英雄はやり直す   作:女騎士

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4話

ベルがベッドに寝転がり1時間ほどが経過した頃、扉がノックされた。

 

「ベルたん、皆帰ってきたで」

「ッ!はい、今行きます!」

 

慌てて扉の方へと向かい、部屋から出たベルがロキの後をついて行くと、一つの扉の前で立ち止まる。

 

「フィン、連れてきたで〜!」

 

扉を開けて部屋の中へ入るロキに続き、ベルも部屋に入ると、服の上からでも分かる程、鍛え抜かれた筋骨隆々の体躯を持つドワーフ。何かの効果を齎してくれる事が予想される宝玉の様な物が埋め込まれた錫杖を持つ美人なエルフ。そして、そんな2人と話をしている少年の様な体躯を持つ金髪の人間。

 

(ガレスさん、リヴェリアさん、・・フィンさん...)

 

以前、「英雄」というあだ名を神々からつけられていた際に、すごくお世話になったロキ・ファミリアの最古参の3人。

ロキとベルが部屋に入ってきた事により、談笑を止めた3人と3人の姿を見て固まってしまうベル。

そんなベルを見て、自分達3人を見て緊張していると考えたフィンは笑みを浮かべて、優しくベルに語りかけた。

 

「君が、先程ロキが話していたウチに入りたいって言っていた子かい?」

「は、はい。ベル・クラネルです。遠征の帰りでお疲れのところ面接の時間を作って頂き、本当にありがとうございます」

 

決死の覚悟でゴライアスから逃げて辿り着いた18階層にて他派閥にも関わらず、快くもてなしてくれた時の思い出や異端児と関わりを持っていた際に敵対した思い出、様々な思い出が脳裏を駆け巡って、固まってしまっていたベルだったが、フィンに声をかけられて「ハッ」と我に帰った。

そして、慌てて礼を述べた後、ペコリとお辞儀をした。

そんなベルの行動に驚いた3人は一同に同じ事を考えた。

 

(成程。ロキが言う通り凄く良い子だ)

 

ロキがベルを連れてくる前に言っていた「凄く良い子やから」という言葉を思い出し、「たしかに」と心の中で呟いた3人。

 

「じゃあ、そろそろ面接を始めさせて貰うよ」

 

ベルにソファに座るよう促したフィンは緊張した面持ちでソファに座るベルの対面にあるソファに座り、一言問いかけた。

 

「君は何故、冒険者になろうと思ったんだい?」

 

フィンからの質問を受け、数秒悩んだベルは答えた。

 

「・・ロキ様、先日、貴女に同じ質問をされた際、僕は『困っている人を助ける。そんな英雄になりたいからです』って答えましたよね?」

「え?あ、ああ。そやな」

「・・実はもう一つ冒険者になろうと思った理由があるんです...それは、アイズ...アイズ・ヴァレンシュタインを今度こそ守る為です」

 

先程まで優しそうな目をしていた筈なのに、現在は決意が篭った強い目をしているベル。

そんな、ベルの変わりように驚いた3人とロキ。

室内が静寂に包まれる中、フィンは口を開き、問いた。

 

「君の目的は分かった。・・君は一体、『何者』なんだい?」

 

フィンの問いかけ...室内にいるベル以外の4人全員が知りたい問いかけを受けたベルは口を開いた。

 

「・・皆さんは、未来の人物、又は精神だけが過去に戻ったという話を聞いた事はありますか?」

「・・僕はない。3人は?」

「・・ウチもや」

「・・ワシもない」

「私もだ」

 

ベルの問いかけを受け、驚いた4人は其々、「聞いた事がない」と応える。

そんな4人を見て、「分かりました」と答えたベルは自身が体験した事柄について語り出した。

レベル1の時、単騎でミノタウロスを撃破し最速でレベル2になった事。アポロン・ファミリアとの戦争遊戯でヒュアキントスと戦い、レベル3に至った事等、レベル10になるまでに起こった数えきれないほどの出来事を語り終えたベルが時計を見ると、1時間が経とうとしていた。

ベルの話を終始無言で聞いていた4人は、唖然としている。

 

「いや、ホンマに、よー生きとったな、自分。普通、死んでるで?」

 

ロキがベル以外の全員が言おうとしていた事を口にすると、フィンの右後ろに立っていた錫杖を持ったリヴェリアが呟いた。

 

「・・レアスキルか...レア魔法か...それとも両方...?」

 

ブツブツとベルの強さについて自身の考えを呟くリヴェリア。すると、フィンの左後ろに立って、「ガハハッ!」と豪快に笑っていた筋骨隆々のドワーフ、ガレスがベルの入団許可を願う。

 

「フィン、ワシはこの坊主を入団させて良いと思っている」

「私もだ。・・正直、未来の話をされてもピンと来てないが、彼の話の序盤、アイズと会った時の話。ミノタウロスに追いかけられ、殺されそうになったところをアイズに助けて貰ったという話。本日、私たちの前から逃亡する複数のミノタウロスの最後の一匹を仕留めたのがアイズで5階層だ。彼が冒険者になっていて5階層まで来ていたら十分あり得た話だと思う。だから、私はこれからの行動を彼が言った事を頭の隅に置きながら決めなければならないと思う。・・アイズは私の娘のような存在だ。そんな娘を死なせたくない」

「・・嘘を吐いてたら、ロキが分かる。が、何も言わないって事は本当の事か。・・分かった。ベル、君の入団を認めよう」

 

ガレスの願いとリヴェリアの考えを聞き、ロキが何も言ってこない事を考慮したフィンはベルの入団を認めた。

団長であるフィンからも認められた為、ロキは早速、ベルに恩恵を刻む為に場所を移そうと提案する。

そんなロキの提案を聞いていた3人は一同に「自分もベルのステイタスが見てみたい」とベルに「立ち会っても良いだろうか?」と問う。

特に問題はないと考えたベルは3人からの問いかけに「はい、良いですよ」と返答した。

場所を移し、長いソファがある部屋へと来たベル達。

服を捲り、背中が見える様にしたベルがソファに俯く形に寝転がると、ロキはその上に座る。

そして、自分の人差し指の腹に腹を刺し、自身の血をベルの背中の上に落とした。

すると、ベルの背中に環の様な形をした光が形成されたと思ったら神聖文字と呼ばれる文字が浮かび上がっていく。

その事を確認したロキは文机の上に置いておいた羊皮紙を手に取り、ベルの背中にあてて羊皮紙をなぞった。

羊皮紙に文字が浮かび上がっていく。

 

「・・マジで...?」

 

ロキの驚き様に「何事か」と3人がロキの持つ羊皮紙を覗き込むと絶句した。

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力.0

耐久.0

器用.0

敏捷.0

魔力.0

 

魔法:ファイア・ボルト

速攻魔法

 

スキル:愛情一途

・早熟する

・愛する人を想い続ける限り効果持続

・愛する人への想いの丈で効果向上

 

 

 

羊皮紙に記載されている事柄を読み上げた3人は三者三様の反応を見せる。フィンは「ふむ...」と顎に手を当て何かを考え込み、リヴェリアは顔を真っ赤にし、ガレスは豪快に笑う。

そんな3人の反応を見ながら、羊皮紙をベルに手渡したロキは問う。

 

「ベルたん」

「はい」

「アイズたんの事大好きやねんな?」

「はい!心の底から愛してます」

 

恥ずかしげもなく語るベルにロキと3人は満面の笑みを浮かべた。




今回は少し長くなりました。
評価して頂きありがとうございます。
スキルで英雄一途がないのは逆行する前の世界で既に英雄になっている為、英雄への願望はそこまで強くないという設定にした為です。
又、憧憬一途はベルにとってアイズは憧憬の対象ではなく、愛する人という設定にした為無くなってます。

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