戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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へいき、へっちゃら

響はキャロルの風の錬金術で吹っ飛ばされた海恋の前に立ち、彼女の後ろにあるチフォージュ・シャトーを見る。

 

「あれはやっぱり、キャロルちゃんの・・・?」

 

「いかにも。オレの城、チフォージュ・シャトー・・・アルカ・ノイズを発展応用した世界をバラバラにする解剖器官でもある」

 

キャロルは風の錬金陣を展開したまま、響の問いかけに答える。

 

「世界を・・・。あの時もそう言ってたよね?」

 

「あの時、お前は戦えないと寝言を繰り返していたが、今もそうなのかぁ?」

 

キャロルの問いかけに響は一瞬だけ手を止めたが、すぐに気を引き絞めた顔になる。自分の拳が誰かを守るためにあるものであると理解した。だからギアを纏える。響はすぐにギアネックレスを掲げようとしたが、キャロルが風の錬金術で竜巻を放ち、ギアネックレスの紐を切断される。これによってギアネックレスは遠くへ飛ばされてしまう。ギアネックレスを纏うことができない。

 

「ギアが!!?」

 

「これじゃあギアを纏えない!!」

 

「もはや、ギアを纏わせるつもりは毛ほどもないのでな!!」

 

キャロルはさらに錬金陣を展開して攻撃態勢に入る。ギアがなくても響は迎え撃とうと構えを取る。

 

「オレは、父親から託された命題を胸に、世界へと立ちはだかる!!」

 

「お父さんから・・・託された・・・?」

 

「誰にだってあるはずだ!」

 

「っ⁉私は何も・・・託されていない・・・」

 

自分には父親から託されたものなど何もない・・・そう思っている響はキャロルの言葉によって、戦意が失われていく。

 

「何もなければ耐えられまいてぇ!!」

 

だがそんなことはキャロルには関係ない。彼女は竜巻を響に向けて放った。

 

「立花さん!!避けてぇ!!」

 

海恋は響に向けて声を上げたが、戦意を失った響は避けようともしない。そこへ、洸が響を掴んで横っ飛びで竜巻を回避する。

 

「響!おい!響!!」

 

洸が響に呼び掛けた時、キャロルは標的を洸に変え、新たに土の錬金陣を展開する。

 

「世界の前に分解してくれる」

 

「うわああああああ!!」

 

標的が自分に向けられた洸は情けない悲鳴を上げながら一目散に逃げだした。

 

「お父さん・・・?」

 

「助けてくれえぇ!こんなの、どうかしていやがる!」

 

逃げ出した洸はなぜかその場で足を止め、周囲を見回しながら悲鳴を上げている。父親に見捨てられた響は洸に絶望し、涙を流した。響の頭に、洸が家族を捨てた時の光景がフラッシュバックされる。

 

「ははっ!逃げたぞ!娘を放り出して、身軽な男が駆けていきおる!」

 

キャロルは情けない洸の姿を見て嘲笑い、彼に向けて錬金術を放つ。だがこの攻撃は洸にはギリギリで当たらない。わざと攻撃を外し、洸にわざと走らせているのだ。だが海恋は洸の逃げる姿を見て、どこか違和感を覚える。

 

(おかしい・・・本気で逃げるならさっさとこの場から離れるのが自然なのに・・・。それに最初に立ち止まった時・・・何かを探してたような・・・!もしかして・・・!)

 

洸の行動の真意に気付いた海恋は洸に視線を向けた。同時に洸はキャロルに追い詰められ、しりもちをついた。その近くにキャロルは降り立つ。

 

「来るな・・・来るなぁ!!」

 

洸は近くにあった小石を投げつけ、惨めに喚きながら立ち上がり、再び周辺を走り出した。キャロルは洸で遊び感覚で彼に錬金術を放ち続ける。

 

「大した男だなぁ、お前の父親は。オレの父親は、最後まで逃げなかった!」

 

「立花さん!起きなさい!ここで諦めるつもりなの!!?」

 

海恋は響に近づき、両肩を掴んで立ち上がるように促す。それでも響は立ち上がる気力が起こらない。そんな中で洸はキャロルの錬金術から逃げながら響に向かって声を上げる。

 

「響!!今のうちに逃げろ!!壊れた家族を元に戻すには!そこに響もいなくちゃダメなんだ!!」

 

叫んでいる洸の足元にキャロルの錬金術が着弾して爆発し、彼は吹き飛ばされる。

 

「うわぁ!!!」

 

「洸さん!!」

 

「お父さん!!?お父さん!お父さん!!」

 

吹き飛ばされた洸に、海恋と響は叫んだ。倒れ伏した洸は痛みを堪えながら、何とか立ち上がる。

 

「うぅ・・・これくらい・・・へいき、へっちゃらだ・・・」

 

「!」

 

へいき、へっちゃら。彼は響の口癖であるこの言葉を使った。これによって響は幼少期の出来事を思い出した。あの時洸が料理で包丁を使っていた時、失敗して指を切って出血し、幼かった自分が洸を心配したあの時。

 

『お父さん、大丈夫?』

 

『へいき、へっちゃらだ』

 

洸はどんな時でも、痛い思いをしても、響の前で『へいき、へっちゃら』と笑った顔を見せた。それを見た響も自然と笑顔を見せた。この言葉は、笑顔を見せるための魔法の言葉であり・・・洸が響に託した言葉でもあった。

 

(そっか・・・あれはいつも、お父さんが言っていた・・・)

 

響は父親が自分に託したものに気がついた。洸はゆっくりと起き上がり、キャロルと相対する。

 

「逃げたのではなかったのか?」

 

「逃げたさ・・・。だけど、どこまで逃げても!この子の父親であることには逃げられないんだ!」

 

「お父さん・・・」

 

「俺は生半だったかもしれないが、それでも娘は本気で!壊れた家族を元に戻そうと!勇気を出して向き合ってくれた!だから俺も!なけなしの勇気を振り絞ると決めたんだ!」

 

洸は足元にあった石をキャロルに何個か投げつけた。だが投げた石は全てキャロルには当たらない。当たったとしても大した痛手にはならないだろう。だが響は見逃さなかった。今洸の手に握りしめたものを。響は完全に立ち上がって洸を正面から見つめる。

 

「響!!受け取れえええええええ!!!」

 

「!!?」

 

洸が響に向けて投げたものを見て、キャロルは驚愕した。なぜならそれは石ではなく、キャロルの攻撃によって落としてしまったギアネックレスだ。洸のおかげでギアネックレスを取り戻した響は、父の思いを胸に、詠唱を唄う。

 

Balwisyall Nescell Gungnir tron……

 

シンフォギアを纏おうとする響にキャロルはそうはさせまいと錬金術を放とうとする。

 

「オラぁ!!!!」

 

「!!」

 

そこへ避難誘導からここに戻ってきた大悟が全力の力を持ってキャロルに殴りかかってきた。それに気づいたキャロルは咄嗟にダウルダブラで拳を防ぎ、風の錬金術を放って彼を吹っ飛ばした。

 

「うおおおお!!」

 

「大悟!!!」

 

「ぐっ・・・出血大サービスだ・・・この野郎・・・!」

 

大悟は痛みを堪えながら、笑みを浮かべた。キャロルの気を引くことに成功して、響はシンフォギアを身に纏うことに成功したからだ。

 

「へいき、へっちゃら・・・」

 

「響・・・」

 

「私、お父さんから大切なものを受け取ったよ・・・受け取っていたよ!」

 

ツヴァイウィングのライブ会場の惨劇で生き残り、リハビリを頑張っていた時も、学校でいじめを受けていていた時も、洸から教わったへいき、へっちゃらの言葉のおかげで、響は今日というこの日まで乗り越えられた。

 

「お父さんは、何時だってくじけそうになる私を支えてくれていた・・・ずっと、守ってくれていたんだ!」

 

「響・・・」

 

洸の呟きに響は首を縦に頷いて答え、歌を歌い、キャロルに向かって駆けていく。向かってくる響にキャロルはアルカ・ノイズの結晶をばら撒き、アルカ・ノイズを召喚して迎え撃つ。立ちふさがるアルカ・ノイズを響は次々と殴り倒していく。響が戦っている間に海恋は大悟に駆け寄る。

 

「大悟、大丈夫?」

 

「俺の事より、オッサンの心配をしてろ」

 

心配をする海恋に大悟は強がりを見せて起き上がる。ふらつく大悟に海恋が支える。そこへ洸が駆け寄り、彼も大悟を支える。

 

「大丈夫か⁉あんな無茶をして・・・」

 

「るせぇ。オッサンに心配されるほど、俺は落ちぶれちゃいねぇ」

 

「あんたねぇ・・・」

 

誰に対しても捻くれた物言いをする大悟に海恋は呆れている。洸は大悟を支えたまま、海恋に声をかける。

 

「君は、社長のところの娘さんだろう?雰囲気が似てたからすぐにわかったよ」

 

筑波で初めて会った時、響の一件でそれどころではなかったが、洸はあの時海恋のこともちゃんと見ていた。ただその時は社長に娘がいたとは知らなかったため、気づかなかったが。社長の娘だと知られた海恋は少し悲しそうな顔をしながら洸に謝罪する。

 

「・・・ごめんなさい・・・父のせいで・・・」

 

「謝らないでくれ。悪いのは俺の方なんだから。それに、君はずっと未来ちゃんと一緒に響を支えてくれていたんだろう?だから君には、感謝してもしきれないよ」

 

蔑まれるかと思いきや、自分に感謝してきた洸に海恋は若干戸惑いを感じながらも、口を開いた。

 

「わ・・・私はただ・・・父の責任の肩代わりと罪滅ぼしをしただけです・・・。それに・・・」

 

海恋はアルカ・ノイズと戦っている響の勇敢な姿を見る。

 

「あの子には・・・元気な後輩のままでいてほしいから・・・」

 

響は腰部のブースターを起動して回転しながらアルカ・ノイズに蹴りを放っていく。そして、竜巻のように空に上昇し、右手のハンマーパーツを展開し、ブースターで降下の勢いをつけて空中のアルカ・ノイズを拳で貫いていく。響の戦う姿を見て洸はフロンティア事変のテレビ中継で響がシンフォギアを纏った映像を思い出した。

 

(じゃあやっぱり・・・あの女の子は響だったのか・・・。逃げるばかりの俺と違い、お前は何があっても踏みとどまって、ずっと頑張ってきたんだな・・・)

 

アルカ・ノイズを全て倒し終え、今度はキャロルに向かって突撃する響。キャロルは初めて会った時と違い、手加減なしに響を潰すために風の錬金術で竜巻を放つ。竜巻の勢いは凄まじく、響はその威力で建物に背を打ち付けられる。

 

「立花さん!!!」

 

「響ぃ!!!!」

 

ダメージを負った響は打ち付けられた建物から離れ、落下する。

 

「負けるなああああああああ!!!響、負けるなああああああああ!!!!」

 

娘の勇姿を見届ける洸は彼女に叫ぶように大声を出して応援する。その声に反応してキャロルは3人に向かってアルカ・ノイズの結晶を放った。洸と海恋は響を見ていて気づいていないが、大悟はその瞬間を見逃さなかった。同時に、父の声に目を見開いた響は地に着地し、ブースターを起動してキャロルの懐に入る。さらに右手にハンマーパーツを展開し、彼女の腹部に拳を叩きつけた。

 

「がぁ・・・!!」

 

響は一度地に着地してすぐに跳躍してブースターを使ってキャロルに接近して先ほどと同じ拳を振るおうとする。

 

「ヘルメス・トリスメギストス!」

 

キャロルはそうはさせまいと錬金術で4層の防御壁を創り出し、防御を試みる。

 

「知るもんかあああああああああ!!!!」

 

響は関係ないと言わんばかりに拳を振るい、4層の防御壁を破壊し、キャロルの顔面を殴り、彼女を吹っ飛ばす。

 

「やったわ!」

 

海恋が声を上げたと同時に、3人の足元にアルカ・ノイズ召喚の錬金陣が現れる。

 

「ボケっとしてんじゃねぇ!!!どけ!!!!」

 

「きゃっ!!?」

 

「うわぁ!!?」

 

大悟は錬金陣にまだ気づいていない海恋と洸を庇うように突き飛ばした。2人が突き飛ばされたと同時に、錬金陣からアルカ・ノイズが召喚される。

 

「うわああああ!!?」

 

「大悟!!!」

 

「しまった!」

 

キャロルは響の力の源が父親ならば、海恋もろともまとめて始末するつもりだった。だがそれを何の力も持たない大悟に二度も邪魔をされ、キャロルは彼に怒りを抱く。

 

「一度ならず二度までもオレの邪魔を・・・!」

 

キャロルの声が聞こえたのか大悟は吹っ飛ばされたキャロルに視線を向け、中指を立てて彼女を煽る。それに触発されたキャロルは目を見開く。

 

「青二才の小僧が!!二度と邪魔ができぬよう、バラバラに分解してくれる!!!」

 

キャロルの指示によってアルカ・ノイズは分解器官を伸ばし、大悟を分解しようとする。

 

(何やってんだ俺は・・・冴えねぇオッサン庇って死ぬとか、ダサすぎんだろ・・・)

 

これで自分は死んだと直感した大悟は姉の小豆から『かっこいい男になれ』と言われた日のことを思い出す。

 

『かっこいい男って・・・具体的には?』

 

『う~ん・・・人助けできるイケイケ男子とか?』

 

『曖昧じゃねぇかよ・・・使えねぇなぁ』

 

『何を~?実の姉に向かって使えないとは何だ!』

 

(姉貴よぉ・・・俺は・・・イケてる男になれたか・・・?)

 

大悟はこれから迫りくる死を覚悟し、目を閉じる。すると、空から突如として赤い棍が降ってきて、分解器官を伸ばしたアルカ・ノイズが頭から貫かれて赤い塵となる。いつまでたっても痛みが来ないと思い、大悟は目を開ける。そこには、降ってきた棍からシンフォギアを纏った日和が降りてきて、アルカ・ノイズを殴り、次々と消滅させた光景が映っていた。アルカ・ノイズを全滅させた日和は大悟に駆け寄る。

 

「大悟君!大丈夫?」

 

「・・・へっ、てめぇのせいでくたばりそこなったぜ」

 

大悟は悪態をはいてはいるものの、その表情はどこか安堵していた。

 

「ちっ・・・!」

 

それを見たキャロルが動こうとした時、彼女の目の前に巨大な赤い大剣が地に突き刺さった。大剣の柄の上にはシンフォギアを纏ったフォルテが腕を組んで立っていた。それだけではない。建物の上にはシンフォギア装者が勢ぞろいしていた。響が残りのアルカ・ノイズを倒している間にも、緒川の車が到着する。

 

「緒川さん!」

 

「ここは危険です!!早く!!」

 

3人は緒川の車に乗り込み、何とか安全を確保することができた。今ここに装者が全員揃い、一同はキャロルと対面する。

 

「もうやめよう!キャロルちゃん!」

 

「本懐を遂げようとしているのだ!今さらやめられるものか!思い出も・・・何もかもを焼却してでも!!」

 

世界の分解をやめようとしないキャロルはダウルダブラの弦をつま弾く。ダウルダブラは形を変え、思い出を焼却して身体を成長させたキャロルの身に纏い、ファウストローブとなる。

 

「ダウルダブラのファウストローブ・・・その輝きは、まるでシンフォギアを思わせるが・・・」

 

「ふん!輝きだけではないと、覚えてもらおうか!」

 

キャロルはそう言って歌い出した。同時に、展開された錬金術の出力がこれまで以上に跳ね上がっている。

 

~♪~

 

ブリッジだけとなったS.O.N.G本部でもダウルダブラの反応は捉えていた。だが、それだけでなく、以前にはなかった反応もキャッチされている。

 

「交戦地点でのエネルギー圧、急上昇!」

 

「照合完了!この波形パターンは・・・!!」

 

「フォニックゲイン・・・だと!!?」

 

「これは・・・キャロルの・・・」

 

そう、反応を示したエネルギーはフォニックゲイン。キャロルが歌う歌によって発せられ、彼女の錬金術が強化されたのだ。

 

~♪~

 

キャロルの歌によって強化された錬金術。さらにキャロルは背部ユニットの弦を展開し、共振効果によってさらに威力を増していく。そして、十分な力が溜まったキャロルは錬金術を装者たちに向けて放った。圧倒的な力となった錬金術を装者たちは何とか回避した。だがその威力は凄まじく、直撃でもしたらひとたまりもない。

 

「この威力・・・まるで・・・!」

 

「すっとぼけが利くものか・・・!こいつは、絶唱だ!」

 

キャロルの絶唱級の威力を持つ錬金術が翼とクリスに放たれる。2人は跳躍して錬金術を躱す。

 

「絶唱を負荷もなく口にする・・・」

 

「錬金術ってのは何でもありデスか!!?」

 

調と切歌も向かってきた錬金術を躱していく。絶唱は確かに歌うことで絶大な威力を発揮することができるが、同時に自分たちに負荷ダメージを負わせる諸刃の剣。それをキャロルは何の負荷もなく連発で繰り出してくるのだ。脅威以外の何ものでもない。

 

「だったらS2CAで!」

 

S2CAは大人数の絶唱を響が調律し、1つのハーモニーに束ねる。人と手を繋ぎ合わせる響のアームドギアだからこそ成せる業でもある。だが・・・

 

「ダメだよ響ちゃん!あの威力じゃ、響ちゃんの身体が持たないよ!」

 

日和の言うとおり、今のキャロルの錬金術の威力は絶唱1人分のものではない。それにS2CAは言うなれば大人数で放つ絶唱。装者たちの負担は全て響に集中されるのだ。その負担の量は尋常ではない。さらに万が一切り抜けたとしても、響が動けなくなってそこを狙われでもしたら勝ち目はない。

 

「でも・・・!」

 

キャロルの放つの錬金術はさらに威力が跳ね上がっていく。

 

「翼、あれを!!」

 

マリアが声を上げ、装者たちが見上げると、突如としてチフォージュ・シャトーは緑色の光が帯び始めた。

 

「明滅・・・鼓動・・・共振!!?」

 

チフォージュ・シャトーはキャロルの居城にして、キャロルの意思そのものでもある。キャロルの歌に反応して、チフォージュ・シャトーの光がさらに輝きを増す。

 

~♪~

 

本部でもチフォージュ・シャトーから発せられるエネルギーは感知している。

 

「まるで、城塞全体が音叉のように、キャロルの歌に共振・・・!エネルギーを増幅!」

 

モニターに映るチフォージュ・シャトーの光は地に向かって放たれた。放射線状に拡散したエネルギー波は地球全体に地表にそって、地球を切り刻むように収縮されようとしている。

 

「放射線状に拡散したエネルギー波は地表に沿って収斂されつつあります!」

 

エネルギー波の軌道進路を見て、弦十郎は光の正体に気付く。

 

「この軌道は・・・まさか・・・!」

 

「フォトスフィア・・・」

 

エルフナインがあの光の正体を呟いた。そこへ、戦場から避難してきた海恋が入ってきた。

 

「皆さん!私もサポートに入ります!」

 

海恋は空いていたオペレーターの席に座り、キーボードを打って装者たちのサポート行動に入った。さらにそこに洸、大悟が入ってきた。もちろんここは一般人が入れる場所ではないため、緒川が止めに入る。

 

「いけません!ここは・・・!」

 

「こっちはもう十分巻き込まれてんだ!!今回はそっちの都合が飲めると思うなよ、ボケ!!」

 

大悟は緒川を押しのけ、ブリッジに入って装者たちの戦いを見守る。

 

「頼む!俺はもう二度と、娘の頑張りから目を逸らしたくないんだ!娘の・・・響の戦いを見守らせてくれ!」

 

洸もブリッジの中に入り、装者たちの・・・響の戦いを見守ろうとする。2人の意志の強さに緒川が折れ、仕方なく入室を許可した。

 

「エネルギー波、体積地へと収束!!」

 

「屹立します!!」

 

放たれたエネルギー波はフォトスフィアの軌道線状に沿って収斂していく。海上に浮かぶ漁船、そこに乗っている何も知らない漁師たちはこのエネルギー波に驚いていたが、すぐにエネルギー波に飲み込まれていった。世界の分解が、今始まったのだ。

 

~♪~

 

世界の分解が始まり、キャロルは愉悦に浸るように笑みを浮かべた。

 

「これが世界の分解だ!」

 

「そんなことは・・・!!」

 

響はブースターを起動して、キャロルに接近して殴りかかろうとするが、それは直撃する間近で止まった。止まった原因はキャロルが張り巡らせた弦だ。弦は響の身体に巻き付き、動きを止めたのだ。

 

「ふん、お前にアームドギアがあれば、届いたかもな!」

 

キャロルは笑みを浮かべて響を煽る。するとフォルテとマリアは突然飛び出していった。

 

「フォルテ!マリア!どこへ⁉」

 

「僕たちはあの巨大装置を止めに行く!!」

 

フォルテとマリアはビルの屋上に着地し、チフォージュ・シャトーに向かって走り出す。すると、非常Σ式・禁月輪の丸鋸を展開して走行する調と、それに同乗する切歌も追いかける。2人がマリアとフォルテの間を通ると、調は左手でマリアの右手を、切歌が右手でフォルテの左手を掴んだ。

 

「LiNKER頼りの私たちだけど・・・」

 

「その絆は、時限式じゃないのデス!」

 

頼りになる2人がついてきてくれることに、マリアとフォルテは心強さを感じ、笑みを浮かべる。そして2人は調の非常Σ式・禁月輪に同乗し、別のビルに飛び移ってチフォージュ・シャトーへと向かっていく。もちろんキャロルはそれを見ていたが、止めようとしない。止められるはずがないと思っているからだ。キャロルは弦の糸を利用して響を吹き飛ばす。

 

「あああ!!」

 

「それでもシャトーの守りは越えられまい。俺を止めるなど能わない!」

 

キャロルの背後を取った翼は刀で彼女に斬りかかるが、キャロルは容易く躱し、逆に翼の背後を取る。そうはさせまいと後ろからクリスがガトリング砲を撃ち放ち、高く跳躍した日和はキャロルに目掛けて棍を振り下ろして打撃を与えようとする。だが2人の攻撃はキャロルが放つ錬金術によって消し飛ばされ、日和とクリスはまともに錬金術をくらってしまう。

 

「「うわあああああ!!!」」

 

側面から響と翼がキャロルに攻撃を仕掛けようとするも、キャロルはダウルダブラの弦を自分の周りに張り、2人を弾き飛ばすように吹き飛ばした。

 

「世界を壊す、歌がある!!」

 

キャロルは4人の装者たちを見下ろして、叫んだ。

 

~♪~

 

チフォージュ・シャトーに到着したフォルテ、マリア、調、切歌の前にシャトーの防御機能として複数のアルカ・ノイズが出現する。4人は立ちふさがるアルカ・ノイズを蹴散らし、シャトー内部へと侵入した。S.O.N.G本部のモニターでその姿が確認できた。

 

「チフォージュ・シャトー、侵入を確認!」

 

「響ちゃんたちのバイタル、大幅に低下!!」

 

別のモニターでは響たちが息を吐きながら必死に痛みを堪えて、キャロルに立ち向かおうとしている。

 

「二度と目を・・・逸らすものか・・・!」

 

洸はもう目を逸らし、逃げ出そうとしないという思いから、響たちの戦いを見守るのであった。

 

~♪~

 

シャトーの内部に侵入した4人は床に這いつくばって倒されていた。キャロルの絶対的な自信の通り、シャトーの守りは非常に強力なのだろう。だが4人を倒したのはアルカ・ノイズではない。4人を倒したそれは身に纏っていた車椅子を変形させ、その姿を4人に見せる。

 

「マム・・・」

 

その人物とは、フロンティア事変で亡くなったはずのナスターシャであった。




大悟の祖父と祖母

両親からの虐待を受けた大悟は家から出ていき、祖父と祖母の家で暮らしている。2人は当時の大悟の姿を見て、何も言わずに大悟を住まわせ、変わり果てた大悟の両親から守ることに決めたそうだ。
大悟を正しい人間になってもらおうと厳しく接するのが祖父、ありのままの大悟を受け入れ、見守っているのが祖母である。
日和とは何度も会ったことがあるが、小豆の死亡以来、一度も会っていない。だいたいの事情は大悟から聞いて知っているが、2人は日和が小豆を殺したと思ったことは1度もない。大悟本人の前では絶対に言わないが、日和が今どうしているのか、元気で暮らしているのかと何かと気にかけている様子だ。
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