PSYCHO-PASS white referee 作:鈴夢
「「一人殺せば悪党で、百万人だと英雄だ
…数が殺人を正当化する」」
有名な偉人の言葉をあの芯のあるような冷めた声で囁かれ
舞白は目を見開く
「「君はもう何人も殺めてきた、今更恐怖に怯えることは無い、待っているのは名声、皆が君を英雄だと称えるだろう」」
「……うるさい…消えてよ」
ガタガタと手が震え始める
「「何を恐れる?今までやってきたことだ
僕の時と同じように殺しの感覚を感じた時はどうだい?
その引き金で、君は人を殺め続ける…」」
「うるさい!!!消えてよ!!」
はぁ、はぁ、と荒い呼吸に額を流れる汗
ドクドクドクと心臓の音が体に響く
『舞白!おい!舞白!!』
無線から聞こえる狡噛の声で目を覚ます
しかしその時既に遅かった
一瞬の躊躇が大勢の命を犠牲にしてしまった
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「その時、私が相手を一掃しなかったから
仲間の前線部隊の一部が陥落しちゃったの」
さわさわと涼しい気持ちの良い風が舞白の長い髪を揺らす
隙間から見える表情は怒り、哀しみ、全てが滲み出ていた
「私が決めたことなのに、銃を握ることも前線に立つことも、反対したお兄ちゃんを押し切って自分で決めたことなのに、私はまだ甘かった
……でも、私は生き抜くって決めたの、だから踏ん張ってる、ここで本当の正義を見つけるために、みんなを守るために
………そんな私を、あなたは嫌…」
"嫌い?"と言い放とうとした瞬間
隣にいた宜野座が舞白を抱きしめる
咄嗟のことに驚くも舞白は宜野座の腕の中で不思議な安心感を憶える
「…嫌いになる訳ないだろう」
「でも、私が怖いって」
「それは…お前が別人の様に変わってしまったと、俺が勝手に思い込んでいただけだ
…お前は変わってない、中身はあの頃のままだ…
不安を煽るような事を言って悪かった」
みんなの前で強がる姿、仲間を思う姿、1人で苦しそうに藻掻く姿
宜野座には見覚えがあった
実の兄にも見せないその姿は舞白そのものだった
「…せめて、俺の前だけでは強がらなくていい
今みたいに本音をぶつければいい、
…1人で抱えるんじゃない」
「……ッ……ぅ……うぅ……っ…」
ぽろぽろと溢れる涙
今まで何度か大したことのない事で弱音を吐いたり泣きついたことはあるものの
本気で涙を流すのはこれが2度目だった
1度目は兄が潜在犯と認定された時、
そして今回
この4年間、決して人前で涙を流さなかった舞白は
心の中のコップの水がひっくり返されたように涙が止まらなかった
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そうこうしているとすっかりと陽は沈み辺りは真っ暗に
虫の鳴き声が響く道を2人は歩き
ベースキャンプへと向かっていた
「…落ち着いたか?」
「うん、もう大丈夫…
…目、腫れてるよね?」
「暗くてよく見えないがそんなに分からないだろう、大丈夫だ」
「……絶対、言わないでね
内緒だから、泣いたこと」
いつもの言葉に宜野座は"分かってる"と呟き
頭をポンポンと叩く
「…あ!戻ってきましたよ!狡噛さん」
「ったく…どこほっつき歩いて…心配したんだぞ」
寺院の入口で待っていたのは常守と狡噛
灯篭に灯された炎が2人を照らしていた
「ごめんなさい、
…ほら、あの川沿い、蛍が出るでしょ?
せっかくだからと思って案内してたの」
歩いてきた方向を指させばニコニコといつものように笑顔を向ける舞白
屈託のないいつもの笑顔のように見えるが
狡噛は敏感にも舞白の表情の奥を見据えていた
「…そうか、なら良いが…
必ず誰かに伝えて行くんだ、何かあったじゃ遅い」
「はーい!」
そして暫くすると続々と仲間たちが現れれば
常守と宜野座を歓迎すると、食事会へと誘った
今日、命を落とした者への敬意を払い
全員で合掌する、
そしてその後は何事も無かったようにみんな明るく振りまき、前へと進んでいた
傍らでその光景を見ていた常守と宜野座
すっかり仲間の一員となっている狡噛と舞白の姿を見ると
日本にいた頃と状況は違えど元気そうな2人を見て笑みをこぼしていた
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