戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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ヒビ割れる絆

ジョン・ウェイソン・ウェルキンゲトリクス・・・通称ウェル。この男は元はF.I.S所属の研究者であり、かつてはマリアたちと行動を共にしていた。だが彼の内にある『英雄の憧れ』は常人には理解できないほどに狂っており、言動も行動も支離滅裂としている。

 

フロンティア事変が収束した後、ウェルは米国政府に捕らえられた。しかし米国政府はF.I.Sの存在を情報操作でなかったことにし、彼という存在、経歴、行動を全て否定した。そして人として否定される決定打となっているのが自立型聖遺物、ネフィリムの細胞を取り込んだ左腕。彼の左腕はもうすでに異形のもの。これが原因で彼は『人間』ではなく、1つの『聖遺物』・・・つまり物として深淵の竜宮に幽閉されることとなったのだ。

 

幽閉されたウェルはこの牢獄の中で自身を・・・英雄を望むその時をずっと待っていた。そんなことを考え出して1年が経ち、キャロルが深淵の竜宮に侵入し、装者たちとの戦闘を耳にした時、彼は確信した。時が来たのだと。

 

「花火が上がった・・・。くくく・・・騒乱が近い・・・。ならば、求められるのは・・・英雄だ!!」

 

そして、戦闘の余波で彼を閉じ込めていた牢が壊れ、彼が出たところでクリスが放ったミサイルをネフィリムの腕で受け止め、吸収したのだ。

 

~♪~

 

そして、今に至り、装者たちは牢から出てきたウェルと対面しているというわけだ。

 

「へへーん。旧世代のLiNKERぶっこんで、騙し騙しのギア運用というわけね」

 

「くっ・・・!」

 

「「うぇ~・・・」」

 

「すごいムカつく・・・!」

 

勝気になってふんぞり返るウェル。クリスは放ったミサイルを無力化され、歯ぎしりを立て、調と切歌は見たくもなかった顔に吐き気を催す。彼を見たくなかったのは日和も同じで今にも彼を殴りたくてたまらなかった。

 

「優しさでできたLiNKERは僕が作ったものだけぇ~。そんなので戦わされてるなんてぇ・・・不憫すぎて笑いが止まらぁ~ん!!」

 

「不憫の一等賞が何を言うデス!」

 

「・・・あたしの一発を止めてくれたなぁ・・・!」

 

「クリス・・・?」

 

ウェルの癪に障る挑発に切歌が反論したところで、クリスの様子がおかしいことに日和が真っ先に気がついた。

 

(後輩の前でかかされた恥は、百万倍にして返してくれる!!)

 

クリスの内心は焦りに囚われている。普段の彼女ならここで調と切歌に指示を出し、日和と共に冷静に対処できた。だが、クリスの中にある『後輩を守る』『先輩らしくあるべき』という固定概念に囚われ、まともな判断ができなくなっている。さらに言えば、ダインスレイフの呪い、先日の調と切歌の活躍、そして昨日の日和が大悟を守るという行動によって、固定概念はさらに強まっている。だからこそ、錬金術で止められるならまだしも、最も嫌いな存在であるウェルに自身の一撃を止められ、頭に血を登らせ、冷静さを失っている。

 

「待つデスよ!」

 

「ドクターを傷つけるのは・・・」

 

「何言ってやがる!!」

 

クリスがウェルに攻撃しようと行動を起こそうとした時、切歌と調に呼び止められる。クリスは当然ながら行動を止められて2人に怒鳴る。

 

「だって・・・LiNKERを作れるのは・・・」

 

「・・・悔しいけど・・・あの人だけってことか・・・」

 

現段階でLiNKERを作ることができる科学者は目の前にいる憎き存在、ウェルだけだ。それを理解した日和は悔しそうに歯ぎしりを立てる。

 

「そうとも!僕に何かあったら、LiNKERは永遠に失われてしまうぞぉ!!」

 

ウェルはそこを突いてさらに挑発を続ける。しかし、日和とクリスはLiNKERがなくともギアを纏うことができる。日和はともかく、今のクリスにはそんなことは知ったことではない。

 

「ぽっと出が勝手に話を進めるな」

 

頼んでもいない自分を助けたウェルの登場により置いてけぼりをくらったキャロルはアルカ・ノイズの結晶をばら撒き、アルカ・ノイズを召喚する。

 

「2人が戦えなくても、あたしが!!」

 

クリスはガトリング砲を構え、アルカ・ノイズに弾丸を撃ち放つ。弾丸はアルカ・ノイズを貫き消滅させながら射線上にいるキャロルに迫っていく。ウェルはさっきまでの強気の態度から打って変わって情けなくキャロルの後ろに下がる。キャロルは迫ってくる弾丸を錬金術のバリアで防いでいく。

 

「その男の識別不能。マスター、指示をお願いします」

 

レイアや他のオートスコアラーは皆、主であるキャロルを守ることが第一の優先事項としている。ゆえに、自分の意思でウェルを守る気がないためキャロルに指示を求めている。

 

「敵でも味方でもない!!英雄だ!!!」

 

そんなレイアにウェルはまたも強気な態度で突っかかってくる。

 

「だったら英雄様に・・・さっきよりでかいの纏めてくれてやる!!」

 

クリスは巨大なミサイルを展開し、狙いをキャロルたちに向けている。

 

「ちょ・・・ちょっとクリス!」

 

「このおっちょこちょい!!!」

 

クリスがミサイルを発射しようとすると、ウェルが怒鳴り声をあげる。

 

「何のつもりか知らないが、そんなの使えば、施設も!僕も!海の藻屑だぞぉ!!・・・なんてね?」

 

最初に放ったミサイルは数が圧倒的に多かったが、今回のミサイルは威力を重視している。ウェルの言うとおり、そんなものを今この場で放ったりすれば、この場の全員、無事では済まされないだろう。クリスが撃つのを躊躇ったところでウェルはキャロルに身体を振り向き、あどけた態度を見せる。

 

「レイア、この埒を開けてみせろ」

 

「即時、遂行」

 

キャロルの指示を受け、レイアは行動を開始した。それを確認したクリスはミサイルを格納し、ガトリング砲をレイアに向けて放つ。レイアはその弾丸をアルカ・ノイズに巻き込ませながら華麗な動きで躱していく。

 

(後輩なんかに任せてられるかぁ!ここは先輩のあたしがああああ!!)

 

レイアのこの動きは攪乱に挑発も兼ねていた。頭に血が上っているクリスにこの方法は効果覿面で動きがだんだんと鈍くなり、照準がだんだんと狙いからズレていく。

 

「ばら撒きではとらえられない!!」

 

「クリス!!止まって!!」

 

「落ち着くデスよ!!」

 

3人はクリスに射撃を止めるように声を上げたが、クリスの耳にはこの声は届かない。それどころか、闇雲に乱射したおかげで、ガトリング砲の砲門が調を捉えた。当然それを切歌が許すはずもなく、切歌は鎌を振るってクリスのガトリング砲を持ち上げた。

 

「もろともに、巻き込むつもりデスか・・・!」

 

「・・・っ!!」

 

切歌の素早い行動のおかげで、調は被弾せずに済んだ。意図しなかったとはいえ、危うく大事な後輩を誤射するところだったクリスは強く歯ぎしりを立てた。

 

「あいつらは!!?どこに消えた!!?」

 

周囲にはアルカ・ノイズが倒された際に舞う赤い粒子、プリマ・マテリアしか漂っていない。そんな中調は1つの大穴を発見した。おそらく、キャロルたちはこの大穴に入って逃げたのだろう。

 

「きっと、ここから・・・」

 

「逃がしちまったのか・・・」

 

「ごめんなさい・・・ドクターに何かあると、LiNKERが作れなくなると思って・・・」

 

「うんん、しぃちゃんも切ちゃんも、何も悪くないよ。気にしなくていいからね」

 

調は謝罪の言葉を述べた。日和は気にしなくていいと笑って許してあげている。

 

「でも、もう惑わされないデス!!あたしたち4人が力を合わせれば、今度こそ・・・!」

 

切歌は気合を入れ直し、切歌は次は失敗しないと意気込んでクリスに近づく。だがクリスはそんな切歌を右手で突っぱねた。

 

「後輩の力なんてあてにしない!お手手つないで仲良しごっこじゃねえんだ。あたし1人でやって見せる!!」

 

クリスの必死な形相に調と切歌は悲しそうな顔をしている。

 

(1人でやり遂げなきゃ、先輩として後輩に示しがつかねぇんだよ・・・!)

 

クリスがそう考えていた時、日和はクリスに近づいて・・・

 

パァン!!!

 

大きな音を出すほどの平手打ちで彼女の頬を叩いた。それを見た調と切歌は驚いた顔をしている。

 

「クリス・・・あなたがそんな最低なことをするなんて思わなかったよ。それに、しぃちゃんにもまだ、謝ってないよね?」

 

クリスが切歌の思いを無下にしたこと、調を誤射しそうになったことにたいして謝罪もしていないこと。先輩としてやってはいけないことをやっているクリスに対し、日和は怒っているのだ。日和に叩かれたクリスは驚いた顔をした後、怒りの表情を日和に向け・・・

 

「何しやがる!!!」

 

バキッ!!

 

彼女の頬を殴った。

 

「何するんだよ!!!」

 

バキッ!!

 

日和はさっきのお返しと言わんばかりにクリスの頬を殴った。

 

「やりやがったな、てめぇ!!」

 

「このわからず屋!!」

 

お互いに激昂したクリスと日和はこの場で取っ組み合いの喧嘩を始めてしまう。調は日和を抑えて、切歌はクリスを抑えて2人の喧嘩を止める。

 

「2人とも喧嘩はやめてください!」

 

「そうデスよ!落ち着くデスよ!」

 

「落ち着け⁉先に手を出したのはあいつだろ!!」

 

「クリスがそうさせたのが悪いんじゃん!!」

 

「なんだと!!」

 

「なんだよ!!」

 

「もうやめるデスよ!!」

 

調と切歌に止められて日和とクリスは取っ組み合いはやめたが、喧嘩は止まらない。

 

「だいたい初めて会った時からそうだよね!変なことを勝手に思い込んで勝手に突っ走る!私たちの意見は全部無視なわけ⁉」

 

「ビビッて泣いてた泣き虫野郎に言われたくねぇな!無理せず帰ってミルクでも飲んでな!」

 

「キイイィィィ!!クリスの頑固者!!」

 

「あたしが頑固ならてめぇは臆病者だ!!」

 

「日和先輩・・・クリス先輩・・・」

 

調と切歌から見ても、日和とクリスはお互いに仲がいいように見える。それがここに来ていがみ合い、喧嘩をするなんて思わず、未だに喧嘩を続けるクリスと日和に2人はどうすればいいのかわからなくなってしまう。

 

~♪~

 

S.O.N.G本部で待機しているオペレーターたちも日和とクリスの大喧嘩に戸惑いを隠せないでいる。

 

「日和ちゃんとクリスちゃんが喧嘩をするなんて・・・」

 

「2人は本当に仲良しだったのに・・・どうしてこんな時に・・・」

 

日和とクリスの関係修復も大事なことなのだが、キャロルたちのことも忘れてはならない。弦十郎はまずキャロルたちの反応を確認する。

 

「・・・侵入者の反応は?」

 

「は、はい!侵入者ロスト・・・大きな動きがない限り、ここからでは捕捉できません・・・」

 

「ドクターウェル・・・隔離情報を公開されていれば、こんな事には・・・」

 

「ネフィリムの力も健在・・・厄介だな・・・」

 

「追跡の再開、急げ!!」

 

弦十郎はキャロルたちの追跡指示をオペレーターたちに出した。そんな中エルフナインは真っ二つに切断されたヤントラ・サルヴァスパをモニター越しで見つめる。

 

「最後のパーツ、ヤントラ・サルヴァスパがが失われたことで、チフォージュ・シャトーの完成を阻止できました。なのに、キャロルはまだ・・・」

 

エルフナインはキャロルからシャトー建造の任から解任された当時のことを思い出し、悲しそうな顔をする。

 

~♪~

 

時間は遡り、チフォージュ・シャトーの玉座の間。シャトーの建造の任を任され、計画の詳細を何も聞かされていないエルフナインはシャトーが世界解剖のためのものであると知り、キャロルに説明を求めている。

 

「説明してください!ボクが建造に携わったチフォージュ・シャトーは、ボクたちのパパの遺志を継ぐためだったはず!世界をバラバラにするなんて聞いてません!!」

 

エルフナインの問いかけにキャロルは答える。

 

「いかにも。チフォージュ・シャトーは錬金技術の粋を集めたワールド・デストラクターにして、巨大なフラスコだ」

 

「ボクを騙すつもりで・・・?」

 

「さて、そうと知ってどうする?力のないお前が、オレを止めてみせるのか?」

 

キャロルの問いかけにエルフナインは拳を握りしめ、自身の考えをキャロルに訴える。

 

「・・・それでも・・・それでもボクが思い出のパパが大好きなように、あなたも、パパのことが大好きなはずです」

 

「!お前・・・何を・・・?」

 

「パパは世界をバラバラにすることなんて望んでいなかった!!望んでないことをボクはあなたにさせたくない!!」

 

バンッ!!

 

エルフナインの訴えにキャロルは玉座を強く叩き、エルフナインを睨みつける。

 

「思い出を複写されただけの廃棄躯体風情が!!出来損ないの娘が語ることではないと覚えよ!!」

 

キャロルの怒鳴り声にエルフナインはビクつく。

 

「・・・お前はシャトーの建造の任より解く。後はどうとでも好きにするがいい」

 

こうしてエルフナインはシャトーの建造の任から外れ、キャロルの世界解剖を阻止するため、ダインスレイフの欠片を持って、シャトーから逃亡した。これが、S.O.N.Gに協力を頼む前の出来事だ。

 

~♪~

 

時間は戻り、深淵の竜宮。過去の思い出の夢を見ていたキャロルは目を覚ました。

 

「・・・っ。オレは・・・堕ちていたのか・・・?」

 

「またしても拒絶反応です。撤退の途中で意識を・・・」

 

拒絶反応によって気絶していたキャロルは自分を抱きかかえていたレイアから離れて1人で立ち上がる。レイアは主でキャロルを心配している。

 

「高レベルフォニックゲイナーが複数揃う僥倖に、はやるのは理解できますが・・・」

 

「杞憂だ」

 

キャロルは自分の手を見つめ、開いたり閉じたりして身体の状態を確認する。問題ないと判断すると、視線を背後に立っているウェルに向ける。

 

「・・・知っているぞ、ドクターウェル。フロンティア事変関係者の1人。そんなお前が何故ここに・・・?」

 

「我が身可愛さの連中が、フロンティア事変も、僕の活躍も!寄って集って無かったことにしてくれた!人権も存在も失った僕は、人ではなく物。回収されたネフィリムの一部として、放り込まれていたのさ!」

 

ウェルはフロンティア事変後の処遇に不満をこぼしているが、彼は月の落下をフロンティアを使って速めたこと、ナスターシャを死に追いやったこと、それ以外にもやりたい放題に多くの罪を犯している。本来なら死刑になってもおかしくはない。むしろ、物として扱われたとはいえ、ここに幽閉されることは、処遇としてはかなり軽い。だがこの処遇は英雄になることを望んでいるウェルにとっては死んだも同然の処遇だ。

 

「その左腕が・・・」

 

ウェルのこの異形な腕こそがネフィリムの細胞を取り込んだ腕だ。ネフィリムの腕は人型から活動状態にし、そこから活動状態から人型に戻した。キャロルは表情を変えることなく、ネフィリムの腕に興味を示している。

 

「イチイバルの砲撃も、腕の力で受け止めたんじゃない。接触の一瞬にネフィリムが喰らって同化!体の一部として推進力を制御したまでの事!」

 

キャロルはウェルのネフィリムの腕は使えると判断し、不敵な笑みを浮かべる。

 

「面白い男だ。よし、ついてこい」

 

「ここから僕を連れ出すつもりかい?だったら騒乱の只中に案内してくれ」

 

「騒乱の只中?」

 

「英雄の立つところだぁ・・・ん?」

 

突然キャロルは黙って左手を差し出した。その意図を察したウェルはネフィリムの手を白衣で拭き、キャロルの左手を握る。

 

「その左腕、その力の詳細は、追っ手をまきつつ聞かせてもらおう」

 

「脱出を急がなくてもいいのかい?」

 

「奴らの動きは把握済み。時間稼ぎなぞ造作もない」

 

キャロルは装者たちの動きなど手に取るようにわかると言わんばかりにそう言った。それもそのはずだ。なぜならその情報の発信源は、"S.O.N.G本部"にいるのだから。

 

~♪~

 

一旦態勢を立て直すためにクリスたちは深淵の竜宮にある通信システムで弦十郎と通信を取っている。通信の最中でも、日和とクリスは未だに喧嘩を続けている。

 

「だぁ~かぁ~らぁ~!!力を使うなって言ってるんじゃなくて!!その使い方を考えろって言ってんの!!あんな場所であんなもの・・・私たちを殺す気なの!!?」

 

「新しくなったシンフォギアは、キャロルの錬金術に対抗する力だ!!使い所は今をおいて他にねぇ!!眠てぇこと言ってんじゃねぇぞ、おい!!」

 

「ここが海の底の施設だってことを忘れてませんかぁ~?はぁ~、やだやだ、これだから・・・」

 

「正論で超常と渡り合えるかってんだ!!」

 

「言ってることめちゃくちゃだよ!!」

 

「どこがだよ!!」

 

クリスは日和に突っかかってくるが、日和の言ってることは何も間違っていない。もしあのままクリスがミサイルを撃ち放って外装に穴でも開くものならば深海の水が施設内を飲み込み、ウェル言うとおり、海の藻屑となってしまうだろう。そんなことは今のクリスでもわかっている。だが先ほどの失態を取り戻したいという焦りが理解を拒んでしまっている。

 

『お前たち、落ち着かんか!!!!今は争っている場合ではない!!!!』

 

いつまでも喧嘩を続けている日和とクリスに弦十郎が通信越しで大きな怒鳴り声をあげ、2人を叱る。あまりに大きな怒鳴り声に弦十郎と同じ部屋にいた友里と藤尭は思わず肩をすくめる。

 

「ししょー!!だってクリスが・・・!」

 

「こいつがあたしの邪魔をしたからだろうが!!」

 

「邪魔になってんのはどっちの方だよ!!」

 

「あたしが邪魔だって言いたいのか!!」

 

『いい加減にしろ!!!!!』

 

弦十郎のさらに大きな怒鳴り声でようやく醜い口喧嘩が止まったが、日和とクリスはお互いに睨みあっている。

 

「・・・ふん!!」

 

「・・・クソッタレ!!」

 

日和は不機嫌そうにそっぽを向き、クリスは壁に八つ当たりするかのように蹴り上げる。口で言ってもできてしまった溝が直らない2人の仲に弦十郎は頭を抱える。

 

『念のため、各ブロックの隔壁や、パージスイッチの確認をお願い』

 

友里は深淵の竜宮のマップデータを通信システムに送り、モニターに表示させた。マップには隔壁やスイッチの場所が表示されている。だがこの施設のエリアは膨大だ。当然隔壁やスイッチの数も多いため、切歌では覚えきれない。

 

「こんなにいっぺんに覚えられないデスよー!」

 

「じゃあ切ちゃん、覚えるのは2人で半分こにしよう」

 

1人で無理ならば2人でということで、調が切歌のサポートに入る。2人がマップデータの半分を頭に入れていると、藤尭が報告する。

 

『セキュリティシステムに侵入者の痕跡を発見!!』

 

「そういう知らせを待っていた!!」

 

名誉挽回できるチャンスにクリスは歓喜の声を上げる。だがその目には冷静さが失われている。

 

~♪~

 

風鳴の屋敷で翼に倒されたファラの残骸は破壊された要石の前で横たわっていた。四肢は失われ、胴体は上半身しか残っていない。人形とはいえ、その姿には痛々しさが感じられる。

 

「これは・・・先ほどの!」

 

「ええ。翼さんが退けた、オートスコアラーの残骸です」

 

「この状態で稼働するのだろうか・・・」

 

フォルテが疑問を口にしたのと同時に、ファラの瞳孔がぎょろりと動いた。

 

「いつか、しょぼいだなんて言って、ごめんなさい。剣ちゃんの歌、本当に素晴らしかったわ・・・」

 

「私の・・・歌・・・?」

 

「あははははははは!!まるで身体がバッサリ2つになるくらい素晴らしく呪われた旋律だったわ!!あはははははは!!」

 

狂ったように言い放つファラの言葉・・・呪われた旋律という言葉に翼たちは反応した。

 

「待て。貴様、今聞き捨てならないことを言ったな」

 

「呪われた旋律・・・確か以前に・・・キャロルも言っていた・・・」

 

「答えてもらうわ!」

 

呪われた旋律・・・それが何なのか、マリアはファラに問いかけた。

 

~♪~

 

一方その頃、深淵の竜宮でキャロルたちの追跡のため、クリスたちは走っている。S.O.N.G本部のモニターのマップにはクリスたちの位置とキャロルたちとの位置が表示されている。本来であればクリスたちはもうすでにキャロルたちと遭遇し、戦っているはずなのだが、どういうわけか走っても走っても、キャロルたちには追い付くことができない。

 

『どこまで行けばいいデスか⁉』

 

『いい加減、追いついてもいいのに・・・』

 

『2人とも、頑張って!』

 

『この道で間違いないんだろうな!!?』

 

「ああ。だが向こうも巧みに追跡を躱して進行している」

 

弦十郎の言うとおり、キャロルたちはクリスたちの追跡をうまいこと躱しながら先に進んでいる。そのおかげでクリスたちはキャロルと遭遇できないでいる。

 

「まるでこちらの位置や選択ルートを把握しているみたいに・・・」

 

友里の呟きで、ブリッジにいる全員は違和感の正体に気付いた。

 

「まさか・・・本部へのハッキング・・・!!?」

 

「知らず、毒を仕込まれていたのか・・・!!?」

 

自分たちが知らないうちに本部に『毒』が仕込まれていたことに気付いた弦十郎は目を見開いて驚愕した。




フォルテのの変身バンクGXバージョン

聖歌を歌い、身に纏っていた衣服を分解し、インナースーツを身に纏う。
次に脚部の装甲のパーツが構築され、両脚部に装着。
次に腰部のパーツが腰に装着され、肩の装甲も纏い、マントが構築され、なびかせる。
腕部の装甲も構築され、腕に纏い、最後に耳から順にヘッドギアを構築し、装着する。
シンフォギアを身に纏い、右肩のパーツより柄を手に取り、それを振るって大剣に変形させ、大剣を構え直す。
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