鬼を狩る異形   作:奥歯

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第九話です今回は長め。


暴走

炭治郎の質問に珠世さんはゆっくりと答える。

 

「鬼を人に戻す方法は.............、あります」

 

「やっぱりあるんだ!」

 

「教えて下さっ...!」

 

「寄ろうとするな!珠世様に!」

 

「.........愈史郎」

 

「投げたのです珠世様、殴ってません」

 

「どちらもダメです」

 

炭治郎は珠世さんに鬼に戻す方法を教えて貰おうと珠世さんに近寄るが愈史郎さんに投げ飛ばされてしまった。珠世さんは愈史郎さんを叱りつけるが、全く反省していない様子だ。

 

「どんな傷にもどんな病にも必ず薬や治療法があるのです。ただ、今の時点では、鬼を人に戻すことはできない。ですが私たちは必ず、その治療法を確立させたいと思っています。治療薬を作るためには沢山の鬼の血を調べる必要がある。あなたにお願いしたいことは二つ。一つ、妹さんの血を調べさせて欲しい。二つできる限り鬼舞辻の血が濃い鬼からも血液を採取して来て欲しい。禰豆子さんは今極めて稀で特殊な状態です。二年間眠り続けたとのお話でしたが、恐らくはその際体が変化している。通常それ程長い間人の血肉や、獣の肉をくちにできなければ、まず間違いなく凶暴化します。しかし驚くべきことに禰豆子さんにはその症状が無い、この奇跡は今後の鍵になるでしょう。もう一つの願いは苛酷なものになる.....、鬼舞辻の血が濃い鬼とは即ち、鬼舞辻に.......より近い強さを持つ鬼ということです。そのような鬼から血を獲るのは容易ではありません。それでもあなたはこの願いを聞いてくれますか?」

 

「.......それ以外に道が無ければ俺はやります。珠世さんが沢山の鬼の血を調べて薬を作ってくれるなら、禰豆子だけじゃなくもっとたくさんの人が助かりますよね?」

 

「炭治郎......、僕もやります。炭治郎がそうゆのなら、長男としてやらなくちゃいけないですし」

 

「............二人ともありがとう。そういえば悠さん、あなたにも一つお願いしたいことが......」

 

「僕にですか?それは一体?」

 

「!?まずい!ふせろ!!」

 

珠世さんが僕に何かお願いをしようとしたその時、愈史郎さんが何かに気付いたのか、珠世さんを庇い身を屈める。すると突然壁から毬が勢いよく飛び出して、家の中を高速で跳ね返る。僕は飛んでくる毬を蹴飛ばそうするが、逆に足を吹き飛ばされてしまった。

 

「アグッ!!」

 

「兄ちゃん!!」

 

「キャハハッ!矢琶羽(やはば)の言う通りじゃ、何もなかった場所に建物が現れたぞ」

 

「巧妙に物を隠す血鬼術が使われていたようだ。そしてあの御方が言っていた化け物の足を吹き飛ばしてやったぞ、それに鬼狩りは鬼と一緒におるのか?どう言うことじゃ?それにしても朱沙丸(すさまる)お前はやることが幼いというか......短絡というか.....汚れたぞ。儂の着物が塵で汚れた」

 

「うるさいのう、私の毬のお蔭ですぐ見つかったのだからいいだろう。たくさん遊べるしのう、それに着物は汚れてなどはおらぬ神経質めが」

 

(クソっ!足がやられた!早く変身しないと!毬だけで家をこんなに壊すなんて!)

 

「キャハハ!見つけた、見つけた」

 

僕はすぐに変身しようとするが毬を持った女がすぐにまた投げつけてきた。毬はまた家の中を破壊しながら跳ね返る。すると毬は突然空中で曲がり愈史郎さんの頭を吹き飛ばした。

 

「愈史郎さん!!....禰豆子!!奥で眠っている人を安全な所へ運んでくれ!!」

 

禰豆子は炭治郎の言葉を聞き女性を安全なところに避難させに行った。炭治郎は鬼に向かって日輪刀を構える。僕も炭治郎と一緒に戦うために構えをとる。

 

「兄ちゃん!足が!」

 

「大丈夫だ炭治郎、変身すれば僕の足もまた元に戻る。そんなことより僕の心配よりもまずは相手に集中しろ、また毬を投げてくるぞ。毬の動きをよく見るんだ。さっき空中で毬の軌道が変わった。毬には何か矢印のようなものがついている。矢印の向きによって軌道が変わるみたいだ」

 

「でもそんなもの全然見えなかったよ?」

 

「普通の人間には見えないんだろう。けど僕には見える。まだ他に誰かの気配を感じる。警戒するんだ」

 

「あの御方が言っておった化け物と耳に飾りの鬼狩りはお前たちじゃのう」

 

「!!無惨の手下か!炭治郎!珠世さんと愈史郎さんを連れて離れるんだ!」

 

僕は炭治郎に珠世さんと頭がなくなった愈史郎さんをある程度まで離してもらい、変身する準備をする。そして大きく息を吸い叫ぶ。その隙に毬を持った鬼は僕に向かって投げつけてくる。

 

「アマゾンッ!」

 

僕は変身した衝撃で毬の軌道を無理矢理ずらし攻撃を防ぐ。そして僕は構えを取り相手を睨みつつ威嚇する。

 

「あの姿は......!」

 

「あれは、兄ちゃんのもう一つの姿、アマゾンです」

 

「アマゾン......」

 

珠世さんは噛み締めるように僕のもう一つの名前を呟く。

 

「キャハハッ!それがあの御方が言っていた姿か」

 

そして鬼はまた毬を三つ投げる。僕は全て切り落とすが、毬は空中で止まりまた僕に激突する。やはり毬についている矢印をなんとかしない限り毬は止まらないようだ。その間に愈史郎さんの頭が元に戻ろうとしていた。

 

「珠世様!!俺は言いましたよね!?鬼狩りに関わるはやめましょうと最初から!!俺の"目隠し"の術も完璧ではないんだ!貴女にもそれはわかっていますよね!?建物や人の匂いを隠せるが、存在自体を消せるわけではない!!人数が増えるほど痕跡が残り鬼舞辻に見つかる確率も上がる!!貴女と二人で過ごす時を邪魔する者が俺は大嫌いだ!!許せない!!」

 

「キャハハッ!何を言うておる!面白いのう!楽しいのう!十二鬼月である私に殺されることを光栄に思うがいい!」

 

「十二鬼月?」

 

「鬼舞辻直属の配下です!」

 

「遊び続けよう!朝になるまで!命尽きるまで!」

 

鬼は上着を脱ぎそして胴体から腕が四本も生えてきた。そして全ての腕に持っている毬を全力で僕たちに投げつけまた家の中で跳ね返る。僕は珠世さんたちに当たらないように切り落とすが、炭治郎は矢印が見えないせいでかなり苦戦している様子だ。すると愈史郎さんが炭治郎の額に札のようなものをつける。

 

「おい!間抜けな鬼狩り!俺の視覚を貸してやる!」

 

「愈史郎さんありがとう!俺にも矢印が見えました!禰豆子!木だ!木の上だ!!」

 

そして禰豆子は木の上にいる鬼に向かって蹴りを入れるが左手で受け止められてしまった。毬を持った鬼はもう一度投げつけてくるが。炭治郎が全て防ぎ鬼の腕を切り落とす。

 

水の呼吸 参の型 流流舞い!!

 

「炭治郎!そいつらが十二鬼月なら、今まで戦ってきた相手よりも手強いぞ!お前は矢印の方をやれ!僕と禰豆子は毬の方をやる!」

 

「わかった!禰豆子.......絶対に無茶するなよ」

 

僕と禰豆子は毬の鬼を炭治郎は矢印の鬼の方に向かった。僕は毬の攻撃を避けつつ首を狙って拳を突き出す。しかしまたしても毬で防がれてしまった。

 

「朱沙丸よ、そちらにいるのは"流れ者"の珠世ではないか。これはいい手土産じゃ」

 

「そうかえ!!」

 

毬を持った鬼は今度は禰豆子に投げつけ禰豆子は蹴り跳ね返そうとすが、僕はそれを止める。

 

「禰豆子!蹴るんじゃない!」

 

しかし時すでに遅く禰豆子の右足は吹き飛ばされてしまった。

 

「禰豆子!転がれ!」

 

禰豆子は転がる前に壁に激突してしまう。すぐに珠世さんが駆け寄り、状態を確認する。

 

「楽しいのう、楽しいのう、蹴毬も良い。矢琶羽、首を五つ持ち帰ればいいのかの?」

 

「違う三つじゃ、鬼狩りと逃れ者、そしてあの化け物、残り二つはいらぬ」

 

矢琶羽という鬼は着物についた土をはらいながら朱沙丸と言う鬼にどの首を獲るか説明をする。僕は怒りを覚えた、あいつは許さない。家族を傷つけさせたりはしない。朱沙丸は再度僕に毬を投げつけてくるが、僕はお構いなく突進する。

 

(こ、こいつ!全く効いておらぬ!傷ひとつついておらぬ!どういうことじゃ!?どれだけ体が硬いんじゃ!?こいつはやばい!!早くなんとかせねば!!)

 

僕は朱沙丸が慌てている隙にすぐそばまで近づき、横腹を全力で蹴る。

その勢いで朱沙丸の体は真っ二つに裂けてしまった。朱沙丸は壁に激突しその場で倒れる。

 

「ち、近寄るな!私に近寄るな化け物め!!!」

 

朱沙丸は怯えながら何度も何度も僕に毬を投げつける。けど僕にはそんなものは効かない。僕は朱沙丸に近づき顔面を全力で踏みつける。朱沙丸はもう気絶している、しかしそんなことは関係ない僕は再度顔面を踏みつけた。

 

(なんだこれ........、なんだかすごく楽しい!もっと戦いたい!もっと殴り合いたい!もっと俺を楽しませろ!!)

 

 

●●●

 

 

俺はやっとの思いで鬼を倒した。俺は技を連続で使ったせいで、息ができず、刀を握れるくらいの力もなかった。俺は口で刀を取り、兄ちゃんたちのいる方に向かう。

 

(禰豆子、兄ちゃん、珠世さん、愈史郎さん。早く行かなければ.....鬼はまだいる。すぐ行く!!すぐ行くから無事でいてくれ!!どうか無事で......!!)

 

しかし俺はそんな心配なんてすぐに消えてしまうほどの光景を見てしまった。

 

「ギャアアアアアアアアア!!!」

 

「ウシャアアアアアアアア!!!」

 

なんと兄ちゃんが、まるで怪物のような雄叫びをあげ鬼の腕を一つづつ引きちぎっていた。全て引きちぎった後蹴り飛ばし踏みつける。そして馬乗りになり何度も何度も鬼の顔面を殴りつけていた。もう鬼の顔はぐしゃぐしゃになり原型をとどめていない。そしてその頭を兄ちゃんは口に入れ飲み込んだ。禰豆子たちもかなりの恐怖をかんじていた。

 

「フシュウウウウウウウ!!!」

 

「に、兄ちゃん!!どうしたんだよ!?」

 

兄ちゃんは俺の呼び掛けには反応せず禰豆子たちのいる方へと振り返る。そして気付いた時にはもう禰豆子の目の前まだ来ていた、兄ちゃんは禰豆子の首を掴み持ち上げる。禰豆子も必死に抵抗するがびくともしない様子だ。兄ちゃんは拳を振り上げ禰豆子の顔に向かって振り下ろす。

 

「兄ちゃん!!やめろオオオオオオオ!!!」

 

兄ちゃんの拳が禰豆子の顔に当たる直前に兄ちゃんの拳はぴたりと止まった。そして兄ちゃんは禰豆子の首を離し変身が解け、その場で倒れてしまった。

 

「兄ちゃん!禰豆子!」

 

俺は兄ちゃんと禰豆子の所に這いつくばりながら安否を確認する。禰豆子は首を押さえているが、どこにも怪我はしていないようだ。兄ちゃんも気絶しているだけだ。俺は安心し、緊張が解けたせいかどっと疲労が押し寄せてくる。珠世さんはさっき兄ちゃんが倒した鬼に駆け寄る。

 

「死んでしまったんですか?」

 

「恐らく、間もなく死ぬでしょう。基本的に....鬼同士の戦いは不毛です。意味がない。致命傷を与えることができませんから。陽光と鬼殺の剣士の刀以外は、しかし悠さんのアマゾンの力には鬼の細胞を破壊することができるようです」

 

愈史郎さんは鬼の形相で俺の口に布を押し当てる。

 

「うわっ!」

 

「珠世様の術を吸い込むなよ。人体には害が出る」

 

「炭治郎さん、この方は十二鬼月ではありません」

 

「!?」

 

「十二鬼月には眼球に数字が刻まれています。この方には無い......、もう一方も恐らく十二鬼月ではないでしょう、弱すぎる」

 

珠世さんは鬼から血を注射器で採取する。

 

「血は採りました。私は禰豆子さんと悠さんを診ます。薬を使ったうえに術も吸わせてしまって。悠さんもかなり疲労がきているはず」

 

俺はそこで一人取り残されてしまった。気づいたら朝になって、陽の光を浴びた鬼は灰となって消えた。俺はその鬼から微かに悲しみの匂いを感じた。俺は珠世さんに地下へ呼ばれ降りると、禰豆子が何事もなく立っていた。兄ちゃんはまだ寝ているみたいだ。

 

「禰豆子」

 

禰豆子は俺に抱きついた後、珠世さんにも抱きつき、愈史郎さんの頭を撫でた、愈史郎さんは嫌がっているみたいだったけど。

 

「先程から禰豆子さんがこのような状態なのですが......」

 

「大丈夫です。多分二人のことを家族の誰かだと思っているんです」

 

「?しかし禰豆子さんのかかっている暗示は人間が家族に見えるものでは?私たちは鬼ですが......?」

 

「でも禰豆子は人間だと判断してます。だから守ろうとした。兄ちゃんもそうです。兄ちゃんもあなたたちのことを鬼だとは思っていません。.............................兄ちゃんは本当の兄弟じゃないんです」

 

「えっ?」

 

「兄ちゃんは二年前、僕たちの家の前で血だらけで倒れてて、看病してやったんです。兄ちゃんは昔の記憶がない、だから本当の家族を知らない。その代わりが俺たちなんです。兄ちゃんはきっと寂しい思いをしていたはず。だからあの時暴走してしまったんだと思うんです。まぁ、わかんないんですけど。兄ちゃんは何故か匂いが感じられなくて」

 

珠世さんは禰豆子に抱きしめられながら涙を流し俺は慌てて謝罪する。

 

「すみません!!禰豆子、禰豆子!!離れるんだ失礼だから!!」

 

珠世さんは禰豆子を抱きしめてお礼を言う。

 

「ありがとう禰豆子さん。ありがとう.....」

 

珠世さんは最後に俺にあるお願いをしてきた。

 

「炭治郎さん、悠さんの血を少し調べさせてくれませんか?」

 

「兄ちゃんのですか?どうして?」

 

「悠さんのあの姿、アマゾンでしたか、私は悠さんがどうしても気になるんです。血鬼術が効かず、鬼の細胞を破壊する力、私は悠さんが普通の鬼とは何か違うものを感じます。悠さんの血を調べれば何か鬼舞辻に対抗できるものが作れるはず」

 

「いいですよ、兄ちゃんもきっとそうゆう筈」

 

「ありがとう、私たちはこの土地を去ります。鬼舞辻に近づきすぎました。早く身を隠さなければ危険な状態です。それに、うまく隠しているつもりでも医者として人と関わりを持てば、鬼だと気付かれる時もある。特に子供や年配の方は鋭いです。炭治郎さん、禰豆子さんと悠さんは私たちがお預かりしましょうか?」

 

「えっ?」

 

「絶対に安全とは言いきれませんが戦いの場に連れて行くよりは危険が少ないかと」

 

(嫌だ、嫌だ)

 

(そうかもしれない.....確かに預けた方が兄ちゃんと禰豆子のためにも......)

 

すると禰豆子は俺の手を握って強い眼差しで見つめてきた。その目は覚悟を決めためだっだ。

 

「......ありがとうございます。でも、俺たちは一緒に行きます。離れ離れにはなりません。もう二度と」

 

「....わかりました。では武運長久を祈ります」

 

「じゃあな、俺たちは痕跡を消してから行く、お前らも行け」

 

「あっはい。じゃあ兄ちゃんを起こしてから」

 

「炭治郎、お前の妹は美人だよ」

 

愈史郎さんのその言葉に俺は笑顔で返した。




次回もお楽しみに
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