日和が病院で診察に行っている間の時間、特異災害対策起動部二課では定例ミーティングが開こうとしている。この場には二課の人間が集まっているが、響がまだ来ていない。
「遅くなりました!すみません・・・」
ほんの少し待っていると、ようやく響が到着した。到着した響は了子に頭を下げる。ちなみにこのミーティングの件は日和はまだ二課の人間ではないので知れ渡っていない。
「では、全員揃ったところで、仲良しミーティングを始めましょ♪」
響は翼に視線を向けるが、翼は目をつむってドリンクを飲んで、見向きもしない。モニターにはこの1か月で発生したノイズの発生場所をマーキングしたマップが映し出される。弦十郎は響にこれについて質問する。
「どう思う?」
「・・・いっぱいですね!」
「はっはっは!まったくその通りだ。これは、ここ1か月にわたるノイズの発生地点だ。ノイズについて、響君が知っていることは?」
弦十郎に質問されて、響は自分の知っている範囲でノイズについて答える。
「テレビのニュースや学校で教えてもらった程度ですが・・・まず無感情で、機械的に人間だけを襲うこと、そして襲われた人間が炭化してしまうこと、時と場所を選ばずに突然現れて周囲に被害を及ぼす特異災害として認定されていること・・・」
「意外に詳しいなぁ」
「今まとめてるレポートの題材なんです」
弦十郎に褒められて響は照れくさそうに笑みを浮かべている。
「そうねぇ。ノイズの発生が国連での議題に上がったのは13年前だけど、観測そのものはもーっと前からあったわ。それこそ、世界中の太古の昔から」
「世界各地に残る神話の伝説に登場する数々の偉業はノイズ由来のものが多いだろうなぁ」
「ノイズの発生率は決して高くないの。この発生件数は誰の目から見ても明らかに異常事態・・・だとすると、そこに何らかの作為が働いていると考えるべきでしょうねぇ」
「作為・・・?てことは、誰かの手によるものだというのですか・・・?」
発生率が低いはずのノイズが最近多くなってきている件・・・それが人間の手によるものではないかと尋ねる響。
「中心点はここ、私立リディアン音楽院高等科・・・我々の真上です。サクリスト・D・デュランダルを狙って何らかの意思がこの地に向けられている証左となります」
「あの・・・デュランダルっていったい・・・」
初めて聞く名前を聞いて、響が尋ねる。
「ここよりもさらに下層、アビスと呼ばれる最深部に保管され、日本政府の管理下にて我々が研究しているほぼ完全状態の聖遺物、それがデュランダルよ」
「翼さんの天羽々斬、日和ちゃんの如意金箍棒、響ちゃんの胸のガングニールのような欠片は奏者が歌って、シンフォギアとして再構築させないとその力を発揮できないけれど、完全状態の聖遺物は一度起動した後は100%の力を常時発揮し、さらには、奏者以外の人間も使用できるであろうと、研究の結果が出ているんだ」
「それがぁ、私が提唱した櫻井理論!だけど完全聖遺物の起動には、それ相応のフォニックゲイン値が必要なのよねぇん」
「?????」
完全聖遺物についての説明を聞かされたが、響には理解が全然追いついていない。
「あれから2年・・・翼の歌であれば、あるいは・・・」
弦十郎が完全聖遺物についての可能性を口にした時、翼の表情が曇った。
「そもそも、起動実験に必要な日本政府からの許可って下りるんですか?」
「いや、それ以前の話だよ。安保を盾に、アメリカが再三のデュランダル引き渡しを要求してきているらしいじゃないか。起動実験どころか、扱いに関しては慎重にならざるをえまい。下手撃てば国際問題だ」
「まさかこの件、米国政府が糸を引いてるなんてことは・・・」
「調査部からの報告によると、ここ数か月の間に数万回に及ぶ本部コンピューターへのハッキングを試みた痕跡が認められているそうだ。さすがにアクセスの出所は不明・・・それを短絡的に米国政府の仕業とは断定できないが・・・もちろん痕跡は辿らせている。本来こういう時こそ、俺たちの本領だからなぁ」
オペレーターたちが起動実験について話していると、翼が目を閉じて紙コップを握りつぶしている。それを横目で見た響は顔を俯かせる。
「風鳴指令」
すると、二課に所属する黒服の男が弦十郎に声をかけた。
「そうか、そろそろか」
「今晩は、これからアルバムの打ち合わせが入っています」
「へっ?」
二課にはあまり似つかわしくない単語に響はきょとんとした顔になる。
「表の顔では、アーティスト風鳴翼のマネージャーをやっています」
茶髪の黒服の男、緒川慎次は黒縁メガネをかけ、響に名刺を渡す。
「ふおぉぉぉ!名刺をもらうのは初めてです!これはまた結構なものをどうも!」
名刺を初めてもらう響は目を輝かせ、若干興奮する。この場に日和がいれば、もっと興奮していたであろう。いや、後で羨ましいと騒ぐであろう。翼と緒川は指令室から退室していった。
「私たちを取り囲む脅威はノイズばかりではないんですね。どこかの誰かがここを狙っているだなんて、あんまり考えたくありません」
「大丈夫よ。なんてったってここは、テレビや雑誌で有名な天才考古学者、櫻井了子が設計した人類守護の砦よ?先端にして異端のテクノロジーが悪い奴らなんか寄せ付けないんだから♪」
「よろしくお願いします」
本日のミーティングは翼がアーティストの仕事へ向かったためにここまで。現段階でわかっているのは、ノイズの発生率は異常事態、それを引き起こしたのは人の意思によるものであるというだけであった。
~♪~
翌日のリディアン音楽院・・・午前の授業を終わらせ、昼食も済ませて日和は今日もクラスメイトたちと一緒にセッション・・・
「できるわけないでしょ?そのレポート、提出は放課後までなんだから」
「うぅ・・・人類は呪われてるぅ~!!」
「ほらほら、バカなこと言ってないでさっさと書いちゃって」
・・・しているわけでなく、日和だけがレポートを書き忘れているため、こうしてレポートを書いているのだ。ちなみにレポートの題材はノイズに関してである。
「ま、日頃から勉強も両立できてないツケが回って来たね」
「え?手伝ってくれないのぉ?」
「あたしらも部活の練習があるから・・・悪いけどさ。海恋ちゃんはどうする?」
「私は残るわ。1人残してちゃ、絶対にレポート完成できないでしょうし」
「海恋~!海恋だけだよ~、私のことを思ってくれるのは~!」
クラスメイトたちに手伝ってもらえず、ショックを受けたが海恋が手伝ってくれると聞いて、日和は感動している。
「いやぁ~、相変わらずお熱いことで♪じゃあ、私たちはこれで。ひよりん、明日はちゃんとセッションしようね~」
「うん、もちろんだよ。また明日~」
クラスメイトたちは日和の邪魔にならないように、この教室から退室した。
「海恋、いつもありがとう。昨日迷惑かけたばっかりなのに」
「何よ・・・今更でしょ?」
「あぁ・・・それから・・・放課後、ちょっとだけ相談に乗ってもらえるかな?」
「相談?」
「うん。ダメ・・・かな?」
申し訳なさそうな表情をしている日和を見て、海恋はほんの少しため息をこぼす。
「はぁ・・・いいわよ。あんたがしおらしいと、こっちも調子でないし」
「ありがとう海恋~」
「ほら、口より手を動かして。間に合わなかったら先生の大目玉よ」
「は、はいぃ~!」
日和は海恋に小言を言われながらも手伝ってもらい、脳みそをフル回転させながら課題に取り組むのであった。
~♪~
海恋の手伝いが功を制して、何とか放課後までにレポートを完成させ、期限に間に合った日和。レポートの制作の疲れをリディアンの学生寮で癒す日和。
「はぁ~・・・つっかれたぁ~・・・」
「お疲れ様。はい、今日のご褒美」
「わぁ、ジュースだぁ。ありがとう~」
地面の床の冷たさを堪能している日和に海恋はジュースを手渡す。
「・・・それで?相談って何?1か月の事と関係してる?」
「あ・・・うん。まぁ、ね。実は・・・私の知り合いの話なんだけどね・・・」
相談事の話になり、日和は自分のことを知り合いのことだと差し替えて、ジュースを飲みながら1か月前のことを話す。もちろん、シンフォギア、二課の単語は出さずにだ。
「あの子、大手企業にちょっとしたスカウトが来たんだ」
「へぇ、すごいじゃない」
「でも・・・その企業の仕事内容が、ちょっとハードすぎてね・・・。それで、その子が企業に入るべきかどうかって悩んじゃって・・・。しかも、一緒に働く子も、ちょっと問題が起こっちゃって・・・それで・・・その子を叩いちゃったんだって・・・。なんか、友達をバカにされたような気がしてってさ・・・」
「なるほどねぇ・・・それでその子にどう声を掛けたらいいかわからないってわけね」
日和が抱え込んでいる悩みを理解した海恋は少し頭を抱えた。どうしてもっと早く相談してくれなかったんだと言わんばかりに。
「その子・・・ちゃんと謝りたいって・・・思ってるんだけど・・・なかなか踏ん切りがつかなくって・・・気が付いたら、1か月も立っちゃって・・・。・・・ねぇ、海恋・・・その子はどうしたらいいと思う?」
「・・・逆に、あんたはその子にどう声をかけたいわけ?」
「え?」
日和の悩みを理解した海恋の問いかけに、日和はきょとんとなる。
「話を聞くにその子は謝りたいって気持ちはあるんでしょ?だったら、あんたが背中を押してやればいい。その子にあんたの思うことをきちんと話して、少しでも勇気づければいい。もちろん理解してもらえないかもしれないけど、それでも、話し合うことに関しては、無駄にはならないと思うわよ。だって・・・私たちは人同士よ?ノイズとは違う。話し合えば・・・きっと解決の糸口が、見つけられると思うから」
「あ・・・」
海恋の言葉を聞いて、日和は、今自分が成すべきこと、やらなければならないことを、見つけた。今日和がやりたいことは・・・響に直接謝らなければいけない。そして・・・二課の人間と、もう1度話をしなければいけないことだ。
「・・・ありがとう、海恋。私・・・やるべきことが見えたかもしれない!」
「お役に立てたなら、何よりだわ」
久しぶりに見た日和の心からの満面の笑みを見て、海恋は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「私・・・立花さんを探してくる!!」
「えっ!!?今から!!?ていうか立花さんって!!?」
日和は響に謝ろうとすぐに行動をとろうと部屋から出ようとする。だが、その途中で止まった。
「・・・どうしたの?」
「・・・立花さんって、どこに住んでるんだろう?」
響の住所も知らないという響を探す以前の問題であった。それを聞いた海恋はずっこける。
「はぁ・・・立花さんって、立花響さんであってる?風紀委員の仕事で生徒の資料は一通り確認したけど・・・」
「そうそうその子その子!いやぁ、よかった~、立花さんがリディアンの生徒で」
「ていうか、あんたいつ立花さんと知り合ったのよ?」
「えっ!!?あー・・・うん、たまたまだよ!たまたま会ってさ!」
「ふ~ん、あっそ」
いつ響と知り合っていたのかと尋ねられ、日和は妙にはぐらかす。海恋はそれを日和の気まぐれだと考えることにする。
「立花さんもこの学生寮に住んでるわよ。ルームメイトは確か・・・小日向未来さんだったかしら?」
「わかった!行ってくる!!」
「あ、ちょっと!!」
響が住んでいる場所が判明し、日和はさっそく響の部屋へと向かうために自分の部屋を出ていった。
「・・・まったくもう・・・しょうがないわね」
日和には呆れつつも、元の日和に戻ったと思い、海恋は今回の日和の行動を大目に見ることにした。
~♪~
部屋から出たはいいものの、当然ながら日和は響の部屋がどこにあるのかは知らないため、この寮に住んでいる1年生から部屋の場所を聞いて、その場所へと向かった。教えてもらったことを頼りにして、十数分で立花響と小日向未来のネームプレートを見つけた。
「ここが立花さんの部屋・・・」
日和は響の部屋を前にして、緊張している。日和は少しでも緊張をほぐすために深呼吸をする。
「すぅー・・・はぁー・・・よし!」
日和は響にきちんと謝ろうという覚悟を決め、部屋のドアを3回ノックする。しばらく待っていると、ドアの扉が開いた。扉から出てきたのは黒い短髪で白いリボンを結んだ少女だった。彼女を見た日和はまずは自己紹介をする。
「あ、どうもこんばんは!私、東雲日和っていいます!立花さんとは最近知り合った2年生です!」
「は、はぁ・・・」
扉を開けてみれば突然自己紹介をしてきた日和を見て、少女は変わった人だなぁと心の中で思った。
「あの・・・響に何かご用ですか?」
「うん。ちょっと話したいことがあるんだけど・・・お時間いいかな?あ、違うよ?そっち系とかの話とかじゃないよ?」
「そ、そっち系?よ、よくわかりませんけど・・・今響はいませんよ。何か外せない用事があるって言って・・・多分外にいるんじゃないでしょうか?」
「そ、そっかぁ・・・」
響が今この部屋にいないとわかった日和は少し残念そうな顔になる。
「・・・流れ星、一緒に見ようって言ったのに・・・」
「え?なんて?」
「い、いえ!何でもないです!」
少女が悲しそうな顔で呟いたのを聞いた日和は首をかしげる。少女は慌てていつも通りに振る舞おうとする。
「じゃあ、立花さんがどこに行ったかはわかる?」
「すみません・・・それもわからなくて・・・」
「そっかぁ・・・」
居場所を尋ねるも、それさえもわからないと聞き、日和は響も二課として徹底してるなぁと考える。
「うん、いないなら仕方ない!じゃあ・・・えっと・・・」
「・・・あ、私、小日向未来といいます。1年生です」
「じゃあ、小日向さん、立花さんが帰ってきたら、東雲日和さんが謝ってたって伝えておいてくれるかな?」
「あ、わかりました。響が戻ってきたら伝えておきます」
「うん。じゃあ、またね、小日向さん」
日和は伝えることを伝えて響たちの部屋を後にした。少女、小日向未来はそんな日和の背中を見送った。
「・・・東雲日和さんかぁ・・・。・・・東雲?もしかして・・・」
未来は日和の苗字が気になったのか急にスマホを取り出して、何かを調べ始めた。
「・・・やっぱり・・・東雲総合病院・・・響を助けてくれた・・・」
未来が調べたスマホ画面には、今は廃れてしまった日和の実家、東雲総合病院の記事があった。
~♪~
響が外に出ているであろうとわかった日和は寮から自転車を取り出し、どこかへ飛び出した。響が用事で外に出る、未来もどこに行ったか知らない。となると考えられるのはただ1つ・・・ノイズの討伐へ向かったのだろうと判断したのだ。
(正直、ノイズが現れるのは本当に怖い・・・。怖いけど・・・立花さんに会える機会はここしかない!!)
すぐにでも直接謝りたい気持ちが抑えられない日和は我慢できず、こうして響を探しに向かっていく。先へ進んでいくと、日和は突然急ブレーキをした。その顔色は青ざめていた。なぜなら・・・日和の進んだ先に、ノイズがいたからだ。
「の・・・ノイズ・・・」
日和の存在に気が付いたノイズはすぐにでも日和に襲い掛かろうとする。
(・・・いや!怖くない・・・怖くないぞ・・・!だって私には・・・シンフォギアがあるんだから!!)
日和は無理に怖くないと暗示をかけて、気を引き締め、ギアを握りしめる。
clear skies nyoikinkobou tron……
日和は詠唱を唱え、シンフォギア、如意金箍棒を身に纏う。ギアを身に纏ったことによって自身の恐怖を緩和させ、乗ってきた自転車を置いて、ノイズを振り払いながら先へと進んでいく日和。
~♪~
一方二課の指令室で、日和がギアを身に纏った際のエネルギーがこちらで観測された。
「ノイズの発生地点に高エネルギー反応を検出!!」
モニターの画面には解析結果としてNYOIKINKOBOUと、ギアの名前が記されている。
「なっ!!?まさか日和君か!!?」
「あらぁ~、あの子も青春してるわねぇ」
日和が戦闘区域に進入してきたことに軽口を放ち、弦十郎は驚愕する。弦十郎はすぐに戦闘区域にいる翼と響に指示を出す。
「翼、響君!聞こえるか!たった今戦闘区域に日和君が進入してきた!」
『日和さんが!!?』
「ギアを纏えるとはいえ、彼女は戦う術を持たない一般人だ!すぐにそちらへ向かい、フォローしてくれ!」
『了解』
『わ、わかりました!!』
指示を受けて翼と響はすぐに日和の元へと駆けつけていく。二課の人間たちはここで日和の無事を祈る他なかった。
~♪~
日和は襲い掛かってくるノイズを振り払いながら響を探す。辺りを見回す日和に休み暇もなくノイズは襲い掛かる。
「邪魔しないで!!」
日和に振り払われるノイズは結果的には自身のみが炭となって崩れていく。
「立花さん!!どこにいるの!!?立花さん!!」
ドカアアアアアン!!
「きゃあああっ!!」
辺りを見渡す日和の足元に突然爆発が起きた。そこを見てみると、地下鉄道路が見えてきて、そこから葡萄型のノイズが現れた。
「・・・邪魔ぁ!!」
邪魔されないように日和は現れた葡萄型のノイズを倒そうと試みる。すると葡萄型のノイズは自身の果実のようなものを日和に放った。すると・・・
ドカンッ!!ドカンッ!!
「あああああああ!!」
果実のようなものが爆発し、日和にダメージを与える。どうやら地下の爆発はこれが原因だったようだ。さらに葡萄型のノイズは放った果実のようなものを再生させ、辺りにばら撒いた。すると、今度は果実のようなものが別のノイズが生まれた。
「う・・・うぅ・・・」
爆発をくらって倒れた日和は痛みを堪えて、何とか立ち上がろうとする。その際に日和は夜空に輝く流れ星のようなものが見えた。
「・・・流れ星・・・?」
流れ星のようなものはこちらへと降りていき、現れたノイズと葡萄型のノイズを纏めて一刀両断した。これは、翼が放った技、蒼ノ一閃である。ノイズを殲滅した翼はゆっくりと着地する。
「日和さーーん!!大丈夫ですかーー!!?」
そこへさらに響も到着する。日和は起き上がって、翼に声をかけようとする。
「つ・・・翼さ・・・」
「何しに来たの?」
翼は戦う覚悟もなく戦場に突然現れた日和に対して怒った表情をしている。翼から見てみれば今の日和は、ただ戦場をかき乱す異端分子にしか見えていない。
「あ・・・あの・・・」
翼になんと言ったらいいかわからない日和はただ顔を俯かせるしかなかった。そんな時、響が口を開く。
「き、きっと日和さんには、何か理由があって来たんです!私だって、守りたいものがあるように!だから・・・」
「・・・守り・・・たいもの・・・」
響が放った守りたいものという言葉に反応し、日和は響に顔を向けた。響は続けて口を開こうとした時・・・
「だからぁ?んでどうすんだよぉ?」
「「「!」」」
突如として第三者の声が3人に割り込んできた。雲で覆われていた月が姿を現し、月の光が第三者を照らす。バイザーのようなレンズで顔は隠れているが、第三者の姿は白銀の鎧を身に纏った少女であった。翼は襲撃者の身に纏う鎧を見て目を見開いた。
「ネフシュタンの・・・鎧・・・!!?」
なぜならその鎧は、元は二課が所有していた完全聖遺物の1つである・・・2年前のライブ会場の惨劇を引き起こした根本である、ネフシュタンの鎧であったからだ。
東雲総合病院
日和と咲の実家である総合病院。咲はここで医者見習いとして働いていたことがある。患者受け入れ数が多く、多くの患者から信頼があった。
以前はとても評判のいい病院だったが、2年前のツヴァイウィングのライブ事件で何人かの負傷者(響もこの中に含まれる)を治療してきたことから悪評が強まり、多くの人々が入院拒否したり、医者が自らの意思で大多数辞職したりと散々だが、何とか踏みとどまっていた。
しかし、廃業の決定打になったのは、アビスゲートのライブ配信後、日和が生きていたことによって、これ以上の悪評を恐れた日和と咲の母親が蒸発してしまい、家を出て行ってしまった。妻という心の支えを失った父親もショックを受け、悪評に耐え切れず何人かの医者を巻き込んで自殺を図った。これによって残った医者だけでは運営がままならず、廃業してしまった。
現在では曰く付きと評され、廃病院と化して今も残っている。