戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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落涙

戦いが終わり、ボロボロの状態になった翼は二課の医療施設に緊急搬送された。搬送された翼は緊急治療室に運ばれ、治療を受けている・・・が、状況はあまり著しくない。

 

「辛うじて一命はとりとめました。ですが、容体が安定するまでは絶対安静・・・余談も許されない状況です」

 

「よろしくお願いします」

 

弦十郎と数多くの黒服の男たちは担当医師に頭を下げ、翼の命を託した。

 

「俺たちは鎧の行方を追跡する。どんな手掛かりも見落とすな!」

 

弦十郎たちはネフシュタンの鎧の行方を追跡するため、病院から去っていった。緊急治療室のすぐそばにあった休憩所で日和と響は顔を俯かせている。

 

「あなたたちが気に病む必要はありませんよ。翼さんが自ら望み、歌ったのですから」

 

気落ちする2人に緒川はそう声をかけ、飲み物を買う。

 

「あ・・・あなたは・・・」

 

「緒川慎次です。表では、翼さんのマネージャーをしております」

 

顔は知っていても、名前が浮かばなかった日和に緒川は改めて自己紹介をした。普段なら緒川が翼のマネージャーと聞いて驚く日和だが、状況が状況のため、驚けなかった。

 

「・・・お2人もご存じだと思いますが、以前の翼さんは、アーティストユニットを組んでいまして・・・」

 

「・・・ツヴァイウィング・・・ですよね・・・」

 

「その当時のパートナーが天羽奏さんですよね・・・」

 

「ええ。今は響さんの胸に残るガングニールの装者でした」

 

緒川は日和と響に飲み物を渡し、話を続ける。

 

「2年前のあの日、ノイズに襲撃されたライブの被害を最小限に抑えるため、奏さんは絶唱を解き放ったんです」

 

「絶唱・・・翼さんも言ってた・・・」

 

絶唱は1年前に玲奈が繰り出したあの歌のことであろう。そして、今回翼が歌った歌でもある。それを知った日和は緒川に絶唱が何かを質問する。

 

「教えてください・・・絶唱って、なんですか・・・?1年前・・・玲奈は・・・あの歌を歌って・・・ノイズを倒して・・・そして・・・自分の命まで・・・。それが、絶唱というものなんですか・・・?」

 

「・・・そうでしたか・・・」

 

玲奈が絶唱を歌ったと聞いて、緒川は飲み物を飲み、絶唱の説明をする。

 

「絶唱は増幅したエネルギーを解き放ち、対象に大きなダメージを与えさせる、シンフォギアに備わった攻撃手段です。ですが、その力はあまりにも強大で、シンフォギアで強化された身体でも、大きな負荷を与える諸刃の剣です」

 

「諸刃の・・・剣・・・」

 

「装者への負担を厭わず、シンフォギアの力を限界以上に撃ち放つ絶唱は、ノイズの大群を一気に殲滅せしえましたが、同時に奏さんの命を燃やし尽くしました・・・」

 

「それは・・・私を救うためですか・・・?」

 

2年前のあの惨劇のライブ、実は響もあの会場に来ていたのだ。響はあの日、突然現れたノイズに襲われそうになったが、それを奏が守ったのだ。響の胸にある傷跡は、ガングニールを纏う奏が響を守ろうとした時に、鎧が砕き、その破片が響に直撃した際にできたものだ。手術によって一命はとりとめ、現在に至るというわけだ。

 

「・・・そして1年後、日和さん、あなたが開いたライブの会場にノイズが襲撃しました。日和さんの話が正しいのであれば玲奈さんはあなたを守るために絶唱を撃ち放ったのでしょう。例え、自分の命が尽きようとも」

 

「玲奈・・・どうしてそこまで私のことを・・・」

 

「玲奈さんの気持ちは、あの時の玲奈さんにしかわかりません。もちろん、奏さんも・・・」

 

緒川は飲み物をまた一口すすり、2人が亡くなった後の翼について話す。

 

「奏さんの殉職・・・そしてツヴァイウィングの解散・・・その後翼さんは、奏さんの抜けた穴を埋めるべく、がむしゃらに戦ってきました。そして1年後の玲奈さんの死亡によって、1人になった翼さんは感情をさらに殺し、自らを鍛えぬきました。同じ世代の女の子が知ってしかるべき恋愛や遊びを覚えず、自分を殺し、一振りの剣として生きてきました。そして今日、剣としての使命を果たすため、死ぬことすら覚悟して、歌を歌いました。・・・不器用ですよね。でもそれが、風鳴翼の生き方なんです」

 

翼の生き方を知り、日和と響は体を震わせ、頬に涙がつたう。

 

「・・・そんなの・・・ひどすぎます・・・。それじゃあ・・・翼さんがかわいそうです・・・。玲奈の・・・バカ・・・!」

 

「・・・そして私は・・・翼さんのことを・・・何にも知らずに・・・一緒に戦いたいだなんて・・・奏さんの代わりになるだなんて・・・」

 

涙を流す響と日和を見て緒川は話を続ける。

 

「僕も、あなたに奏さんの代わりになってもらいたいだなんて、思っていません。そんなこと、だれも望んでいません。日和さんだって、1年前に玲奈さんだけではない・・・日和さんのお友達まで亡くなったのです。日和さんの言った、誰かの代わりはいないの意味が、これでわかったでしょう」

 

「「・・・・・・」」

 

「・・・ねぇ、響さん、日和さん。僕からのお願いを聞いてもらえますか?」

 

「「え?」」

 

「翼さんを、嫌いにならないでください。翼さんを、世界に1人ぼっちになんて、させないでください」

 

「「・・・はい」」

 

緒川からのお願いに、日和と響は涙を拭いて、返事を返した。こうして夜は明け、朝の太陽が、登り始めたのであった。

 

~♪~

 

それから数日後・・・誰もいない音楽教室で日和は誰かとセッションする気分にはなれず、ただ1人でベースを弾いている。だが、ベースの音は持ち主の心が表れてるのか沈んでいた。

 

「・・・翼さん・・・」

 

日和は1か月前に翼と響が揉めていたあの日、翼が泣いていた姿を思い返す。

 

『泣いてなんかいません!!涙なんか・・・流していません・・・。風鳴翼は・・・その身を剣と鍛えた戦士です・・・だから・・・』

 

(翼さん・・・泣いてた・・・。あれはただ・・・強がってただけだったんだ・・・。辛くても・・・悲しくても・・・誰かに涙を見せることなく・・・必死に隠して・・・ただただ一振りの剣として・・・戦ってきたんだ・・・。悔しさも、覚悟も、1人で背負って・・・ずっと・・・ずっと・・・)

 

翼の本当の気持ち、それを出さないとする翼の覚悟を再認識し、日和は自分の弱さを恨み、何も行動してこなかった自分を恥じ、涙を流す。

 

「私・・・本当にダメだ・・・。翼さんは・・・自分を押し殺してまで・・・ずっと・・・戦い続けて・・・。立花さんだって・・・本当は怖いはずなのに・・・1か月も、ノイズと戦って・・・。それなのに私は・・・玲奈から力を託されたのに・・・今日までのうのうと見て見ぬふりをして・・・今の生活に・・・平気で甘えてた・・・。こんな思いをするくらいなら・・・力なんて・・・ほしくなかった・・・!」

 

1人でずっと後悔の涙を流し続ける日和。後悔する日和に、そっと優しく抱きしめた人物がいた。それは、いつの間にかこの音楽教室にきた海恋だった。

 

「どうしたの、日和?今日はいつになく、落ち込んでるじゃない。何かあったの?」

 

「か・・・海恋・・・。う・・・ああああああああああああん!!」

 

「もう・・・本当にどうしたの?」

 

海恋を見て日和は我慢できなくなったのか、海恋に抱き着いて思いっきり大声を出して泣いた。抱き着かれた海恋は驚かず、優しく日和の頭をなで、彼女をなだめる。しばらくの時間が経ち、ようやく落ち着きを取り戻した日和は涙を拭く。

 

「どう?少しは落ち着いた?」

 

「うん・・・」

 

「・・・あのさ。日和が今度は何に対して悩んでるかは知らないけどさ・・・。私は、日和は日和の思うがままに行動したらいいわ」

 

「私の・・・思うがまま・・・?」

 

海恋の言葉に日和は彼女の顔に視線を向ける。

 

「怖いなら逃げ出したっていい。人を振り回したって構わない。日和は、ただ猪突猛進に、自分が信じた気持ちに信じて、行動する方が日和らしいわ。1年前のライブの時だってそう。これが正しいと思ったから行動したんでしょ?だったら、自分の思いに従えばいいと思うわ。それで間違ってるなんて誰にも言わせない。そんなの、私が許さないわ」

 

「海恋・・・」

 

1年間ずっと寄り添ってきた海恋の心からの本音を聞いて、日和は自分の中の気持ちが少しだが和らいできた。

 

「ありがとう、海恋。なんか私、気持ちがすっとしたような気がするよ」

 

「そ。それはなによりね」

 

日和の笑顔を見て笑みを浮かべる海恋は思い出したかのようにスマホを取り出す。

 

「あ、そうだ。前にこと座流星群が流れてたんだけど・・・きれいだったわ。ちょうど動画撮ったんだけど・・・あなた見た?見てないなら見る?」

 

「見てない!!見せて見せて!」

 

日和が自分のスマホを確認したのを見て海恋は撮った動画を流した。動画は動き出したが、動画は真っ黒のままで特に変化がない。

 

「・・・真っ暗だよ?」

 

「・・・ごめん、光量不足みたい」

 

「ダメじゃん!」

 

「「・・・ぷ、あははは!」」

 

どうやら光量が不足しているみたいで流れ星は映らなかったようだ。それがおかしくなって日和と海恋は一緒に笑い出す。

 

「あはは・・・あー、おかし。思わず笑っちゃったよ」

 

「じゃあ日和。私は風紀委員の見回りが残ってるから、もう行くわね」

 

「うん。頑張ってね」

 

「ええ。学院の風紀を乱す奴は私が許さないわ。それが日和であろうともね」

 

「えーー!!そりゃないよーー!」

 

他愛ない話を終わらせて、海恋は風紀委員の見回りに戻った。

 

「・・・自分の思うがままに、か・・・」

 

再び1人になった日和は自分が成すべきこと、やりたいことに関して考える。

 

「日和さん!!」

 

「!立花さん?」

 

するとそこへ響が入ってきた。

 

(そういえば・・・学校でこうして立花さんに会うのは、これが初めてかも・・・)

 

あまり学校では会うことがなかった日和はそんなことを思いつつも、本題に入る。

 

「えっと、何か用かな?」

 

「・・・ごめんなさい!!」

 

「えっ?」

 

響は突然日和に向かって頭を下げて謝ってきた。突然の響の謝罪に日和は戸惑いを隠せなかった。

 

「ど、どうしたの?急に・・・」

 

「日和さんも、お友達が亡くなって辛い思いをしてたなのに私・・・日和さんのこと、何にも知らないで・・・奏さんの代わりになるだなんて・・・。そんなの・・・怒って当然ですよね・・・本当にごめんなさい!!」

 

どうやら昨日の緒川の話で日和の過去を聞いた響は罪悪感を感じてこうして謝りに来たのであろう。

 

「い、いいんだよ立花さん・・・むしろ謝るのは私の方だよ。立花さんにそのことを何も話してなかったわけだし・・・それに、戦いに行ってない私にあれこれ言う権利なんてないわけだし・・・」

 

「・・・私、本当にダメですよね・・・」

 

「立花さん?」

 

「奏さんの代わりになろうって・・・日和さんの代わりにもっとしっかりしなくちゃダメだってずっと思い込んで・・・でも、こんな考え方じゃダメなんだなぁって、気づかされちゃいました・・・。翼さんは、私が思っていたよりも・・・ずっと・・・」

 

「立花さん・・・」

 

顔を俯かせながら語る響に日和は何と声を掛けたらいいかわからなかった。

 

「でも!!」

 

すると響は今度は決意がこもったような顔つきで話を続ける。

 

「こんなダメダメな私にだって、守りたいものはあるんです!今の私に守れるものなんて、小さな約束だったり、何でもない日常くらいなのかもしれません!それでも!守りたいものを守れるように、私、強くなります!!日和さんには、それを聞いてもらいたかったんです!!」

 

「守りたいものを・・・守れるように・・・」

 

響の決意表明を聞いた日和は自分が本当に守りたいものを振り返る。日和の浮かび上がるのは姉の咲とのくだらない世間話や、海恋と過ごす、何気ない日常の日々であった。

 

(私は・・・お姉ちゃんとの楽しい世間話が好き・・・海恋との毎日の学校生活が好き・・・。私にとって2人はかけがえのない大切なもの・・・。それを崩そうとするのは、何があっても許せない!立花さんに守りたいものがあるように・・・私にだって、守りたいものがたくさんあるんだ!その大切なものを守るためには・・・今のまんまじゃダメだ・・・。私は・・・強くなりたい・・・!!)

 

正直、シンフォギアを持ってしても、ノイズに対する恐怖は今もなお拭えない。かけがえのない友を失ったトラウマを、そう簡単に克服はできない。だが・・・今のままでは、大切なものを守ることができない。それでは1年前の二の舞になる。そうさせないためにも、変わらなくちゃいけない。そう考えた日和は、今日まで抱え込んでいた悩みが吹っ飛び、覚悟を持った顔つきになる。

 

「・・・あ、あの・・・日和さん・・・?」

 

「・・・立花さん」

 

「は、はい!」

 

「・・・私・・・覚悟を決めたよ」

 

今まで黙っていた日和に戸惑っていた響に日和は決意したようにそう言い放った。その顔にはもう、迷いは何1つなかった。

 

~♪~

 

二課の司令官である弦十郎の屋敷。事前に住所を教えてもらっていた日和と響は現在門の前までやってきていた。2人は息を吸い、大声を上げる。

 

「「たのもーーー!!」」

 

「うおお⁉なんだ、いきなり?」

 

突然押しかけてきた日和と響に当然ながら弦十郎は驚く。

 

「私に、戦い方を教えてください!!」

 

「私も、お願いします!!」

 

「この俺が・・・君たちに?」

 

「はい!弦十郎さんなら、きっとすごい武術なんか知ってるんじゃないかと思って!」

 

どうやら2人は弦十郎に戦い方を習いに来たようだ。シンフォギアを纏った翼の技を人の身でありながら相殺させた弦十郎ならば戦いにおいての心得を1つや2つ知っていても全くおかしくない。

 

「私は・・・もう守られたままの自分は嫌なんです!私にだって、守りたいものがあるんです!それさえ守れるなら、どんなことだって耐えて見せます!だからお願いです!私に戦い方を教えてください!!私を・・・正式に二課に入れてください!!」

 

守りたいもののために、弱い自分を克服しようと弦十郎に自分の決意表明を伝える日和。懸命な日和と響の姿を見て、弦十郎は腕を組み、少し考えると、2人に視線を向ける。

 

「・・・俺のやり方は厳しいぞ?」

 

「「はい!!」」

 

こうして日和と響は弦十郎の弟子となった。2人は元気よく返事をする。

 

「ときに響君、日和君、君たちはアクション映画とか嗜む方かな?」

 

「「はい?」」

 

弦十郎の質問には理解できない日和と響はきょとんとなった。

 

~♪~

 

弦十郎曰く、漢の鍛錬とは、『飯食って映画見て寝る』だそうで、特訓内容の中にアクション映画を鑑賞し、八極拳を会得するのも含まれている。それを会得するための身体づくりも欠かさず、日和と響は弦十郎の指導の下で筋トレ、模擬戦などを行って自分たちを鍛えていった。そうした特訓を重ね、響は自分にあった格闘術、日和はアームドギアである棍を使った武術を覚えるようになった。

 

「「はぁ~・・・疲れたぁ~・・・」」

 

そういった経緯もあって、日和と響は弦十郎の修業が終わったら一緒に帰ることが多くなった。もとより似た者同士であったがゆえに、仲良くなるのはそう時間はかからなかった。

 

「でもなんだか、強くなったっていう実感が湧いてくるよ。なんて言うか・・・こう・・・どーん!ばーん!みたいな感じでさ」

 

「はい!何言ってるかさっぱりわかりませんが、私も強くなった気がします!」

 

日和と響は他愛ない会話で盛り上がり、修行の疲れを少しでもリラックスさせている。

 

「・・・ごめんね、立花さん」

 

「え?日和さん?」

 

「私もギアを持ってるのに、自分だけ何もしてこなくて。立花さんに迷惑かけちゃったよね」

 

「い、いえ!そんなことありません!むしろ、とても嬉しいんです!」

 

「嬉しい?」

 

響の言う嬉しいの意味がわからず、首をかしげる日和。

 

「私、うまく言えないんですけど・・・これから日和さんも一緒に戦ってくれるんだって思うと、とても心強いです!!」

 

「立花さん・・・ありがとう」

 

響の思いを聞いて日和は笑顔を響に向ける。

 

「私、まだまだ足手まといで、迷惑をいっぱいかけると思うけど・・・翼さんが抜けた穴を何とか埋められるように、頑張るよ」

 

「・・・日和さん!私のことは、ぜひ響って呼んでください!!これから一緒に戦う仲間として、頑張っていきましょう!!」

 

響は日和に手を差し出して、握手を求めている。

 

「・・・うん。これからよろしくね、響ちゃん」

 

「はい!!」

 

日和は響の手を握り、握手で親睦を深めていくのであった。




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