PSYCHO-PASS white referee   作:鈴夢

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交差する2つの銃口

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

他の部屋とは一際違う雰囲気を醸し出す部屋の入口

大きな両開き扉を目の前にするとドクドクと心拍数が上がっていく

 

「…ふー…」

 

両手で銃を握り締め、深呼吸をする

グッと体に力を入れると扉に肩から体当たりするように

室内へと入る

 

部屋の奥に佇む男、チュアン・ハン

銃口をゆっくりと相手に向けると

背を向けていた男はゆっくりと振り返る

 

どこか生気がないような様子にずっと前から

舞白は気味悪く感じていた

 

もちろん実物に会うのは初めて、今までは動画でしか見たことは無かったが、やはり瞳が死んでいるようだった

 

 

 

「…チュアン・ハン…じゃない…

あなたは何者?」

 

先程、傭兵のあの男は言っていた

この男は影武者、

本当のハン議長は既に殺したと

 

そして舞白の言葉に相手の男はニヤッと口元を緩ませる

 

「やっと、…やっと君に直接会えるとは…

狡噛舞白…」

 

名前を呼ばれるとビクッと肩が揺れる舞白

機械的に喋る相手にやはり、と舞白は眉を顰める

 

 

 

「…あなたはハン議長でも、代わりの影武者でもない

……シビュラシステム」

 

銃のロックをカチャッと解除すれば更に力が入る体

相手は表情を変えず真っ直ぐ舞白を見つめていた

 

 

「やはり槙島聖護から聞いていたようだね

…だからあの時、君は私との会話を拒んだ」

 

 

あの時、4年前のあの時のこと

槙島と兄を追いかけようとする前、

常守がトラックの横で倒れていた

 

常守のドミネーターがやけに明るく、まるで舞白に呼びかけるように青く点滅していたが、何かを恐れ舞白は無視しその場を離れた

 

「……全部聞いた、あなたの事

簡単に交換できるユニット化された脳

義体を持ち回りで使う

…日本の厚生省公安局局長、禾生壌宗

あれも作り物だって」

 

男はゆっくりと舞白へと近づくように歩みを進める

それを避けるように舞白も歩き始める

 

「シビュラシステムはいわゆるPDPモデル、大量のスーパーコンピュータによる並列分散処理ということになっている、嘘ではないがそれは実態とは程遠い」

 

槙島に聞いた通りの内容、男はスラスラと舞白に目を向けたまま話し始めた

 

「ナレッジベースの活用により推論機能の実現はただ従来の演算の高速化によって実現した訳では無い、

それが可能だったシステムを並列化し、機械的に拡張することで膨大な処理能力を与えただけのこと」

 

「…それで?人体の脳活動を結合して思考力を拡張するシステムは50年以上も前から実用化されていた、

その技術を秘匿して慎重に運用した結果、日本のような法治国家が機能されている……で合ってる?」

 

「その通り、結局、機械的なプログラムで判定できるのは色相診断によるストレス計測まで…

より深遠な人間の本質を示す犯罪係数の特定には更に高度な思考力・判断力が要求される

それを実現し得るのが我々なのだよ」

 

長いテーブルを挟み、向かいで意気揚々と語り尽くす男

相変わらず目は笑っておらず機械的な表情にさらに気味悪く感じていた

 

「馬鹿馬鹿しい…

人間のエゴに依存しない機械による公平な社会の運営?

この国の人々は一方的にシビュラシステムを導入され、民主運動で血を流し続ける人々がいるというのに…

まさか、その実体が人間の脳の集合体だなんて知られれば、よりこの国では運用は厳しくなるでしょうね」

 

脅すような物言いをする舞白にたじろぐどころか

余裕な笑みを浮かべ続ける男

 

「……しかし、君は賢い

日本と同じようにこのシステムを取り入れ

現にシャンバラフロートという楽園を作り出した

…暴露しようとなんてもちろん考えていないはずだ」

 

「………………」

 

 

「…君はシビュラシステムの構成員として相応しい

従来の人類の規範に収まらずイレギュラーな人格の持ち主、

いたずらに他者に共感することも情に流されることも無く

人間の行動を外側の観点から俯瞰し裁定できる…

その才能が君にはある

……計り知れないパーソナリティ、免罪体質…、槙島聖護と同じようにね」

 

「…ふふふ…」

 

突如笑みを浮かべ声を上げる舞白に表情を変える男

 

「…何がおかしい?」

 

再び銃口を向け直すと、トリガーに指を引っ掛ける

 

「まるでバルニバービの医者…

……スウィフトの「ガリヴァー旅行記」、知ってる?」

 

「…何だ?」

 

「その3編、

ガリヴァーが空飛ぶ島 ラピュータの後に訪問するのがバルニバービ

…バルニバービのある医者が対立した政治家を融和させる方法を思い付くの」

 

男…シビュラシステムは聞いたことのある文言にハッとした表情を浮かべる

そう、以前槙島聖護を護送する際に聞いたと

男は身構え始める

 

「2人の脳を半分に切断して再び繋ぎ合わせるっていう手術

…これが成功すれば節度のある調和の取れた思想が可能になる

……この世界を監視し、支配するために生まれてきたと

そんな事を考えてる人達には何より望ましい方法だと

スウィフトは記したの」

 

「…君は…槙島聖護と似て皮肉の天才だ」

 

どこから取り出したか分からないが

男がドミネーターを握ると銃口を向ける舞白へと同じように向ける

 

「私でも、槙島でもなく

スウィフトがね?」

 

2人が引き金を引こうとした瞬間、

部屋にもう1人、ある人物が飛び込んでくる

 

 

 

「動かないでください、2人とも」

 

 

ドミネーターを構える人物

その銃口は男へと向けられていた

 

 

 

 

 

 

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