鬼を狩る異形   作:奥歯

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大変お待たせしました。第十四話です。


鷹山とカナエ

「おめでとうございます。仁さん」

 

「ありがと」

 

これで正式に柱に認められた鷹山はさっさと帰ろうとする。しかしまだ帰らせてはくれなかった。目の前にしのぶがたち鷹山をいかせようとはしない。因みに悠たちは鷹山と実弥の勝負の間に蝶の屋敷に連れて行かれた。

 

「もお、今度は何?」

 

「まだ帰れませんよ。姉さんとあなたの関係を聞きたいんです。勿論姉さんもよ」

 

鷹山は頭を掻き、カナエは少し狼狽えるが、しのぶの圧に負けて渋々話し出す。

 

「仁さんとは四年前に出会って、私が鬼にやられそうなところを助けてくれたのよ」

 

「そん時に俺は鬼殺隊に入ったってわけ」

 

「どうして鷹山さんのことを話さなかったの?」

 

「そんなことしたら仁さんのこと、皆が黙ってないじゃない」

 

もしカナエが鷹山のことを話していたら、確実に鷹山は殺されていただろう。

 

「...........それに、私は仁さんのこと愛しているから」  

 

カナエは顔を赤くし呟く。薄々周りも感じていたがやはりそうだったようだ。しのぶは自分の姉に呆れて溜め息を吐く。

 

「もういいだろ、それじゃ俺は帰らせてもらうから」

 

「あ!まだ話はっ!」

 

しのぶの声も届かず鷹山は帰ってしまい、カナエもそのあとについていきそのうち姿は見えなくなった。どうして姉はあんな男を好いているのかしのぶには理解出来なかった。

 

●●●

 

鷹山は考えていた。帰ると言ったもののどこに行けばいい。藤の家までは遠すぎるしかと言ってそこら辺の森で野宿するには少し寒い。一体どうしたらいいのか悩んでいると鷹山についてきたカナエはある提案をしてきた。

 

「仁さん、もし泊まる場所がなかったら私の所に来ませんか?それに柱には屋敷も用意してくれるんですよ。用意してくれる間だけでも泊まっていきません?」

 

「本当に?いやぁ、ありがとうカナエちゃんやっぱり持つべきものは愛する人だな」

 

「もう、仁さんったら」

 

鷹山は肩を持ち笑う。カナエも嬉しいのか恥ずかしいのか顔が少し赤くなっていた。二人の姿を見ていると仲のいい夫婦のようだ。しばらく歩き例の蝶屋敷に着いた。鷹山は辺りを見渡すとなんとも大きい屋敷だと驚いていた。

 

「ここが蝶屋敷か、なんとも立派な屋敷だな」

 

「早く入りましょう、後ずっと思ってたんですけど、ちょっと臭いです」

 

「悪いね、風呂には最近ご無沙汰だから」

 

那田蜘蛛山の辺りから鷹山は一ヶ月くらい風呂に入っておらず山の中を走り回っていた。カナエは扉を開けて屋敷に案内しようとするが、目の前にしのぶが立ち塞がっていた。笑顔を取り繕っているが、明らかに鷹山を敵視している。

 

「あら、しのぶ先に帰ってたのね」

 

「.........姉さん、その男をここに入れるつもり?」

 

「そうよ?なにか問題でもある?」

 

「私は嫌よ、こんなクソ野郎を屋敷に一歩でも踏み入れさせたくない」

 

「しのぶ!仁さんになんてこと言うの!」

 

「まぁまぁカナエちゃんそう怒らないの。悪いけど入れてもらえないかな?俺今泊まれる場所がなくてさ」

 

「無理です。不快です。消えてください。死んでください」

 

鷹山はダメもとで頼んでみるが案の定簡単に断られてしまった。どうやら屋敷には入れさせてくれないようだ。鷹山は肩をすくめる。

 

「しのぶ、そこをどきなさい」

 

「いくら姉さんでも絶対に嫌よ」

 

カナエとしのぶの目の間に火花が散るほどの睨み合いをする。鷹山はこの張り詰めた空気に気まずさを感じていた。すると突然後ろから声が聞こえた。

 

「よぉ、お二人さんと例の鬼柱様、門前で何しとるの?」

 

後ろを振り返るとそこに立っていたのは柱会議の前に悠を運んでいた隠であった。

 

「あ!天十郎(てんじゅうろう)さん!しのぶが屋敷の中に入れさせてくれないんです!」

 

「ほんまかいな?しのぶちゃんそらあかんで同じ柱なんやから、仲ようせんとあかんぞ?」

 

「天十郎さんは関係ないです」

 

隠と柱という位がかなり違うと言うのに馴れ馴れしく話すこの男に鷹山は一体誰なのかと質問した。

 

「誰だこいつ?随分馴れ馴れしい奴だな」

 

「仁さん紹介します。この人は石動(いするぎ)天十郎さん私と同じ元柱で今は隠をやってるんです」

 

「ほんまやったら育手になるはずなんやけど、俺はあまりにも教えんのが下手くそでな、せやから今は隠をやっとんのや」

 

この男は柱たちには面識があるらしく、唯一柱にタメ口で話せる隠だ。鷹山も周りから敬語で話されるのかと思っていたが、立場的に絶対にないなと自分で納得していた。

 

「しのぶちゃん嫌なんはよぉわかるで、でもな今は同じ柱なんやで?いつか同じ任務に一緒になるかも知れへん。そん時は嫌いやからって意地張らんと我慢せなあかん時があんねん。それが大人っちゅうもんやろ?」

 

「............」

 

しのぶは少し考え込み決心したのか鷹山を屋敷に入れることにした。

 

「言っておきますけど許したわけじゃありませんからね。天十郎さんが入れてあげてほしいと言ったから入れてあげるんです」

 

何はともあれ屋敷の中に入ることができた鷹山はズカズカと入っていく。

 

「そんじゃ俺は仕事があるから、ほなまた」

 

天十郎は仕事があると言ってカナエたちにさよならを告げた。屋敷に入ると何やら騒がしい、汚い高音が屋敷に響いていた。

 

「イャアアアアア!!」

 

「善逸君!ちゃんと飲むんだよ!!」

 

「嫌だよ!!こんな不味い薬を三ヶ月も飲むだなんて!!本当に治るの!?俺の手足は元に戻るのか!?」

 

「またあいつらか」

 

鷹山はため息を吐き出して声のする方に向かう。そこにいたのは案の定善逸がいた。どうやら薬が不味いせいで嫌がってそれを悠が無理矢理飲ませようとしているらしい。

 

「よお、またあったな、お前らどこでもそんなな騒がしいのか?」

 

「あっ!お前は!!」

 

悠と炭治郎は鷹山の存在に気づいて威嚇し、善逸は薬を飲む以上にビビり散らかした。

 

「よこせ」

 

鷹山は悠が持っていた薬を手に取り善逸の頭を掴んで無理矢理飲ませた。

 

「まっずうううううう!!テメェ何すんっ!?」

 

善逸は無理矢理飲まされたことに怒るが鷹山の目を見てあまりの恐怖に絶句してしまった。今度は炭治郎たちを見るが、炭治郎と悠はまだ鷹山に威嚇している。伊之助は何故か落ち込んでいる様子だ。

 

「なに、まだあのこと怒ってんのかよ」

 

「当たり前だ!俺は絶対にお前を許さない!!」

 

「仁さん何したんですか?」

 

「仕事をしようとしただけだ」

 

鷹山は思う。これほどの馬鹿は見たことがない。鬼になった妹を人間に戻したいのは勝手だが、何故わざわざ連れている。どこか別の場所に預けるとかしなかったのか。もしどこかで鬼殺隊の隊士に会っていたならさっきみたいな裁判沙汰になるではないか。これじゃ妹を殺してくださいと言っているようなものだ。

 

「なんで鬼を連れている?お前ら本当に助ける気あんのか?」

 

「お前に言われる筋合いはない!!」

 

「........そうかい、それじゃ俺は会議があるから先に戻るわ。それじゃ行ってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

鷹山は後ろを振り向かず手を振って行ってしまい。カナエも手を振って見送った。 

 

●●●

 

それからしばらく長い会議が始まった。鬼の被害や無惨の行動、その対処など、この時の鷹山の態度は非常に悪くあぐらをかいたり、欠伸をしたり、何を考えているのかずっとぼーっとしている。何人かの柱たちも鷹山の態度の悪さに今にもキレそうな状態だ。どれくらいだっただろうか、耀哉は鷹山にある質問をしてきた。

 

「鷹山、質問があるのだが、君の言っていたアマゾンというものは人間を喰うのか?」

 

「まぁそうだな、アマゾンたちの主食は鬼と人間の肉ってところだ」

 

「奴らの弱点は?」

 

「人間と同じだ、頭と心臓と致命傷を負ったら死ぬ。だが安心するなよ鬼と違って再生能力も低いし体力にも限界はある、太陽にあたっても死にはしないが頑丈なんだよな、お前らの刀で斬りつけることはできても、切り落とすことはほぼ無理だ」

 

「奴らの習性は?」

 

「それも人間と同じだ、普段は人間に擬態してどこかで普通の人間みたいに暮らしている。そっくりだから誰がアマゾンか見当もつかない。知能も人間並みだ、例え見つけても何かしらの方法で逃げ切るかもしれない。お前らが一度も会わなかったのもそのせいかもな」

 

耀哉は考える。アマゾンは鬼と違って太陽が弱点じゃない。故にいつどこで人が襲われるかわからない。その対策を立てなくてはいけない。鬼殺隊の人数はおよそ数百名、とても足りる人数じゃない。それに人間に擬態もできるのなら情報を集めるのも困難だ。人間並みの知能なら上手く人目につかないように襲っているはずだ。

 

「...........これはかなりの難敵になりそうだね。今日はここまでだ皆ご苦労様。アマゾンのことは後ほど対策を立てるとしよう鷹山の話だけではまだ分かりにくい目撃情報か何かそう言った噂があればすぐに報告するんだ」

 

「「「「「「「「「御意」」」」」」」」」

 

「了解」

 

鷹山はなんの挨拶もなしにそそくさと帰ってしまった。なんとも無礼極まりない男だ。

 

「あの野郎ォ、絶対に殺す」

 

「よもやよもや、なんと失礼な男だ」

 

(姉さん、あんな奴のどこを好きになったの?)

 

会議も終わりもうすっかり夜になっていた。鷹山の腹が鳴り、お腹を抑える。あの時は朝食はおろか昼食も食べられていない。腹が鳴るのも当然だ。

 

「はぁ、腹減った早く帰って飯が食いてぇなぁ、カナエちゃんの作ってくれた飯が食いてぇなぁ、特に肉主体のやつ」

 

鷹山は自分の食べたい夕飯を想像するが余計に腹が減ったため夕飯のことは考えないようにして、さっさと蝶屋敷に戻った。屋敷に戻るとそこにはちゃんとカナエが迎えてくれた。

 

「柱としての初仕事、どうでした?」

 

「正直退屈だ、カナエちゃんよくあんなのに耐えられたな」

 

「最初はそう言うものです。続けていけばいつかは慣れますよ。さっ、屋敷に上がって夕飯の用意ができてますよ」

 

カナエは屋敷に鷹山を連れて夕飯の支度をする。鷹山は座ると隣には悠たちがそこにいた。

 

「よお、またまた会ったな」

 

「お前!なんでここに!」

 

「いい加減人に対してお前って言うのはやめろ。社会じゃそう言う奴は生きていけねぇぞ。いただきまーす」

 

鷹山はいつまでたっても自分のことをお前呼ばわりする炭治郎に注意して、鷹山は自分の用意された夕飯を食べる。悠たちも少し落ち着いてきたのか鷹山に質問してきた。

 

「あ、あの鷹山さん?鬼を人間に戻す方法って知りませんか?」

 

「知らん」

 

「えっ!?」

 

「俺はアマゾンの開発兼鬼の殲滅だからな。元だけど、鬼に関してはある程度の知識しかない」

 

「そうですか」

 

悠たちは禰豆子の戻し方を知っていると思い鷹山に聞いたがあいにく鷹山はそのことはわからない。

 

「けど、あの人なら知ってるかもな。水澤(みずさわ)っていう人なんだけどな。あの人は今どこにいるのか分からねぇけど、その人なら鬼の戻し方がわかるかもしれない」

 

「本当ですか!?」

 

悠はその言葉に希望を見出す。もしその人にあったなら禰豆子の戻し方がわかるかもしれない。

 

「まっ、生きているかもわからねぇし、なんにせよ鬼を人間に戻すんだ。それはもう酷い目に遭うかもしれないぞ」

 

「禰豆子のためならどんなに過酷なことでも僕は耐えてみせます!」

 

「俺も禰豆子のために兄ちゃんと一緒に!」

 

悠と炭治郎の意気込みに鷹山は少し笑みを浮かべた。夕食も食べ終わり鷹山は縁側で夜の月を眺めていた。今夜は満月月明かりに照らされて夜でも少し明るい、鷹山はじっと満月を眺めていると隣りにカナエが座った。

 

「隣いいですか?」

 

「いいよ」

 

鷹山とカナエはじっと満月を見つめ沈黙が続く。それを破るようにカナエが話し出した。

 

「私たちが出会った夜もこんな満月でしたね」

 

「そうだな」

 

「..........皆も仁さんのことを知ってくれたらきっと仲良くできるのに」

 

「ははは、それはどうかな。俺の先祖のせいであいつらの家族とか友人とかが殺されたんだ。恨まれて当然、好きになってもらうのは逆に気持ち悪いかな」

 

「またそんなこと言って、大丈夫ですよ、いつかきっとあなたのことをわかってくれる人がいるはず。嫌われて当然なんて言わないでください。あなたは悪い人じゃありません。私が惚れた人なんですから」

 

「全くカナエちゃんは俺を惚れさせるのが得意みたいだな」

 

鷹山とカナエは見つめ合いお互い顔を近づけて、口が触れ合おうとした瞬間、どこからともなく刀が鷹山めがけて飛んできた。鷹山はギリギリのところで避け飛んできた方向を見る。そこには予想通りしのぶが立っていた。

 

「しのぶ!?」

 

「姉さん、こいつとさっき何をしようとしてたの?」

 

「いいじゃないの!二人の時間を邪魔しないで!!」

 

「あなたも姉さんに触れないでください。さもなくば殺します」

 

「おーこわ」

 

「しのぶ!どうしてわかってくれないの!!この人は私が愛した人よ!!誰がなんと言おうと私は絶対にこの人から離れない!!」

 

またしてもあの朝みたいなことが起ころうとしている。鷹山もうんざりしていた。カナエとしのぶ、二人の睨み合いを止めるようにまたしてもあの男が割り込んできた。

 

「仕事が終わって戻ってみたらまーた喧嘩しとんのかお二人さんええ加減にせえよ、姉妹なんやから」

 

「天十郎さん!」

 

「鬼柱様も困っとんねん。喧嘩はあかんで、何もおもしろないからな、みんなといる時は楽しいことせんと、福が逃げるで。しのぶもうええやろ二人はそういう関係なんやから暖かいめでみとき、カナエが好きなんやったら、カナエの幸せを願ってやるのが妹の務めやろ?」

 

「........わかりました。天十郎さんがそう言うのなら今回は許してやります。でも姉さんに何かしようとしたらその時は斬り捨てます」

 

「はいはい、わかりましたよ」

 

「しのぶも恋をしたらカナエの気持ちもわかるかも知れへんな」

 

「さあ、どうですかね」

 

しのぶはそっぽを向き顔を見せないようにしたが、少し顔が赤くなっている。

 

「それじゃ俺はこの辺で、もう喧嘩すんなよ?」

 

天十郎はカナエとしのぶに指を差しまた何処かいってしまった。しのぶもその後に後始末があるからと刀を抜き取って部屋を出ていき二人は取り残された。

 

「さっきの続きする?」

 

「いえ、もうそんな気分じゃないです」




次回もお楽しみに。
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