新たな幕開け
昔々・・・遠い昔・・・1人の少女がいた。
少女は、とある村で父と2人で暮らしていた。母はすでに亡くなっていない。それでも少女は父と楽しく暮らしていた。
父にはとある力がある。父は自身の力に誇りを持ち、その力を人のために使う。世界を知り、人々がわかり合える世界のために。
だが・・・運命とは残酷で、非情なものだ。
人々のために力を使う父。だが村人たちはその力を恐れた。村人たちは・・・父の成した全てを・・・『奇跡』と一括りにし・・・挙句の果てに悪魔の力だと罵った。
そしてある日・・・悪魔を浄化するために村人たちは、父を火刑に処した。まだ小さかった少女はあまりに無力で・・・目の前で父が焼かれてしまうことを、泣き叫ぶことしかできなかった。父は、娘にこう言った。
『世界を知るんだ』
それこそが、父が娘に託した、命題である。少女は・・・この出来事をきっかけに、人々を憎み、奇跡を忌み嫌うようになった。
「奇跡など・・・オレが殺す!オレは・・・奇跡の殺戮者だ!!」
人々を憎む少女の願いはただ1つ・・・父の命題を果たすこと。それ以外のことは、何も求めない。
そして・・・その命題を果たすという思いが今・・・世界に脅威を齎そうとしている。
戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌
GX編ー魔法少女事変ー
フロンティア事変と呼ばれる事件が終わって時が経ち・・・それは起きた。宇宙空間にて、国連調査団のスペースシャトルが任務を果たし、地球に帰還しようとしたところ・・・シャトルがシステムトラブルを引き起こし、コントロールを失ってしまった。それによって、適切な突入角を維持できない。この事態に、特異災害対策起動部二課はスペースシャトルの人間と、回収したものを救うために動き出す。
「現在の墜落予想地点、ウランバートル周辺、人口密集地です!」
二課の男性オペレーター、藤尭朔也がシャトルの墜落予想地点を伝える。
「安保理からの回答はまだか!」
赤いワイシャツを着込んだ大漢が安保理からの回答が来ていないか問いている。この大漢の名は風鳴弦十郎。特異災害対策起動部二課の司令を務めている漢だ。
「外務省、内閣府を通じて再三打診していますが、未だありません!」
弦十郎の問いに女性オペレーター、友里あおいが答える。モニターには通常ではありえない角度で大気圏に突入するシャトルがあり、断熱圧縮された空気が船体を加熱している。シャトルももう限界が近づいている。
「まさか、見捨てるつもりでは・・・」
再三の打診を黙殺され、藤尭はそのような考えに行きつく。
「ラグランジュ点に漂うフロンティアの一区画から、国連調査団が回収した異端技術と、ナスターシャ教授の遺体・・・」
「それが、帰還時のシステムトラブルなんて・・・!」
シャトルのシステムトラブルによって茶髪の黒服の男が冷や汗をかいている。彼の名は緒川慎次。特異災害対策起動部二課のエージェントを務めている男だ。そして、国連調査団が回収したものとは、フロンティア事変の名がつけられた島・・・フロンティアのその一部である制御区画にあった異端技術。そして、異端技術を用いて月の落下を凌いでみせた功労者・・・ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ、彼女の遺体である。指示がないため、ただ見守ることしかできないその時、安保理からのメッセージが届いた。
「承認下りました!安保理の規定範囲で、我々の国外活動。行けます!」
国外活動許可が出たことによって、二課は行動に移ることができる。その言葉を待っていた弦十郎は拳を手のひらに打ち付けた。
「よおおおし!!お役所仕事に見せてやれ!!藤尭ぁ!!」
「軌道計算なんてとっくにですよ!」
弦十郎の指示を受けて藤尭はパネルを操作して、二課の仮拠点であるこの潜水艦の装填されているミサイルをシャトルに向けて発射した。だがこのミサイルは、決して撃ち落とすためのものではない。
~♪~
宇宙の大気圏で加熱したシャトルを操縦している宇宙飛行士たちは諦めることなく、軌道修正を行っている。だが、損傷部が外部で、大気圏も突入しているのだ。復旧は不可能に近い。
「システムの再チェック!軌道を修正し、せめて人のいないところに・・・!」
「そんなのわかってますよ!!」
パイロットたちがせめて人手がいないところにと思い、シャトルを動かそうとする。だがシャトルのエンジンが爆発し、さらに危機に陥る。そして、シャトルの背後より、ミサイルが迫ってきたのが確認できた。
「ミサイル・・・!!?俺たちを撃墜するために・・・!!?」
「・・・致し方なしか・・・!!」
これも国の決定ならばと、年上のパイロットは覚悟を決めて目を閉じる。そこに・・・
『へいき!へっちゃらです!』
「「!!」」
突如として少女の通信が聞こえてきて、パイロットたちは驚愕する。
『だから、生きるのを諦めないで!!』
二課から発射されたミサイルは宇宙に到達すると同時に、外装がパージされた。分解したミサイルより、インナースーツのような鎧を身に纏った少女4人が現れる。少女たちがに身に纏った鎧は、特異災害と認定された自立型兵器、ノイズと対抗するための聖遺物。それを基にして作られたアンチノイズプロテクター、シンフォギアだ。そして今4人の少女の中で、パイロットたちに通信を入れた栗毛髪の少女の名は立花響。特異災害対策起動部二課の一員で、橙色のシンフォギア、ガングニールを身に纏う装者だ。赤いシンフォギアを身に纏う少女は大型ミサイルを2つ展開し、青いシンフォギアを纏った少女、さらに響がミサイルに乗り込む。2人が乗ったのを見計らい、2つのミサイルはシャトルに向けて発射された。
「まるで、雪音のようなじゃじゃ馬っぷり!」
青いシンフォギアを身に纏った青い長髪の少女は大型ミサイルをサーフボードのように乗りこなしている。この少女の名は風鳴翼。特異災害対策起動部二課のシンフォギア装者で青いシンフォギア、天羽々斬の装者だ。そして、弦十郎の姪っ子で、響たちの先輩である。
「だったら乗りこなしてくださいよ、先輩!」
大型ミサイルを放った銀髪の少女も大型ミサイルに乗り込み、仁王立ちで立っている。少女の名は雪音クリス。同じく特異災害対策起動部二課のシンフォギア装者で赤いシンフォギア、イチイバルの装者だ。翼の後輩で、響の先輩、そしてもう1人の少女の同級生だ。
「まったく、無理難題を言ってくれるよね、クリスは!」
クリスと同様に、後から大型ミサイルに乗り込んだ茶色のシンフォギアを身に纏った黒い短髪の少女がバランスを取りながらそう言い放つ。この少女の名は東雲日和。同じく特異災害対策起動部二課のシンフォギア装者で茶色のシンフォギア、如意金箍棒の装者だ。響の先輩で、クリスと同級生、そして翼の後輩である。
「立花!東雲!」
「「はい!」」
響と日和、翼はシャトルに乗り込み、シンフォギアのブースターを点火して、シャトルを減速して、軌道修正を行う。
『装者取り付きました!減速を確認!』
『墜落地点再計測!依然、カラコルム山渓への激突コースにあります!』
装者たちが何とか軌道修正を試みている。何とか軌道はずれたものの、シャトルの軌道上の激突は依然免れない。
~♪~
シャトルを何とか食い止めるために装者たちが動いている姿を外務省の人間も見ている。そして・・・一時的にフロンティア事変の肩を担ぎ、事件を引き起こした米国聖遺物研究機関、F.I.Sのレセプターチルドレンたちの面々も見守っている。
「マムを・・・」
「お願いするデス・・・」
「「・・・・・・」」
囚人服を着込んでいるレセプターチルドレンの面々は、装者たちに全てを託し、育ての母であるナスターシャの遺体が無事であるのを祈るのであった。
シャトルに乗り込んだ装者4人は各々の方法でシャトルの減速を試みる。クリスは展開したミサイルでブースター代わりにし、響は脚部のアンガージャッキで体を固定し、バンカーユニットを展開し、ブースター代わりにする。翼は2つの刀をシャトルに突き刺し、脚部のブレードを展開して巨大化させてブースター代わりにし、日和は尻尾の機械装飾に備わった棍を展開してシャトルに突き刺して固定し、2つの棍を固定、回転させて竜巻を発してブースター代わりにする。4人の装者の尽力によって大気圏を突破できたが、カラコルムを越えるには高さが依然足りない。
『シャトルの減速間に合いません!カラコルム山渓を越えることは不可能です!』
『何とか船内に飛び込んで、操縦士だけでも・・・!』
通信で緒川がシャトルのパイロットたちだけでも救ってほしいとの声が聞こえた。
「それじゃマムが・・・」
「帰れないじゃないデスか・・・!」
「くっ・・・ここまでなのか・・・!」
「・・・っ!」
このままではナスターシャが帰ってこれないかもしれない可能性に、レセプターチルドレンの面々は悔しさが募る。
『そいつは聞けない相談だ!』
そこにクリスがその指示は聞けないという声が上がってきた。その声にレセプターチルドレンの面々は驚愕する。
『人命と等しく、人の尊厳は守らなければならないもの』
『ナスターシャ教授が世界を守ってくれたんですよ?なのに、帰ってこれないなんておかしいです!』
『何がなんでもナスターシャ教授は救います!人が亡くなったらから後はどうでもいいなんて、納得できないですよ!』
響たちは何が何でもナスターシャを救おうと頑張るつもりだ。死んでいようがいまいが関係ない。
「どこまでも・・・」
「欲張りですよ・・・」
「だが僕たちは、その心に救われたんだ・・・」
「ちくしょう・・・敵わないわけだ・・・」
響たちの想いを聞いて、レセプターチルドレンたちは涙を溜めながら、その心に嬉しさを感じている。
~♪~
大気圏は突入しても、このままでは激突は免れない。
「もう・・・!」
若いパイロットが諦めようとした時、熟練パイロットが彼の手を取る。
「燃え尽きそうな空に、歌が聞こえてくるんだ!諦めるな!」
熟練パイロットが若いパイロットに勇気づける。しかし、状況は変わらない。
『K2への激突コース、避けられません!』
『直撃まで、1キロを切りました!』
目の前に山脈が迫ってきた。もうコースの軌道修正ができないならば・・・
「行くぞ相棒おおおおおお!!」
「よっしバチコーイ!!」
クリスが日和に向かって走り出し、彼女の身体に飛びつき、日和はクリスを受け止め、しっかりと彼女を固定する。そしてクリスの腰部の装甲を変形させ、6つのミサイルを展開する。
【MEGA DETH SYMPHONY】
発車された6つのミサイルは空中で分解し、散弾のように山脈に直撃し、爆発する。
「ぶん殴れぇ!!!」
「行こう、響ちゃん!!」
「ええええ!!?」
クリスが離れ、日和は響に声をかけてシャトルを飛び出す。何が何だかわからない響は日和についていき、彼女と共に行動を起こす。日和は棍を投擲し、棍をドリルに変形させる。日和はドリルに向けて蹴りを放ち、山脈に向けて突撃する。
【天元突破】
響もそれに合わせて拳を構え、フルパワーで山脈をぶん殴る。2人の力によって、山頂は一瞬だけ宙に浮き、その間をシャトルが通過する。激突は免れた。
『K2の標高、世界三位に下方修正!』
『不時着を強行します!』
第1関門の大気圏、第2関門の山脈を突破し、最終関門の不時着が開始される。シャトルが山肌を滑走し、加速しながら山を下っていく。目の前に立ちはだかろうとする森林を前に翼は刀を構える。刀の刀身は伸びていき、巨大な大剣へと変形する。巨大な大剣はシャトルの滑る勢いに合わせ、森林をバッサリと切り裂いていく。森林を突破し、次は渓谷地帯に突入する。目の前の岩の障害物は日和は棍を岩に向けて伸ばし、打撃を与えることで躱す。岩が逸れたのも束の間、新たな岩が立ちふさがる。
「響ちゃん、左をお願い!!」
日和に反応し、響が岩に拳を叩きつけて粉砕して、さらに軌道を変える。目の前の小岩の障害物をクリスがミサイルで破壊しながらシャトルは滑走していく。
「この調子でふもとまで行ければ!」
「!!?やばい!!」
「へ?」
余裕綽々な様子だったが、切羽詰まったクリスの声を聞いて日和と響は前を見る。
「村が!!?」
前方には村があり、シャトルが村に激突するのは免れない。被害を最小に抑えようと響と日和が前に出る。
「バカ!!?」
「何を!!?」
響は向かってきたシャトルを両手で受け止め、足で踏ん張る。そんな響を日和が支え、尻尾先端にある棍を突き刺し、ブースターを起動して減速を試みる。幸いのことに、進行先は村の大通りだったために被害は最小限に抑えられる。
「立花ああ!!」
「相棒!!」
『南無三!!!?』
進路の先には講堂があり、このままではぶつかり、シャトルどころか2人も無事では済まないだろう。もう少しで講堂にぶつかる寸前で響はバンカーユニットを地面に撃ち放ち、身体を固定させることでシャトルをスープレックスのように投げ放った。シャトルは講堂の屋根を越えていく。だがまだ飛距離が足りない。そこを若いパイロットが最後の力を振り絞り、シャトルを操作してジェット噴射をかけることによって講堂のすぐ後ろに直立することに成功する。翼はシャトルに刀を突きさして固定させ、クリスの手を握ることで2人は落ちずに済んでいる。
「たは~・・・」
「任務、完了しました」
無事任務が完了したことに二課の面々は喜び、独房にいるレセプターチルドレンたちもナスターシャが無事で喜びで満たされていることだろう。
「無事か!立花、東雲!」
一緒に倒れ伏している2人に翼とクリスが駆け付ける。
「「ふふふ・・・あははは!」」
2人は翼の問いには答えず、お互いに笑いあっている。
「おかしなところでもぶつけたか・・・?」
「私・・・シンフォギアを纏える奇跡が、嬉しいんです!」
「私も・・・シンフォギアを纏えてよかったと、心から思えるんです!」
笑いながら答える響と日和に翼は笑みを浮かべ、クリスは苦笑いを浮かべる。
「お前ら・・・本当のバカだな」
だがそれでもクリスは嬉しそうにしながら、2人に向けてそう言い放った。
~♪~
シャトルの事件より3ヶ月の時が流れ、特異災害対策起動部二課は国連の総意で解体され、国連直轄の部隊に再編された。その名も、国連所属の超常災害対策機動部タスクフォース・・・通称、『S.O.N.G 』。幸いにも編成は、二課にいたメンバーと全く変わらない。
「はい、温かいものどうぞ」
シャトルの一件の情報整理をする藤尭に友里が温かい飲み物を差し出す。
「温かいものどうも。珍しいね」
「一言余計よ」
藤尭は温かい飲み物を受け取り、一口すすった。
「シャトル救出任務から、3ヶ月になるのね・・・」
「あの事件の後、二課は国連直轄のS.O.N.Gとして再編され、今は世界各国の災害救助が主だった任務・・・。このまま大きな事件もなく、定年まで給料もらえたら万々歳なんだけど・・・」
ヴゥー!ヴゥー!
藤尭がそう口にすると、突如としてアラームが鳴り響いた。すぐに友里は自分のモニターを確認する。
「横浜港付近に未確認の反応を検知!」
未確認反応を確認するも、その反応はすぐに消えてしまった。
「消失・・・!!?急ぎ、司令に連絡を!」
「了解!」
この反応を見て友里はすぐに弦十郎に連絡を入れようと動き出す。
~♪~
未知の反応があった横浜港付近・・・そこにローブを羽織った人物が何かを抱え、何かに逃げるように走っていた。その人物の足元に、何か弾丸のようなものが打ち込まれる。ローブの人物は足を躓きつつも、公衆電話に隠れる。
(ドヴェルグ=ダインの遺産・・・全てが手遅れになる前に、この遺産を届けることがボクの償い・・・)
ローブの人物は抱えていたものを持って、再び逃げ出す。そんな人物の姿を、月をバックにポーズを決めたディーラー風の女性が捉えた。
「私に地味は似合わない・・・。だから・・・次は派手にやる」
ディーラーの女性がそう口にした時、その後ろにいたカウガール風の女性が持っていた拳銃のようなものを回転させる。
「そういうことなら・・・こっちも、クールに決めさせてもらうぜ?」
カウガール風の女性は、ローブの人物を見据えながら、拳銃でカウガール帽子をくいっと上げた。
~♪~
リディアン音楽院・・・そこは、音楽教育を中心にしたカリキュラムを特徴としており、日和たちはこのリディアンの生徒である。季節は夏の炎天下・・・そんな中でリディアンの校門では、生徒会や風紀委員があいさつ運動として校門の前に立ち、登校してきた生徒たちに挨拶をしている。その風紀委員の一員である水色髪の三つ編みポニーテールの少女も、あいさつ運動に参加している。
「おはようございまーす」
「はい、おはよう」
この水色髪の三つ編みポニーテールの少女の名は西園寺海恋。日和の親友でリディアン音楽院に通う生徒で、風紀委員に属している。そんな海恋があいさつ運動をする中、とっても珍しい光景が映っている。
「お・・・はよ・・・う・・・ござ・・・zzz」
風紀委員でも生徒会でもない日和が何と朝のあいさつ運動に参加している・・・のだが、今にも眠ってしまいそうな勢いだ。
「ちょっと日和!何寝ようとしてるのよ!しっかりしなさいよ!」
「だってぇ~・・・眠いだもん・・・」
日和の言い訳に海恋は日和を睨み、彼女の頬を触れてもみくちゃする。
「あのね!あんたが先輩らしいことしたいって言うからわざわざ生徒会に頼んであんたもあいさつ運動に参加させてあげてるんじゃない!それなのに何それ?それが先輩の威厳だとでもいうの?」
「
海恋が日和と戯れていると、学生服を着込んだクリスが2人の少女を連れて登校してきた。
「うおっ・・・マジで参加してやがる・・・こりゃ明日槍でも降るんじゃねぇか・・・?」
「クリスひどぉ~い・・・」
日和があいさつ運動に参加していることに、クリスは少なからず驚いている。
「ああ、クリス、おはよう」
「おう、おはよーさん」
海恋は日和の頬をもみくしゃしながら2人の少女にも顔を向ける。
「月読さんも暁さんも、おはよう」
「おはようございます、海恋先輩」
海恋に挨拶された黒髪ツインテールの少女は礼儀正しく挨拶する。この少女の名は月読調。かつては響たちと敵対していたF.I.Sのレセプターチルドレンの1人である。レセプターチルドレンたちはフロンティア事変の後、響たちと和解し、罪を償うために独房に入っていたのだが、今年になって仲間と共に釈放され、こうして普通の生活を送れている。
「ひよりん先輩も、おはよーデース!」
調の隣にいる短い金髪の少女は日和に向けて元気いっぱいに挨拶する。この独特な口癖を持つ少女の名は暁切歌。調と同じくレセプターチルドレンの1人で、調の親友だ。会話でわかるとおり、調と切歌は今年からこのリディアンに入学し、日和たちの後輩にあたる。
「しぃちゃん・・・切ちゃん・・・おは・・・よ・・・」
日和は眠そうにしながらも2人に挨拶をする。ちなみに、日和の言うしぃちゃんとは調のことである。
「たく・・・しっかりしてくれよ相棒。お前がそんなんじゃ、先輩として示しがつかねぇだろ・・・む!」
クリスが日和に声をかけていると、何やら邪な何かを感じ取った。それはすぐにこちらに迫ってきた。
「ク~リスちゅわあぁ・・・ぶへっ!!?」
響がクリスの背後から彼女に抱き着こうとした時、クリスは響の後頭部に鞄を振り下ろして打撃を与えた。
「相変わらずねぇ・・・あなたたち・・・」
「あたしは年上で、学校では先輩!こいつらの前で示しがつかないだろ」
響が頭をさすっていると、彼女と一緒に登校してきている短い黒髪で後ろ髪に白いリボンを付けた少女は調と切歌に挨拶をする。
「おはよう、調ちゃん、切歌ちゃん」
この少女の名は小日向未来。リディアンに通う生徒で、響の親友である。
「おはよう、ございます」
「ごきげんようデース!!」
「暑いのに相変わらずね」
どこでも仲良しな調と切歌に未来が感心する。すると響と未来は調と切歌が手を繋いでいることに気がついた。
「いやぁ・・・暑いのに相変わらずだね」
「いやいやそれがデスね・・・調の手はちょっとひんやりするのでついつい繋ぎたくなるのデス」
切歌が照れくさそうにそう説明していると、調は切歌の二の腕をつまむ。
「そういう切ちゃんのぷにった二の腕も、ひんやりしてて癖になる」
「それ、本当なの!!?」
調の説明に未来が食いつくように反応し、確かめるために彼女は響の二の腕をつまんできた。
「いや~~!やめて止めてやめて止めてあぁ~!」
響はあまりのくすぐったさに笑いを浮かべつつ大声を上げる。その様子を見たクリスは顔を真っ赤にしてバッグで響の背中を叩いた。
「そういうことなら家でやれ・・・」
「家ならいい・・・ていう問題じゃないんだけどね・・・」
クリスの発言に海恋は日和の頬をもみくちゃにしつつも呆れている。今年はいろいろめでたいことばかりだ。まず、リディアンの生徒だった翼は今年で卒業し、トップアーティストとして海外で活動するようになった。そして、今年になって調と切歌の入学。さらに、響と未来が進級し、2年生になる。そして・・・日和、海恋、クリスの3人は、最上級生の、3年生に進級したのだ。
日和の誕生日
本日は日和の誕生日・・・ということで、本日は3年生の少数のメンバーが咲の家でパーティをすることに。
クラスメイト「ひよりん!誕生日おめでとー!!」
日和「わー!みんなありがとう!すっごくうれしいよ!」
咲「よかったわね、日和。ほら、私からの誕生日プレゼント」
日和「わ!ありがとうお姉ちゃん!これほしかったんだー」
小路「私たちもプレゼント用意したよ」
乙女「ひよりん、よかったらこれ使ってね」
由貴「大事にしないと怒るぞー」
日和「みんなありがとー!全部大事に使うよ!」
日和がクラスメイトたちに囲まれている中、クリスは包みを抱えて照れくさそうにしている。
海恋「いつまでくよくよしてるのよ。ほら、次はクリスの番よ」
クリス「お、おい!や、やめろ!」
日和「あ、クリス!クリスは何か用意してくれたの?あるならちょうだい!」
クリス「はぁ・・・なんてがめつい奴なんだ・・・。・・・ほら、一応誕生日だしな。くれてやるよ」
日和「わ、中身なんだろう・・・?わー!かわいい手袋!」
クリス「た・・・たまたまよさげなものがあったから・・・それで・・・」
海恋「よく言うわ。編み物、私から学ぼうとしてたくせに・・・」
クリス「ば、バカ・・・!!」
日和「え!!?これ手作りなの!!?ありがとうクリス!!絶対に大事にするから!!」
クリス「ちょ・・・くっつくなぁ!!」
海恋「最後は私ね。日和、誕生日おめでとう」
日和「ありがとう海恋!・・・あ!新しいうさ耳リボンカチューシャ!かわいいー!」
海恋「あなたそれがないとやる気が起きないでしょ?そのリボンももうだいぶ古くなってきたし、ちょうどいいと思ったのよ」
日和「海恋~!本当にありがとう!!私、とっても嬉しい!!」
海恋「古いのよりも長く使いなさいよ?」
日和「もちろん!みんな・・・私のためにありがとう!私・・・生きていて本当によかった!!」
日和(本当は小豆と玲奈もこの場にいてほしかったけど・・・2人に救われた命だもんね。2人の分まで、ちゃんと生きなきゃ・・・。そういう約束だからね)