戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

7 / 105
ネフシュタンの鎧

二課の指令室でも、奏者3人の前に襲撃者が現れたことを確認した。襲撃者から放たれる高エネルギー反応の解析結果がモニターに表示される。

 

Nehushtan

 

「バカなっ!!?現場に急行する!!なんとしてでも、鎧を確保するんだ!!」

 

弦十郎は驚愕の声を上げ、翼と響に指示を出して、自身も現場へと向かっていくのであった。それを止める者は誰もいない。

 

~♪~

 

完全聖遺物、ネフシュタンの鎧を身に纏った襲撃者を目の当たりにし、翼は震えた驚愕の声を上げる。

 

「ネフシュタンの・・・鎧・・・!」

 

「へぇ・・・てことはあんた、この鎧の出自を知ってんだぁ?」

 

「2年前・・・私の不始末で奪われたものを忘れるものか!何より!私の不手際で奪われた命を忘れるものか!!」

 

2年前に起きたライブの惨劇・・・あのライブの裏側で二課はネフシュタンの鎧の起動実験を行っていたのだ。ツヴァイウィングの歌によって起動が成功したと思われた矢先、予期せぬ暴走が起き、爆発した。そこにノイズが現れ、惨劇が起きた・・・それが2年前に起きた真実だ。その惨劇を引き起こした元凶、そして大切なパートナー、奏を失った記憶が頭に思い浮かぶ翼。翼は大剣を構え、襲撃者は何かの杖を展開して構える。

 

(奏を失った事件の原因と、奏の残したシンフォギア・・・そして・・・玲奈が残したシンフォギア・・・。時を経て、再び3つそろって現れるというめぐりあわせ・・・。だがこの残酷は、私にとって心地いい!!)

 

一触即発の雰囲気の中、響と日和が駆け寄り、戦いを止めようとする。

 

「やめてください翼さん!相手は人なんです!同じ人間なんです!」

 

「そうですよ!あなたもこんなことはやめて!人同士が争うなんて間違ってる!」

 

「「戦場で何をバカなことを!!」」

 

当然敵対する者同士であるが故、響と日和の静止の声は一蹴される。戦う気である翼と襲撃者は意見が合い、にやりと笑う。

 

「むしろ、あなたとは気が合いそうね」

 

「だったら仲良くじゃれあうかい?」

 

そう言って襲撃者はネフシュタンの鎧に付いている鞭を振るおうと行動を起こす。日和はそれを止めようと前に出る。

 

「だ、ダメ!!絶対にダメ!!」

 

「邪魔だどけぇ!!」

 

襲撃者は立ちふさがる日和に鞭を振るって薙ぎ払う。

 

「あああ!!」

 

「日和さん!!」

 

鞭の薙ぎ払いをくらって日和は軽く吹っ飛ばされて地面に倒れる。遮る者がいなくなった襲撃者は今度は翼に向けて鞭を振るう。翼は止める響を突き飛ばし、高く跳躍して鞭を躱す。高く飛んだ翼は上空から蒼の斬撃を襲撃者に向けて放った。

 

【蒼ノ一閃】

 

襲撃者は放たれた蒼の斬撃を鞭を振るい、直撃コースを逸らさせた。斬撃は襲撃者から逸れ、近くの林で爆散する。技をあしらわれた翼は驚愕しつつも、大剣による連撃で追撃する。翼の連撃を襲撃者はバク転などで躱し、最後の一撃は鞭による防御で受け止める。そして、襲撃者は鞭を振るい、攻撃を躱した翼の鳩尾に蹴りを叩き込む。

 

「がはっ!

(これが・・・完全聖遺物のポテンシャル・・・!)」

 

完全聖遺物とは欠損していない状態の聖遺物。聖遺物の欠片を元にして作られたシンフォギアより高いスペックを持ち合わせている。

 

「ネフシュタンの力だなんて思わないでくれよなぁ?あたしの天辺は、まだまだこんなもんじゃねぇぞぉ!!」

 

全ては実力の差であると言い放つ襲撃者は翼に向けて鞭を振るい続ける。翼は繰り出される攻撃を躱していく。襲撃者の攻撃によって、周囲一帯のものは薙ぎ払われていく。

 

「「翼さん!!」」

 

「お呼びではないんだよぉ。こいつらの相手でもしてな」

 

響と日和を忘れていない襲撃者は持っていた杖を2人に向け、杖から放たれる光線を2人の足元に撃った。放たれた光線から・・・なんとダチョウ型のノイズが出現した。

 

「ウソ・・・ウソ・・・ノイズが・・・なんで・・・?」

 

「ノイズが・・・操られて・・・」

 

どうやらあの杖はノイズを故意的に出現させ、それを意のままに操ることができる代物らしい。

 

「ひ・・・ひぃ・・・や、やだぁ!!」

 

「日和さん!!」

 

目の前で繰り広げられてる戦い、そしてノイズが人によって操られてる姿を目の当たりにした日和は抑えられてた恐怖がぶり返し、逃げ出した。ダチョウ型のノイズはくちばしから接着性のある粘液を響に向けて放った。これによって響は身動きが取れなくなる。

 

「そんな・・・ウソ・・・」

 

「!立花さん!!」

 

その光景を目の当たりにした日和は立ち止まった。ダチョウ型のノイズはその機を逃さずに粘液を飛ばし、日和を拘束する。

 

「ウソ・・・動けない・・・」

 

身動きが取れなくなった日和の顔色はどんどんと恐怖で染まっていき、青く染まっていく。

 

「その子らにかまけて、私を忘れたか!!」

 

その間にも翼は襲撃者に大剣を振るう。襲撃者はそれを鞭で受け止めるが、翼が右足で足を払って態勢を崩される。その隙を狙い翼は足の刃で蹴りを入れる。態勢を立て直した襲撃者は一発目を躱し、二発目は腕で受け止めた。

 

「お高く留まるなぁ!!」

 

襲撃者は受け止めた翼の足を掴み、地面に叩きつけた。地面に叩きつけられた翼はその投げられた勢いで吹っ飛んでいく。そして襲撃者は翼の頭を踏んづける。

 

「のぼせ上がるな人気者ぉ・・・誰もかれもが、構ってくれるなどと思うんじゃねぇ!!この場の主役だと勘違いしてるなら教えてやる。狙いははなっから、こいつをかっさらうことだぁ」

 

「え・・・?」

 

襲撃者の狙いが最初から響をさらうことだと聞いて、響本人が驚愕の声を上げる。

 

「鎧も仲間も、あんたにゃ過ぎてんじゃないのかぁ?あんたにゃあの弱虫泣き虫がお似合いさぁ」

 

「う・・・うぅ・・・ひっく・・・」

 

襲撃者が指さす方には、恐怖ですすり泣いている日和の姿があった。

 

「・・・繰り返すものかと!私は誓った!」

 

翼は大剣を天に掲げる。すると空に無数の刀が出現し、襲撃者に向けて降り注ぐ。

 

【千ノ落涙】

 

降ってきた刀を襲撃者は躱す。襲撃者が離れたことにより動けるようになった翼は態勢を立て直し、戦闘を再開させた。

 

「怖い・・・怖いよぅ・・・」

 

「日和さん!!しっかり!!」

 

恐怖に支配されている日和に響は何とか助ける方法がないか考える。

 

「!そうだ!アームドギア!日和さんを助けるためにも、アームドギアが必要なんだ!」

 

この場の状況をどうにかするには武器であるアームドギアが必要と考えた響は何とかアームドギアを出そうと試みる。だがいくら念じても、アームドギアは出てくる気配はなかった。

 

「出ろ!出てこいアームドギア!なんでだよぉ・・・泣いている人がいるんだよ⁉お願いだから・・・出てきてよぉ!」

 

「立花さん・・・」

 

必死になって頑張ろうとしている響を日和は涙ながらに見ていた。その姿に、恐怖を必死に押し殺して、日和は響に声をかける。

 

「私・・・どうしてもあなたに謝りたくて・・・戦場にも立ってないのに・・・偉そうなこと言って・・・あなたを叩いて・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!」

 

「日和さん・・・。日和さんは悪くないです・・・。私の方こそ・・・日和さんの気に障るようなことを言って・・・ごめんなさい・・」

 

日和の謝罪に響は申し訳なさそうな表情をして、日和に謝罪をする。

 

「そうだ・・・日和さんの分まで、私が頑張るって決めたんだ!絶対に・・・絶対に何とかしてみせる!出てこい!アームドギアぁ!!」

 

「立花さん・・・」

 

日和の姿を見て、何とか諦めないという気持ちを持ち直した響は何度も何度もアームドギアを出そうと念じる。戦場で頑張る響の姿を目の当たりにした日和は、自分がいかに情けないかを思い知らされる。

 

(ダメだなぁ・・・私・・・。後輩ちゃんがあんなにも頑張ってくれてるのに・・・。本当は私の方がしっかりしないといけないのに・・・。それなのに私は・・・先輩らしくない姿ばっかり・・・。自分が情けないよぉ・・・。こんなんじゃ、先輩失格だよぉ・・・)

 

その間にも翼と襲撃者の戦いは続いていた。翼は大剣を襲撃者に振り下ろし、襲撃者は大剣を鞭で防御している。

 

「鎧に振り回されているわけではない・・・この強さは本物・・・!」

 

「ここでふんわり考え事かい!!?」

 

襲撃者は翼に回し蹴りを放ち、翼は蹴りを躱す。距離をとったところで襲撃者は杖から光線を放ち、ノイズを出現させる。ノイズはすぐにでも翼に襲い掛かる。翼は出現したノイズを冷静に対処し、全て殲滅させる。襲撃者は鞭を振るい、翼は大剣を振るう・・・激しい戦闘は続いていく。距離をとった翼は小刀を取り出し、襲撃者に投擲する。

 

「ちょせぇ!!」

 

襲撃者は小刀を鞭で弾き、鞭の先端に黒い雷撃の白いエネルギー球体を作り上げる。襲撃者はそのエネルギー体を鞭で持ち上げ、翼に向けて投げ放った。

 

【NIRUVANA GEDON】

 

放たれたエネルギー球体を翼は大剣で受け止め、防ごうとしたが、エネルギー球体が爆発を引き起こし、吹き飛ばされてしまう。

 

「「翼さん!!」」

 

「ふん、まるでできそこない」

 

倒れる翼を見て襲撃者はそう一言吐き捨てた。

 

「・・・確かに・・・私はできそこないだ」

 

「あぁ?」

 

「この身を一振りの剣として鍛えたはずなのに・・・あの日、無様に生き残ってしまった・・・。できそこないの剣として・・・恥をさらしてきた・・・。だが・・・それも今日までのこと・・・奪われたネフシュタンを取り戻すことで・・・この身の汚名をそそがせてもらう!!」

 

倒れ伏す翼は刀を地面に突き刺し、ゆっくりと立ち上がり、再び襲撃者と対面する。

 

「そうかい。脱がせるもんなら脱がして・・・何っ!!?」

 

に金縛りにあったかのように。その原因に気づいた襲撃者は自身の影に視線を向ける。襲撃者の影には、翼が投げ放ち、自身が弾いた小刀が突き刺さっていた。この小刀が、襲撃者の動きを封じ込めていたのだ。

 

【影縫い】

 

「こんなもんであたしの動きを・・・!!まさか・・・お前・・・」

 

金縛りから逃れようとする襲撃者は今から翼が何をしようとしているのかに気が付いた。

 

「・・・月がのぞいているうちに、決着を着けましょう」

 

「歌うのか・・・絶唱を!!」

 

「・・・絶唱・・・?」

 

絶唱と呼ばれる単語を耳にし、日和は疑問符を浮かべる。

 

「翼さん!!」

 

「防人の生き様・・・覚悟を見せてあげる!あなたたちの胸に焼けつけなさい!!」

 

翼は覚悟のこもった顔で響と日和に顔を向け、刀を突きつける。翼の顔に、一片の迷いはなかった。

 

「くっ・・・!やらせるかよ・・・!好きに・・・勝手に・・・!!」

 

襲撃者はやらせまいとして何とか金縛りを解こうとするも、びくともしない。その間にも、翼は刀を天に突き上げ、歌を口ずさむ。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

(!!この歌・・・聞いたことがある・・・あれは・・・あの歌は・・・)

 

日和には翼が歌っている歌に聞き覚えがある。そう・・・それは1年前・・・玲奈が自分を守ろうとし、歌った歌だ。そして・・・その歌の後にノイズが殲滅し・・・玲奈の命は・・・

 

Emustolronzen fine el baral zizzl……

 

「翼さん!!ダメです!!その歌を歌っちゃダメええええええええええ!!!!」

 

日和は翼の身を案じ、声を張り上げてその歌をやめるように言い放った。だが、それで止まらないのが、翼の覚悟である。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

「くっ・・・!」

 

襲撃者は翼を止めようと何とか動かし、杖から光線を放ち、ノイズで足止めしようとする。だがその時にはすでに翼は襲撃者の目の前にいた。

 

Emustolronzen fine el zizzl……

 

全て歌い終えた翼は襲撃者の肩にそっと手に触れ、笑みを浮かべた・・・口元に血を流して。歌が終わった瞬間、翼のシンフォギアから凄まじい衝撃波が放たれた。

 

「ああああああああああああああああああ!!!!!」

 

翼のシンフォギアから放たれる衝撃波を間近で受け、襲撃者は突き飛ばされる。さらに、襲撃者が召喚したノイズも全て全滅し、日和と響の拘束は解除される。

 

「翼さあああああああああああん!!!!」

 

衝撃波が止むと、翼の周りには大きなクレーターが出来上がっていた。周りにはノイズの姿もおらず、日和と響も無傷で済んでいる。一方襲撃者の方は衝撃によってボロボロになり、鎧もところどころ壊れている。すると・・・

 

ビキッ!ビキッ!ビキキ・・・!

 

「ぐあああああ!」

 

鎧から伸びる筋が襲撃者の身体をつたう。まるで、鎧が襲撃者の身体を侵食するように。

 

「ちぃ・・・!」

 

これ以上の戦闘は不可能だと判断した襲撃者は空を飛んでこの場を撤退していった。

 

「「翼さーん!」」

 

日和と響はクレーターの中央にいる翼の元へ駆け寄った。さらにそこへ車に乗って現場に急行してきた弦十郎が駆け付けた。

 

「翼!無事か⁉」

 

「・・・私とて・・・人類守護の務めを果たす剣・・・」

 

こちらに振り向いた翼。今の翼を見て、日和は絶句した。なぜなら翼は・・・口だけでなく、目にも大量の血を流し、シンフォギアもボロボロであったからだ。

 

「こんなところで・・・折れる剣ではありません・・・」

 

翼はそれだけを言い放ち、静かに倒れる。弦十郎は倒れる翼に駆けつけ、響はこの光景にショックを受け・・・そして日和は・・・玲奈を失ったあの日の記憶がフラッシュバックする。

 

「「翼さああああああああああああああああああああん!!!!!!」」

 

流れ星が流れる夜空に、日和と響の絶叫が木霊するのであった。




妖棍・如意金箍棒

型式番号:SG-r06 Nyoikinkobou

特異災害対策機動部が管理する第6号聖遺物。中国神話に伝わる大妖怪、セイテンタイセイの棍。
遺跡にて発見された聖遺物で、シンフォギアとして加工されたのだが、これの加工が難しかった。なぜなら発見されたのも奇跡と言われるほどに如意金箍棒は1cmほど小さかったため、力が僅かに若干残っていても、欠片を取り出すのもほぼ不可能だったのだ。
ゆえに如意金箍棒そのものを触媒として、シンフォギアを造り上げた。シンフォギアを造り上げる技術、櫻井理論の提唱者こと櫻井了子はこう発言する。

「数多くの聖遺物の中で、如意金箍棒ほどめんどくさいものはないわよ~」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。