転生猫少女ゾンビテイマーもの   作:鴨橋

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よくある猫耳少女転生もの

 意識を失っていた。

 何が原因で倒れてしまったか思い出せない。

 横になっている状態で、辺りを見渡す。

 長年掃除のされていない物置小屋かな? 物が雑多に散らばり、本棚なんか埃にまみれている。本すら取り出されていないんだなって一目見て分かった。

 自分はベッドの上に寝かされている。ベッドもかなり埃臭い。誰かが自分をここまで運んだのだろうか。

 

 体にかけられている薄い掛け布団をどかし、上半身を起こしてみる。

 すると視界がぐらぐらと揺れた。体調は悪くない。目を回しているような感じに近いかな。

 

 体を倒し仰向けに寝転がる。

 しかしなんでこんな場所で寝ていたのか……。

 

 

 

 

―――

 

 

 

 自分がいわゆる転生者であるという事に気づいたのは14歳の頃であった。

 前の自分は人間の男性であり、働きすぎてダメになってしまったらしい。

 らしい、というのも自分がそうであったという実感がないからだ。記憶として思い出すことはできるが、それが自分の今まで生きてきた経験と結びつかない。

 ただ、性格というかそういうのは変わったと思う。今までは年相応というかなんというか、無邪気というか……。一言で表すなら落ち着きがないというか。

 

「――サクー、帰っておいでー?」

 

 遠くから声が聞こえた瞬間、頭の上で耳がピクっと動いた。

 起き上がり、痛む後頭部をさすりながら声のする方向に歩いていく。

 木登りをしていて落下。その衝撃でいろいろと思い出してしまったのだ。

 

 

 声の主である人物の元に歩いていく。自分の姿が見えると、その人は優しく微笑んだ。

 

「心配しすぎだよ、おかあさん」

「だって、目を離すとすぐにいなくなるんですもの」

 私、サク=スコティの母が上から自分の顔を心配そうな表情で覗き込んでくる。

 子を想う親というのは皆こんな感じなのだろうかと思いたいが、特段自分がやんちゃな子供だからってだけな気もする。

 

「冒険者になる特訓はできたの?」

「ばっちりだよ!」

「そんな涙目で言われても心配だわ……」

 ふぅ、と短くため息をつく母の手を引いて記録につく。

 

 

 今の自分はサク=スコティという名前の女の子。種族は亜人猫種。

 薄紫色の先端の垂れ下がった猫の耳と、耳同様薄紫色で細長い尻尾が特徴的だと思う。

 腕力は乏しいが、脚力だったり体幹だったりと身体能力が前と比べ桁違いに高い。が、まだ子供である。木に登って落っこちたりなど、所々失敗することが多い。

 そんな自分が目指していたのは冒険者。日々訓練という名の一人遊びを繰り返していたみたいだ。

 冒険者になるための試練を突破する為の訓練。我ながらこんな感じで訓練になっているのか心配にはなるが……。まぁ楽しければいいのだ。

 

 自分が暮らしている場所は人気のない村である。人間が少なく亜人種の割合が多い。

 周りを森に囲まれているため、できることは少ない。が、冒険者になる為の試練を受けれるのは15歳から。それまでにもっと色んな体験や知識を得よう。

 

 

 

―――

 

 

 自分が前世を思い出し、15歳になる日。ついに今日という日が来たのだ。

 一人で村の外に出て街に行くのだ! 街に行けば試練を受けられる筈だ。詳しく調べてはいないがその筈。村の大人が言っていたから!

 思い返せば何もない村での1年は長かった。その間に自分はおねしょをしなくなったり、いたずらのために気配を抑える方法とか編み出したりした!

 

 寝巻からお気に入りの服に着替える。革の胸当てに丈の短いズボン。ズボンはお尻の部分から尻尾を通す穴の開いていた特別製。おかあさん手作り。

 小道具を詰め込んだ鞄を背負って準備完了!!

 

 

 家を出る際、玄関で母と別れの挨拶をする。

「冒険者以外に自分のこと亜人だって教えちゃだめよ」

 前々からそれが母の口癖であった。

 人間から亜人種への偏見、差別がある町は多いらしい。この小さな村しか知らない自分にはあまりピンとくるものではないが、何度も言い聞かされているせいで妙に身構えてしまう。

 

「特にサクちゃんはかわいいから、気を付けるのよ!」

 奴隷。というのもこの世界にはあるみたい。自分がその立場にならないよう気を付けたい。

 自分はそうはならないだろうけどね!

「も~わかってるってば! それじゃ行ってくるね!」

 やれやれと首を横に振ってから、右手を挙げてぶんぶんと左右に振る。

 よし、と気合を入れて一歩踏み出したところで静止の声がかかる。

 

「サクちゃん帽子帽子!」

 おかあさんが丸くツバのついた帽子を持ってきてくれた。

 耳を隠すためらしいが、これがまた窮屈だから苦手。

 嫌々受け取って帽子をかぶる。ううむ、耳が窮屈窮屈。

 

「じゃあね! 行ってくるよ!」

 今度こそはと手を振って挨拶し歩き出す。

 もう忘れ物はない!

 

「お気に入りのタオルも入れといたからね! それないと寝れないでしょ!」

「も、も~大きな声出さないでよ!」

 

 返事をしながらも鞄の中を確認する。涎と爪痕でよれよれになったバスタオルが折り畳まれて収納されていた。ありがとうおかあさん……。

 しばらくおかあさんに会えないと考えると、少し悲しくなる。

 それでも村の外への憧れの方が強い。村の外では何が待っているのだろうか。そう考えるだけでもワクワクが止まらない。

 

 

 村の出口からは、草の生えていない地面に車輪の通った後が一直線に走っている。これは馬車の通った後だ。これを辿っていけば無事に街まで行けるはず!

 何日かに一度しか来ない馬車を待つのは時間がもったいない! 男なら歩いてなんぼだ!

 

 道中は何も起きず、無事に街の入り口まで来れた。日が暮れる前に到着できたのは嬉しい。

 街の中は石材で整備されており、そこらかしこに大きな家や建物が建っている。

 何度かおかあさんと一緒に馬車に乗って来たことはあるけれども、村と違うその様子に来るたび「ほぁ~」と声を漏らしてしまう。

 

 今日は歩き疲れて足が疲れている。明るいうちに宿をとって寝てしまおう。

 街の宿は木製であった。他の建物と違って落ち着く作りをしている。

 受付のお姉さんにお金を支払い、借りた部屋に入ってそのまま布団にダイブ!!

 

 

―――

 

 

 が、思い出せる直前の記憶だ。結構前から思い返していた気がするけども気にしない!

 宿のベッドで普通に寝たはずなのにどうしてこんなところに……。

 

 部屋のドアを開けっぱなしで寝ていたことが原因と気づくのにそこまで時間はかからなかった。

 と、なると攫われた説が濃厚?

 

「ひぃ!! これって奴隷コース!? あんなことやこんなことされるんだ!!」

 わーっと泣きそうになる。

 でもまだ奴隷と決まった訳ではない。焦るな、泣くな……。

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