戦姫絶唱シンフォギア 大地を照らす斉天の歌   作:先導

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ラストリゾート

ヨナルデパストーリから何とか逃げ切ることに成功したマリアたちは無事本部帰投することができた。

 

「観測任務より帰還しました」

 

「ご苦労だった」

 

「ふぅ・・・やっぱり本部が1番だぁ・・・安心できる・・・」

 

本部に戻ってようやくプレッシャーから解放された藤尭はほっと一息ついた。

 

「だが今夜はまだ眠れそうにないぞぉ!」

 

「ええ。死ぬ思いをして手に入れたデータサンプルもありますしね。そのつもりです」

 

「それにつけても、無敵の怪物の出現か・・・パヴァリア光明結社を表に引きずり出せたものの、一筋縄ではいかないようだ」

 

無敵を誇る怪物、ヨナルデパストーリがパヴァリア光明結社に控えていることに思案顔になる弦十郎。

 

「心配ない」

 

「そうデス!次があれば必ず・・・」

 

「・・・・・・」

 

「こほん」

 

調と切歌は前向きな発言をしていると、マリアが2人を見つめ、フォルテが咳払いをする。2人の発言を聞いて、エルフナインは落ち込んだ表情を見せている。

 

「「あ・・・」」

 

「ごめんなさい・・・LiNKERが十分揃っていれば、次の機会なんていくらでも作れるのに・・・」

 

そう、LiNKERのレシピ解析こそがエルフナインに課せられた使命。それが未だに進展がなく、LiNKERが完成できてないまま最後の1本を使ったのだ。このようなことになってしまったことにエルフナインは責任を感じているのだ。

 

「いや、あのぅ、そういうつもりじゃなくてデスね・・・」

 

自分たちの失言に気付いた切歌は慌てて誤解を解こうとする。

 

「やっぱりボクにレシピの解析は・・・」

 

レシピの解析に自信をなくしてしまっているエルフナインにマリアは彼女に近づき、頬を引っ張る。

 

「わ!何をするんですかぁ⁉」

 

突然のことにエルフナインは頬を赤らめ、マリアの指から離れ、自分の頬を手で押さえる。そんな彼女の頭にフォルテは優しく手を乗せる。

 

「諦めるには、まだ早いのではないだろうか」

 

「フォルテの言う通りよ。それに、ボロボロで帰還しても、まだ負けたとは思ってない。誰も悪くないんだから、エルフナインが謝る必要はないわ」

 

「そうね。私達はまだ、諦めてないもの」

 

「ごめんなさいよりも応援が欲しい年ごろなのデス!」

 

4人はエルフナインを元気づける言葉をかけている。その中で両手を腰につけて胸を張る切歌が発した言葉に疑問符を浮かべる。

 

「・・・ごめんなさいよりほしい・・・?」

 

「そうだ」

 

フォルテはエルフナインの頭を優しく撫でる。エルフナインは顔を俯かせ、少し悩んだ表情をする。彼女がこの言葉の意味を知るのは、もう少し先であろう。

 

~♪~

 

オペラハウスの地下。この場所に戻ってきた3人の錬金術師はオレンジ色の水晶の中で今も眠っている人形・・・いや、オートスコアラーを見ていた。実はサンジェルマンはすでに、エドワードと共にこのオートスコアラーと相まみえたことがある。それは今から400年前のことである。サンジェルマンはその当時のことを思い出していた。

 

「はるか昔、フィーネが残した異端技術の断片を収斂させ、独自に錬金術を編み出してきた私たち、パヴァリア光明結社。だからこそ、異端技術を独占し、優位を保とうとするフィーネとの激突は避けられず、統制局長アダムは神の力を形とする計画を進めていたのだけれど・・・要たるティキを失ってしまった光明結社は歴史の裏側に追い立てられてしまう・・・」

 

そう、彼女たちの目の前にいるオートスコアラーこそが、光明結社の計画に必要不可欠な存在なのだ。名をティキという。

 

「400年の時を経て、フィーネは消滅した。そして米国政府を失墜させた私たちは、ついに、回天の機会を繰り寄せた・・・」

 

「後はこのお人形をお持ち帰りすれば、目的達成ってワケダ」

 

「それはそれでおもしろくないわ」

 

カリオストロはフォルテによってつけられた傷に貼った絆創膏を撫でながら、恨めしそうにそう発言した。

 

「天体運航観測機であるティキの奪還は、結社の計画遂行に不可欠。何より・・・」

 

「この星に、正しく人の歴史を紡ぐのに必要なワケダ。そうだよね、サンジェルマン」

 

「人は誰でも支配されるべきではないわ」

 

「じゃあ、ティキの回収はサンジェルマンにお任せして、あーしはほっぺたのお礼参りにでも洒落こもうかしら」

 

そう言ってカリオストロは地上へと向かう階段へ向かおうと歩き出す。そんな彼女の行動をサンジェルマンが咎める。

 

「ラピスの完成を前にして、シンフォギア装者との決着を求めるつもり?」

 

「勝手な行動をする・・・後でエドに小言を言われても知らないワケダ」

 

彼女たちの仲間であるエドワードが目的を果たし、こちらに向かってきていることはテレパスで確認済みだ。それでもカリオストロは止まらない。ちなみではあるが、プレラーティとカリオストロはエドワードのことをエドと呼び慕っている。

 

「それでも、ヨナルデパズトーリがあれば、造作もないことでしょ?今までさんざっぱら嘘をついてきたからね。エドには申し訳ないと思うけど、せめてこれからは、自分の心には嘘をつきたくないの」

 

元々は嘘で埋め尽くされた詐欺師の男であったカリオストロ。サンジェルマンと出会い、自分に居場所を与えてくれた彼女をカリオストロは慕っている。彼女の力によって生物学的に完全な身体構造である女性になってしまったが、それを含めても彼女はサンジェルマンに感謝している。それから彼女は自分の気持ちには嘘をつくのはやめることにした。ゆえに借りを返さなければ気が済まない。その思いでカリオストロはシンフォギア装者との対決を求め、地下から外に出るのであった。

 

~♪~

 

負傷してしまったステファンを都市病院に送るため、翼たちは彼を荷台車の荷台に乗せ、移動している。装者とステファンの姉であるソーニャも乗っている。任務は完了しても、負傷者を出してしまったのだ。素直に喜ぼうとする者は誰1人としていない。特にクリスの表情は誰よりも暗かった。

 

ソーニャ・ヴィレーナ。歌で世界を平和にしたいと考えるクリスの両親の賛同者であり、バルベルデで住んでいた小さなクリスにとって、姉のように慕っていた人物だ。ところがある日、届いた救援物資が爆弾であったと知らず、ソーニャは持ち込んでしまった。その結果、爆弾は爆発し、それによってクリスの両親は亡き者となってしまった。両親が亡くなってしまったのは、ソーニャの不注意のせいだと思い込んでいる。その時に言った言葉が・・・

 

『ソーニャのせいだ!』

 

その後和解もできず、別れてしまったままであったが、このような形で再会してしまう。何とも皮肉なことだ。クリスはステファンの足を射抜き、ソーニャに詰め寄られた時のことを思い出す。

 

『あなたが私を許せないように、私もあなたが許せない!!』

 

『待ってください!ステファン君の足に解剖器官が巻き付いたから、クリスはああするしかなかった!アルカ・ノイズの分解から救うにはそれしかなかったから!』

 

『やめろ相棒!もういいって言ってるだろ!』

 

『クリスは黙ってて!!クリスだって好きでやりたかったわけじゃないんです!仕方なかったことなんです!』

 

『あなたの言ってることは間違ってないかもしれない・・・クリスの選択も正しいのかもしれない・・・だけど・・・!!』

 

『だったらクリスじゃなくて私を憎んでください!元を正せば、あの人を取り押さえきれなかったのが原因だから!』

 

『相棒!!』

 

『大丈夫・・・私・・・憎まれるの・・・慣れてるから・・・』

 

日和の言い分が間違っていないのはソーニャだってわかっている。ただそれで納得できるようなら最初っから怒りなどぶつけない。ソーニャの怒りを受け止めるべきなのに、日和に庇われ、気遣われてしまっている自分に、クリスは不甲斐なさを感じている。

 

(自分が情けねぇ・・・!あたしの選択ってば・・・どうしていつもいつも・・・!)

 

「クリスちゃん・・・」

 

自分を思い詰めているクリスを響は心配している。

 

「・・・クリスとは・・・あの混乱に話もできずに、はぐれてしまった・・・。だから・・・こんな形で再会したくなかった・・・」

 

「ソーニャさん・・・」

 

ソーニャの言葉に思うところがあり、日和はバツが悪そうに、彼女から視線を逸らす。クリスも複雑そうに顔を俯かせている。そんな時、足を失い、荒い息遣いをするステファンがクリスの足に手を添えている。この場で1番辛いのは彼なのに、クリスを安心させようとしているのだ。その意図を察したクリスは彼に触れるべきか躊躇いながらも、ゆっくりとその手を握った。

荷台車を運転していた翼の端末に通信が届き、彼女は通信を繋ぐ。

 

「翼です」

 

『エスカロン空港にて、アルカ・ノイズの反応を検知した!現場にはマリア君たちを向かわせている』

 

『マリアさんたちはLiNKERの効果時間内で決着させるつもりです!』

 

「了解です。都市部の病院に負傷者を搬送後、私たちも救援に向かいます」

 

翼は通信を切った後、マリアたちの救援に急ぐためにステファンを都市部の病院に搬送するのであった。

 

~♪~

 

アルカ・ノイズが発生したエスカロン空港は地獄絵図と化していた。ここには政府軍が駐屯していたのだが、なんとアルカ・ノイズが政府軍に襲い掛かっているのだ。

 

「こいつら味方じゃなかったのか!!?」

 

「そんな見た目じゃない・・・うわああああ!!!」

 

味方であったはずのアルカ・ノイズが突然自分たちに襲い掛かってきて困惑している政府軍たちは応戦するも、敵うわけがなく、アルカ・ノイズによってあっけなく分解されてしまう。アルカ・ノイズを放った本人であるカリオストロはこの光景を倉庫の屋根で見ていた。パヴァリア光明結社が政府軍に施したのは支援だけ。彼女らに仲間意識など初めから持っていない。ただ、装者たちを誘き寄せるための餌として利用しているにすぎない。

 

「派手に暴れて装者たちを引きずり出すワケダ」

 

そこにプレラーティがカリオストロの隣に立つ。

 

「あら、手伝ってくれるの?」

 

「私は楽しいこと優先。ティキの回収はサンジェルマンに押し付けたワケダ」

 

プレラーティがそう言うと、ヘリのローター音が聞こえてきて、彼女は顔を上げる。近づいてきたヘリにはプレラーティの予想通り、フォルテ、マリア、調、切歌の4人が乗っていた。

 

「待ち人来たり♡」

 

マリアたちはヘリから飛び降り、ギアの詠唱を唄う。

 

Seilien coffin airget-lamh tron……

 

ギアを纏ったマリアたちはブースターを使い、敵に向かっていく。調のツインテール部位のアームが開き、小型丸鋸をアルカ・ノイズに放った。

 

【α式・百輪廻】

 

複数の丸鋸はアルカ・ノイズを次々と切り刻んでいく。マリアとフォルテはカリオストロとプレラーティに向けてかかと落としを放つ。カリオストロはバックジャンプ、プレラーティは隣の倉庫の屋根に飛び移って回避する。

 

「のっけからおっぴろげなワケダ・・・ならばさっそく!」

 

プレラーティが錬金陣を展開し、ヨナルデパストーリを召喚しようと動くが、切歌が肩部のアンカーを放ち、プレラーティの身体に巻き付かせて拘束させる。

 

「さっそく捕まえたデス!」

 

「もう!何やってるのよぅ!」

 

カリオストロがプレラーティに呆れている間にもマリアが短剣で斬りかかりに来た。カリオストロは斬撃を躱し、後退しながらマリアに向けて光の光線を放つ。そこへフォルテが前に出て、両剣に変形した大剣を回転させて光線を弾きながら前進する。

 

『ミスティルテイン、アガートラーム、シュルシャガナ、イガリマ、敵と交戦!』

 

『適合係数、安定しています!』

 

『皆さん・・・』

 

マリアとフォルテはアイコンタクトを交わし、首に縦に頷くとフォルテはカリオストロの側面に回り込もうとする。

 

「今度はこっちで、無敵のヨナルデパストーリを・・・!」

 

「はああああ!!」

 

カリオストロがヨナルデパストーリを召喚しようとすると、マリアが前進し、彼女の顔面に強烈な拳を叩きつける。それも、フォルテが着けた傷と同じ頬に。

 

「攻撃の無効化、鉄壁の防御・・・」

 

「だが貴様は無敵ではない!!」

 

マリアがカリオストロを吹っ飛ばしたところにフォルテが彼女を蹴り飛ばす。カリオストロはそれによって別方向に吹っ飛ぶ。

 

「ああん!!」

 

一方プレラーティはこのまま拘束されたままでいるわけがない。彼女は錬金陣を展開し、アンカーを吹き飛ばして拘束を破る。そこに調の丸鋸が展開されたアームが斬りかかってきて、プレラーティは右手の防御障壁で防ぐ。さらに切歌が鎌を振るったがプレラーティは左手で防御障壁を張って防ぐ。切歌と調は負けじと2人の連携でプレラーティに攻撃を続ける。

 

(繰り出す手数で、あの怪物の召喚さえ押さえてしまえば・・・!)

 

マリアとフォルテも2人に負けておらず、息の合った連携でカリオストロを攻撃していく。カリオストロは両手に防御障壁を張ってマリアとフォルテの連続攻撃を凌いでいく。しかし、短剣と大剣の強力な斬撃によって、両手の防御障壁は破壊される。好機と踏み、マリアとフォルテは攻撃を仕掛けようとするが・・・

 

ビビビビ・・・!

 

LiNKERの効果時間が間もなく切れかけており、その反動が出始め、2人の動きを鈍らせた。いや、2人だけではない。調も切歌も反動が出始めている。

 

『適合係数急激に低下!まもなくLiNKERの有効時間が超過します!』

 

『!!司令!シュルシャガナとイガリマの交戦地帯に、滑走中の!』

 

『航空機だとぉ!!?』

 

調と切歌たちの交戦地帯に滑走中の航空機が近づいてきていた。この航空機に乗っていたサブパイロットがメインパイロットに報告をする。

 

「人が!割とかわいい子たちが・・・!」

 

「構うな!止まったら、こっちが死ぬんだぞ!」

 

普通ならここで航空機を止めるのだが、航空機は止まる気配はない。それもそのはずだ。なぜなら後ろには複数のアルカ・ノイズがおり、タイヤのように転がって地面を分解しながら航空機を追っているのだ。ここで航空機が止まれば、アルカ・ノイズの餌食になるのは目に見えている。

 

「調!」

 

「切ちゃんの思うところはお見通し!」

 

「行きなさい!」

 

「後のことは僕たちが引き受けた!」

 

「了解デス!」

 

切歌は鎌を振るってプレラーティを引きはがした。彼女らの相手をマリアとフォルテに託し、切歌と調は航空機を追いかけるアルカ・ノイズの殲滅に向かう。プレラーティは地面に落ちたカエルのぬいぐるみを拾い上げる。

 

「あの2人でどうにかなると思っているワケダ・・・」

 

「でもこの2人をどうにかできるかしら?」

 

「なめるな。こちらも2人いる」

 

ハッキリ言ってしまえば、LiNKERの効果時間が残り少ないため、どうあがいても勝ち目はない。だがマリアとフォルテは最初から倒そうという考えはない。日和たちが来るまでの間、2人を引き付け、足止めをし、ヨナルデパストーリの召喚を阻止すればいいだけだ。それができれば、十分だ。そのためにマリアはプレラーティを、フォルテはカリオストロに攻撃を仕掛けて彼女たちの動きを制限し、ヨナルデパストーリの召喚を止める。

航空機を追いかけてくるアルカ・ノイズを調は複数の小型丸鋸を放ち、切歌は鎌を振るって切り裂いていく。それでも数が残っているアルカ・ノイズ。そのうちに2体が攻撃をかいくぐって航空機のタイヤに突進し、タイヤを分解する。バランスを崩しかける航空機を調が脚部の小型丸鋸を展開して進み、切歌が脚部にブレードを展開し、ブーストで進みながら航空機を支える。

 

(諦めない心・・・)

 

本部のモニター越しで戦いを見守っているエルフナインはいつギアが解除されてもおかしくない状況下でも諦めずに戦う4人の姿に感銘を受けている。すると、カリオストロとプレラーティの足止めをしていたマリアに青い輝きを、フォルテは赤い輝きが現れる。

 

(あれは・・・!)

 

エルフナインはそれを見逃さなかった。だがギアのバックファイアが入り、その輝きは消えた。エルフナインは通信越しで装者たちに声をかける。

 

『皆さん!もう一瞬だけ踏みとどまってください!その一瞬は、ボクがきっと永遠にして見せます!ボクもまだリンカーのレシピ解析を諦めていません!だから・・・諦めないで!!』

 

エルフナインの叫びに4人はその思いに必ず答えるというように、首を縦に頷く。調は航空機の支えを離し、前に出る。切歌は脚部と肩部のアームを巨大化させて、速度を保たせる。機体前方に出た調は脚部の丸鋸をタイヤのように巨大化させる。そこへ切歌が鎌の柄を調の肩の真上を通るように伸ばし、調は伸びた鎌の柄を掴んで、タイヤにスパイク形成して、ブレーキをかける。そして切歌はさらに加速をかけて、鎌を振るって航空機を投げるように強引に飛ばした。これによって航空機は管制塔を飛び越え、空へと飛び立った。

そして、マリアは短剣を籠手の後部に接続して、砲台に変形する。そして、狙いをプレラーティとカリオストロに目掛けて光線を撃ち放つ。

 

【HORIZON✝CANNON】

 

フォルテが大剣を構えると、大剣の刃が変形し、さらに鋭くなり、刀身に赤黒いエネルギー波が纏う。そして、マリアに続くように突きを放ってエネルギー波は飛ばされる。

 

【Beelzebul Of Gluttony】

 

竜のような頭部になったエネルギー波と強大な砲撃はプレラーティとカリオストロを飲み込んで爆発した。爆炎が昇っていく。

 

『さすがです・・・皆さん・・・』

 

全力を出し切ったマリアたち4人のギアが解除された。LiNKERの効果時間を越え、バックファイアのダメージもあったため息遣いが荒い。そしてその直後、マリアは目の前の光景に目を疑った。先ほどの2人の攻撃は確かに直撃した。それなのに2人の錬金術師は未だに健在・・・しかもダメージも負っていない。カリオストロはちっちっちと指を振っている。

 

「まだ戦えるデスか!!?」

 

「でも、こっちはもう・・・」

 

そう、LiNKERがない以上、4人はもうギアを纏うことができない。それすなわち、ヨナルデパストーリの召喚を許してしまうことになる。

 

「くっ・・・だが・・・やらせるわけには・・・!」

 

フォルテは足搔きとして拳銃を取り出し、2人の錬金術師に向けて全弾を発砲する。だが通常兵器が通るはずもなく、弾はプレラーティの防御障壁によって防がれる。

 

「無駄な足搔きなワケダ」

 

その間にもカリオストロは錬金陣を展開し、ヨナルデパストーリを召喚しようとする。

 

「おいでませ!無敵のヨナルデパストーリ!」

 

錬金陣より白い光が放たれ、天に昇っていき、眩い光が発せられた。光が収まると、無敵の怪物、ヨナルデパストーリがその姿を現す。

 

『そんな・・・!』

 

「時限式ではここまでなの・・・⁉」

 

「ちぃ・・・!」

 

ヨナルデパストーリの召喚によって、絶望が漂ってきたその時だった・・・

 

「「うおおおおおおお!!!」」

 

ギアを纏った響と日和が雄たけびを上げて、響はブースターの勢いが乗った拳を、日和は棍による強烈な突きをヨナルデパストーリに叩きつけた。

 

【電光石火】

 

「ふふん、効かないワケダ」

 

攻撃を通さないヨナルデパストーリの前には無駄な足搔きだとプレラーティは嘲笑う。だが、錬金術師にとって予想外なことが起きた。ヨナルデパストーリの受けたダメージが修復されないと同時に、破壊エネルギーが膨張されていた。

 

「!!?」

 

「んなっ!!?」

 

これには当然、プレラーティとカリオストロは驚愕する。

 

「それでも無理を貫けば!」

 

「道理なんてぶち破れるデス!!」

 

「「はああああああああ!!!!」」

 

2人の力がさらに強まっていき、そしてヨナルデパストーリの身体を貫いて破壊した。胴体を破壊されたヨナルデパストーリは粒子となって霧散していった。

 

「どういうワケダ・・・⁉」

 

「もう!無敵はどこ行ったのよぅ!!」

 

無敵のヨナルデパストーリが消滅した事実にプレラーティは理解が追い付いていない。カリオストロは身体をくねらせ、疑問を口にした。

 

「「だけど私たちは、ここにいる!!」」

 

響と日和が着地し、構えをとってプレラーティとカリオストロと相対する。




西園寺海恋(AXZ編)

外見:水色髪の三つ編みポニーテール
   茶色の縁のメガネをかけ、瞳は緑色

年齢:17歳

誕生日:9月30日

趣味:勉強、読書

好きなもの:クラシック音楽

スリーサイズ:B:84、W55、H86

イメージCV:ウマ娘プリティーダービー:マンハッタンカフェ
(その他の作品:プリンセスコネクト!Re:Dive:キョウカ
        変態王子と笑わない猫:筒隠月子
        クロスアンジュ 天使と竜の輪舞:クリス
        その他多数)

リディアン音楽院の3年生。日和のルームメイトであり親友。風紀委員に属しており、S.O.N.Gの外部協力者。
実家の会社である西園寺グループが買収されているという状況下においても両親を心配しており、何もできない自分に嫌気がさしている。この2つが相まって、彼女は心ここにあらずの状態である。
これから起こる出来事によって彼女自身、自分が何をするべきか、そして、自分の望むものが何か・・・それによって彼女の運命を左右することになろうとは、この時の彼女はまだ知らない。

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