鬼を狩る異形   作:奥歯

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夢列車

炭治郎は伊之助と善逸よりも先に機能回復訓練が終わり、今は全集中の呼吸の常中ができるように訓練しているとのこと。常中とは、全集中の呼吸を常にし続けるというものである。それは相当にキツく、例えるならば、短距離走の速さのままで長距離を走るようなものである。炭治郎はそれを習得する為に、頑張っているらしい。悠はその姿を見守っていた。

 

「炭治郎大丈夫?ちょっと休憩する?」

 

「ゼェゼェ、大丈ゼェ、まだゼェゼェ、やれゼェハァゼェ」

 

炭治郎は大丈夫と言っているが、見らからに大丈夫そうではない。悠は全集中の呼吸は使う必要がない為、炭治郎の気持ちはわからなかったが、かなりキツイということだけは伝わっていた。そんな炭治郎を悠は心配そうに見ていると、悠の後ろを誰かが通りかかった。

 

「よぉ、お前さん方、頑張っとるか?」

 

「あ、こんにちは」

 

悠が振り返るとそこにいたのは隠であった。しかもこの関西弁の喋り方、柱合会議の時に悠を運んだ男であった。悠は軽く挨拶する。

 

「こゼェゼェこんにちゼェゼェ......ハァァァァ、ハァ、こんにちは」

 

炭治郎も挨拶しようとするが、息切れしているせいで中々言えなかった。

 

「こんにちは。しんどそうやな。常中か、懐かしいな。俺もそれやらされて死ぬかと思ったわ」

 

「あなたも鬼狩りだったんですか?」

 

「ああそうや、こう見えても元柱やったんやけどな」

 

「柱だったんですか?」

 

「そうやで、鳴柱(なりばしら) 石動天十郎!ってな、カッコええやろ」

 

隠こと石動天十郎は自慢気に昔話をし始めた。

 

「俺は雷の呼吸の使い手でな、それはもう神足の如くバッサバッサと鬼を狩っていったんやで」

 

「そうだったんですか、じゃあなんで今隠を?」

 

炭治郎は天十郎にどうして今隠をやっているのか尋ねる。すると天十郎は自分の膝を触った。

 

「足をやられてもうてな。この辺をこうズバってな」

 

天十郎は両膝を横になぞる。悠はと炭治郎はその膝を見ていた。すると天十郎は質問をした。

 

「そういや、あの金髪と猪頭は?」

 

「ああ、善逸と伊之助はまだ訓練です。しばらくサボってたみたいなんで」

 

「なんやそれ、まぁサボる気持ちも分からんくもないけどな」

 

そして天十郎は思い出したかのように二人にさよならを言った。

 

「あ、俺用事あるから、またどっかでな。あとそれ終わったら瓢箪割らなあかんらしいで、息吹きかけてな」

 

「はい!頑張ります!.....えっ瓢箪!?」

 

天十郎の言葉に炭治郎は驚き、頭を抱えた。

 

「瓢箪なんてどうやって割るんだあああ!」

 

大声をあげている炭治郎を後ろに、悠は不思議そうに天十郎の背中を見ていた。

 

●●●

 

場所は変わり蝶屋敷、ここでは今サボっていたツケを払っている善逸と伊之助が機能回復訓練をしているところであった。今は組み手をしており、それは鷹山が請け負っていた。鷹山はいつものように二人を軽くあしらっていた。伊之助は突っ込んでいくが躱され、善逸が逃げようとするところを捕まえて叩きつけるなど、ちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返し最終的に二人はボロ雑巾のようになってしまった。

 

「そこまで!ちょっと鬼柱様、少しやりすぎですよ!」

 

「こういう奴にはやり過ぎるぐらいが丁度いいんだよ。ね、カナエちゃん」

 

鷹山はアオイに注意されるが反省する様子はない。床に倒れている二人は死んでいるんじゃないかと思うほどぴくりとも動かない。そんな二人にカナヲは指でつついている。

 

「アオイの言うとおり、やり過ぎですよ仁さん。少しは優しくしてあげないと」

 

「え〜わかったよ....」

 

カナエに怒られてしまった鷹山は少し落ち込んでしまう。すると鷹山の後ろに倒れていた善逸と伊之助が勢いよく立ち上がりそれにカナヲは驚く。

 

「テメェェェェェ!!さっきからよおおおお!!なにカナエさんと仲良く話してんだ!!?」

 

「おい!俺はまだ負けてねぇぞ!!もう一回勝負だ!!」

 

善逸はカナエと仲が良さそうに話していた鷹山にブチギれ、伊之助は意地を張ってもう一度勝負を吹っ掛ける。善逸の怒りの疑問にカナエは優しい笑顔で答えた。

 

「それは、仁さんは私の夫ですからね」

 

「はあああああ!!?」

 

カナエの答えに善逸は理解できず、さらに怒りの声を上げる。そしてカナエの隣にいたしのぶは笑顔の顔をしているが、怒りが滲み出ているのが丸わかりであった。

 

「おい!聞いてんのか!!もう一回勝負だ!!」

 

「うるせぇよ。もう疲れたからここで終わりだ」

 

鷹山はさっさと屋敷から出て行こうとする。そんな鷹山にカナエはどこへ行くのか質問した。

 

「どこにいくんですか?」

 

「ちょっと外の空気吸いにな」

 

そう言って鷹山は屋敷から出て行った。

 

●●●

 

鷹山が屋敷の外に出ると一人の隠と出会った。

 

「お!鬼柱様やないですか。奇遇ですね」

 

それは天十郎であった。鷹山は天十郎を見ると少し怪しそうに見る。

 

「お前、ここに何しに来たんだ?」

 

「いや〜珍しく暇ができましてね。ちょっとここに顔出そうかなって思うただけです」

 

鷹山の質問に天十郎は愛想良く答える。そして天十郎も同じように鷹山に質問した。

 

「そういう鬼柱様もここで何を?」

 

「まぁ、ちょっとした手伝いってところだ」

 

「へぇ、そうですか。じゃあ俺にもなんか手伝えることはないですかね?ほら俺、今暇なんで」

 

天十郎は愛想笑いしながら何か手伝えることはないか鷹山に聞く。鷹山は少し考えていると後ろから誰かが歩いて来た。

 

「鷹山さん。ここで何してるんですか?」

 

二人は振り向くとそこにいたのはしのぶであった。天十郎は軽く挨拶する。

 

「しのぶちゃん久しぶり」

 

「天十郎さん!」

 

しのぶは足早に天十郎に近づき挨拶する。

 

「天十郎さんお久しぶりです。どうしてここに?」

 

「いやちょっと珍しく暇ができてね。ちょっとここに顔出そうかなってと思うたんやけどな」

 

「それなら中に入ってくださいよ。お茶を用意しますから」

 

「いや、顔出すだけやしすぐ戻るから」

 

「いいじゃないですか少しくらい」

 

「んーーそうやなぁ」

 

鷹山は楽しそうに話している二人を黙って見ていた。特にしのぶの方はいつも作り笑いをしているような顔をしているのに何故か天十郎と話している時は本当に笑っているように鷹山は見えた。しばらく見ていると何かを察したのか鷹山は二人から離れる。

 

「あーそういうことね。なるほど、悪いね邪魔しちゃって。俺もう行くから」

 

そう言って鷹山は二人を見ながら後ろ歩きで離れていった。そんな鷹山に天十郎としのぶは見ていた。何かあったんじゃないかと心配になったしのぶは天十郎に質問する。

 

「天十郎さん、あの人に何か言われたんですか?」

 

「いいや別に、なんも言われてへんで」

 

「そうですか、でももしあの人に何かされたら私に言って....」

 

「気にせんでええってしのぶちゃん。あの鬼柱様は悪いやつとちゃう。カナエちゃんが惚れた男なんやで?心配せんでええ。それよりほら、みんなに久しぶりに会いたいからな、案内してくれや」

 

しのぶの心配そうな顔を元気つけるために天十郎は止め、しのぶに蝶屋敷を案内してもらうように頼んだ。

 

●●●

 

鷹山は屋敷の前に立つ。ここは鷹山の屋敷である。鷹山は屋敷の扉を開けるとまずは台所があり、その横に十畳ほどの居間がある。そのさらに向こうは寝室だ。ニ階はないが、一人で住むには充分なほどに広い。しかし、掃除をしていないのか部屋は非常に散らかっている。ゴミ屋敷とはいえないにしても、衣服や本などが散らばっている。鷹山は靴を脱ぎ居間に上がり、畳に大の字で寝転がり、大きくため息をついた。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ......疲れたぁぁ」

 

あの時の組み手でかなり疲れにより非常に体が怠い、普段なら組み手程度で疲れはしないのだが、カナエが応援するたびにしのぶの殺気が鷹山を鋭く貫くため普段より息苦しかった。もはや呪いである。これはしのぶだけに限ったことではなく、他の柱たち、ましてや他の隊士たちにもしのぶと同じ殺気をおくられることとなる。仕方が無いことではあるが流石の鷹山も気が滅入る。

 

「あーあ、俺の味方はカナエちゃんだけだよ....」

 

そう呟いた鷹山は静かに目を瞑った.....と思ったら突然鎹鴉の鳴き声で叩き起こされてしまう。

 

「カァー!!カァー!!鬼柱鷹山仁!スグニトアル列車デ失踪事件ガ起キテイル!!早ク行カナイト大変ナコトッグエェ!!」

 

鷹山はあまりの煩さに鎹鴉の首根っこを掴む。

 

「ゲェ....ガァ.....!」

 

「うるせぇよゆっくり寝ようとしたのに急に起こすなよ、焼き鳥にすんぞ」

 

そういうと鷹山は鎹鴉から手を離す。鎹鴉は何度か咳き込んだ後、もう一度伝言を伝える。

 

「スグニ列車二向カエ!!早クシナイト大勢ノ人ガ鬼ノ犠牲ニナッチマウカモ知レナイジャン!早ク行カナイト手遅レニっ....!」

 

「わかった、わかったから落ち着け、キツツキ。ったくその心配症な性格治した方がいいぜ」

 

鷹山を叩き起こしたこの鎹鴉。名をキツツキという。何故烏なのにキツツキという名前なのかというと、このキツツキの頭の方が赤くなっていて、それがキツツキに似ているからキツツキというな名前になった。

 

「心配しているだけじゃ何も変わらん。行くしかないか....」

 

●●●

 

なんやかんやあって炭治郎たちの治療も終わり、今からとある列車の調査に向かうこととなった。炭治郎と善逸は泣きながらは泣きながらその前に、悠は自分の寸法があった隊服をもらった。その上に真緑色の羽織りを羽織っている。そのことに道中炭治郎に言われた。

 

「兄ちゃん、その隊服似合ってるね。それにその羽織り」

 

「ん?ああこれ?この羽織りはカナエさんが選んでくれたんだ」

 

「へぇー」

 

そんな話をしている間に悠たちは汽車に到着した。列車には沢山の人々がいて賑わっている。とてもここに鬼がいるとは思えないようだ。もう直ぐ夜になるといったところで善逸が炭治郎につかみかかり怒声をあげていた。

 

「えーーー!!まだ指令来てなかったのかよ!!いても良かったじゃんしのぶさんち!!」

 

「いや......治療終わったし、一箇所に集まっているより....」

 

「あんな悲しい別れしなくてよかっただろ!!」

 

「いや....指令が来た時動きやすいように.....あと炎柱の.....」

 

「バカバカバカァ!!」

 

「善逸君。そんなにうるさくしちゃ、周りの人に迷惑だよ....」

 

「おい」

 

「今忙しいんだよ!」

 

「おい!おい!」

 

「なんだようるさいなぁ!」

 

「なんだあの生き物はぁ!!?」

 

伊之助の見る方向に三人は視線を向ける。そこにあったのは巨大な汽車であった。初めて見る列車に伊之助は何かの生き物かと思い冷や汗をかいていた。

 

「こいつはあれだぜ、この土地の主.....この土地を統べる者。この長さ、この威圧感、間違いねぇ、今は眠っているようだが油断するな!!」

 

「ああ、伊之助君、それはね....」

 

「汽車だ。一八○二年に英国のコーンウォールの鉱山で働く親方の息子であるリチャード・トレビシックが世界初の軌道上を走る蒸気機関車を発明し、一八○四年に同じく英国のウェールズのマーサー・ディドヴィルにあるペナダレン製鉄所で初走行させたのが始まり。山の主でもなんでもねぇよ」

 

後ろから声がし、四人は振り返るとそこにいたのは赤い羽織を羽織った鷹山がいた。

 

「鷹山さん...」

 

「よっ、ここで会うとは奇遇だな。どうださっきの名解説。博識だろ?」

 

「あああああ!!おま、おまおまお前!!なんでここにいんだよ!?」

 

「俺もここに来いと言われてね。そんで言われた通りに来たらたまたまお前らがいたから声かけただけだ」

 

鷹山がここに来た経緯を話す。善逸は悠と炭治郎の後ろ隠れ、伊之助は鷹山に威嚇する。

 

「そうだったんですか。ていうかそれ、似合ってますね赤い羽織」

 

「まぁな、カナエちゃんが選んでくれたんだ。いい感性してるだろ?」

 

「あ。僕もカナエさんに選んでもらったんです」

 

「え、そうなの?ほんとカナエちゃんってば誰にでも優しいんだから。まぁそこが良いんだけど」

 

そんなこんなで悠一行は汽車の中に乗り込む。その中には家族や旅人などの様々な人たちがいる。汽車の存在だけは知っていた悠も任務中であっても内心少しわくわくしていた。そんな中でなんだか騒がしい声が聞こえてくる。

 

「うまい!うまい!うまい!」

 

そこにいたのは列車の弁当箱を食べている炎柱こと煉獄杏寿郎であった。弁当を食べながら「うまい!」と大声で連呼している。煉獄はかなりの大食いなのか、大量の弁当の空が運ばれていた。

 

「よく食うな。任務中でゲロったりしねぇのか?」

 

「む!?お前は鷹山!何故ここに!?」

 

「任務で呼ばれたからな。俺も」

 

煉獄は弁当を食べている途中で鷹山に気づき驚く。鷹山は煉獄の前に座り、炭治郎たちを向こうにいかせる。

 

「おいお前ら向こうに行け。ここからは大人の話だからな」

 

炭治郎たちは渋々すぐ隣の席に座ろうとするが、悠だけは呼び止められる。

 

「あーお前はここだ悠。ここに座れ」

 

「?」

 

悠派言われた通りに鷹山の隣に座る。そして鷹山は前を向きなおり弁当を食べている煉獄に話し始めた。

 

「こうして話すのは初めてかな?煉獄」

 

「そうだな!しかし貴様と食事しながら話すのは気分が乗らん!」

 

「そんなはっきり言うか?もうちょっと建前とかないの?いくらこいつが嫌いだからってそんな言い方ないだろ」

 

「え....」

 

いきなりの言われように鷹山は自分のことを言われていると分かりながら悠が言われていることにし、悠は少し面食らう。そんな悠をよそに鷹山は続ける。

 

「まぁいいや。煉獄、前にも言ったが念のために忠告しておく。もしここでアマゾンが出て来たら俺たちに任せろ。倒そうだなんて思うなよ。そこだけはハッキリ言っておく。アマゾンに襲われて死なれちゃこっちも気分が悪い。カナエちゃんも悲しむからな」

 

「そんなことを言うためにわざわざ俺の前に座ったのか!?」

 

「それ以外に何があんだよ!デケェ声出しやがって!少しは周りのことも考えろ!」

 

大きな声を出してくる煉獄に対抗するように鷹山もできるだけ大きな声で話す。そんなところでどこかやつれている駅員が切符の拝見をしに来た。既に後ろでは炭治郎たちの切符は拝見済みのようだ。

 

「切符を拝見します....」

 

やけにやつれている駅員に少し心配しながらも悠たちは切符を渡し、鷹山と煉獄も続けて渡す。そして駅員が悠と鷹山の切符を切り、そして最後に煉獄の切符を切った途端に煉獄は突然気絶するようにかくんと首を落とした。

 

「え!?煉獄さんどうしたんですか!?」

 

突然眠ってしまった煉獄に悠は驚き、煉獄を起こそうとするがなんの反応もない。

 

「やっぱりな。この切符、鬼の術が仕込んである。幸い俺たちには効かないようだったが....」

 

どこか納得している鷹山に対して悠はまだ状況が飲み込めていなかったが、やっと理解する。

 

「術って.....まさかもうここに鬼が!?」

 

「ああ、俺たちすでに攻撃をうけているってわけだ」

 

冷静な鷹山と焦っている悠を駅員はわけもわからないような顔をしていた。

 

「なんで....なんで眠らないんだ!?」

 

「お前も鬼の仲間か。普通の人間みてぇだが....」

 

「もしかして脅されて!?」

 

「だろうな....おい、お前を脅している鬼はどこにいる?」

 

混乱している駅員に鷹山は質問するが何を思ったのか駅員は懐から針のようなものを出し鷹山に襲いかかった。

 

「邪魔しないでくれ!お前たちがいるから夢が見られないんだ!!」

 

どうやら自らの意思で鬼と協力しているらしい。駅員の男は針を鷹山に向けて突き刺そうとする。そして鷹山は右手で受け止め、針は右手を貫通した。駅員は驚き、その隙に鷹山は駅員の胸ぐらを掴む。

 

「もう一度言うぞ。鬼はどこだ?さっさと答えろ」

 

鷹山の威圧感に駅員の男は恐怖で顔が引き攣り、震えながらも質問に答えた。

 

「し、知らない。俺は知らない」

 

鷹山はため息を吐き駅員を殴り飛ばし気絶させた後、右手に刺さった針を抜き投げ捨てる。

 

「鷹山さん、大丈夫ですか?」

 

「大したことねぇよこんな傷。それよりもこいつらを起こす方法を見つけねぇとな。車内をくまなく探すぞ。鬼が潜んでいるかも知れねぇ」

 

「でも、炭治郎たちは....?」

 

「放っておけ、今は仲間よりも市民を守るのが最優先だ。あいつらなら後で起こす」

 

そういうと鷹山は車内の中を探し始めた。悠は炭治郎たちが心配だったが鷹山の言う通り今は一般市民を守ることを優先しなくてはならない。悠は炭治郎たちを信じて車内の中を探しに行った。

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