PSYCHO-PASS white referee 作:鈴夢
『 犯罪係数0 執行対象ではありません
トリガーをロックします』
「…朱さん…」
常守はドミネーターを向けたまま、舞白に目線を移し
銃口を下げるようにと首を振る
それに従う舞白、銃口を下ろせばドミネーターを向ける男も同じように銃口を下げる
「常守監視官、何の用かね?」
「……チュアン・ハン…
…いいえ、シビュラシステム…」
「やはり、気づいていたのか」
「あなたが影武者だと暴露した男がいたの
…それに、あなたは目の前で狡噛舞白にドミネーターを向け
あわよくばこの混乱に乗じて連れ去ろうとしたわね?」
この国に存在しないはずのドミネーターを
何故か男は所持していた
そしてそれを舞白に向けていた時点で相手の考えていたことなんて目に見えていた
「…そして霜月監視官の読み通り
全て、あなた達の筋書き通りって訳ね…」
偽物のハンのそばにいた人物は誰しも気が付かなかった
不自然な見た目もただの整形手術をしただけの人間だと
実際、今目の前にいるこの男は
常守と宜野座と同じ便でシーアンに入国したと男は話す
その瞬間、常守のドミネーターが青く光り出し語り始める
『 ニコラス大佐は上官であるハン将軍の反対を押し切ってでもシャンバラフロートの建設を推進する意図でした
その対価として提供される日本の無人化兵器軍がシーアン全域を制圧する切り札となり得たからです』
その音声に舞白も静かに耳を傾ける
『 そして我々にとっても、外地におけるシビュラシステム運用のモデル都市は魅力的でした
両者にとって必要だったのはプロジェクトにGOサインを出す協力的な議長を擁立すること』
「…まさか、それで…」
「他国への内戦干渉、本物のハン議長の暗殺を共謀した
…これは明確な犯罪行為よ!」
舞白と常守が言葉を発すも
シビュラシステムは落ち着いて話を続ける
『 この国に内政と呼びうる制度は実態として存在しません
汚職、差別、宗教的民族的対立、2年前の時点で既にシーアンは連合国家の体裁を喪失していました』
「シビュラの支配地域を広げたかっただけでしょう?
そして、彼女も現れた…
槙島聖護を取り込めなかった分、それはとてもあなた達にとって都合が良かった…そうじゃないの?」
『 我々にそのような領土拡大欲は存在しません、
最大多数の最大幸福、つまりはどこまでを最大と考えるかです
…そして、あなたの言う通り都合よく現れた狡噛舞白に関してはいずれ捕縛予定でした、しかし予想外なことにあなたが現れてしまった』
諦めの悪いシビュラシステムにため息を吐く舞白
確かに、あの男はドミネーターを舞白に向けていた
常守が現れていなければかなり危険な状況だった
『 あなたは我々の計画を犯罪行為と判定した、
…犯罪とは法の逸脱、そしてその判断を更に進化させる為に必要な希少価値のある人間を我々に引き渡さない』
「機能が法の全てじゃない
法は民衆の支持なくして成立しないわ
あなた達はこの国を支配する上で国民の承諾を得ていない
独裁者を騙して言いくるめるだけ…
それに諦めなさい、彼女は絶対にあなた達の思い通りにはならない」
ドミネーターに向け言葉を発する常守
身勝手な発言に執拗に舞白を狙うシステムに怒りさえ覚える
「虐殺されるか餓死するしかない国民に平和と安息をもたらす為には波及的、速やかな処置が必要です、
そしてそれを判断するための頭脳…
その効率的最適解を我々は選択しただけです」
グッと力が入る舞白
銃を握る手が震える様子に常守は気づく
「…辞任しなさい、ハン議長
公平な選挙で新しい元首を選ぶのよ
シビュラシステム導入の可否を国民の総意として決めるために」
『 民衆が我々を拒まんと?
ひとたび手にしたこの安息、この輝ける希望の街を人々が自ら捨て去るとでも?』
刹那、舞白はテーブルの上によじ登り男の真横へと移動すれば
銃口を男の頭へと向ける
「…何が守るに値するか
それは自分の意思で…人々が決めるものでしょ…
バカにするのも大概にしなさい
ただ従うだけじゃない、守り通すものとして法律を受け止めるために」
舞白の言葉に男は頭を動かし
生気の無い瞳を舞白へと向ける
すると今度は男がドミネーターと共に語り始めた
『 結果の見え透いた茶番のためにそこまで強硬に主張するあなた達の意思は私には理解し兼ねるが…
そんなあなた達だからこそ我らが相違の関心を買っているのかもしれません』
常守もゆっくりと男へと近寄れば
ドミネーターの銃口を突きつける
「…社会の形を選び認める
その権利のために昔から人は血のにじむような努力をしてきた
…歴史には敬意を払いなさい、シビュラシステム」
2人に板挟みになる男
すると再び笑みを向ければ舞白に目を向けたまま言葉を発す
「…常守監視官の言う通り、君は思い通りになってくれないようでとても残念だ
今回が最後のチャンスだと思っていたんだが…」
舞白が向ける銃口を手で制止する男
その様子を見る舞白はゆっくりと後退する
「君が今後どのように生き残って、どのようにこの世界にその存在意義を齎すのかとても興味深い
……また暫く、様子を見ようじゃないか
それもそれで面白そうだ」
突然のシビュラの考えに目を見開く舞白
そして舞白は更に距離を置くと
常守に目を向ける
「…朱さん、今の私は何色…?」
「………」
常守はゆっくりと銃口を舞白へと向ける
『 犯罪係数0 執行対象ではありません
トリガーをロックします』
常守の表情を見た瞬間、自分は変わらず免罪体質であることを察する
その瞬間、部屋の窓に向けて発砲し、逃げるように窓へと一気に駆け抜ける
「舞白ちゃん!」
「……もし、私が審判…レフェリー側としての役割以外で
この世界に役に立てると証明出来れば
…取り込まれる以外に、選択肢は与えられる
その解釈で間違ってない?」
窓の縁へと足を乗せ部屋に残された2人に目を向ける
「あぁ、そうだ
期待しているよ、狡噛舞白…」
淡々と機械的に話す男
それを聞いた舞白はニッと口角を上げれば
外へと飛び降り2人の前から立ち去った
それから舞白は常守たちの前に現れることはなかった
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