近所のマリア   作:naow

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私はマリアから、こんな話は聞いたことが有りませんでした。怒ってません。


魅惑の氷華

 生前……あんまり死んだ自覚は無いと言うか実感が無いのだが、要は異世界で人形なんぞに定着してしまう前は、個人的には。

 あんまり、こう、ショッピングモールには良い印象を抱いていなかった。

 

 デートならともかく、ひとりで来るとあんまりにも、なんというか……家族連れが眩しすぎたのだろう。

 今更強がる気にもなれない。

 

 そんな私が唯一寛げたのが、こういったフードコートである。

 周囲が騒がしいのはもう、人が集まる場所である以上仕方がない。

 そんな風にある意味で諦念していた喧騒も、久々に体感してみれば意外と心地が良い。

 

 これは懐かしさ――だけではなく。

 

「こ、こんな、3つ選べるなんて、こんな贅沢な……! どれから食べるべきか、真剣に悩むぞ!?」

「美味しいよ! カーラちゃん、これ美味しいよぉ、悩むんだったら私も手伝ってあげるよぉ?」

「へえ……! 冷たくて甘いモンなんて、どっかで食べたことあったかな? もしかしたら、初めて食べたかも? マリア、ボーッとしてるんなら私がそれ食べても良いよな?」

 

 遠くの喧騒なんてものは、すぐ身近で騒ぐ仲間たち(ばかども)に比べれば穏やかなものでしか無い、そう体感させられたからだ。

 カーラはエマに狙われ、私はサラにロックオンされているらしい。

 

 ザガン人形というものは、本当に性質(タチ)の悪い人形である。

 

 アリスはしっかりと防御態勢を取りつつ、無言でアイスを頬張っている。

 と言うか、アリスはこういう場面で横取り狙いされる率が極端に低い。

 

 他人事でこちらを眺めつつ安全圏に身を置いている、そう思い込んでいるアリス(こいつ)にも、いつかこの焦燥と恐怖を教えてやりたいものだ。

 

 

 

 大人の事情で店名は伏せさせて頂くが、久しぶりに利用した、日本では数字で呼ばれていることで有名なこの店は、懐かしさよりも新鮮な楽しさを感じてしまう。

 元より甘味は嫌いではないのだが、ガワが女性になったことで、食の好みも見た目に引っ張られてしまっているのだろうか。

 

 ……単に久しぶりのアイスクリームたちに、テンションが上ってしまっているだけだろう。

 

 ちなみに、海外では数字ではなく、創業者から取った名前の方で呼ばれているとか言うのは、ファンには良く知られた事実だろう。

 

 それなりに賑わいつつも空席が目立つのは、本日がいわゆる平日で、昼時も少しばかり過ぎ越した時間だからだろう。

 そんな訳で悪目立ち度がアップしている私達。

 その中でも見た目が一番陰気なカーラが注文したものは、ポッピンがシャワーしている、女子人気がかなり高いと評判の一品。

 それに、期間限定フレーバーらしい……えーと、なんて表現すべきか……見た目は楽しい色合いなのに、その名は知らない人が見たらなんでキノコ? と思うことであろう。

 国民的どころかもはやワールドワイドなあのゲームのアイテムが元ネタだと思われるので、地球でそんな事を心配するのは余りにも杞憂が過ぎるのであろうが……。

 

 異世界から来た筈のカーラは、一切臆すること無く、それをチョイスした。

 

 度胸と感性、どちらを褒めるべきか。

 あ、ちなみに一口貰ってみたが、コーラフレーバーのソルベとバニラの相性が悪い訳もなく、しかもそれにパチパチと弾けるキャンディがアクセントになっている。

 良いものだと思うが、カーラはポッピンなあれも買っている訳で、しかし彼女はそもそもその存在を知らなかった筈だし、これはただの偶然なのか、意味の理解らないカーラの能力なのか。

 

 そして、目ざとく見つけた、サイズはやや小さくなるものの3つ注文できるという事実に対し、カーラはもう一品、コットンなキャンディとやらを選択。

 味わいは思ったより優しく、見た目と違いすぎて驚いたが……この三品を重ねる、というか大きめのカップの中に並んでいるのを見ると……なんでカーラがこのチョイスだったのかがまったく理解できなくて、それはそれで楽しい。

 それはそうと、今回フルーツ感が無いのだが、それは良いのだろうか?

 

 気になった方でなんとなくピンときた方は、HPとか、出来れば実際に店頭で見て私の気分を共有して欲しい。

 サイケだ、とかポップだ、とか色々な意見があると思うし、それで良いと思う。どれもとても美味しかったし。

 

 エマは期間限定の、ダイキリと言うカクテルをイメージしたらしいソルベと、ラブでポーションでキュートなハートチョコ入りの定番メニュー、そして限定メニューから杏仁豆腐フレーバーのものを選択。

 ノンアルコールとはいえ、ダイキリなんてアリスが選びそうだと思ったのだが、ひとくち貰ってみれば……スッキリとなんとなくオトナの味わいで、うん、エマに似合わない。

 ラブでポーションの方が、どちらかと言えばエマ――の見た目――には似合っていると思う。

 あと、杏仁豆腐のアイスは初めて食べたが、なかなかに美味であった。

 

 サラは何が何やら、という様子だったのだが、アリスがサポートして聞き出した好みの傾向から、ストロベリーのチーズケーキなあれと、バナナとストロベリーのあれを注文。

 ストロベリーの比重が多めだが、まあ、本人がすこぶる嬉しそうなので、良いのであろう。

 

 アリスは定番メニューからチョコチップなあれとナッツがふんだんなあれを、一切の迷いなく選んだ。

 以前から好きで頼んでいたモノ、とのことで、冒険心のない元冒険者である。

 そんな事を言う私は? と言えば、ラムレーズンと、官位名を関するあずきをふんだんに使用したアイスクリームを迷うこと無く注文した。

 限定メニューに目を引かれないことは無かったが、やはりいつも注文していたものは、やはり安心感が有る。

 

 私も冒険していない? 良いのだ、私は冒険者ではなく、ただの旅人なのだから。

 

 私やアリスはともかく、残る3体は、選んでいる段階から楽しそうであった。

 綺麗なショーケースの中に並ぶ、色とりどりのアイスクリームたち。

 スレてる変態枠かと思われたサラでさえ()を輝かせ、アリスの説明を真剣に聞いていたのだから可愛らしいものだ。

 

 ……人形を複数同時に操る化け物人形と、戦闘狂気味かつ切り札は爆破系魔法と言う残虐系人形、そして剣に魅せられた挙げ句に服飾センスが摩耗した斬殺人形。

 

 正体を知っている私から見れば、可愛らしいなどと言っている場合ではないのだが。

 

 ともあれ、アイスクリームを大いに気に入った3体は、おかわりと称してアリスを拉致、追加で別のフレーバーに挑戦。

 その間私はフードコート内の有名ハンバーガーショップで、どうせ仲間たちも食べるだろうとハンバーガーを適当かつ大量に買い込み。

 

 なんだかんだわちゃわちゃと騒ぎながら、のんびりした時間を楽しむのであった。

 

 

 

 折角ショッピングモールに来たのだから、と、私たちは残りの時間を有効に楽しむために行動を再開した。

 戻りの時間前には人目に付かないところを探す面倒な作業が待っているが、それまでは楽しめるのだ。

 

 私は市販のカレールーを大量に買い込み、アリスはTシャツを探すが気に入ったものは見つけられず、代わりにエマとサラがそれぞれ好みの服を見つけていた。

 ……サラ、それは水着で、普段着て歩くものではないぞ。

 

 カーラは特に服飾に興味を惹かれる様子はなかったが、雑貨や玩具にものすごく食いついていた。

 特にロボット系のプラモデルが気に入ったようで、勿論、これはインテリアにするもので、動いたりはしないと念を押したがそれでも欲しいと言うので、取り敢えず幾つか買ってみた。

 私も久しぶりにプラモデルを組んでみたいと思ったので、ついでに私の分も。

 

 工具類はともかく、塗料は必要か吟味したが、取り敢えず無難そうな基本色を何点か買うことで妥協した。

 

 早く戻って作りたいと騒ぐカーラを苦笑しながらデコピンで黙らせ、私自身が若干似たような心境であったことを誤魔化す。

 

 久しぶりにアイスクリームを堪能し、ついでのようにさり気なくハンバーガー類も味わえたので、私のみならず、全員満足度が高かった様子だ。

 帰ったらプラモデル、の前に、先ずはニナにお土産を渡そう。

 

 簡単に「ちょっと消えますが、直ぐに戻ってきます」とだけ言い残されたニナが「霊廟」でオロオロしていたことや、思った以上に戻って来る気配が無いことにちょっと泣いてしまった事など知る由もない私達。

 鼻歌交じりで「霊廟」に戻って取り掛かった大仕事は、私達が戻ったことで安心して号泣してしまったニナを泣き止ませること、そして直ぐに思い出し拗ねしてしまったニナのご機嫌をとることだった。




端的に自業自得でザマ見よ、ですが、お土産はきちんと選んだのでしょうね?
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