戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

81 / 105
顕現、チフォージュ・シャトー

S.O.N.Gの本部である潜水艦がレイアの妹によって破壊された。だが、ブリッジはギリギリのタイミングで切り離されたため、そこは壊されずに済んだ。だが外部の衝撃によって大きな揺れが発生し、何かに捕まっていないと地面に叩きつけられてしまう。そこに照明が外れ、友里の頭上に落ちてくる。

 

「危ない!!」

 

同時にエルフナインが友里に飛び掛かった。

 

~♪~

 

潜水艦が割れたタイミングでブリッジからミサイルが発射される。ミサイルの装甲が割れると、イグナイト状態のままのクリスが現れ、宙を舞ったまま大きな弓を展開し、狙いをレイアの妹に定め、矢型のミサイルを放った。

 

【ARTHEMIS SPIRAL】

 

放たれたミサイルの矢はブースターが点火し、加速して速度を上げ、レイアの妹の腹部を射抜いた。腹部を貫かれたレイアの妹は爆発する。爆発によって発生する波がブリッジを揺らすが、転覆することはなく、クリスはブリッジの上に乗った。

 

「本部が・・・連中は、何もかもをまとめてぶっ飛ばすつもりで・・・!」

 

クリスは空を見上げた後、急いでブリッジの中に入る。

 

~♪~

 

ブリッジの内部は照明が外れたことで薄暗い。友里が目を覚ますと、エルフナインが自分に覆いかぶさっていた。

 

「エルフナインちゃん!!?」

 

「ボクは・・・誰に操られたんじゃなく・・・」

 

エルフナインはそのまま力が抜け落ちたように気を失う。よく見てみれば、彼女の腹部が出血していた。そこに帰還した日和、調、切歌の3人が駆け寄ってきた。

 

「エルフナインちゃん!」

 

「大丈夫デスか⁉」

 

「早く手当しないと!」

 

「2人とも、早く救急セットを!」

 

「「は、はい(デス)!」」

 

エルフナインの怪我を見た日和は2人に救急セットを持ってくるように指示を出す。日和も一応は医者の娘。こういう時の応急処置のやり方くらいは知っている。指示を受けた2人は急いで救急セットを取りに向かった。

 

「目を開けて!エルフナインちゃん!エルフナインちゃん!!」

 

友里はエルフナインに呼び掛けるが、彼女は目を閉じたまま、目を開けなかった。

 

~♪~

 

一方その頃、響は前にも来たカフェで洸と会っていた。洸は前回と同じように響にご飯を奢ってもらっていた。

 

「悪いな・・・腹減ってたんだ」

 

「うん・・・」

 

食事を終えた洸と話をする前に響は自分のスマホのメール画面を見る。差出人は未来からだ。その文面は『へいき、へっちゃら』という例の魔法の言葉だ。そして、心強い味方は未来だけではない。

 

「なんで俺がこんなことに付き合わなきゃいけねぇんだ?意味わかんねぇ」

 

「嫌なら検査入院でもする?あんたが嫌いな病院で一晩過ごしたいなら別にいいわよ?」

 

「ちっ・・・しょうがねぇなぁ~・・・きったねぇ手使いやがって・・・」

 

洸の後ろの席には海恋と大悟がいた。海恋は成り行きを見守るために先に来ていたのだ。そして、響たちと無関係を装うためにわざわざ大悟を連れてきて、カップルを演出しているのだ。全然そんな風には見えないが。ちなみになぜ大悟を選んだのかは、他に頼れる男がいないからだそうだ。

 

(ありがとう、未来、海恋さん・・・)

 

心強い味方がいてくれることに響は安堵し、意を決して洸と話をする。

 

「あのね・・・お父さん・・・」

 

「どうした?」

 

「本当に・・・お母さんとやり直すつもり・・・?」

 

「本当だとも。お前が口添えしてくれたら、きっとお母さんも・・・」

 

「だったら!はじめの一歩は、お父さんが踏み出して・・・。逃げ出したのはお父さんなんだよ?帰ってくるのも、お父さんからじゃないと・・・」

 

響の勇気を出した訴えに洸は席に座り直し、弱気ながらも話す。

 

「・・・そいつは嫌だなぁ・・・。だって・・・怖いだろ・・・?何より俺には、男のプライドがある」

 

本当なら海恋は洸の弱気な発言にここでビシッと言ってやりたいところだが、自分にそんな資格はないと思い、そしてこれは響と洸の問題であるが故、あえてコーヒーを飲み、諦観の姿勢を取っている。大悟はもとより興味がなく、つまらなさそうにホットドックを食べている。

 

「私・・・もう1度やり直したくて・・・勇気を出して会いに来たんだよ・・・?」

 

「響・・・」

 

「だからお父さんも、勇気を出してよ!」

 

「だけど・・・やっぱり、俺1人では・・・」

 

情けない姿を見せる洸に響は顔を俯かせる。

 

「もうお父さんは・・・お父さんじゃない・・・1度壊れた家族は・・・元に戻らない・・・」

 

洸は響に何か声をかけようとしたが、何と声をかければいいかわからず、思わず窓の外を見る。

 

「もうさ・・・あれ無理だろ。ダッセェ姿見せちゃそりゃそうなるわ」

 

「立花さん・・・」

 

海恋は少し悲しそうな顔で後ろを振り向いて響を見ている。大悟は残ったホットドッグを食べながら窓を見つめる。窓の外には小さな子供と母親が手を繋いでいる姿があった。子供は転び、その拍子に持っていた赤い風船を手放してしまい、泣きじゃくる。大悟が赤い風船を目で追って空を見上げる。すると、空が急に割れ、割れた空間の中から何かが出てきた。

 

「な、なんなんだ!!?」

 

「空が・・・割れる・・・⁉」

 

「おいおいおい・・・一昨日からなんだってんだよ!!?」

 

「まさか・・・あれが・・・チフォージュ・シャトー・・・?」

 

そう・・・あの巨大な城のような建造物こそが、キャロルの居城にして、ワールド・デストラクター・・・チフォージュ・シャトーだ。

 

~♪~

 

シャトーの玉座の間。中央にはワール・ドデストラクターの起動のためのコンソールがあり、ウェルはネフィリムの腕を突っ込んで起動を試みている。

 

「ワールド・デストラクターシステムをセットアップ。シャトーの全機能をオートドライブモードに固定・・・」

 

起動の工程を完了させたウェルはネフィリムの腕をコンソールから引き抜き、下卑た笑みを浮かべる。

 

「けけけ!どうだ!僕の左腕は!トリガーパーツなど必要としない!僕と繋がった聖遺物は、全て意のままに動くのだ!!」

 

「オートスコアラーによって、呪われた旋律は全てそろった。これで世界はバラバラにかみ砕かれる・・・」

 

「あぁん?世界を・・・かみ砕くぅ・・・?」

 

キャロルの目的に今初めて知ったウェルは急に顔をしかめ、キャロルに顔を向ける。

 

「父親に託された命題だ・・・」

 

キャロルは悲しそうな顔をして俯き、父、イザークが処刑された日・・・彼の言葉を思い返す。

 

『キャロル。生きて・・・もっと世界を知るんだ』

 

「わかってるって!だから世界をバラバラにするの!解剖して分析すれば、万象の全てを理解できるわ!」

 

さっきまでの冷たい言動とは打って変わって、かつての自分のようなかわいらしい声をキャロルは上げたが、彼女の目には光が宿っていなかった。

 

「つまり至高の叡智!ならばレディは、その知をもって何を求めるぅ?」

 

「何もしない・・・」

 

「あぁん?」

 

ウェルは膝を曲げ、キャロルと視線を合わせる。キャロルの言動はまぶたを閉じた時に元に戻っていた。

 

「父親に託された命題とは、世界を解き明かすこと。それ以上も以下もない」

 

「オウ・・・レディに夢はないのかぁ・・・?」

 

ウェルはキャロルの真の目的に心底呆れ、自分の英雄の価値観を演説する。

 

「英雄とはあくなき夢を見、誰かに夢を見せる者!託されたものなんかで満足してたら、底もてっぺんもたかが知れる!!」

 

「・・・『なんか』・・・と言ったか・・・?」

 

父親から託された命題・・・それを貶され、侮辱されたキャロルは光が戻った瞳で、ウェルに怒りを露にする。

 

~♪~

 

突然現れたチフォージュ・シャトー。これによって一般市民は不気味がっている。響たちもシャトーの姿を確認した時、響の端末から本部からの通信が入った。

 

「はい!」

 

『響ちゃん!通信回復を確認!』

 

『手短に伝えるぞ。周到に仕込まれていたキャロルの計画が最後の段階に入ったようだ』

 

「えぇ⁉」

 

状況確認のために外に出た響は弦十郎の報告に驚愕する。

 

『敵の攻撃でエルフナイン君が負傷。応急処置を施したが、危険な状態だ』

 

『ボクは平気です・・・だから・・・ここにいさせてください・・・』

 

『エルフナインちゃん!動いちゃダメだよ!傷口が開いちゃう!』

 

「エルフナインちゃん・・・!」

 

通信越しでエルフナインの弱々しい声が聞こえてきた。動こうとしたらしいエルフナインに日和の声が聞こえてきた。彼女がどれだけ危険な状態なのかは、通信越しでもよくわかる。

 

『俺たちは現在東京に急行中。装者が合流次第、迎撃任務にあたってもらう。それまでは・・・』

 

「はい!避難誘導にあたり、被害の拡大を抑えます!」

 

通信を切り、響が行動に出ようと海恋にも声をかける。

 

「海恋さん!」

 

「わかってる!今大悟が避難誘導してるから!」

 

「オラぁ!死にたくなかったらとっととここを離れろぉ!!」

 

『ひいいいいい!!』

 

海恋はいち早く状況を察して、大悟に指示を出して戸惑っている一般市民の避難誘導にあたっていたようだ。大悟は指示通りに一般市民に避難するように声をかけている。ただ大悟が不良の外見でああいった物言いだと、ただ単に脅しているようにも見える。だがそれでも一般市民は避難誘導のルートに従っているため結果的にはこれでいい。

 

「私たちも行動に移りましょう!」

 

「はい!お父さん、みんなの避難を・・・」

 

「こういう映像って、どうやってテレビ局に売ればいいんだっけ・・・?」

 

「ちょっと!こんな時に何やってるんですか!!?」

 

「お父さん・・・」

 

一般市民が避難している中、洸はカメラでチフォージュ・シャトーの映像を撮影していた。どうやら小遣い稼ぎのために撮った映像をテレビ局に売るつもりらしい。その様子に海恋は信じられないと言いたげな顔で声を上げ、こんな時でも楽観的な洸に響は彼に失望を抱いていた。

 

~♪~

 

父親に託された命題を貶したウェルにキャロルは怒りで声を荒げた。

 

「父親から託されたものを・・・『なんか』とお前は切って捨てたか!!?」

 

キャロルの怒りもなんのその、ウェルは構わず煽り続ける。

 

「ほかしたともさ!ふんっ!レディがそんなこんなでは、その命題とやらも解き明かせるのか疑わしいものだ!」

 

「何・・・?」

 

「至高の叡智を手にするなど、天荒を破れるのは英雄だけ!英雄の器が小学生サイズのレディには、荷が勝ちすぎるぅ!!」

 

「ちっ・・・」

 

とことん癪に障るウェルの物言いにキャロルは舌打ちをする。だがこれでハッキリした。この男とは、一時利害が一致していても、決して相容れることなどできないと。

 

「やはり世界に英雄は僕1人ぼっち・・・2人と並ぶものはなぁい!!やはり僕だ!僕が英雄となって・・・」

 

「どうするつもりだ・・・?」

 

「無論、人類のため!善悪を超越した僕が!チフォージュ・シャトーを制御して・・・」

 

ズシャッ!

 

「え・・・いや・・・ん・・・」

 

ウェルの言葉は最後まで言い切ることはなかった。なぜなら、キャロルがダウルダブラを召喚し、その先端をウェルの身体を刺し貫いたのだ。

 

「支離にして滅裂。貴様みたいな左巻きが英雄になれるものか・・・」

 

キャロルはウェルからダウルダブラを引き抜き、風の錬金術で突風を放ち、彼を柵まで吹き飛ばした。ウェルは柵に背をもたれながら腹部の傷に触れて出血を確認する。

 

「ダメじゃないか・・・楽器を・・・そんなことに使っちゃあ・・・」

 

キャロルはダウルダブラを抱え、ウェルに近づく。用がなくなった彼の廃棄・・・つまり始末するために。

 

「シャトーは起動し、世界分解のプログラムは自律制御されている・・・。ご苦労だったな、ドクターウェル。世界の腑分けは・・・オレが1人で執刀しよう!!」

 

キャロルはダウルダブラを振り下ろした。

 

「顔はやめてぇ!うわあぁ!!?」

 

だがダウルダブラはウェルに当たることはなく、バランスを崩してしまい、柵から落ちてしまった。

 

「うわあああああああああ!!」

 

落ちていくウェルの声がシャトー内に響き渡る。もともとウェルは始末する予定であったためにキャロルは手間が省けたと言ったようにどうでもよさそうにしている。

 

「廃棄予定が些かに早まったか・・・ぐっ・・・!!?」

 

ここでまたも拒絶反応を引き起こし、キャロルは苦しそうに自身の胸を抑え、この苦しみに耐える。

 

「立ち止まれるものか・・・!計画の障害は、例外なく排除するのだ・・・!」

 

キャロルは錬金陣を展開し、外の様子を映し出して確認する。モニターのように映し出された錬金陣には響と海恋、洸が映っていた。

 

~♪~

 

非常事態だというのにチフォージュ・シャトーを撮影し、テレビ局に売ろうとしている洸に響は怒鳴った。娘に怒られた洸は申し訳ないと思いつつ、頭をかいている。

 

「やっぱ、まずいよなぁ・・・」

 

「いい加減にしてよお父さん!!」

 

「立花さん!!今は怒ってる場合じゃないでしょ!!今やるべきことは何!!?街の人の避難でしょ!!」

 

「・・・っ・・・ごめんなさい・・・」

 

海恋の正論に今やるべきことを見失いそうになった響は冷静になり、頭を下げる。そして海恋は洸にも一言物申す。

 

「あなたもあなたです!!こんな非常事態に何を考えてるんですか!!?」

 

「・・・君は・・・もしかして・・・?」

 

洸は海恋の顔を見て驚いたような顔をしている。海恋がかつて自分が勤めていた会社の社長の面影があり、雰囲気もかなり似ていたからだ。

 

「お父さん!それよりも早く・・・」

 

「ほう・・・そいつがお前の父親か・・・」

 

「「!!」」

 

響が洸に避難誘導をしようとした時、上からキャロルの声が聞こえてきた。

 

「響!空から人が!」

 

キャロルと相対する形となって彼女を見た洸が真っ先に反応した。洸の声で響と海恋は後ろに振り返り、顔を上げてキャロルと対面する。

 

「キャロルちゃん・・・」

 

「どうして・・・生きて・・・!!?」

 

通信でキャロルが生きていたことを知っていた響はともかく、その事実を知らなかった海恋は驚愕している。

 

「終焉の手始めに、お前の悲鳴を聞きたいと、馴染まぬ身体が急かすのでな。それに・・・」

 

キャロルは響の隣にいる海恋に視線を移した。海恋のことはエルフナインの視界を通じて見ていたため、彼女のことはもちろんキャロルは知っている。そして、海恋の記憶力も。

 

「そいつの驚異的な記憶能力は無視できん。『才能の芽』は、今ここでかみ砕いてくれる」

 

才能の芽・・・それは海恋に向けられて放っている。この言葉の意味が理解できない海恋は彼女に問いかける。

 

「才能の芽・・・?それはどういう意味⁉いったい何のことよ!!?」

 

「知る必要などない。お前たちは終焉の贄となるのだからな」

 

海恋の問いにキャロルは答える気はないと言わんばかりに風の錬金陣を展開し、突風を彼女に向けて放った。

 

「きゃああああ!!」

 

「海恋さん!!」

 

キャロルの突然の攻撃に海恋は避ける行動が遅れ、そのまま突風で吹っ飛ばされ、地に倒れ伏す。

 

「き、君!大丈夫か⁉」

 

「は、はい・・・何とか・・・」

 

海恋は痛みを堪えて、立ち上がる。

 

「キャロルちゃん・・・」

 

どうやら本当に海恋を始末するようで、キャロルは再び風の錬金陣を展開する。そこへ、響が海恋を守るために前に出てキャロルと対面するのであった。




XD-エクスドライブアンリミテッド-

ホワイトデーボイス

東雲日和
え?これ・・・私にくれるの?ありがとー!お礼に一曲・・・て、それじゃあホワイトデーの意味ないか。あはは。

フォルテ・トワイライト
ん?僕に贈り物か?・・・そうか、今日はホワイトデーだったな。だが・・・いや、ありがたく受け取っておこう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。