PSYCHO-PASS white referee   作:鈴夢

8 / 35
疑心の幸せ

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

「オープンケース」

 

その言葉と共に常守の私物が入ったキャリーケースが開く

そしてその中に、見知らぬ物が

 

赤いポーチ、そして傍らには手紙

"困った時に、開けて"

その言葉と共に真っ赤なルージュの唇の跡が

 

「…もう、志恩さんったら」

 

唐之杜らしい仕掛けにクスクスと笑みを浮かべると

常守はベッドに倒れ込む

 

広々とした階段付きの部屋

キッチンから何からなにまで揃えられており

高級ホテルのスイートのような部屋だった

 

何気なくデバイスに触れると

チュアン・ハンについての経歴を確認する

 

 

チュアン・ハン 元陸軍大将

過去12年に渡る内部分裂で連合の主導権を巡り

争った将軍の1人

 

シーアン領内にシビュラ統治特区を設ける条件で日本政府の後ろ盾得てライバル勢力を制圧

新生議会を自立し議長に就任したのは2年前

だけど、武力で手に入れた政権に反発する声は後を絶たず、依然領土内の情勢は不安定

 

日本に来たテログループはやはり反政府ゲリラのメンバーだろう

ハンの勢力基礎は日本政府の支援あってこそ

…そこで東京が報復テロの標的に……

 

資料に目を通している途中

室内に部屋の出入りを知らせる機械音が響く

 

常守の世話係だと言う若い女性

ヨウという人物が入室する

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

「……相手が執行官でもあくまでも客人

こんな部屋まで用意されるとはな」

 

宜野座も常守と同様、豪華すぎる部屋に案内されていた

お互い部屋は隣同士、通信も問題なく使えていた

 

シャワーを浴び

楽な服装に着替えようとキャリーケースを開ける

 

「オープンケース

………ん?これを入れた覚えはないが…」

 

常守と同じく色は違えど青いポーチが

そして唇マークつきのメッセージ

 

「唐之杜…ったく……」

 

中身が何かだいたい察しがつけば元に戻す

 

そして常守と同じように

ハンに関係する資料を見ていると

何者かが部屋に入る気配

 

 

「失礼いたします

身の回りのお世話をさせて頂きます、シュウと申します

何かありましたら何なりとお申し付けください」

 

宜野座よりも長身の男が深々と頭を下げる

褐色色の健康的な肌に、黒い短髪、20代前半辺りなのかかなり若く見えた

そして首にはあの首輪が装着されていた

 

「ご丁寧にありがとう、俺は宜野座伸元だ

…そんな畏まらなくても、もっと気楽に……

それに俺も潜在犯だ」

 

慣れない丁重な扱いに戸惑う宜野座

あくまでも同じ潜在犯同士、首輪が着いていないだけ

 

「いえ、そういう訳にもいきません

大切な客人ですから……

お茶でも如何ですか?」

 

「…せっかくだから頂こう」

 

淡々と笑顔で話す相手にもはや通用しないと分かれば

宜野座は大人しく従うことに

 

 

「お食事など直ぐにご用意も可能です

また外出される際は常守様と行動する限り

機密区分の施設や橋を渡った先で無ければ問題ないと

伺っております」

 

「ああ、わかった」

 

「近くの歓楽街には飲食店やバーなどもあります

アルコール類に関しては近々制限がかかる予定にもなっているのでお楽しみになるのであれば今のうちです

また、この階にはジムやプールも併設されています

そちらなら1人で行動されても問題無いので息抜きにでもぜひ」

 

一通り説明を終えると

シュウはテーブルに温かいお茶の入ったコップを置く

 

「それでは…」

 

「あの、一つ質問しても構わないか?

答えたくなければ答えなくていい

色々機密事項もあるだろうし」

 

シュウは立ち去ろうとしたが宜野座に問いかけられると

快く返事をし"私に答えられることなら"と返す

 

 

「ここでの生活は幸せか?」

 

予想外の質問に驚いた様子のシュウ

そしてすぐさまこう答えた

 

「はい、幸せですよ

この特区内に住む人間はシビュラシステムに、そしてシステムを導入したハン議長に感謝しています

導入前はどこにも安全な場所はありませんでしたから」

 

「……そうか、悪い

いきなり変なことを聞いて

もう大丈夫だ」

 

彼の笑顔と回答に曇りはなかった

そしてそれが本心であってほしいと

宜野座は心の底から願っていた

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。