バベルを出て帰路に着くベルとロキ。
二人が帰り始めて数分が経った頃、ベルは立ち止まり、振り返った。
(この視線...フレイヤ様だよね...)
無遠慮にこちらへ視線を送ってくる女神フレイヤにベルが「前にもあったなぁ」と苦笑いしていると、立ち止まったベルを怪訝に思ったロキが問う。
「いきなり振り返ってどしたん?」
「あ、少し視られていたので、つい、振り返ってしまいました」
「視られていた?誰に?」
「・・フレイヤ様です」
「な、なんやて⁉︎それ、ホンマか⁉︎」
「はい。前にもあったので気付けました」
ベルの返答に慌てたロキはすぐさま、バベルの上部を睨んだ。
(ベルはウチの子やぞ。色ボケ)
ベルを隠す様に自分の背中の方へ押したロキが睨むと、数秒もしない内に、フレイヤからの視線は無くなった。
「・・あ、視線無くなりました」
「・・じゃあ帰ろうか」
「はい」
ベルからの報告により視線が無くなった事を知ったロキは、ベルの肩に自分の手を置き、『黄昏の館』がある方向へ歩き出した。
(あんの、色ボケ。ベルにちょっかいかけたら許さんで)
帰路に着きつつ、ロキは「万が一」の時に備えてフィン達と会議をする事を決めた。
『黄昏の館』に到着したロキはベルを連れて執務室に入った。
「フィン、リヴェリア...ん?ガレスは?」
「ついさっき自分の得物を持ってゴブニュ・ファミリアに行ったよ...って、ロキ。どうしたんだい?僕達を呼ぶなんて」
書面に目を落としながらガレスがいない事を説明したフィンはロキの問いかけに疑問を持ち、問い返す。その時、フィンが座る座席の前にある豪奢なソファに腰掛けて紅茶を飲んでいたリヴェリアもカップを机に置き、フィンと同じようにロキの方へ顔を向けた。
「冒険者登録しにバベル行って、その帰り道の事なんやけどな...」
二人に話す様に促され、先程あった事を話しだすロキ。
「・・っていう事があったんや。やから、三人呼んで会議せなって思ってん」
「・・ふむ。ベル」
「はい」
「君の護衛に僕達やアイズ達、第一級冒険者をつける事は出来ない。・・それは分かるね?」
「はい。新人である僕にフィンさん達がつくと、ファミリアの皆さんに煙たがられる可能性が出てくるからですよね?」
「うん。だから、君にはラウルとアキをつけさせようと思う。理由は、そろそろあの子達にも「後輩を育てる」っていう経験を積ませたかったから。それと、ロキがいう『万が一』の時。つまり、フレイヤ・ファミリアの団員に襲われた時、ある程度の敵なら撃退出来ると思ったからだよ」
フィンの考えを聞いたベルは先程、握手をしたラウルと先日、オラリオに来て初めて『黄昏の館』に赴いた時に応対してくれたアキの事を思い出す。
レベル4で神々から『超凡夫』というあだ名をつけられていて、自分の方が歳上の筈なのに、腰を低くしながら挨拶してくる彼。
ラウルと同じレベル4で『貴猫』というあだ名に相応しい容姿端麗な彼女。
そんなラウル達の姿を思い出しつつ、ベルはフィンの提案に同意した。
「よし。あ、それと、基本的にラウルに着いてもらって、ラウルが何かの事情で面倒が見れない時、アキに着いてもらう形になるけど良いかい?...って、君なら大丈夫か。僕達よりも凄い経験積んでるみたいだから」
「いえ、ダンジョンでは何が起こるか分からないので、お二方に着いて頂けたら心強いです。宜しくお願いします」
「分かった。二人には僕から上手く伝えておくよ」
フィンに頭を下げたベルは自室へと戻っていった。