫んだ。すると、またもウェルからの通信が入る。

 

『戻ってくるまでにやっちゃってくださいよぉ?じゃないと、その首のギアスが爆ぜちゃいますよぉ?』

 

「・・・っ!」

 

ウェルは念入りの脅しをかけた。どちらにせよ、ウェルに従わざるを得ないクリスはまっすぐに翼を見据える。

 

「・・・風鳴・・・先輩・・・」

 

「!!」

 

クリスの口から出た先輩というワードに翼は反応する。

 

「次で決める!昨日まで組み立てて来た、あたしのコンビネーションだ!!」

 

「ならばこちらも真打をくれてやる!」

 

クリスは翼に拳銃を向けて弾丸を撃ち込み、二丁拳銃をボウガンに変形させる。翼は刀を大剣に変え、弾丸を躱し、蒼ノ一閃を放つ。蒼の斬撃でクリスの左手のボウガンは破損する。だが右手のボウガンで結晶の矢を撃ち放つ。矢は小型結晶となって分裂し、翼に迫る。翼はすかさず大剣で矢を防ぐ。さらにクリスは小型のミサイルを展開し、全弾発射する。

 

【MEGA DETH PARTY】

 

「はああああ!」

 

そして翼も上空で複数の剣を出現させ、迫ってくるミサイル目掛けて放った。

 

【千ノ落涙】

 

ミサイルと剣はぶつかり合い、空中で爆ぜた。その爆炎にクリスも翼も巻き込まれていった。

 

~♪~

 

時間は遡って、日和とフォルテの戦い。フォルテは日和が放つ棍の薙ぎ払いをバク宙で回避し、着地と同時に大剣を振るって日和を吹っ飛ばす。

 

「あああ!!」

 

吹っ飛ばされた日和は地面に転がる。日和はボロボロの状態だが、フォルテにはダメージがほとんど入っていない。明らかに差が出ている戦いだ。それでも日和はまだ立ち上がる。

 

「しぶといな。が、それももう終わりだ。僕はドクターを始末し、フロンティアの権利をこちらに移し、月の落下を防ぐ。残るべく人類も厳選し、そこから真なる平和へと発展するのだ。そのためにも・・・」

 

フォルテは大剣を構え、日和に近づいて大剣を振るった。日和はその攻撃を避けることが叶わず、大剣の斬撃をくらってしまう。

 

「1番の脅威である君たちを・・・1人残らず根絶やしにする」

 

大剣の手痛い一撃をもらい、日和は吹っ飛ばされる。だがその際に、日和はフォルテを見据えた。それを見たフォルテは目を見開いた。そしてその瞬間・・・

 

ドォン!!

 

「ぐぁっ!!?」

 

日和が右手首のユニットから棍を発射して、フォルテの腹部に打撃を与える。日和はダメージに耐えつつ、一回転して地に着地する。そして日和はフォルテに反撃の隙を与えないように、彼女に接近して2つの棍をヌンチャクにして、炎を纏った連撃を繰り出す。

 

【気炎万丈】

 

「フォルテさんは何もわかってない!!何のために、セレナちゃんがあなたを生かしたのか!!全然わかってない!!」

 

日和の繰り出す連撃にフォルテは反撃する暇もなく、ただただダメージを負っていく。

 

「セレナちゃんは平和を望んでるかもしれない!でもそれ以上に!!」

 

日和は片方の炎を纏わないヌンチャクを振るって、フォルテの頭に打撃を与え、脳を揺らした。ふらついた隙を逃さず、日和は2つのヌンチャクを棍に戻して連結し、棍を回してフォルテに突風の竜巻を放った。

 

「マリアさんたちに・・・フォルテさんに、生きてほしいと願ったはずです!!」

 

【疾風怒濤】

 

「ぐっ・・・ぐああああ!!」

 

フォルテは突風に耐えようとするが、至近距離であるため勢いが凄まじく、勢いのまま上空に放たれる。

 

「私にはわかる!!誰かを守りたいっていう思いが!!誰かに生きてほしいっていう願いが!!私も、この目で見たから!!私の友達の思いを!!友達の願いを!!だからセレナちゃんの願いがわかる!!」

 

日和は棍を上空に投げ、棍はドリルに形を変えて回転を始める。日和は棍の上まで飛び、ドリルに蹴りを入れ、フォルテ目掛けて突撃する。

 

【天元突破】

 

「友達に生きてほしいという願いは、何ものにも代えがたい・・・素敵な幸せで・・・真なる平和以上の価値があるものだからぁ!!!」

 

「ああああああああああ!!!」

 

フォルテはドリルに直撃し、ドリルと共に地に直撃し、2つの激突の板挟みになった。日和は棍からドリルから離れ、ドリルは元の棍に戻り、日和の手に戻る。

 

「フォルテさんに隙が生まれるのは難しくて、ほんの一瞬。そのほんの一瞬させ突けば、後は反撃を与えないように、大技を叩き込むだけ。後はその繰り返し・・・隙が生まれるまで、持久戦との勝負。調ちゃんが考えた戦法です!」

 

日和は元気に棍を振り回し、構え直す。大きくダメージは負ってるものの、まだまだ余裕そうだ。

 

「こう見えても私、持久戦は得意です!フォルテさんにわかってもらうまで、何度だって立ち上がって見せますよ!」

 

一方のフォルテはふらふらしつつも、何とか立ち上がる。日和の大技の連発でフォルテの身体はボロボロの状態だ。これを何度も繰り出されたら、自分に勝機はない・・・ゆえに持久戦はこの場において不利・・・彼女はそう察している。

 

「・・・僕に生きてもらいたい・・・それがセレナの願い・・・だと?」

 

「思い出してください。セレナちゃんが・・・どんな子だったのかを」

 

「・・・っ!」

 

日和に言われ、フォルテは迷い始めている。セレナが平和を望んでいるが、人が傷つくことを良しとしない優しい子だというのはわかっている。自分はそれとは真逆の行動をしている。日和の言葉でこれまでの自分を振り返り、後ろめたさを初めて抱いた。だが・・・そうでもしないと平和は実現できないとフォルテは割り切る。

 

「・・・例えそれが願いでも・・・僕たちはもう後には引けない!!後戻りなどできないのだ!!」

 

フォルテはそう叫び、大剣を地面に突き刺した。そして・・・自身の覚悟を解き放つ。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

「!!まさか・・・絶唱!」

 

Emustolronzen fine el baral zizzl……

 

そう、フォルテが今歌っているのは絶唱・・・それも、LiNKERの過剰投与をせずにだ。目的のために自分の命すらも顧みない・・・フォルテの覚悟がこの絶唱に込められている。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

「フォルテさん!!やめてください!!それじゃあ、セレナちゃんが悲しみます!!」

 

Emustolronzen fine el zizzl……

 

絶唱を歌いきると、フォルテは地に刺した大剣を抜いて構える。すると、フォルテの大剣は形を変えていく。

 

「ミスティルテインの絶唱はあらゆる生命を吸い取り、力に変える。数多の命から得た力の前に、何人たりとも、死を免れはしない」

 

大剣は黒く変色し、刀身も禍々しく鋭く変化する。そして、刀身より赤いエネルギーが帯び、フロンティアの大地の自然の命を吸い取っていく。生命を吸い取られた植物は枯れ果てていく。命を奪う絶唱・・・まさに魔剣と呼ぶにふさわしい力だ。そしてそれは、人間も対象で、日和は生命力が奪われ、力が抜けていく。

 

「うぅ・・・力が抜けていく・・・どうすれば・・・。・・・あっ!」

 

日和は何かを思い出し、武装の中から何かを取り出した。それは、ガンタイプの注射器だ。中に入ってあるのはLiNKERだ。これは、調から託されたものだ。日和は調の言葉とウェルの言葉を思い出す。

 

『いざという時に使って。そのLiNKERが・・・フォルテの命を繋いでくれるはず』

 

『適合係数がてっぺんに届くほど、ギアからのバックファイアを軽減出来ることは過去の臨床データが実証済み!!』

 

(・・・あんな状態じゃあもうこれはフォルテさんに使えない・・・。でも・・・適合係数?が高い私が使ったらどうなるの?)

 

日和は今とんでもないことを考えている。LiNKERという劇薬。それを適合係数が高い日和自身が使うというのだ。もちろん適合係数は今より上がるだろうが、何が起こるかなど未知数だ。

 

「・・・ええい!!今は副作用なんてどうだっていい!!一か八か・・・これに賭ける!!」

 

日和は副作用や後のことを顧みず、思い切ってガンタイプの注射器を首に当て、LiNKERを注射した。そして、超えた適語係数をどうにかするため、フォルテを止めるために、すぐに行動は始まった。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

Emustolronzen fine el baral zizzl……

 

日和がとった行動とは、絶唱を唄うことだ。ウェルの言うことが正しいならば、適合係数を越えた今ならバックファイアを軽減し、ダメージを負うことはなくなる。そして絶唱同士でぶつかり合うことで、相殺し、フォルテのバックファイアが防げるのではと考える。そんな保障は全くない。しかし今はこれに賭けたい・・・少しでも可能性があるのなら。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

Emustolronzen fine el zizzl……

 

絶唱を唄い切り、2つの棍は光だし、日和の両腕に身に纏い、巨大なガントレットに形を変える。日和はガントレットを装備した状態で拳と拳をぶつける。

 

「絶唱を放ったところで無駄だ!数多の命を喰らったミスティルテインの力は、万物を越えた!死ね!!」

 

「私は・・・死なないぃいいいいいい!!!」

 

フォルテは巨大な魔剣を日和に向けて振るい、日和は拳を振るい、魔剣を受け止める。金属同士の音が鳴り響き、大きな火花が散り、生じた光が2人を包み込む。ミスティルテインの射程範囲外で見ていたウェルはこの光景に歓喜する。

 

「いやっはーー!!願ったり叶ったりぃ・・・してやったりぃ!!」

 

ウェルのこの喜びは、日和とフォルテが絶唱によって倒れるのを確信したが故のものである。

 

~♪~

 

一方、調と切歌の戦いの均衡は続いている。調は丸鋸のアームを振るい、切歌は鎌で丸鋸を受け止め、さらに4つのアームの刃で追撃する。追撃を丸鋸で受け止めた調は丸鋸を鋭利な刃の車輪として展開する。

 

【非常Σ式・禁月輪】

 

切歌はそれを迎え撃つように、2つの鎌を重ね、高枝切りばさみのように形作る。

 

【双斬・死nデRぇラ】

 

切歌はアームを鎖のように放つ。調は鎖を躱し、車輪丸鋸を展開したまま切歌に突っ込む。切歌ははさみの鎌で車輪丸鋸を受け止める。調は技を解除し、アームより複数の丸鋸を切歌に放つ。切歌は2つの鎌を分離し、向かってきた丸鋸を次々破壊する。さらに切歌はこちらに向かってくる調に鎖を放つ。調は向かい来る鎖を次々と躱していく。鎌と鋸の刃のぶつかり合いは決め手に欠け、これではキリがない。

 

「切ちゃん・・・どうしても引けないの?」

 

「引かせたいのなら、力ずくでやってみせるといいデスよ」

 

切歌は調の足元にガンタイプの注射器を放り投げた。中に入ってあるのはLiNKERだ。

 

「LiNKER・・・!」

 

「ままならない想いは・・・力づくで押し通すしかないじゃないデスか」

 

そう言って切歌は自分の分のLiNKERを取り出し、自ら注射する。調も受け取ったLiNKERを自ら注射する。そして2人は唄いだす・・・命を燃やす歌・・・絶唱を。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

Emustolronzen fine el baral zizzl……

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

Emustolronzen fine el zizzl……

 

絶唱を唄い終えた切歌の鎌は柄が伸長し、刃も身長以上の大きさへと変形していく。

 

「絶唱にて繰り出されるイガリマは、相手の魂を刈り取る刃!わからずやの調から、ほんの少し負けん気を削れば!!」

 

対する調は両手足の装甲が大きくなり、丸鋸を四肢としてロボのように変形した。

 

「わからずやなのはどっち・・・!私の望む世界は、切ちゃんもいなくちゃダメ・・・!寂しさを押し付ける世界なんて・・・ほしくないよ!」

 

切歌は大鎌のブースターで調に接近し、大鎌を振るい、調は右腕のアーマーで振り払う。

 

「あたしが、調を守るんデス!!例えフィーネの魂に、あたしが塗りつぶされることになっても!!」

 

防がれようとも、切歌は大鎌のブースターで回転して、勢いをつけて再び調を襲う。

 

「ドクターのやり方で助かる人たちも・・・大切な人を失ってしまうんだよ!!?」

 

調はアームで受け止めようとしたが、大鎌の威力が上回り、アームが砕け散る。

 

「そんな世界に残ったって、私は二度と歌えない!!」

 

「でも、それしかないです!!そうするしかないデス!!例えあたしが・・・調に嫌われてもおおおお!!」

 

切歌は叫びながら大鎌を振るい、調のもう1本のアームを粉々に砕いた。

 

「切ちゃん・・・もう戦わないで・・・!私から、大好きな切ちゃんを奪わないでええええ!!」

 

切歌が大鎌を振るおうとし、調が両手をかざしたその時だった。調の手よりフィーネの障壁が張られる。大鎌はその障壁で弾き返される。

 

「えっ・・・?」

 

「何・・・これ・・・?」

 

突如として現れたこの障壁に切歌と調は困惑する。そして切歌はすぐに、この意味が理解できた。

 

「まさか・・・調・・・デスか・・・?フィーネの器になったのは調なのに・・・あたしは調を・・・?」

 

そう・・・本当にフィーネの器となっていたのは、調であり、工場跡地で障壁を張ったのも、気を失っていた調の方だったのだ。

 

「切ちゃん・・・?」

 

「調に悲しい思いをしてほしくなかったのに・・・できたのは調を泣かすことだけデス・・・」

 

自分自身の大きな勘違いによって、大好きな親友である調を傷つけたことに、切歌は自己嫌悪を示し、涙を流す。

 

「あたし・・・本当に嫌な子だね・・・消えてなくなりたいデス・・・」

 

切歌は手を動かし、大鎌を操って宙に高く浮かせ、勢いよく回転しながら自らの元へと向かった。その意味は・・・自らの命を絶つ。

 

「ダメ!!!切ちゃん!!!」

 

その意味を理解した調は切歌に近づき、突き飛ばす。

 

ズンッ!!

 

だが・・・その代償として・・・

 

「・・・調・・・?」

 

大鎌の刃が調の背中を貫いた。

 

調ええええええええ!!!!

 

切歌の悲痛な叫びが、フロンティアの空に響いた。




ミスティルテインの絶唱

フォルテが発動した絶唱は大剣が巨大化し、刀身もより鋭く禍々しくなり、赤い剣が黒く変色する。さらに、刀身に赤いオーラを漂わせ、ミスティルテインの許容範囲内にいる植物、大地、生物とありとあらゆる生命を吸い取り、力に変換する。そして絶唱の力と吸い上げた力を解き放ち、相手に強大な一撃を放つ。この絶唱は敵味方関係なく、許容範囲内に入る全ての生命を吸い上げ、さらに絶唱でバックファイアを引き起こすため、使用は禁じ手となっている。ちなみにノイズは自立型兵器であるため、生命がない。よってノイズはミスティルテインの対象外だ。
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