戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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今話にて、オリジナル錬金術師が登場します。


パヴァリアの錬金術師

バルベルデで1つの任務を終えた装者たちはS.O.N.Gの本部である潜水艦に帰還し、土埃を払うためにシャワーを浴びている。

 

「S.O.N.Gが国連直轄の組織だとしても、本来であれば、武力での干渉は許されない・・・」

 

「だが、異端技術を行使する相手であれば、見過ごすわけにはいかないからな」

 

「アルカ・ノイズの軍事利用・・・!」

 

「奴らのことは僕が1番知っている。いずれこうなるだろうとは思っていた」

 

「LiNKERの数が十分にあれば、私たちだってもっと・・・!」

 

LiNKER。それはシンフォギアの適合係数を上げるための薬品でフォルテたちはそれを使うことで適合係数を上げ、シンフォギアを十分に纏うことができるのだが、LiNKERを作った科学者の1人、ジョン・ウェイソン・ウェルキンゲトリクス、通称ウェルが残したLiNKERのレシピの解析がまだ終わっておらず、LiNKERを十分に用意できない状況下にある。そして現在あるLiNKERの数は、4人の分それぞれ1本ずつである。

 

「ラスト一発の虎の子デス。そう簡単に使うわけには・・・」

 

「大丈夫だよ!」

 

シャワーを浴び終えた切歌に響が駆け寄り、両手を握る。

 

「何かをするのに、LiNKERやギアが不可欠ってわけじゃないんだよ!さっきだってヘリを守ってくれた!ありがとう!」

 

響は真剣な眼差しで語るが、切歌は顔を上下させながら顔を赤らめる。シャワーに浴びている者全員が全裸なので、顔を赤らめるのも無理はない。

 

「な、なんだか照れ臭いデスよ~!あっ・・・」

 

「じーっ・・・」

 

切歌が照れている様子を、調がジト目で見つめていた。

 

「め、目のやり場に困るくらいデース!」

 

こんなやり取りをしている中、フォルテはシャワーを浴び、兵士時代だった頃を思い返す。彼女の脳裏に浮かび上がるのは、止むことのない戦、空を舞い続ける火の粉、さらに辺り一面が炎で燃えている光景だ。昔のことを思い出していることに気付いたマリアはフォルテに声をかける。

 

「・・・昔のことを思い出してたの?」

 

「・・・ここは何も変わっていない。彼奴らは何も成長しておらず、己のエゴを押し通そうとしている。・・・反吐が出る」

 

市街を巡回して、自国民たちを見て改めて思った。政府軍は愚かな愚連隊でしかないと。愚かな思想がこの世に残る限り、このバルベルデに安息はない。自身の、誇れる故郷になることはできないと。だが今の自分はS.O.N.Gに所属している身。独断でどうすることもできないし、自国のために何かしてあげられることはない。フォルテのその思いが歯がゆさを感じている。

 

「あなたが昔ここでどう過ごしてきたかは知らないけれど・・・あなたは1人じゃない。私たちがいる・・・それだけは忘れないで」

 

「・・・ああ」

 

マリアの言葉にフォルテは首を縦に頷いた。一方の日和はシャワーから出て、シャワーを浴びているクリスに視線を向けている。クリスはシャワーを浴び、深刻そうな顔をしている。彼女が思い出すのは、バルベルデでの忌まわしい記憶だ。

 

「くそったれな思い出ばかりが、領空侵犯してきやがる・・・!」

 

バルベルデで体験した思い出にクリスが苛んでいると、日和が彼女を優しく抱きしめる。

 

「相棒・・・」

 

「大丈夫・・・大丈夫だから・・・。私がついてるよ・・・」

 

「・・・すまねぇ・・・」

 

日和の気遣いのおかげで、クリスの気持ちは和らいだと同時に、相棒に気遣われて自分が情けない気持ちで埋め尽くされるのだった。

 

~♪~

 

時刻は夜、シャワーを浴びえ終えた日和、響、翼、クリスの3人はブリッジに集まり、弦十郎から新たな任務が与えられる。

 

「新たな軍事拠点が判明した。次の任務を通達するぞ」

 

弦十郎はモニターの映像を使って任務を伝える。

 

「目標は、化学兵器を生産するプラント。川を遡上して、上流の軍事施設へ進攻する。周辺への被害拡大を抑えつつ、制圧を行うんだ!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

任務内容を理解した4人は早々に任務を開始する。

 

~♪~

 

装者たちは緒川が操作する小型ボートに乗り込み、目的地へと向かっていく。そんな中でクリスはバルベルデで過ごし、両親が爆発に巻き込まれて亡くなってしま、辺りに炎が広がっていく記憶を思い出す。

 

『パパ!!ママ!!離して、ソーニャ!!』

 

『ダメよ、危ないわ!!』

 

『ソーニャのせいだ!!』

 

またも思い出す惨劇にクリスは思いつめた顔をする。日和はまたそれに気がつき、今度は翼も見逃さなかった。

 

「昔のことか?」

 

「!ああ!昔の事だ!だから気にすんな!」

 

「気にするよ!だってクリスは私の大事な友達だもん!!」

 

「うぇあ!!?」

 

クリスは普段通りに振る舞おうとした時、日和がクリスの両手を掴んでそう言い放った。突然両手を掴まれたクリスは顔を赤らめる。

 

「東雲、そういうことは家でやれ。それから雪音、詮索はしないが、今は前だけを見ろ。でないと・・・」

 

翼は忠告するが、それは不意に照らされた光で遮られる。この光の正体は装甲車の照明灯である。装甲車に乗る兵士はボートに狙いを定め、機銃を撃ち放つ。

 

「状況、開始!」

 

緒川はボードを操作して機銃の弾を回避する。

 

「1番槍、突貫します!」

 

ボートから飛び立った響は制服からシンフォギアを纏うための赤い結晶のネックレスを取り出し、詠唱を唄う。

 

Balwisyall Nescell Gungnir tron……

 

詠唱を唄い終えた時、ギアネックレスが唄に反応し、響の身に纏っていた制服が分解し、インナースーツの鎧、シンフォギアを身に纏った。シンフォギアを纏った響はブースターを使い、装甲車に突進して拳で殴って装甲車を吹き飛ばす。その際の音によって施設の照明が点灯し、地面の装置が起動して、アルカ・ノイズの結晶が放たれてアルカ・ノイズが召喚される。

 

響に続いて、日和、翼、クリスもギアをに見纏い、3人はアルカ・ノイズの群れに向かっていく。翼は刀で切り刻み、日和は棍による打撃技を放ち、クリスはガトリングを撃ち放ち、アルカ・ノイズを蹴散らしていく。この場が戦場になり、そこにいた多くの民間人が慌てて逃げ出していく。

響は3人に負けじと拳と蹴りを放ってアルカ・ノイズを倒していく。だが相手にするのはアルカ・ノイズだけではない。それを操る兵士たちもだ。一部隊は装者たちはに向けてマシンガンを撃ち放つ。翼は臆さずに兵士に突っ込み、刀で兵士のマシンガンを切り裂く。クリスはアームドギアを弓に変形し、狙いをバナナ型のアルカ・ノイズに狙いを定め、矢を放って射抜いていく。

 

戦闘の衝撃によって施設の柱が崩れていき、逃げ遅れた少年が押しつぶされそうになった時、響が少年を抱え、間一髪で救出した。

 

~♪~

 

施設にいる小太りした司令官がモニターで自分の軍が劣勢を強いられていることを確認した。

 

「我が軍が押されるのか!!?こうなったら諸共に吹き飛ばしてくれる!!」

 

追い詰められた司令官は手元にあった金色のスイッチを押した。

 

~♪~

 

スイッチと連動するように施設に錬金陣が現れ、そこから巨大なアルカ・ノイズが召喚される。

兵士たちは驚いているが、その間にも巨大アルカ・ノイズは両手からヘドロの液体を出し、そこから小型のアルカ・ノイズが複数召喚される。

 

「デカブツまで出すなんて!!」

 

「みんな頑張れは作戦じゃない!!」

 

小型のアルカ・ノイズは何と味方である兵士も攻撃を仕掛けてきて、兵士を分解していく。兵士まで分解するとあっては翼も黙っておらず、アルカ・ノイズを斬り裂いて、政府軍を守った。

 

「手当たり次第に・・・!」

 

「誰でもいいのかよ!!?」

 

クリスは弓の狙いを巨大アルカ・ノイズに定め、矢を放った。矢は巨大アルカ・ノイズに命中した。その瞬間、矢が巨大アルカ・ノイズの体内から赤い針となって出現し、巨大アルカ・ノイズを拘束する。

 

【ARTHEMIS CAPTURE】

 

翼は両手に刀を両手に持ち、刃に青い炎を纏わせ、拘束された巨大アルカ・ノイズに接近する。そして、翼は刀を振るって巨大アルカ・ノイズを細切れにする。

 

【炎鳥極翔斬】

 

アルカ・ノイズが全滅したと思われた矢先、兵士の1人は上空を見上げて何かがこちらに向かってきているのに気がついた。

 

「おい!あれ!」

 

兵士が気がついたのは、コマ型の巨大アルカ・ノイズが回転しながらこちらに降りてきている。

 

「プラントに突っ込まれたら、辺り一面汚染されちまうぞ!!」

 

「何とかしないと!!」

 

「響ちゃん!私に任せて!」

 

響はバンカーユニットを伸ばし、立ちふさがってくる小型アルカ・ノイズを目にも止まらぬ速さで拳で打撃を与えて消滅させていく。日和は巨大アルカ・ノイズを見上げ、左手首のユニットより棍を取り出し、2つの棍を構える。巨大アルカ・ノイズは変形して、効果の速度を速めた。日和はブースターを起動して、向かってくるアルカ・ノイズに向かって突進し、エネルギーを纏った棍を振るって十字のエネルギー波を放った。

 

【破邪顕正】

 

日和が放った十字のエネルギー波は巨大アルカ・ノイズを貫いた。貫かれたアルカ・ノイズは爆発し、プリマ・マテリアが霧散する。

 

~♪~

 

一方その頃、バルベルデにあるオペラハウス。明かりがついていないこの場所で、軍事政権のトップが集まり、今後の対策について話していた。

 

「閣下、念のため、エスカロン空港にダミーの特別機を手配しておきました」

 

「無用だ。亡命将校の遺産『ディー・シュピネの結界』が張られている以上、この地こそが一番安全なのだ」

 

ディー・シュピネの結界・・・それは人や無機物・・・ありとあらゆる万物を存在させないように認知させるための結界である。ゆえに誰にも見つけられるはずがない・・・そのはずだった。

 

「つまり、本当に守るべきものはここに隠されている」

 

突如として、このオペラハウスに女性の声が聞こえてきた。

 

「何者だ!!?」

 

軍事トップの1人が声が聞こえてきたガラス張りの窓を見上げる。そこには3人の人影が見えた。

 

「主だった軍事施設を探っても見つけられなかったけど・・・」

 

最初に口を開いたのは3人のリーダー格である男性貴族の服を着込み、白衣を着た銀髪の男装麗人だ。

 

「S.O.N.Gを誘導して、秘密の花園を暴く作戦は上手くいったワケダ」

 

次に口を開いたのは3人の中で1番小さく、奇妙なカエルのぬいぐるみを抱き、メガネをかけた黒髪の少女だ。

 

「うふふ、慌てふためいて、自分たちで案内してくれるなんて、可愛い大統領♡」

 

その次に口を開いたのは肩と脚を大胆に露出させた、軽装を纏うグラマラスボディを持った水色髪の女性だ。

 

「サンジェルマン!プレラーティ!カリオストロ!」

 

大統領の男は女性たちの名を口にした。男装麗人がサンジェルマン、メガネの少女がプレラーティ、グラマラスボディの女性がカリオストロ。

 

「せっかくだから、最後にもう一仕事してもらうワケダね」

 

プレラーティがそう言うと、3人は歌い始める。突然歌いだす3人に側近は戸惑っており、大統領の男に尋ねる。

 

「あの者たちは・・・?」

 

「パヴァリア光明結社が遣わせた錬金術師」

 

「あれが異端技術の提供者たち・・・!」

 

そう、彼女たちこそが、バルベルデの政権を裏で支援していた組織、パヴァリア光明結社に所属する錬金術師だ。

 

「だがもう1人錬金術師がいたはずだが・・・」

 

大統領は当時いたと思われるもう1人の錬金術師を思い出そうとしたが、それは今はどうでもいいと思い、スーツについていたバッジを見せて口を開く。

 

「同盟の証がある者には、手を貸す約定となっている!国連軍がすぐそこにまで迫っているのだ!!奴らを撃退してくれぇ!!」

 

大統領は要望を叫んで伝えるが、返ってくるのはカリオストロの投げキッスだけだった。大統領は困惑して顔を引きつっている。その間にも3人は歌い終える。すると、男たちの身に着けていた同盟のバッジが輝き始めた。すると・・・

 

「う・・・うあああああああああ!!!」

 

側近の男の身体も突然輝きだし、身体中を搔きむしって光の粒子となって消滅した。彼だけではない。バッジを身に着けた男たち全員輝きだし、身体中を掻きむしって粒子となって消滅した。粒子は天井付近の一か所に集まり、渦を巻いている。そして、大統領も輝きだし、彼らと同じように身体中を掻きむしる。

 

「痒い!!痒い!!でも・・・ちょっと気持ちいいぃ・・・」

 

大統領は最後にその言葉を残して粒子となって消滅した。粒子はサンジェルマンの掲げた右手に集まり、白く輝く球体となった。

 

「7万3千7百88・・・」

 

サンジェルマンは何かの数字を呟いた。おそらく、先ほどの最期を迎えた人間たちの数だろう。この様子を、隠れていたS.O.N.Gのオペレーターたちと黒服の男たちが見ていた。

 

(調査部からの報告通り、このオペラハウスを中心に、衛星からの補足不可能だ・・・。この結界のようなものは、指向性の信号波形を妨害しているのか・・・?プラント制圧を陽動に乗り込んでみたら、とんだ拠点のようだ・・・)

 

男性オペレーター、藤尭朔也はこのオペラハウスに張られているディー・シュピネの結界の推測を立てる。その間にもサンジェルマンたちは地下に続く階段を見つけ、下へと降りていく。その後をサンジェルマンたちに気付かれないように、女性オペレーター、友里あおいが黒服を引き連れて追いかける。

 

「ちょ・・・ちょっと・・・!」

 

藤尭は先に行ってしまった友里たちの後を追っていく。

 

~♪~

 

プラント施設を制圧した装者たちは司令官がいると思われる部屋までやってきたが、既に司令官はこの場を去ったようだ。

 

「如何やら指揮官には逐電されてしまったようだな・・・」

 

翼がそう呟くと、響と日和、クリスの3人が響が助けた少年を連れてきた。

 

「翼さん!この子が!」

 

「俺、見たんだ!工場長が車で逃げていくのを!もしかしたら、この先の村に身を潜めたのかも!」

 

「君は・・・?」

 

「俺はステファン!俺たちは無理やり、村からこのプラントに連れてこられたんだ!」

 

政府軍のやり方はここに来る前にフォルテから嫌というほど聞かされた。この少年、ステファンの言うことが本当ならば、政府軍は村の人間を人質にとるかもしれない。

 

「七面倒なことになる前に、とっ捕まえなきゃな!」

 

「うん。放っておくことはできないもんね」

 

クリスが掌に拳を打ち付け、彼女の言葉に日和は首を縦に頷いた。4人はステファンの案内の下、村へと向かっていくのであった。

 

~♪~

 

オペラハウスの地下。地下にはオペラハウスにふさわしくない異端技術の品が数多く置かれていた。サンジェルマンたちの目的はただ1つ、地下の奥にある布に覆われたものだ。サンジェルマンが布を取り払うと、そこにはオレンジ色の水晶の中に眠っているヘッドギアを付けた子供の人形があった。

サンジェルマンたちの様子を友里たちが隠れて特殊双眼鏡越しで観察する。だが・・・

 

ビーッ!!ビーッ!!

 

「なっ!!」

 

藤尭の持っていたタブレットからアラームが鳴り、それが地下中に鳴り響いた。それは当然、サンジェルマンたちにも聞こえ、尾行していたことがバレてしまう。

 

「撤収準備!!」

 

友里の号令と共に、黒服の男たちはサンジェルマンたちに拳銃を撃ち放ちながら撤収準備に入る。サンジェルマンは錬金術のバリアを張って弾を防ぐ。だが重要なのは撤退すること。迅速な対応のおかげで素早く撤収を完了させた。

 

「会ってすぐとはせっかちねぇ・・・え?」

 

カリオストロが錬金術を放とうとすると、サンジェルマンが止めた。彼女は近くに置いてあった置物に顔を向ける。

 

「実験にはちょうどいい・・・。ついでに、大統領閣下の願いも叶えましょう・・・」

 

サンジェルマンは右手に光の球体を出現させる。

 

「生贄より抽出されたエネルギーに、荒魂の概念を付与させる」

 

白い球体から小さな竜の思念のようなものが現れ、置物の中に入っていく。すると、置物は輝きだした。

 

~♪~

 

S.O.N.Gの調査隊は車に乗って本部に撤退していく。すると、オペラハウスから光が放たれ、そこから巨大な竜がオペラハウスの天井を突き破って現れた。

 

「なんなのあれ!!?」

 

「本部!!応答してください!!本部!!」

 

白い竜はS.O.N.Gの車を追いかけ、そのうちの一台を口に含めて破壊した。

 

『友里さん!藤尭さん!』

 

藤尭の叫びにエルフナインの通信機器に通じた。

 

『装者は作戦行動中だ!死んでも振り切れ!』

 

「死んだら振り切れません!!」

 

藤尭が泣き言を言っている間にも白い竜はもう1台の車を破壊していく。残るは友里と藤尭が乗る車だけだ。白い竜は狙いを車の前方に定めて襲い掛かろうとしている。

 

「うわああああああ!!!軌道計算!!暗算でぇ!!!」

 

藤尭がサイドブレーキを引き、車の速度を落とすことによって車は竜の一撃をぎりぎりで回避した。

 

「やり過ごせた・・・うわぁ!!!」

 

だが躱された竜は地面の中を潜り、地面下より車両を突き上げた。これによって車はさかさまにひっくり返ってしまう。この様子を様子を岸壁の上からサンジェルマンたちが眺めていた。

 

「あなたたちで7万3千7百94・・・その命、世界革命の礎と使わせていただきます」

 

「革命・・・?」

 

革命とは何か疑問が残るが、どのみち絶体絶命の状況下である。ここまでかと思われた時・・・

 

Ragnarok Dear Mistilteinn tron……

 

「っ」

 

「歌・・・?」

 

「どこから・・・?」

 

フォルテの詠唱が聞こえてきた。一台の車がこちらに向かってきて、そのまま竜に突っ込んで爆発した。友里と藤尭の窮地を救ったのは、シンフォギアを身に纏ったフォルテ、マリア、切歌、調の4人だった。

 

~♪~

 

太平洋を渡る豪華客船。この豪華客船はバルベルデに向かっている。そんな豪華客船のカジノフロア。ここには多くの貴族が賭博を楽しんでいる。その中の1つテーブル。そこには3人の貴族が1人女性とポーカーというギャンブルを勤しんでいた。女性の姿はこの場には似つかわしくない格好だ。着ているものは高級ではあるがこの場に似つかわしくない花柄の黒い着物、髪は金髪で長い髪を両サイドに結んでいる。そして、異質であると決定づけるのが、彼女の顔を覆う狐のお面だ。

 

「大口叩いた割には大したことないな」

 

「ゲームもこれで最後・・・お前のチップも最下位。これまでだ」

 

「お前のその面の下を泣きっ面で歪めてやる」

 

貴族の男3人は憎たらしい笑みを浮かべてにやにやしている。だが女性はお面をつけてるため表情はわからないが、まったく慌てた様子はない。

 

「・・・運とは天からの贈り物じゃ」

 

女性の放った言葉に貴族の男は顔をしかめている。

 

「強運を授けられる者は一握り・・・恵まれなかった者はありのままを受け入れるか、無理にでも高みに昇ろうとする。だいたいは後者にあたるのう」

 

「何を・・・?」

 

「じゃが、いくら努力したところで・・・天からの定めは避けられぬ」

 

女性は出来上がった役をテーブルに叩きつける。

 

「ロイヤルストレートフラッシュ」

 

「「「なっ!!??」」」

 

最大級役、ロイヤルストレートフラッシュを出されたことで、男たちは驚愕する。それもそのはずだ。このポーカー、相手にバレないように貴族のリーダー格が勝てるように3人がかりでイカサマが仕組まれていたのだ。それが何の小細工もなしに女性が最終局面でロイヤルストレートフラッシュを出したのだから。もっとも、女性は相手がイカサマをしていたことなど、最初からお見通しだったが。

 

「これでチップは汝らを上回り、妾の勝ちじゃ。ハンデをくれてやったのにこの程度か?」

 

女性は堂々と自身の勝利を通達する。勝気な態度をとる女性に我慢の限界が来たのか貴族のリーダー格はテーブルを蹴り上げてひっくり返す。この騒動に周りがざわつき始めた。

 

「こんな結果認められるか!!!てめぇ!!なんかイカサマしやがったな!!そうじゃなきゃ、俺が負けるなんてありえねぇ!!!」

 

貴族は女性にイカサマを疑い始め、言いがかりをつけてきた。周りはどの口が言うかと言わんばかりに貴族に冷たい視線を送っている。その瞬間、女性の身に纏う雰囲気が変わった。そして・・・

 

ザシュッ!!

 

「・・・あ・・・?」

 

女性を掴んでいた貴族の右手が突然腕ごと斬り飛ばされた。

 

「「「う・・・うわああああああああ!!??」」」

 

『いやああああああああ!!?』

 

突然腕がなくなったことに貴族たちはもちろん、周りも騒ぎ始めた。女性は腕を組んだまま貴族3人に視線を向ける。

 

「汝らの行為は・・・神聖なる勝負を汚す行為そのものであるぞ」

 

女性から溢れ出ている雰囲気に貴族たちは恐怖で顔を歪めている。

 

「神聖なる勝負を汚した罪・・・その代価を・・・たっぷり支払ってもらうぞ」

 

女性は椅子から立ち上がって、貴族の3人に近づいた。

 

~♪~

 

カジノフロアはその後、無惨なものとなっていた。辺り一面は血で穢れており、貴族の3人はまるでゾンビのような死体に成り果てている。その光景を間近に見た人間は恐怖で悲鳴を上げたり、取り乱したり、その場を動けない者もいた。それを生み出した張本人であるお面の和服の女性は豪華客船のテラスにやってきて太平洋を見つめる。

 

「・・・妾にとって、賭博とは人生の分岐点そのもの・・・勝者は繁栄をもたらし、敗者は絶望の淵に落ちてゆく。互いに譲れぬ命運のぶつけ合いほど、胸躍るものはない。じゃが、それを反故する者も少なからず存在する。その者が代価を支払うのは当然の理よ」

 

女性は賭博に対し、相応の価値観があるようで、3人の貴族はその価値観のタブーに触れた。だからこそ女性はその3人の存在を亡き者にした。まるで3人の命で汚された聖域を浄化するかのように。女性の手には白い球体があり、それを札に変えて懐にしまった。

 

「今宵も妾を楽しませるほどの逸材は現れなかったか・・・」

 

女性は顔を覆っていた狐のお面を外し、素顔を露にした。瞳の色は赤く、瞼には赤のペイントが塗られている。顔は誰もが魅了させるほどの美しい美貌を持っていた。

 

「つまらぬのう・・・どこかに、妾を頼ませてくれるわっぱはおらぬものか・・・」

 

彼女の名はエドワード。賭博を愛し、賭博勝負を汚すことを何よりも嫌う、パヴァリア光明結社の錬金術師の1人である。




フォルテ・トワイライト

外見:赤いストレートロングへア
   瞳は緑と紫色のオッドアイ

年齢:24歳

誕生日:6月28日

シンフォギア:怨樹・ミスティルテイン

趣味:食べ歩き

好きなもの:ジャパニーズフード

スリーサイズ:B:77、W53、H85

イメージCV:BanG Dream!:美竹蘭
(その他の作品:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。:一色いろは
        五等分の花嫁:中野四葉
        原神:八重神子
        その他多数)

本作品のもう1人の主人公。S.O.N.Gのエージェントにして、シンフォギア装者。ミスティルテインの適合者。
これまでに犠牲になった者たちの想いを背負う自信を身に着けたことにより、より一層感情表現が豊かになった。最近ではマリアをからかう様子が増えてきたが、本人にはその自覚はない。
十数年ぶりに帰還したバルベルデの現状を見て、自国の政府軍により一層の嘆きを感じている。任務を終えたら、自国をより良い国にするために陰ながら支援するために物資を送ってもよいか相談しようかと考えている。

AXZ編楽曲

『インフェルノ・ダウン』

故郷で味わった地獄の光景。同じ悲劇を繰り返させないために、剣を振るう女の揺るぎなき信念が籠った楽曲。

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