戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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いつもなら後書きは解説なんですけど、今日は少しばかり趣向を変えてみました。


こんなにも、残酷だけど

海恋に話があると言われ、外に出た響は彼女と共にどこかに向かっている。隣には響が心配ということで未来もついてきている。海恋曰く、ここでは話せないということらしい。

 

「海恋さん、どこまで行くんですか?」

 

長い道のりを歩いているからか、響がそう質問してきた。

 

「もう少しよ」

 

響の質問に海恋はそう返した。歩いて先へ進んでいくと、海恋は立ち止まる。立ち止まった場所の先にある光景を見て、響と未来は感嘆な声を上げた。

 

「「わぁ~・・・!」」

 

「あれが・・・私の実家・・・西園寺家の屋敷よ」

 

遠くからでもよく見えるその光景とは、海恋の実家である西園寺家の洋屋敷であった。西園寺家の屋敷を見た響と未来は目を輝かせている一方で、海恋はかなり複雑そうな顔をしている。

 

「ここが海恋さんの家・・・す、すごい!」

 

「本当・・・次元が違いすぎる・・・」

 

「・・・本当は、夢を叶えるまでは、帰ってくる気はなかったんだけどね・・・」

 

「海恋さん・・・?」

 

久しぶりの実家を見ても嬉しくなさそうな海恋に気付いたのか、響と未来は首を傾げる。海恋は自分の両親ついて話す。

 

「・・・西園寺家は代々続いている名家でね、西園寺家に生まれた父も西園寺の血を誇りにしていて、西園寺家をもっと大きくすることに熱を注いでいた。だから誰に対しても厳しかった。・・・娘である私に対しても」

 

海恋は西園寺家で過ごしてきた日々を思い出す。学びたくもない帝王学を学ばせられたり、進むべき進路を勝手に決められて医療学問を学ばせたりした。会社の社交パーティに参加させられたり、エリート学校に通わせられ、トップの成績を叩きだして全ての生徒から反感を買われたりと、普通の子供では耐え切れないような生活を海恋は送ってきた。

 

「子供の夢を否定して、西園寺家の業績だけを考える父。父に魅了され、母親らしいことをしてこなかった母。使用人も父の言いなり。私にとっての味方はじいやだけ。あの家で過ごしてきた思い出なんて何1つない。本当に・・・最低の家族よ」

 

「「海恋さん・・・」」

 

西園寺家に生まれた者の宿命ともいえる実態を聞いた響と未来は壮大でありながらも苦しい生活を送った海恋に同情している。

 

「でもね・・・それでも私は・・・今のあの人たちが・・・本当の私を認めてほしいって願ってる!叶わないかもしれない願いを・・・願い続けてる!西園寺家の道具じゃない・・・ただ1人の人間・・・西園寺海恋という人間を認めてほしい・・・私を・・・娘として見てほしいって・・・!」

 

海恋は心の内に秘めた両親に認められたいという気持ちを屋敷を見て、大きな声でしゃべった。自分の親が何を言ったところで聞く耳を持たないことは海恋が1番知っている。だから彼女は両親に認めてもらうために夢であるクラシック音楽家になると決めているのだ。その決意表明のためにこの屋敷には戻らないと決めていたのだ。その決意を破ったのは、響に、前へ進んでほしいと思ったからだ。

 

「・・・洸さんも、同じ思いなんじゃないかしら?」

 

「え・・・?」

 

自分の話から突然洸の話にすり替えた海恋に響は驚いた顔をする。

 

「だってそうでしょう?家族を見捨てて逃げ出しておいて、やり直したいなんて、都合がいい。そんなことは洸さんだってわかってるはずよ。それでもあなたに何度電話を切られても、諦めずにあなたに電話をかけている。それは、あなたに父親であるってことを認めてもらいたいってことじゃないかしら」

 

「それは・・・」

 

海恋の解釈に響は戸惑っている。海恋はそんな響に微笑みを見せる。

 

「・・・立花さん。あなた、洸さん・・・お父さんのこと、好きなんでしょ?」

 

「!!」

 

「やっぱりね」

 

響が洸の事が好きなんだと指摘すると、響は驚いたような反応をする。それを見て海恋は直感は当たっていたと言った顔をする。

 

「その少しでも好きだという気持ちがあるなら・・・1度だけでもいい。話し合うべきだわ。今までだって、敵味方関係なしに、そうして来たでしょ?何も行動しなかったら・・・あなたはきっとこの先、後悔すると思うわ」

 

「でも・・・私、怖いです・・・。どうなるのか不安でたまらない・・・」

 

まだ洸と向き合う覚悟が決まらない響に海恋は彼女の頭を撫でる。

 

「立花さん。こういう時こそ、へいき、へっちゃら、でしょ?」

 

「!海恋さん!」

 

「その言葉・・・」

 

海恋が響の口癖である『へいきへっちゃら』を口にして、響と未来は驚いた顔をする。

 

「あなたの口癖でしょ」

 

「・・・はい。いつから口癖になったのかは忘れたけど・・・どんな辛いことがあっても何とかなりそうになる魔法の言葉なんです」

 

「なら、その魔法の言葉を信じて、なんとかできるって思いなさい。きっとうまくいくから」

 

「海恋さん・・・」

 

海恋の励ましによって、響は笑み浮かべた。同時に、響の気持ちも固まった。

 

「ありがとうございます。私・・・もう1度だけ、お父さんと話をしてみます!」

 

「なら、悔いのないように、頑張りなさい」

 

「はい!」

 

響の決意を確認できた海恋は自分なりのエールを送った。海恋の応援の言葉に響は笑顔で答える。元気を取り戻した響に未来も笑みを浮かべている。

 

「元気が出たね。海恋さんと魔法の言葉に感謝しないと」

 

「うん!そうだね!」

 

互いに笑いあう響と未来を見て、海恋はほっとした表情を見せる。

 

「そろそろ帰りましょうか」

 

「「はい」」

 

3人は寮に戻る帰路を歩いていく。その途中で海恋は歩みを止め、西園寺家の屋敷に振り向く。

 

「・・・次に来る時は、私が夢を叶えたその日。その時まで・・・さようなら・・・お父様・・・お母様・・・」

 

海恋は深くお辞儀をして、屋敷にいるであろう自分の父と母に別れの言葉をかけた。挨拶を終えた海恋は2人と共に寮に戻っていった。

 

~♪~

 

八紘邸の屋敷の破壊された要石の前で、上半身のみが残ったファラは狂気が込められた笑みを浮かべながら口を開く。

 

「知らず毒は仕込まれて、知るころには手の施しようがないまま、確実な死をもたらしますわ」

 

「毒・・・?」

 

S.O.N.G本部に毒が仕込まれている。翼たちはその毒が何を指しているのかわからず、首を傾げる。

 

~♪~

 

一方その頃、S.O.N.G本部で弦十郎たちは本部に仕込まれた毒とは何であるのか・・・その推測をしている。

 

「俺たちの追跡を的確に躱すこの現状・・・聖遺物の管理区域の特定したのも・・・まさか、こちらの情報を出歯亀にして・・・?」

 

「それが仕込まれた毒・・・内通者の手引だとしたら・・・」

 

内部に侵入し、キャロルと内通し、情報を送っていた。その可能性がある人物とは、この中では、たった1人しかいない。唯一キャロルと接点がある人物・・・エルフナインだ。

 

「ち、違います!!ボクは何も・・・ボクじゃありません!!」

 

疑いの目を向けられたエルフナインはすぐに否定をする。すると・・・

 

『いいや、お前だよ、エルフナイン』

 

突如としてキャロルの声が聞こえてきた。全員が驚いていると、エルフナインから分離するようにキャロルの幻影が現れる。

 

「これは・・・いったい・・・⁉」

 

「なんで・・・?」

 

キャロルが自分たちの本拠地に現れたこの現象に弦十郎たちは驚きを見せている。

 

「キャロル・・・そんな・・・ボクが・・・毒・・・?」

 

エルフナインは自分自身が毒であったと気づいていなかったのか、困惑した表情を浮かべている。

 

~♪~

 

S.O.N.G本部に仕込まれた毒について、緒川がファラに問いただす。

 

「あなたの言う毒とは、いったい何を意味しているのですか⁉」

 

「マスターが世界を分解するために、どうしても必要なものがいくつかありましたの。魔剣の欠片が奏でる呪われた旋律。それを装者に歌わせ、体に刻んで収集することが、私たちオートスコアラーの使命!」

 

「では、イグナイトモジュールが!!?」

 

ファラは瞳孔を動かしながら答えた。魔剣ダインスレイフの欠片を持ってきたのはエルフナイン。これだけで毒の正体がエルフナインであると翼たちは気づいた。だが、エルフナインは大切な仲間であると信じているマリアとフォルテはそれを否定する。

 

「バカな!!?エルフナインを疑えるものか!!」

 

「仮にそれが本当だとして・・・リリィが僕を殺そうとしてきたことはどう説明する!!」

 

フォルテの言うとおり、リリィはフォルテを何度も殺しにかかろうとしてきた。それを指摘されたファラは答える。

 

「リリィはあらゆる無駄を嫌い、あらゆる可能性を重視して行動します。剣ちゃんが助けに入ることを計算したのも、あなたに殺害宣言をしたのも・・・全ては計画の真相を隠すため。恐ろしい子ね・・・マスターのためなら自分の性格さえも利用するなんて」

 

リリィの行動が全て計算されたうえでの行動であったと聞かされたフォルテは驚愕で目を見開かせる。だが事実としてリリィは計算外なことはあれど、命令通りにイグナイトモジュールで破壊された。

 

「最初にマスターが呪われた旋律をその身に受ける事で、譜面が作成されますの。後はあなたたちにイグナイトモジュールを使わせればいいだけの、簡単なお仕事」

 

「最初から全部仕組まれていたのか!!?」

 

計画の詳細を全て話し終えたファラは満足そうに笑い、自ら自爆して爆ぜた。起こった爆発に緒川とフォルテは翼とマリアの前に出て風呂敷で覆って爆発から守った。そのおかげで全員傷を負わずに済んだ。宙には粉塵が舞っている。

 

「呪われた旋律を手に入れれば、装者を生かす道理がなくなったということなの!!?だから、こちらの気を引くことを滑らかに・・・」

 

敵の狙いがわかったことで、これ以上、イグナイトモジュールを使うわけにはいかなくなった。

 

「緒川さん!本部に連絡を!イグナイトモジュールの使用を控えさせなければ・・・」

 

「ダメです!おそらくこの粉塵が・・・」

 

「付近一帯の通信攪乱・・・周到な!」

 

緒川は本部への通信を行うが、付近一帯を舞うこの粉塵が通信を妨害しているため、連絡が取れない。用意周到な対応にマリアは毒づく。

 

「残るオートスコアラーは1体・・・奴は深淵の竜宮に・・・!あそこには東雲たちが・・・!」

 

ファラの言うとおり、毒の存在に気付いた頃にはもう手の施しようがなかった。フォルテたちは八紘邸を後にした。

 

~♪~

 

自身が毒であったと困惑するエルフナインにキャロルはさらに話を続ける。

 

『とはいえ、エルフナイン自身、自分が仕込まれた毒であるとは知る由もない。オレが此奴の目を、耳を、感覚器官の全てを一方的にジャックしてきたのだからな』

 

「ボクの感覚器官が・・・勝手に・・・?」

 

『同じ素体から作られたホムンクルス躯体だからこそできることだ』

 

つまりキャロルはエルフナインの感覚器官を一方的に使ってS.O.N.Gの内部情報を手に入れ、作戦や行動パターンを把握していたのだ。以前シャルが言っていた『全部筒抜け』とはこのことを指していて、全てはキャロルの掌の上で踊らされていたのだ。キャロルを止めるはずが、自分が彼女の計画を手助けしていたことに気付いたエルフナインは贖罪を求める。

 

「お願いです・・・ボクを拘束してください!誰も接触できないよう、独房にでも閉じ込めて・・・いいえ・・・キャロルの企みを知らしめるというボクの目的は既に果たされています・・・だから・・・だからいっそボクを・・・!」

 

泣きそうになりながら、自分を殺めてほしいと懇願しようとするエルフナインに弦十郎は彼女の頭に優しく手を乗せる。

 

「ならよかった・・・エルフナインちゃんが悪い子じゃなくて・・・」

 

「敵に利用されただけだもんな」

 

「友里さん・・・藤尭さん・・・?」

 

「君の目的はキャロルの企みを止める事。そいつを最後まで見届ける事」

 

「弦十郎さん・・・」

 

「だからここにいろ。敵に覗き見されようとも、構うものか」

 

「は・・・はい!」

 

艦内にいる全員は、今日まで共に過ごしてきたエルフナインの味方であり続けた。例えキャロルに全てを覗かれていたとしても関係ない。

 

『・・・ちっ・・・!』

 

キャロルの幻影は使われるだけの存在であったエルフナインがS.O.N.Gのメンバーとして受け入れられているこの結果に面白くなさそうに舌打ちをして消えた。

 

~♪~

 

錬金術を使って本部に幻影を創り出していたキャロルは錬金術を解除する。

 

「・・・使われるだけの分際で・・・!」

 

計画のために創り出したエルフナインが自分にたてついてきたのだ。この結果は彼女にとって不愉快以外何者でもない。キャロルが錬金術を使っている間にも、日和たちが追い付いてきた。

 

「ここまでよ!キャロル、ドクター!」

 

「さっきみたいにはいくもんかデス!」

 

「だがすでに、シャトー完成に必要な最後のパーツの代わりは入手している」

 

追いつかれてもキャロルは余裕の表情を崩すことなく、アルカ・ノイズの結晶をばら撒き、アルカ・ノイズを召喚する。キャロルの言う最後のパーツの代わりとは、言うまでもなくウェルのネフィリムの腕だ。

 

「子供に好かれる英雄ってのも悪くないが・・・あいにく僕はケツカッティンでね!!」

 

「誰がお前なんか!!」

 

「こいつだけは絶対にぶん殴る!!!」

 

ウェルの煽りに切歌と日和は怒鳴り声をあげる。その間にもアルカ・ノイズが並び、装者たちもギアネックレスを取り出し、詠唱を唄う。

 

Zeios Igalima Raizen tron……

 

4人はシンフォギアを身に纏い、戦闘を開始する。切歌は鎌をアルカ・ノイズに振るって真っ二つにする。調は高く跳躍し、ツインテール部位のアームを展開し、複数の小型丸鋸をアルカ・ノイズに放つ。

 

【α式・百輪廻】

 

複数の丸鋸は次々とアルカ・ノイズを蹴散らしていく。日和は両手首のユニットから2つの棍を射出してそれを手に持って振るってヌンチャクにし、炎を纏わせる。そしてそのままアルカ・ノイズの群れに突撃し、演舞のように舞いながらヌンチャクを振るいながらアルカ・ノイズを焼き払っていく。

 

【気炎万丈】

 

クリスはボウガンをピストルに変形させて、アルカ・ノイズの群れの中心に入り、1体1体と次々とアルカ・ノイズを撃ち抜いていく。ここでレイアが動き出した。レイアはコインを重ね合わせ、錬金術でトンファーに形作り、クリスに接近する。レイアはクリスと距離を詰め、クリスの射撃をトンファーで受け止めつつ躱しながらトンファーと蹴りで攻撃を仕掛ける。

距離を詰められた程度で後れは取らないクリスはレイアにピストルの弾丸を撃ち放つ。レイアは弾丸を華麗なステップを踏みながら躱し、地にコインを投擲する。投擲されたコインが基点となり、地の錬金術で岩が隆起し、足元にいたクリスは吹っ飛ばされる。

 

「がはっ!!」

 

「後は私と、間もなく到着する妹で対処します」

 

「オートスコアラーの務めを・・・」

 

「派手に果たしてみせましょう」

 

後の対処をレイアに任せ、キャロルは足元にテレポートジェムを割って、転送陣を出現させる。ウェルも転送陣の上に乗る。

 

「ばっはは~い!」

 

ウェルは4人を嘲笑うように手を振って、キャロルと共にチフォージュ・シャトーに転送される。

 

「待ちやがれ!!」

 

クリスは2人を追いかけようとしたが、そうはさせまいとレイアが立ちふさがり、隙だらけとなった彼女の顔面をトンファーで殴打される。殴られたクリスは宙に浮き、地面に叩きつけられる。

 

「また勝手に突っ走って!!」

 

「まずいデス!!大火力が使えないのにまともに飛び出すのは!!」

 

「ダメ!流れが淀む・・・!」

 

3人はクリスの援護に向かおうとしたが、レイアの追撃が襲い掛かる。レイアはコインを空中にばら撒き、空中に舞うコインはマシンガンのように放たれた。日和は2つのヌンチャクを棍に戻して連結し、回転させることで向かってきたコインを弾く。切歌は何とか踏ん張って耐えるが、調はまともにコインをくらって吹き飛ばされる。レイアはそこを突いて2つのコインを巨大化させて放ち、調と切歌を押しつぶした。巨大化したコインは霧散し、2人は倒れる。

 

「2人とも!!」

 

日和は2人に駆け寄ろうとした時、日和の上空に巨大化したコインが降ってきて、押しつぶさんとしている。それに勘づいた日和は棍をコインに向かって突きたてて防いだ。

 

「お・・・押しつぶされる・・・!!」

 

日和は力を込めて、押しつぶされないように踏ん張っている。そこで倒れていたクリスがゆっくりと目を開けた。彼女の瞳に倒れた切歌と調と、今にも押しつぶされそうな日和の姿が映っていた。

 

「あ・・・相棒!!!」

 

「く・・・クリス・・・」

 

クリスは日和を助けようと動き出したが、その前に日和は押し切れず、コインに押しつぶされてしまう。状況は違えども、この光景はダインスレイフの呪いで見た光景と似ていた。大切な後輩と相棒を守ろうと戦っていたはずが、それを壊したのは自分自身であったと自分を責め、涙を流す。

 

「1人ぼっちが・・・仲間とか友達とか・・・先輩とか後輩とか・・・相棒なんて・・・求めちゃいけないんだ・・・!でないと・・・でないと・・・残酷な世界が皆を殺しちまって・・・本当の1人ぼっちになってしまう・・・!なんで・・・世界はこんなにも残酷なのに・・・パパとママは歌で救おうとしたんだ・・・!」

 

クリスは地に膝をつけ、悲しみに暮れる。だがレイアはそんなことで考慮などしない。

 

「滂沱の暇があれば、唄え!」

 

レイアは跳躍し、落下の勢いに乗ってトンファーをクリスに振るう。その一撃が振るわんとした時、倒れていたはずの調がツインテール部位の伸ばしたバインダーで、切歌は鎌でトンファーを防いだ。

 

「なっ・・・!」

 

「1人じゃないデスよ!」

 

「未熟者で・・・半人前の私たちだけど・・・!傍にいれば、誰かを1人ぼっちにさせないくらいには・・・!」

 

攻撃を受け止められたレイアはさらに力を込め、既にボロボロになった2人を押し返す。

 

「「うああああ!!」」

 

「2人とも・・・」

 

「自分が1人ぼっちだなんて、勝手に決めつけんな、バカクリス!!」

 

巨大化したコインから巨大な棍が伸びてきて、コインを貫いた。それと同時に日和が飛び出してきて、ブースターを使ってレイアの懐まで接近し、彼女を殴り飛ばした。レイアは吹っ飛ばされ、壁に激突する。

 

「相棒・・・」

 

「1人じゃあ、先輩も後輩もないでしょ?響ちゃんや未来ちゃん、しぃちゃんや切ちゃんがいてくれるから・・・私たちは初めて、先輩としていられるんだよ?」

 

日和は満身創痍の状態で片膝を地に付けながら、クリスにそう言った。日和の言葉に、切歌と調も口を開く。

 

「後輩を求めちゃいけないとか言われたら、ちょっとショックデスよ・・・」

 

「私達は、先輩が先輩でいてくれること・・・頼りにしてるのに・・・」

 

2人がいてくれているからこそ、自分は先輩としていられる。自分が間違ってたら相棒が正してくれる。それらのことに気付いたクリスは再起する。

 

「そっか・・・あたしみたいなのでも、先輩やれるとするならば・・・お前たちみたいな後輩がいてやれるからなんだな・・・!相棒は・・・それを伝えようとしてくれていたんだな・・・!」

 

流れが変わったことに勘づいたレイアは即座に立ち上がり、構え直す。

 

「もう怖くない・・・!イグナイトモジュール!抜剣!!」

 

クリスはギアコンバーターのスイッチを押し、イグナイトを起動する。ギアコンバーターは『ダインスレイフ』という音声が鳴り、宙を舞って変形し、展開された光の刃がクリスの胸を刺し貫く。ダインスレイフの呪いが、光の刃を通して彼女の身体に流れ込む。だが、今のクリスならば、この呪いに打ち勝てる。

 

(あいつらが・・・あたしをギリギリ先輩にしてくれる・・・!相棒が・・・あたしに激励をくれる・・・!そいつに応えられないなんて・・・他の誰かが許しても・・・あたし様が許せねぇってんだあああああ!!)

 

クリスは呪いを打ち破り、漆黒の闇を力へと変えた。闇はクリスの身に纏い、シンフォギアへと形作り、クリスの力となる。クリスはボウガンをレイアに向け、矢を連射させる。レイアはボウガンの矢をトンファーを回転させて全て叩き落とし、そのまま接近戦に持ち込む。殴りかかったレイアにクリスはボウガンをピストルに変形させて、攻撃を躱しつつ、ピストルの弾を撃ち放ちながら応戦する。その動きには全くの無駄がなく、攻撃と防御をちゃんと使い分けている。

 

(失うことの怖さから・・・せっかく掴んだ強さも暖かさも全部、手放そうとしていたあたしを止めてくれたのは・・・!)

 

クリスはちらりと視線だけを向ける。その視線に気づいた日和はグッドサインを送った。クリスは2つのピストルを連結させ、ロングライフルを形作った。

 

「ライフルで・・・?」

 

「殴るんだよ!!」

 

クリスの行動に虚を突かれ、驚愕するレイアにクリスはロングライフルを鈍器のように振り下ろして打撃を放った。

 

【RED HOT BLAZE】

 

(先輩と後輩・・・頼れる相棒・・・この絆は、世界がくれたもの・・・!世界は大切なものを奪うけど、大切なものをくれたりもする!そうか・・・!パパとママは、少しでももらえるものを多くするため、歌で平和を・・・!)

 

せっかくもらった絆をもう手放しはしない。その思いを胸にクリスは大型ミサイルを展開し、レイアに向けて発射する。

 

【MEGA DETH FUGA】

 

高速で向かってくるミサイルの1つをレイアは叩き折る。だがもう1つのミサイルの上にクリスが乗っており、それが今こちらに向かってきている。

 

「諸共に巻き込むつもりで・・・⁉」

 

レイアはトンファーを元の複数枚のコインに戻し、コインを弾いて投擲し、ミサイルを撃ち落とそうとする。クリスは向かってきたコインをガトリング砲を撃ち放って破壊していく。そして同時に、ミサイルの下からかいくぐるように竜巻が通り抜けてきた。この竜巻は、遠くで日和が棍を回転させて放ったものだ。

 

【疾風怒濤】

 

迫ってくる竜巻にレイアはミサイルに直撃しないようにより高く跳躍して躱した。だがそれは日和とクリスの狙い通りだ。ミサイルは突如軌道を変えて、そのままレイアに向けて一直線に進む。

 

「ミサイルを曲げて・・・!!?」

 

空中にいる以上、レイアはこのミサイルからは避けられない。だがこのままではクリスも巻き込まれてしまう。日和の放った竜巻は軌道を変え、ミサイルの直撃コースを外れないようにしつつ、レイアを吹き飛ばす。そのタイミングで切歌がアンカーを放ち、クリスの身体に巻き付け、爆発に巻き込まれないように彼女を引っ張って戦線を離脱させる。レイアは自身の使命を果たせたことに笑みを浮かべ、ミサイルの直撃をくらった。

 

「しぃちゃん!」

 

「スイッチの場所は覚えてる!!」

 

調はツインテール部位のアームを展開し、小型丸鋸を複数放ち、隔壁のスイッチを撃ち抜いた。最初の日和の竜巻はレイアを隔壁まで誘導するためのものだったようだ。爆風が迫ってくるところで隔壁は閉じ、クリスもギリギリ閉じきる前に回収できた。4人の連携が決まり、切歌はガッツポーズをとる。

 

「やったデス!」

 

「即興のコンビネーションでまったくもって無茶苦茶・・・」

 

「その無茶は、頼もしい相棒と後輩がいてくれてこそだ」

 

クリスは調と切歌の手を取って笑みを浮かべる。

 

「ありがとな」

 

2人はその言葉を聞いて、笑みを浮かべる。そしてクリスはすぐに日和に顔を向ける。

 

「あん時は、カッとなってた。ごめんな、相棒」

 

クリスの謝罪の言葉を聞いて、日和はもう大丈夫だなと思い、笑みを浮かべる。

 

「何々~?クリスにしてはしおらしい~♪」

 

「お前、この野郎!」

 

「わー♪」

 

日和に茶化され、クリスは自分の腕を彼女の首に巻き付ける。2人はお互いに笑いあい、傍から見ればじゃれ合っているように見える。元の関係に戻った2人に調と切歌も笑顔を浮かべている。だが、そんな余韻に浸っている余裕はない。施設内が大きく揺れ始めた。

 

~♪~

 

S.O.N.G本部でも非常事態を感知し、アラームが鳴り響いている。

 

「深淵の竜宮、被害拡大!クリスちゃんたちの位置付近より、圧壊しつつあります!」

 

「この海域に接近する巨大な物体を確認!」

 

さらにこの海域に接近する物体をモニターで確認した。近づいてきたのは、巨大人型兵器、レイアの妹だ。

 

「これは・・・!」

 

「いつかの人型兵器か!」

 

あの時は何とか振り切ることができたが、今回も同じように行くとは限らない。さらに日和たちの帰りも待たねばならないのだ。かなり危機的状況だ。

 

「装者たちの状況は⁉」

 

弦十郎が指示を出している間にも、レイアの妹はどんどん近づいてきている。

 

~♪~

 

崩壊が始まっている深淵の竜宮で日和は切歌を、クリスは調を背中に担いで自分たちが載ってきた小型潜水艦まで目指す。2人はLiNKERが切れてギアが解除されている。

 

「ちょ・・・死ぬ!死んじゃうってばぁ!!」

 

「ダメ、間に合わない・・・!」

 

「さっきの連携は、無駄だったデスか・・・?」

 

「まだだ!まだ諦めるな!!」

 

諦めないで走ったおかげで4人は何とか間に合い、小型潜水艦までたどり着いた。日和とクリスは先に調と切歌を潜水艦に乗り込ませ、後から自分たちも乗り込んだ。小型潜水艦は深淵の竜宮から脱出し、本部である潜水艦に帰投した。

 

「潜航艇の着艦を確認!」

 

「緊急浮上!油圧を気にせず、振り切るんだ!!」

 

潜水艦は可能な限りのスピードを出し、浮上させようとするが、レイアの妹が追ってくる。

 

「総員をブリッジに集め、衝撃に備えろ!急げ友里!!」

 

友里は慌てず、冷静にコンソールを叩く。潜水艦は夜明けの光を指した海面に浮上した。が、同時にレイアの妹も海面から姿を現し、その巨大な右腕を振り上げた。そして、巨大な右腕が振り下ろされ、潜水艦は真っ二つに叩き割られた。

 

~♪~

 

ちょうど同じころ、学生寮の窓から響は太陽が昇っていくその瞬間を見ていた。

 

「決戦の朝だ・・・」

 

昨日の海恋の話のおかげで、響の覚悟は決まった。後は、実行するだけだ。




3年生組の学力成績(2年生だった時)

日和「・・・・・・」チーン・・・

クリス「お前、何死んでんだよ・・・」

日和「だって・・・」

海恋「あんたが赤点とって補修になったのはそもそも勉強不足が原因なんでしょうが・・・」

日和「えーん!勉強やだよー!」

海恋「やだよじゃない!」

日和「だいたい何でクリスは補修になってないんだよ~。こんなのおかしいよ、あんまりだよ~・・・」

クリス「あたしはちゃんとコツコツやってんだよ!お前と一緒にすんな!」

海恋「でも意外ね。編入し立てでテストで上位成績を収めるなんて。やるじゃない」

クリス「あ、あたしのことはもういいだろ。お前は・・・まぁ言うまでもないわな・・・」

日和「本当にすごいよね~、学年1位だなんて・・・さすが海恋!」

海恋「まぁ少し手こずった問題はあったけど・・・って、誤魔化そうたってそうはいかないわよ。さあ、今から勉強会するわよ」

日和「うわーん!逃げきれなかったー!やだやだやだ!勉強やだー!」

海恋「クリス、もし赤点取りそうだったらいつでも言いなさい?みっっっっっっっちり勉強、教えてあげるから」目の光が消えた。

クリス「あ、ああ・・・そん時は頼むわ・・・
   (・・・こりゃ是が非でも赤点は取れねぇなぁ・・・)」

海恋の勉強会に対し、クリスは実態を知らないながらも、恐怖を覚えた。
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