PSYCHO-PASS white referee 作:鈴夢
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同時刻 シャンバラフロートより南に10km
スラム街が広がる地区にて美しい金髪の女性が紙袋を手に街を歩く
道行く男たちがいやらしい目付きで姿を追うも
誰も彼女に近づこうとはしなかった
そして彼女、ユーリャ・ハンチコワ
仲間たちが待つアジトへと入っていく
錆だらけの倉庫のような建物
奥へと進んでいき怪しい地下への扉を開く
扉を開くと肉体を叩くような生々しい音が聞こえてくる
地下へ降りていくと昨夜の傭兵の4人の姿を
そして天井から垂れる鎖に繋がれ拷問を受ける狡噛
そのすぐ近くに椅子に固定され気を失っている舞白の姿
既に狡噛はかなりの拷問を受けたのか傷に痣だらけだった
「噂には聞いていたが、なかなかの手練だったよ」
狡噛と舞白の噂はこの辺りではよく耳にしていた
日本人の2人組が大きな組織の軍事顧問を担い
憲兵隊相手にやり合ってる、との話し
人を惹きつける、謎めいた雰囲気を持っているという2人
そのうちの一人はアルビノのように肌も髪の毛も真っ白
間違いなく2人のことで間違いなかった
「…よく見たら、お前ら
血縁者か…、顔がどことなく似ている」
2人の顔をのぞき込む大柄な男
狡噛を一撃でねじ伏せ、圧倒的な力の差を見せた
デスモンド・ルタガンダ、この傭兵団のリーダーだった
「この娘、いい筋をしてるよ
ジャンとババンギダがあそこまでやられたのは久しぶりだ」
気を失っている舞白の髪の毛を掴み上へと引っ張る
それを見た狡噛が怒りに満ちた表情でデスモンドを睨みつけた
「……妹に…、触るんじゃ、ねぇよ…」
男は怪しげに笑みを浮かべる
「やはり妹か
…ブン!水を持ってこい!」
デスモンドはアジア人のブンという男に指示を出せば
ブンは錆びたバケツに水を汲み、デスモンドに手渡す
そしてその水を思いっ切り舞白に浴びせると
激しく咳き込みながら舞白は目を覚ました
「ッ…ゲホッゲホッ!!
……はぁ…っ……」
「舞白…、…」
ゆっくりと瞼を持ち上げ隣の狡噛に目を向けると
舞白は一気に目を覚ましたように体を揺さぶる
しかし、椅子に手足を固定されており動くことは困難だった
「…お兄ちゃん…、怪我をッ…」
再び髪の毛を掴まれれば舞白はデスモンドを睨みつける
そして男が手招きをすれば一人の男が舞白の目の前に現れる
舞白が首の肉を噛み切った男、ジャンだった
男の表情は怒り…、憤怒
首には痛々しいほど手当の後が施されていた
「君たちは実に面白い
日本人の癖に、他国の民主運動を幇助し
他国の民のために命を張り…それも兄妹でだ
……心が痛まないか?お兄さんは?」
デスモンドは再び狡噛の腹部に強い蹴りを入れれば
狡噛の口から血が溢れ出す
「…弄んでそんなに楽しい?」
刹那、舞白の顔を目掛けて拳が向けられ
左頬に命中すればあまりの強さに椅子ごと倒れる
「…顔はやめろと言っただろう?
女性相手にそんな本気になるな、ジャン」
「……この女…ムカつくんだよ、デスモンド
何が"白銀の女神様"だ、獰猛な汚い獣だ」
口の中を切ったせいか唇の端から血が垂れる
そして再び椅子ごと起こされるとジャンの大きな手が舞白の首を掴む
「この女は俺に殺らせろ
…アイツらに渡すのはこの男だけで良いだろ?」
「…ダメだ、生かしたまま手渡すとの約束だ」
"チッ"と舌打ちをすれば
指がめり込むほど強く首を掴む
埋め込まれたチップもあり、痛みと呼吸のできない状況に酷く顔を歪める
そしてデスモンドは
狡噛を続けて何度も殴り倒す
日本人にしてはなかなか屈さない2人に傭兵達は秘かに驚いていた
舞白は首を離されると暫く頭痛に襲われだらりと首を垂らし
なんとか精神を保っている状態だった
"生かしたまま手渡す"
その言葉に殺されることは無いと分かっていれば
この拷問を乗り越えるだけ、2人はそう考える
「…日本にはシビュラとかいうまやかしで骨抜きされたクズしかいないと思っていたが…」
「……生憎、俺たちはそこに居場所をなくしたのが事実だ
俺も、妹もな」
デスモンドはジャンを引かせ
2人の目の前に椅子を置けば跨るように座り酒瓶片手に語り出す
舞白も狡噛も同じ目付きで睨みつけていた
「この国での傭兵としてはお前らは三流だ
何よりも肝心な雇い主を選ぶ目がない」
「…貴様らと同じハイエナと同じにするな
血の匂いを嗅ぎ分けて生きている訳じゃない」
「なるほど…お前は狡噛と言ったな?
元刑事…、ならではの戯言だ
暴力の在り方に法だ正義だと言ったお題目を欲しがってる」
椅子に酒瓶と銃を置くと2人へと更に近寄る
「国家が崩壊した世界では暴力の民間化が行われる
…なぜならば組織された暴力の独占こそが国家の本質だからだ
社会的憤怒の源泉とした経済活動としての組織的暴力だ」
デスモンドは狡噛を拘束していた鎖を解く
床に体をそのまま打ち付け、残った体力でなんとか起き上がる狡噛
そしてその光景を隣りで大人しく舞白は見据える
「…血に呪われるものか…
…ポストコロニアル…傭兵とは始末が悪い…!」
狡噛は振り絞った力で拳を握り殴りかかろうとするも
フラフラと体勢を崩せばデスモンドにもたれ掛かる
「…ほぅ、腕だけではなく学もあるのか
……ますます面白い」
デスモンドの手が狡噛の首へと掴みかかると
床へと思いっきり投げ飛ばされる
舞白は頭痛を抑えようとゆっくりと深呼吸をし呼吸を整える
今までの、そしてこの場所での彼らの言動を目にして
睨みをきかせながら口を開く
「……政治にとって決定的な手段は暴力である
まるでマックス・ウェーバーみたいなことを言うのね
偉人にでもなったつもり?」
「…兄に似て、妹もなかなか面白いことを言う
君たちは本当に雇い主選びを間違っていたな…」
舞白も拘束から解放されると、体の痛みに耐えられず膝を着き
男を見上げる